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日本全国・移動運用記

第19回 福岡県移動

JO2ASQ 清水祐樹

福岡県は市郡区の数が多く、国内アワードを集めている局から移動運用のリクエストが多くありました。福岡市や北九州市の近郊では、移動運用の場所を確保することが困難な市町村も見受けられます。福岡県は広いので、短期間で移動運用できるエリアは限られています。特にリクエストが多かった地域に狙いを絞って、移動運用を行いました。

有明海を越える電波伝搬の面白さ

高速道路で福岡県に上陸し、時間の余裕があったので、九州自動車道を南下して福岡県の南端の大牟田市に行ってみました。数年前、西日本ハムフェアが熊本県の長洲町で行われていた時に移動運用して以来、久々の訪問です。海岸近くで、工業団地があるエリアに行くと海岸付近に駐車スペースがあり、海に面している場所でありながら、海面からかなりの高度がありました。

1月の穏やかな天気の夕方では、伝搬的にはローバンドの正規伝搬と、ハイバンドのスキャッターの両方の可能性があります。1.9~28MHzまで全バンドで運用しました。すると佐賀県の局がどのバンドも強力に入感してきました。直線距離では50kmほど、そのうち自局に近い部分は有明海の海上伝搬です。海の上では障害物が無いため、HFの電波もよく届きます。

以前、長崎県の島原半島で運用した時に海上伝搬で佐賀県、福岡県、熊本県の局がどこも強かったことや、長崎県の壱岐市で運用した時に430MHzで熊本県が聞こえて驚いたことなどを思い出しました。自局の回りに海が広がっていて、海抜高度が高い場所では、意外な所まで強力に電波が届くことが分かりました。

堤防上で、別の市に短時間で移動

JCCなどのアワードを狙った移動運用では、市町村の境界付近で移動しながら、短時間に複数のQTHでの運用を狙うことがあります。うきは市と朝倉市の境界線の一部は、筑後川の周辺に複雑に入り組んでいて、堤防上のロケが良い所で数m動くだけで、うきは市と朝倉市を行き来できる場所があります。そこでタイヤベースを使わない釣竿アンテナを使って、短時間のうちに2つの市からの運用を行いました(写真1)。


写真1 うきは市と朝倉市の境界付近で運用中の様子

境界線が複雑なため、カントリーサイン(市町村の境界を示す標識)が見当たりません。カーナビでできるだけ正確に自分の居場所を定めてQTHを判定しました。1.9MHzや3.5MHzで、うきは市で運用していたのに10数分後には朝倉市、そんな運用を楽しむことができました。

一郡一町は珍しい?

福岡県は市だけでなく郡の数も多く、12の郡があります。その中には遠賀郡、糟屋郡、田川郡のようにいくつかの町村から構成されている郡と、一つの郡に一つの町だけがある、いわゆる一郡一町があります。単純に町の数だけで比較すれば、一郡一町は交信が難しい可能性が高くなります。また、一郡一町の町は人口密度が高く、移動運用が難しい場合もあります。

福岡県には嘉穂郡桂川町、筑紫郡那珂川町、三井郡大刀洗町、三潴郡大木町、八女郡立花町と一郡一町が5か所もあります。これらは距離的にはあまり離れていないので、1日で全部移動運用することも不可能ではありませんが、今回は三井郡大刀洗町だけは時間の都合で割愛し、それ以外の一郡一町で運用しました。

この中では嘉穂郡桂川町が伝搬のコンディションにも恵まれ、7MHz CWでは1時間以上もパイルアップが続きました。スポーツ公園がいくつかあり、雨で利用者がいなかったので、その一角を拝借しました(写真2)。


写真2 嘉穂郡桂川町で運用中の様子

一郡一町に限らず、それ以外の市町村でもコンディションが良くなると多くの局から呼ばれました。1月の日中は7MHzだけオープンすることが多く、それ以外のバンドではほとんど需要を満たしていません。6月頃のEスポシーズンに運用すれば、各バンドで大パイルアップが期待できそうです。6月は祝日が無く、福岡県に行く機会がなかなか確保できないのが残念です。

市制施行を待つ筑紫郡那珂川町

今回の移動運用の最大の目的は、筑紫郡那珂川町での移動運用の場所を調査することが目的です。那珂川町は2018年に市制施行を目指していると明言しており(写真3)、市制施行の際には多くの移動局が集結すると予想されます。しかし、那珂川町は福岡市と接する北部のわずかな平地に人口が集中しており、電波が飛びそうな広い場所を探すことが非常に困難です。それ以外の地域は、平地が山に囲まれている地形です。


写真3 那珂川町役場に掲げられている垂れ幕

特に、私の場合はV/UHFや衛星通信も行うため、周囲に障害物が無いことが極めて重要になります。町の南側の山間部でHFだけを運用するのであれば、特に難しくありません。

詳細は述べませんが、長いアンテナを展開できて、衛星通信も何とかなりそうな場所を2時間近くかけて探しました。また、筑紫郡で1.9MHz WAGA(全郡交信)完成という方もおられました。今後どのような移動運用が行われるかに注目しています。

今回は紙面の都合で取り上げませんが、西日本ハムフェア関連の移動運用、福岡市や北九州市の都心部でのローバンド運用など、福岡県での移動運用の思い出は数多くあります。都市部と山間部が共存しており、移動運用で様々な楽しみ方ができる魅力的な県といえます。

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次号は 12月 1日(木) に公開予定

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