Monthly FB NEWS 月刊FBニュース 月刊FBニュースはアマチュア無線の電子WEBマガジン。ベテランから入門まで、楽しく役立つ情報が満載です。

Short Break

LM358を使った過電圧防止装置 その2
スイッチングにPチャネルMOSFETを使用


MOSFETによる過電圧防止回路の概要

前回その1では、定電圧電源の電圧が何らかの原因で上昇した場合、それに接続している機器を過電圧から保護する目的で、メカニカルリレーを使って電源ラインを遮断する装置を製作しました。今回は、その2として電源ラインを遮断する回路をメカニカルリレーからMOSFETに変更し、完全半導体化を図ります。


図1 過電圧防止装置の内部

MOSFETは原理を理解するとスイッチングにはたいへん便利な半導体です。今号のFB NEWSにFBのトレビアの記事で今回使用するMOSFETの動作原理を簡単に説明しています。併せてお読みいただければより理解が深まると思います。

今回製作する過電圧防止装置の構成図を図2に示します。前回製作したメカニカルリレーによる防止装置と同様、今回もお使いの定電圧電源には何ら改造は行いません。


図2 コンパレータとMOSFETによる過電圧防止回路の構成図

無線機に供給するDC電源の定格は多くの場合、13.8V±15%となっています。印加する電圧が低い場合は、無線機が正常に動作しない場合もありますが、無線機が壊れることはあまりありません。ところが印加する電圧が高い場合は、壊れるリスクが増しますので注意が必要です。つまり13.8Vプラス15%アップの電圧、つまり15.87V以上は厳禁です。

この過電圧防止装置は、定電圧電源が何らかの原因で規定以上の出力電圧となった場合、接続している電子機器をその過電圧から保護する目的で接続する装置です。装置は過電圧をコンパレータで検知します。通常は、定電圧電源の出力電圧とほぼ同じ電圧が過電圧防止装置を経由して負荷に供給されます。定電圧電源の電圧が13.8Vプラス15%付近になるとMOSFETがOFF状態となり電源回路を遮断します。

製作に使う2つのキーパーツ

図3がコンパレータとPチャネルMOSFETを使った過電圧防止装置の回路図です。使用部品もそれほど多くはありませんし、特殊な部品もありません。比較的簡単に電子工作ができます。


図3 過電圧防止装置の回路図

キーパーツは2つです。1つは回路図の中央に描かれた三角形のパーツです。これがオペアンプのLM358です。コンパレータとして使用します。もう1つは、Q4に使うPチャネルMOSFETです。手持ちにルネサスの2SJ555がありましたので、それを使いました。データシートによりますと、ON時の抵抗(RDS)は0.017Ωとたいへん低く、ドレイン電流(ID)も60Aもの大電流を流せます。今回はこの2SJ555を使いましたが、PチャネルMOSFETであれば何れのFETでも動作すると思います。ご自身の製作にあったものを選択してください。

回路の動作説明

図4がLM358の内部ブロック図です。1つのパッケージに2個のオペアンプが入っています。オペアンプは、回路に負帰還を掛けると本来のアンプ(増幅器)として動作します。コンパレータとして動作させる場合は、負帰還は掛けません。

コンパレータは、二つの入力端子(+)と(-)間の電位差を比較して、その状態に応じて出力端子がLOWになったりHIGHになったりする機能を持っています。今回はこの機能を使い、基準となる電圧と定電圧電源の出力電圧をコンパレータで比較します。定電圧電源の出力電圧が基準電圧より高ければ、コンパレータの出力がHIGHとなり、その信号であとのトランジスタをドライブし、MOSFETをOFF状態にして定電圧電源と負荷を遮断します。


図4 LM358のピン配置

コンパレータの(+)端子に供給する電圧は、電源の出力電圧がこれ以上アップすると外部機器に不具合を与えることになる電圧から求めます。(+)端子に加える電圧はR1とR2の分圧で求めますが、基準電圧(-)をちょうど越えたあたりに設定します。

過電圧防止装置の仕様

電圧を越えると、この過電圧防止装置が働き、供給する定電圧電源の出力をこの装置で遮断するものとします。製作には、ご使用の定電圧電源には手を加えず、外付けの装置とします。また、製作に使用したMOSFETのIDはたいへん大きなものですが、本装置は手持ちの定電圧電源とIC-705との接続に十分耐える程度の内部の配線とします。

過電圧防止装置に使う主な部品

(1) D1
コンパレータの基準となる(-)端子に加える電圧を決めます。手持ちの部品からD1には8Vのツェナーダイオードを使用します。よってコンパレータの(-)端子には約8Vが印加されます。

(2) R1、R2、R3
定電圧電源の出力電圧が15.87Vとなったときに、定電圧電源と負荷をこの過電圧防止装置で遮断させる仕様ですので、(+)端子に加わる電圧をR1とR2+R3の分圧から基準電圧の8Vになるように計算します。R3は、3番ピンの閾値(しきいち)電圧を若干可変できるように可変抵抗器としました。

定電圧電源がオンになると2番ピンにはツエナ電圧の8Vが印加されます。すなわちR2+R3の直列接続の抵抗値とR1の値は同じであることが分かります。ここでR1=R2+R3となるように抵抗値を選びますが、R3を可変抵抗器とし、それを可変することで、3番ピンには8Vを印加することができます。


図5 コンパレータの基準電圧と比較電圧の設定

(3) Q1、Q2、Q3
汎用の2SC1815を使いました。ON/OFFさせるだけの用途ですので、小信号用のNPNトランジスタであればどのようなものでも問題はありません。

(4) Q4
PチャネルMOSFETです。ゲートに加わる電圧がソース電圧より低いときはソース・ドレイン間がオン状態となり導通します。逆にゲート電圧がソース電圧と同じかそれ以上になるとソース・ドレイン間はオフの状態となります。

(5) D2
入力電圧が基準となる電圧より高くなった場合、コンパレータの1番ピンの出力はHIGHとなることを利用して点灯する赤色LEDです。

(6) R3
IC1の3番ピンに8Vが印加されるように50kΩの可変抵抗器をR2に直列接続します。R3の調整で3番ピンに印加される電圧は6.4~9.4Vに可変できます。

(7) R4
8Vのツェナーダイオードが定電圧動作となるような抵抗を選びます。ここでは、22kΩとしました。

製作

部品をユニバーサル基板に組み込んでいきます。MOSFETは、図6のように小さな放熱板に取り付けましたが、製作後の実験では13.8Vで5A程度の電流であれば、MOSFETのオン抵抗は0.017Ωと低いために熱はほとんど出ませんでした。仮に100W機を接続するのであれば、最大で20Aぐらい流れます。この場合、計算ではP=I2・Rより6.8Wとなりますが、実際はほんのり温かくなる程度でした。それでも内部配線の一部に20Aもの大電流が流れるので配線には太い線材を使うような配慮が必要です。


図6 過電圧防止装置の内部

調整と動作の確認

ご使用の定電圧電源の出力端子と製作した過電圧防止装置の入力端子を図7のように接続します。過電圧防止装置の出力端子に適当な負荷と電圧計を接続します。今回の製作時に実験には負荷として10Ωのセメント抵抗を2本パラ(5Ω)接続で実験を行いました。


図7 過電圧防止装置の接続

定電圧電源の出力電圧を13.8Vにセットします。そのとき、過電圧防止装置の出力端子には、13.8Vの電圧が出ていることを確認します。徐々に定電圧電源の電圧を上げていき、13.8Vのプラス15%付近で止めます。図3の回路図でR3の可変抵抗器を調整して、過電圧防止装置の出力がゼロになる位置にセットします。

コンパレータはヒステリシス特性を持っていますので、この調整を何回か繰り返して確実に15.87V付近で出力電圧がゼロになるようにR3を調整します。過電圧防止装置が過電圧を検知すると赤色LEDの警告ランプが点灯します。

LM358について

LM358はオペアンプのICですが、今回はコンパレータとして使いました。コンパレータの簡単な動作原理については、本WEBマガジン「FBのトレビア」で説明しています。併せてご覧ください。

製作とご使用に関するご注意

本器は、IC-705と定電圧電源の間に挿入し、定電圧電源の出力電圧が13.8Vの15%アップ以上となったとき、電源とIC-705との電源回路を遮断することを想定して製作しています。製作後、負荷の抵抗値を調整して10A程度まで流す実験は行い、正常に動作することを確認しています。それ以上の定格でご使用になる場合は、読者の方々の責任範疇で製作、使用していただくようにお願いします。

CL

お詫びと訂正

6月15日公開号のShort Breakに掲載しました過電圧防止回路装置の回路図に誤りがありましたので修正いたしました。読者の皆様にはご迷惑をおかけしましたことをお詫びいたします。

内容については下記のとおりです。


図9 正誤回路図(左: 正図、右: 誤図)

【説明】
修正しました箇所はQ2のベースの部分です。過電圧防止装置が動作しますとD3の赤色LEDが点灯する回路となっていますが、旧配線図のQ2のベース部分に作図ミスがあり点灯しません。正しい回路図に差し替えしました。

Short Break バックナンバー

2021年7月号トップへ戻る

次号は 8月16日(月) に公開予定

サイトのご利用について

©2021 月刊FBニュース編集部 All Rights Reserved. 発行元: 月刊FBニュース編集部