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Short Break

10MHz基準信号発生器の考察と製作
その1 OCXO(Oven Controlled Xtal Oscillator)の製作


フリーマーケットで図1に示した水晶発振器を数個購入しました。金属ケース(キャン)の中に水晶振動子とその発振回路が組み込まれており、5Vの電圧を加えると10MHzの信号が出力されるユニットです。

金属ケースの表面には10.00000MHzと印字されており最小桁は10Hzです。水晶発振子は温度に対して周波数が変動しますから、この水晶発振器に温度補償を加え、温度に対する安定度や周波数の精度を考え、10MHzの基準発振器製作の可能性を考えてみます。回路の考察や金属加工、基板製作の観点から2回に分けてご紹介します。

10.00000MHzの水晶発振器の性能

(1) 出力波形の観察
水晶発振器HAT7500Aのデータシートをネットサーチしました。データシートには、「Crystal Oscillator(水晶発振器)」との記載がありますが、「Crystal Clock Oscillator」とも記載されています。基準発振器として使えるかどうかは分かりませんが、発振器で重要な周波数安定度(Frequency stability)は、データシートによると全条件(All conditions)において±25ppmとの記載があります。10.00000MHzの1ppmは10Hzですから、25ppmとはその25倍で250Hzとなります。使う用途によりますが10MHzの基準発振器としての使用では250Hzのズレはちょっと大きすぎます。


図1 10.00000MHz水晶発振器の外観(サイズ20mm×15mm×5mm)

この水晶発振器に+5Vの電圧を加え出力波形をオシロスコープで観測したものが図2です。きれいな正弦波ではなく歪んでいます。基準発振器に使うには少々無理がありますが、これで検討を進めます。


図2 出力波形

(2) 出力周波数の精度
周波数の測定には周波数カウンターを用います。手持ちの周波数カウンターの精度もいい加減なものですので、まずは周波数カウンターを1時間程度通電し、周波数カウンターに内蔵されている基準周波数を安定させます。安定したと思われる状態でIC-7851の後面パネルから出ている10MHzの基準信号を周波数カウンターに入力し、周波数カウンターの表示周波数を校正します。IC-7851の基準信号の精度は±0.05ppmという驚異的な安定度です。以下IC-7851の基準信号は温度によってズレないことを前提として進めます。IC-7851の基準信号の精度について記載されたマニュアルを見つけましたので図3に参考で示します。


図3 IC-7851に内蔵の10MHz基準信号の安定度についての記述
(アイコム株式会社発行IC-7850/IC-7851のすべてより引用)

図4の周波数カウンターの表示がその校正の結果です。IC-7851の基準信号の周波数が10.00000MHzにもかかわらず周波数カウンターは、10.00004MHzを表示しており、周波数カウンター内の基準周波数にズレを生じていることが分かります。


図4 周波数カウンターの校正(Gate時間: 10 sec.)

この状態でIC-7851との接続を外し、これから測定する水晶発振器の出力をこのカウンターに接続し、周波数を測定します。仮に、周波数カウンターが10.00004MHzを表示すれば、水晶発振器の出力は、10.00000MHzであることが分かります。図5がその水晶発振器の出力周波数です。10.00004MHzと表示されれば10MHzちょうどの周波数でしたが、結果は10.00008MHzと表示していることから40Hzほど高いことが分かります。数個購入した別の水晶発振器に交換しましたが、同じような傾向の出力周波数でした。


図5 水晶発振器の出力周波数(室温23℃)

(3) 温度特性
発振周波数の温度に対する傾向を観測した結果を図6に示します。傾向的には温度が低いときには水晶発振器の周波数は高く、温度が上がると周波数が下がることが分かりました。温度が35℃のときの周波数カウンターの表示が「10.00004MHz」であったことから、このときの発振周波数がドンピシャの10.00000MHzであると想像できます。


図6 水晶発振器の温度特性

OCXOの製作

OCXOとはOven Controlled Xtal(Crystal) Oscillatorの略です。水晶振動子に加わる温度を電気的に制御し、常に一定の発振周波数とする水晶発振器です。今回使用する水晶発振器の発振周波数は+35℃でIC-7851の10MHz基準信号と同じ発振周波数となることから、水晶発振器の温度を+35℃に保つことができれば、常に10MHzドンピシャの周波数を得ることができます。夏場は外気温が+35℃以上になることから、水晶発振器を外気温より低い35℃に調整できませんが、外気温が+35℃以下であるなら、ヒーターを使うことで水晶発振器の温度を35℃に持ち上げることは可能です。水晶発振器の周波数を可変することができるなら、例えば+50℃で10.00000MHzとなるようにしておけば、日本では外気温は+50℃以上になることはないことから常に内蔵のヒーターで加熱して+50℃に保つことが可能です。

今回のOCXOの発熱体には抵抗を使用します。抵抗に電流を流し、熱を発生させ、決められた温度に達すると電流を遮断し、温度が下がるとまた電流を流して加熱し、そのオンオフ動作で常に35℃に保つという自動制御の回路を検討します。

(1) OCXOのキーパーツ
図7の部品を用いてそのOCXOの製作にチャレンジします。温度を検知する部品にはLM35という温度センサーを使います。図7(左)がそのセンサーです。形状は2SC1815と同タイプのTO-92です。温度が0℃のとき出力電圧は0V。出力電圧は、10mV/℃で変化します。したがって、出力端子に電圧計を接続し、例えば電圧計が100mVを示せば、10℃であることが分かります。図7(中央)は、温度を上昇させるのに使う抵抗です。ヒーターの役目を持たせます。ヒーターは使いやすさも考慮し、クラッド抵抗を使用します。図7(右)は、今回使用する10.00000MHzの水晶発振器です。


図7 OCXOに使うキーパーツ

これらの部品を図8(左)のように積層にして銅板で製作したケースに収めます。ケース内の部品と外側の回路の接続はケースに取付けた貫通コンデンサを通して行います。10MHzの信号に対して貫通コンデンサを通した信号の取り出しは検討の必要があります。


図8 OCXOの製作過程

(2) 温度制御の構成
一般的に水晶振動子の発振周波数は温度に影響を受けやすいことから、水晶振動子の温度を一定に保つ回路を製作します。図9がその制御方法の構成図です。ヒーターに電流を流し水晶発振器を温めます。温度を一定とするため、ヒーターの温度を温度センサーで監視します。予め定めた温度になるとそれ以上熱くならないようにスイッチが自動的にオフになり、ヒーターの温度上昇を停止させます。逆に温度が低下すると今度は決められた温度になるまでヒーターはオンとなり熱を発することになります。


図9 温度制御の構成

(3) 回路の検討
図10に暫定の実験回路を示しました。R10(クラッド抵抗)に電流を流しヒーターとします。その熱でX1の水晶発振器を加熱し予め定めた温度まで上昇させます。IC4(LM35)は温度センサーです。0℃のときに0Vの電圧、1℃上昇する毎に10mVの電圧上昇を生じます。OCXO内部の温度を外部から観測するためIC4で生じた電圧をIC3で10倍に増幅し、温度センサーの電圧から温度を読みやすくしています。さらに外部に電圧計を接続した場合にその負荷の変動で制御回路に影響を与えないようにするためIC2(b)のバッファを付加しています。

IC2はオペアンプですが、三端子レギュレータで作った基準信号とLM35で検知した電圧を比較するためIC2(a)ではコンパレータとして使っています。OCXO内の温度が低下するとLM35で検知した電圧は低下します。その電圧がIC2(a)の2番ピンに入力されます。2番ピンの電圧とR1、R2、R3で予め設定した3番ピンの電圧とをIC2(a)で比較し、3番ピンの電圧の方が高ければ1番ピンからHレベルが出力されQ1のMOSFETがオンになります。Q1がオンになることで、再びR10に電流が流れOCXO内の温度上昇を生じさせます。OCXO内の温度が上昇するとLM35で検知する電圧も上昇することになり、その結果、IC2(a)の2番ピンの電圧の方が3番ピンの電圧より高くなり、今度はIC2(a)の1番ピンはLレベルとなります。このときQ1はオフとなるため、OCXO内の発熱は止まります。この繰り返しを連続的に行うことで、OCXO内の温度を一定に保ち、その結果水晶発振器の出力周波数は安定するといったメカニズムです。


図10 OCXOを組み込んだ実験回路

回路の考察はここまでです。この回路はブレッドボードにて一応の検証を行っていますが、最終回路ではないため次回までにこの回路をさらに検証します。次回は実動に耐えるような安定した信号となるか否かの結果まで導き出したいと思います。

CL

<資料提供>
下に添付したHAT7500Aのデータシートの添付は、九州電通株式会社(KDK)のご協力と掲載の許可を得ています。誌面をお借りしてご協力に感謝申し上げます。


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