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テクニカルコーナー

My Project/第7回 【眠っているパーツに活躍の機会を】フリーマーケット出展のススメ

JP3DOI 正木潤一


2015年 関ハムフリーマーケット

電気街やアマチュア無線のイベントを巡ってジャンクやパーツを物色するのは楽しいものです。「いつか何かに使えるかも」と思って、ついつい沢山買い込んでしまいます。でも、ほとんどの物は、結局使う機会が訪れず、押入れに眠ったままになっています。いつ来るか分からない「使う機会」をひたすら待つより、“今”必要としている人の手に渡すことが、我々アマチュアの『自作文化』の活性化に繋がると思います。今回は、アマチュア無線イベントのフリーマーケット出展の準備から運営方法を当局の経験を基に紹介いたします。

1. 出品物を選ぶ

フリーマーケットの一番の楽しさは、気持ちの良い取引をすることだと思います。安くサービスしたりおまけを付けたりすると喜んでもらえますし、売る側も気持ちが良いものです。実際、購入額よりも沢山買って(引き取って)くれるお客さんをありがたく感じます。当局の場合は基本的に、フリーマーケットは利益の追求ではなく、不用品の処分と考えます。利益を増やそうとすると売れ残ります。気持ち良く売り切るつもりで、リーズナブルな価格に設定します。

いくらで売る?
”利益を出したい品”の価格に説得力を出すためには、他の商品を安く設定します。安くてもよいので売り切りたい物と高く売って利益を出したい物との価格にメリハリを付けると、価格が説得力を持つように思います。また、部品が入っていた箱を提示したりデータシートを添付したりすると、売り物の信頼性が上がります。

電気・無線カテゴリに絞る
日用品や玩具などの出品はやめたほうがよいと思います。書籍類についても、電気や無線系に限定したほうがよさそうです。来場者は基本的に電気・無線関連品が目当てですから、要らないからと日用品を出品しても売れ残る可能性が極めて高いです。来場者はフリーマーケットエリアを何回も見て周ります。カテゴリを限定したほうがブースの印象が残りやすく、販売チャンスも増えるようです。また、専門性を出すことで出品物とその価格が説得力を持ちます。
※リチウムイオン電池など、特に扱いかたによっては事故に繋がりかねない物の出品は止めておいたほうがよいでしょう。

<参考:売りかたの例>
需要が無さそうだったり状態に自信が無かったりする物は、「オマケ」を付けて売り物の価値を上げます。AVラインスイッチにRCAケーブル、プラスチックケースに電池ボックス、マイコンにセラロックといったふうにおまけを付けて売り切ったことがあります。一見、用途が無さそうな物でも「別の使い道」を提案すれば買ってもらえることもあります。容量の分からないチップコンデンサを”ハンダ付け練習用”として売ったことがあります。また、「何に使えるか?」を考えながらジャンク品を漁るのも、フリーマーケットの醍醐味です。壊れた機器でも”部品取り用”として売れます。

2. 売り物の準備

キレイにする
出品物を決めたら、できるだけ状態を整えます。最初に与える印象は、見た目(つまり状態)により決定付けられます。ケースやケーブルなどの樹脂の黄ばみは、食器用洗剤や重曹を溶かした水で拭けばある程度キレイになります。また、電子機器は箱や取説が付属していると大きな利点になります。箱や取説は「商品の完全性」を示す大きな役割を果たします。


10年以上使ったACケーブルも重曹でこんなにキレイに!
(売りに出すのが惜しくなります)

包装する
やはり、むき出しよりも袋に入れたほうが見栄えが良いです。使用済み品でも包装すると売れやすくなります。100円ショップで売っているプラスチックの小袋に入れるだけで見た目上の品物の価値が上がります。リード部品などの小さい電子部品は、付箋に貼り付けてから小袋に入れると簡単かつ確実に包装できます。なお、動作や特性の確認(※)を希望するお客さんもいるので、テープなどを使わない包装形態にしておいたほうがよいです。
※売り物の特性や動作を確認できる器具(マルチテスターやUSB電源など)を用意しておいたほうがよいです。


付箋の粘着面で部品が袋に固定される

値札づくり
値札には、「どんな」「何が」「いくら」という情報を大きくハッキリと書いておきます。品物の状態や入手元などはよく聞かれるので、予め書いておくことで運営がスムーズになります。活字で統一性のある値札を使うと、人の目を引きやすく、誠実な印象を与えることができます。値札には折り曲げて自立させられるハガキがお勧めです。百円ショップで50枚入りが手に入ります。


値札の例
(書体”メイリオ”は爽やかでハッキリしているのでお勧め)

値札には商品の情報として、アピールできる特徴を箇条書きにします。特に上級者は電気的特性などの詳細を聞いて来ることがあります。例えば、可変抵抗器は抵抗値に加えてカーブ特性を書いておきます。その品物に対して興味があって購入を考えている人は、さらに情報を得るために聞いてきますので、口頭で対応します。売り物に関する情報をできるだけ多く持っておきます。また、電気的特性(データシート)や回路例などの技術情報や、「こんなことに使っていた/使える」という紹介や提案など、品物に関する詳しい情報を付加することで商品の価値を上げることができます。


諸元不明のアンテナに測定したデータを添えて販売

3. ブースの運営

会場が屋外の場合、日差しや雨を避けるためにタープやレジャーテントを張ります。当局の場合は、車のリア・ハッチと伸縮ポールを使ってレジャーシートを張りました。また、お客さんが誤って売り物を落すことがあるので、雨で地面が悪くなることも考えてグランドシート(ブルーシートなど)を敷いておいたほうがよいと思います。アウトドア用のベッドやベンチを陳列台にして品物を並べます。目当ての物を探すのに出来るだけ時間が掛からないように、品物をボックス(ホームコンテナや段ボール箱)に入れて分類し、何を売っているかがすぐに分かるようにしておきます。品物をキチンと分類・整頓して、値札に価格や情報をハッキリ書いておくとブースのイメージも良くなり、価格が説得力を持ちます。


当局のブース
(2015年 関西ハムフェスティバルにて)


段ボールの仕切りを付けて分類


小さな部品は仕切り付きのパーツケースで分類

<参考:失敗談>
昔の『月刊ラジオライフ』誌を20冊ほど出品したことがあります。立ち読みの人だかりでブースが混み合うことを想定して、人通りが減ってきた頃を見計らって陳列しました。ところが、それが裏目に出てしまい最後まで1冊も売れませんでした。品物を並べるタイミングには気を付けたほうがよさそうです。

お客さんとのやり取り
つり銭はとにかく沢山用意しておきます。スーパーのビニール袋も多めに用意しておきます。お客さんに「袋は要りますか?」と聞くと半分の人は「欲しい」と答えていましたが、袋の状態は特に気にされないようです。お客さんにとって値切り交渉もフリーマーケットの醍醐味です。割引したりおまけを付けたりすると喜ばれます。「ありがとう」と言ってもらえると、金額に関係なく気持ちの良い取引になります。

<参考:レジ・アプリケーション>
つり銭間違いの防止と売り上げ把握のためのアプリケーションを作って使いました。PC画面上で品名をクリックすると合計金額とお釣りが表示されます。さらに、「いつ」「何が」「いくつ売れた」というデータをテキストファイルで残せるようになっています。こちらからZipファイル形式でダウンロードできます。使い方については、解凍したフォルダに入っているReadme.txtを参照してください。


使用画面

売れ残った品物は・・・?
閉会時間が近づいたら値下げを実施しますが、値下げしたことに気付いてもらうことが重要です。目立つように大きく価格を書き換えます。物によっては、いっそのこと「ご自由にお持ち帰りください」としてもよいかもしれません。最後まで売れ残った品物は持ち帰って次回また出品することになりますが、帰りにリサイクルショップに寄って買い取ってもらうのも1つの手です。実際、大阪府池田市にて開かれる関西ハムフェスティバルの会場近くのリサイクルショップには、モービルホイップや同軸ケーブルなどが沢山売られています。ただし、ハムイベントでの出品物は一般的なアイテムではないので、あまり高い値は付かないようです。もちろん、イベント会場に放棄することは禁じられています。

最後に
ハムイベントを継続させるためには、アマチュア無線家の積極的な参加が欠かせません。多くの方はイベントを見に行く・買いに行くという形で参加しますが、思い切って運営側に参加してみてはいかがでしょう?普通に参加するよりも共通の趣味の方とのコミュニケーションが楽しめます。フリーマーケットで売りに出す物は、自分が一度は価値を見出して買った物ですから、買い取ってもらえた時に「自分とそれを求めるお客さんの価値観や関心が重なった」という、お客さんと心が通じた感じというか、親しみを覚えます。出品する目的を「今必要としている人に渡す」と考えると、お客さんとのやり取りに活気が出ます。そして、あなたのお客さんは「いつか何かに使えるかも」と思って買っていくことでしょう。

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