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テクニカルコーナー

旅行のお供 HFアンテナの製作

月刊FBニュース編集部

1. 製作コンセプト

以下のコンセプトで製作しました。


こういったコンセプトですので、送信パワーはQRP(最大5W)を目指しています。無線機もACで動くものではなく、電池で動いて運べるものを考えています。手軽に短波帯にQRV出来ることから、エレメントワイヤーが1本だけでよいEFHW(End Fed Half Wave:片端給電半波長)アンテナにすることにしました。

2. 回路構成

EFHWアンテナの回路構成は、色々あるようですが、今回はこんな構成にしました。


回路説明

回路は大きく分けて3つに分かれています。


個々のブロックの動作を説明します。


回路はブリッジを構成しています。


こんな形になっています。電源「~」は、送信機になります。検出器「G」は、高周波をダイオード「D1」で検波して直流にします。この直流で電流計「A」を動かします。R1=R2=R3=R4=R5=R6=100Ωです。従って、Xが50Ωになった時に電流計が振れなくなります。今回使用している抵抗は1Wですので、並列接続により2WまでOKです。

この回路はVSWR確認の時だけしか使いませんので、確認時の送信機出力は最大2Wで使うことにします。運用時は、この回路は通りませんのでそれ以上の出力でもOKです。50ΩはE系列から外れていますので、100Ωを並列接続で構成しました。


フェライトコアを用いてインピーダンスを変換します。50Ω送信機側を2ターン。アンテナ側を14ターンにします。
50 : x = 2^2 : 14^2
x = 2450Ω

整合が外れた時に、VC1には高い電圧がかかります。5W出力で、5kΩ程度になった時には、
5(W) = E × I
= E × (E/5K)
= E^2 / 5K
E = 158
158Vの開放電圧となります。

整合時は、1V以下となります。整合時には、低い耐電圧のコンデンサで良いですが、整合が外れた時を考慮すると200V程度の耐圧となるコンデンサが必要となります。そのため、エアバリコンにしました。AMラジオ用のポリバリコンを使う場合は、送信出力を下げるか、整合が外れないようにする必要があります。AMラジオ用のポリバリコンの耐圧は明示がありませんが、100V程度だというようですので、5W以下で使う必要がありそうです。


50Ωに整合が取れている時は、メーターは振れませんが、今の状態がどの程度にあるのか目安にするためにVSWR=1.0と3.0の状態を作ります。

VSWR=1.0の状態を作るには、100Ωの抵抗を並列接続して作ります。VSWR=3.0の状態は、二つの条件があります。実軸上でショート側とオープン側の二つが存在します。今回は、抵抗の種類を減らす目的で100Ωの抵抗を並列接続してショート側の抵抗としました。

部品表

部品は作ってみたい方が簡単に調達出来るように、市場流通品を使いました。デッドストック品では、製作が出来ませんので。2020年4月以降は、エアバリコンが一番の入手ネックになります。


※ラジオ少年の部品頒布は2020年3月末までです。国内でエアバリコンを個人で簡単に調達することは難しくなりました。エアバリコンが入手出来ない時の対応策を文末の付録に記載しています。

(追記)
※部品の入手難により、一般への頒布終了が2020年3月末から、2020年2月29日に変更になっています。

(追記2)
エアバリコンの入手情報をいただきました、付録2をご参照下さい。

3. 加工、組み立て

タカチのケースを加工していきます。


現物勘合で穴あけしていきます。メーター部分の四角い穴を開けるのには苦労しますが、柔らかな材質ですので、カッターで削ることも可能です。

大きな部品を組み付けしていきます。


エアバリコンは、5個に分かれていますが、全て並列接続させます。上部に装着されているトラッキング調整用トリマ側は使いません。全て並列接続して、可変容量は5pF~300pFまで可変することが確認出来ました。

ここで、エアバリコンの固定ネジに注意します。エアバリコンは、右手にある3か所のネジのみで固定します。


赤丸が固定ネジですが、長いとローターに当たってしまいますので注意します。

VUメーターは、正面部分に両面テープを貼り付けしてケースに固定します。


校正部


表と裏の配線は、こんな感じです。ここではコネクタを使っていますが、使用しなくて構いません。

VSWR検出部


試作品なので、余計な回路が入っています。表裏の配線はこんな感じです。

L1


図では、14T側は省略して描いていますが、実際は14回コアの中を通してください。トロイダルコアは、材質で特性が変わってきますのでこの巻き数はTR-18-10-6を使った場合と考えてください。別な材質の場合は変わってきます。



外観

最後にテプラで貼り付けしていきます。




4. 動作

(1)校正部

VSWR=1.0と3.0の場合で、周波数的には、どのくらいの範囲で実用になるのかを確認しました。

VSWR=1.0


HFでは問題なく使えそうです。黄色部分がハムバンドです。右端が50MHz (測定はアンテナアナライザー Rig Expertを使いました)

VSWR=3.0


HFでは問題なく使えそうです。50MHzまでいくとVSWR=4.0になってしまいます。

VSWR bridgeの特性


(2)アンテナワイヤー準備

今回、アンテナは下図のように張りました。


グラスファイバー製伸縮ポール(通線用ポール)


(3)整合状態

VC1を中位(150pF程度)にして、エレメントを調整します。



14.1MHzでVSWR=1.15になりました。VC1の調整でどのように変化するのか確認しました。

VC1最大時


VC1最小時


以上から


0.5m程度の長さ違いをVC1で調整出来るということになりました。

運用状態として、ホテルの窓からエレメントワイヤーを垂らしてチューニングが取れるか確認してみました。この時は、エアバリコンが効果を発揮します。


VSWRは1.8程度まで調整出来ました。

5. 操作方法

以下の手順で使います。


校正の使い方は以下のとおりです。


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