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楽しいエレクトロニクス工作

第82回 長波JJY受信機

JA3FMP 櫻井紀佳

長波の40kHz、60kHzの標準電波JJYは、電波時計などで多く利用されています。この連載でも「第48回 スペクトラム拡散通信その1」で実験に使ったものを少し記載しており、今回その詳細を紹介したいと思います。

電波時計など時刻標準に多く使われている40kHz、60kHzの標準電波をアマチュア無線の周波数標準として使えないかと40kHzの受信機を作ってみました。


長波のJJYが話題になり始めた頃、当時の三洋電機から専用のIC LA1650が発売されました。興味があったのですぐに入手し、一緒に専用のバーアンテナも購入しました。このICはもう製造されていませんが、まだインターネットで見つけることができるかも知れません。このICは時計のアプリケーションを主に考えられたと思われ、電源も乾電池1本分の1.5Vで働き消費電流も500μA程度の省エネ設計になっています。

当時のJJYは40kHzだけで60kHzはまだ送信されていませんでした。この40kHz長波の受信機の構成は次のようなものです。


IC内部の構成は周波数が低いのでストレート方式で次のようになっています。


購入したLA1650には回路図がついており、回路が簡単なため変更する要素はあまりありません。

その回路は次のようなものです。


この回路の説明をしますと、L1の586μHのコイルはバーアンテナでC9の27nFと同調回路を構成し40kHzに共振しています。バーアンテナからピン1に入力された信号はIC内部のAMP(1)で増幅され、ピン6、ピン7から出力されX1、X2の水晶フィルターを通してピン8、ピン9のAMP(2)へ入力し増幅されます。

X1、X2の水晶フィルターは単体の水晶素子そのものの共振特性を利用するもので、信号が狭帯域のため鋭い特性を利用することができます。AMP(2)で増幅された信号はピン10、ピン11から出力され、RECブロックで検波され、その信号はDECブロックで信号をデコードして最終の信号としてTCO(Time Code Output)として取り出されます。

このJJYの信号は振幅変調のため処理の途中で飽和しないように強力なAGCが必要です。このため検波のRECブロックの出力でAMP(1)ブロックにAGCをかけてゲインをコントロールしています。

これらの回路は、47mm x 72mmの穴あき基板に部品を取付けました。部品が少ないので組立は簡単です。バーアンテナも基板に合う足がついていたのでそのまま取付けできました。


基板など全体を入れるケースは厚さ3mmの薄青色のアクリル板で作りました。ケースの内寸は53mm x 94mmで、これは接点のバネを含めて単三電池を横に収める寸法で、高さは25mmとしました。バーアンテナで受信するためシールドとなってしまう金属ケースは使えません。

このケースは必要な寸法にアクリル板を切り出し、専用の強力な接着剤で貼り合わせて箱を作りました。電池内臓のため外部には40kHzの信号を取り出すジャックと、TCOの信号を取り出すDATEジャックおよび電源スイッチを取付けました。電源スイッチは構造上の配置の都合で電池のマイナス側になりましたが特に意味はありません。

組立が出来上がったのでスイッチを入れて動作確認します。まず40kHz出力のジャックにオシロスコープを接続して波形を見ると次のようになっていました。


40kHz信号(左)、変調波形(右)

このように40kHzの信号と変調波形を観測することができました。

次にDATE出力もオシロスコープで見るとその波形は次のようになっていました。


TCO出力波形

この標準電波の信号の構成や意味については巻末のLA1650の資料を参照してください。また、この標準電波やそれに関するその他多くの情報は、NICTのホームページ等、インターネットで検索することができると思います。

今回は40kHzだけになりましたが、C9の27nFを12nFに変更すると60kHzを受信することができます。この場合X1、X2の水晶フィルターも60kHzのものにする必要があります。

40kHzの出力を増幅して使えば周波数標準として利用できますが、受信機にできるだけ影響しないよう入力インピーダンスの高いバッファーで取り出す必要があります。長波電波の受信は外来ノイズの影響を受けることが多く、場所により時間によっては安定に受信できるかどうかが課題として残ります。










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