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Topics from Around the World

SWR-そして人生の意味

筆者: Jim Tregellas (VK5JST) 抄訳: 月刊FB NEWS編集部


私たちハムはSWRとは何かと問われても答えることができます。それは、無線友達や信頼できる情報源から多くのデータを集め、また学んできたからです。

これまで学んだSWRとは何かという情報は、例えばアンテナのSWRが1.05以下でなければ電波は飛ばない、ファイナルが壊れる、マイクやトランシーバーの金属部分でRFによるやけどをする、あるいはシャック内の過剰なRFのために無菌状態になるかもしれないというようなことです。アマチュア無線の世界では、アンテナのSWRほどナンセンスな話はないと私は思っています。そこで、いくつかの事実を見ながら真実を立証してみることにします。

信号の強さ

1930年代当時、受信機の入力インピーダンス、AGC特性、ノイズ性能、あるいは総合利得を検討しながら受信機の入力端子に50µV rmsの信号が入力された時を受信機のSメータの指示値をS9とすることに決められました。1980年代の初めには、IARUが標準化を試みました。受信機のSメータ指示で、ある指示値を示すときの入力信号レベルが定義されました。この標準化において受信機入力インピーダンスを50Ωとしています。そのときに定義された電圧レベルを図1に示しました。

Sメータの目盛が1目盛り増減すると、受信機の入力端子で検出される電圧は2倍または半分になる、あるいは6dB変化することに着目してください。この対数スケールは、いくつかの興味深い結果を示します。例えば、遠方から100Wで送信し、その電波が受信機のSメータ目盛りでS7を発生させたとします。その受信信号をS8とするには、受信機入力端子の電圧を2倍にする必要があり、そのためには送信機の電力を4倍の400Wにしなければならないことを示しています。さらにS9の信号レベルとするには、なんと1600Wもの送信電力が必要になることも分かります。

この4倍の送信電力は、受信機のAGC動作により、受信音声レベルにわずかですが変化をもたらします。また、受信機が非常に進化した今日でも、AGCの動作が正確に対数的であることはほとんどなく、Sメータの振れ具合を各社が受信機の性能の宣伝にうまく説明している場合もあるのでそこは注意が必要です。


図1. 信号強度と関連する受信機入力電圧

SWR値における電力損失

次にSWR値がどのような電力損失を意味するかについて説明します。図2を見てください。SWRが3.0の場合、アンテナシステムの電力損失は25%です。Sメータの目盛が1つ上がるのに必要な電力レベルが4倍の増加であることを考えると、これは小さな変化であり、受信する音声レベルには本質的に変化がないことになります。SWRが1.5以下(4%ロス)の場合はSメータの針が動くことさえなく、受信音のレベル変化も全く感知できないことは確かです。では、なぜSWRの値でみなさん大騒ぎするのでしょうか。


図2. 様々なレベルのSWRで失われた電力

アンテナシステムにおける定在波

定在波は、アンテナシステムのインピーダンスが送信機の出力インピーダンスと一致しないためにアンテナシステムで発生します。送信機の出力がきれいな正弦波のサイクルを繰り返すと、それぞれのサイクルが光速または光速の何分の一かの速さで伝送路をアンテナに向かって進み、送信機から遠ざかっていきます。RG58に使われている誘電体のポリエチレン充実絶縁では、電波はその同軸ケーブルの中を光速の約66%で移動します。発泡スチロールの誘電体を使用したケーブルでは、損失が少なく電波はさらに速く伝わります(通常は光速の0.8~0.9)。光速に対する伝搬速度を速度係数と呼びます。

送信機から発射された電波がアンテナシステムの終端に到達したとき、そのエネルギーは終端インピーダンス50Ωのアンテナによって完全に吸収され自由空間に放射されるか、あるいはいくらかのエネルギーがアンテナで反射し、送信機に向かって戻ってくる可能性もあります。先のケースでは反射エネルギーがないため定在波は発生せず、伝送線路に沿ったRF電圧は線路上のどの点でも全く同じになります。これは図3のグラフの黄色いラインで示されています。

あとのケースでは、終端インピーダンスが50Ωにどれだけ近いかによって、反射エネルギーの量が決まります。アンテナシステムのインピーダンスを50ΩとしていてもSWR=1.5の場合、実際の終端インピーダンスは、50Ωではなく75Ωか33.33Ωのどちらかになります。どちらのインピーダンスでもこのSWR値を発生させます。このように、2つの異なる負荷が同じSWR値となる考え方は、伝送路の終端がショートまたはオープンの負荷を持つシステムに当てはまります。これらの負荷ではエネルギーが吸収されないので、黒色のラインで示されたようにSWRは無限大となります。


図3. 異なるSWRの伝送線路に沿った電圧の最大値と最小値

図3では、負荷が完全な50ΩでSWR=1.0からどちらかの方向に離れると、アンテナ方向に向かう電波とアンテナから送信機に戻ってくる電波が相互作用し、伝送路に沿った電圧の最大値と最小値が増加することになります。これがSWRの数値で懸念される原因です。このような伝送線路に沿ったRF電流がどのように作用されるかについても考えておく必要があります。電流の定在波は電圧のそれとは逆の形をしています。電力が伝送されるとき、電圧が最大であれば電流は最小になります。逆もまた然りです。

最後に、伝送路の長さが使用する周波数に対してぴったり合っていることはまずありません。送信機の出力が電圧や電流が最大となる伝送路に接続され、その伝送路が送信機の出力とぴったり重なり、送信機の出力デバイスに大きなストレスを与えている可能性は十分にあります。

図3は、設計者がRF出力段を設計する際に、どのような妥協をしなければならないかを明確に示しています。例えば、競合他社に対抗するためにデバイスの持つ最大限の出力が必要だと訴えるセールスエンジニアがいる一方で、高価なRF出力デバイスのコストについて疑問を投げかける経理担当者がいるような感じです。このような状況の中、送信機のRF出力デバイスは、一般にスペックの最大値近くまで使われ、安全マージンはほとんど残されていません。そのため、多くの場合SWR=1.5(25%過電圧)まではフルパワーであったとしても、それ以上はALCで出力を素早く抑え、出力デバイスを過負荷から保護するような設計とされています。もし、接続しているアンテナがSWR=3.0の場合、100Wの送信機が実際に20Wを出力していれば、よしとすべきと思います。

もちろん、SWRに関する神話の多くは、出力段が全く保護されていなかった初期のCB機に由来するものですが、送信機の出力段がオープンまたはショートした伝送路に短時間でも送信電波を供給すると200%の過電圧、あるいは出力デバイスが直ちに破壊されるほどの電流が発生することになります。

真空管出力段は、これらの要因で損傷する可能性が非常に低いことも指摘すべきと思います。第一に、これらの出力段には必ずといってよいほど「Tune」と「Load」の調整ツマミが送信機のフロントパネルに取付けられており、50Ω以外のインピーダンスが送信機に接続されている場合でも、これらの調整ツマミで完全にマッチングさせることができます。第二に、真空管はオーバーロードに対応するためのマージンがはるかに大きいのです。ほとんどの真空管はヘビーデュ―ティでSWR=3.0以上でも対処します。

余談ですが、7MHz以上の周波数帯で放送している多くの国際短波放送局は、実はアマチュア無線の運用では考えられないようなSWR値が9.0までのアンテナシステムを使用しています。国際短波放送局は時間帯によって異なる周波数で送信されることから複数の周波数を持っています。したがって非常に帯域の広いアンテナシステムを持つより、非常に耐性の高い送信機出力段を設計する方がトータル的には安上がりだからです。

私が言いたいことは、SWRが1.5以下であればアンテナとしては完璧であるということで、SWRが及ぼすいろいろな影響から逃れることができるということです。SWR値だけを問うのであれば、例えば144MHzのトランシーバーに100mもの長さのRG58を接続し、遠端をオープンにすれば、144MHzバンドで非常に低いSWRを簡単に作ることができます。そのトランシーバーから送信した電波は同軸ケーブルで熱に変わるため、トランシーバーへの反射電力はなく、SWRは1.1未満となります。

<引用>
この記事は、オーストラリアWIA(The Wireless Institute of Australia)の機関誌Amateur RadioのVolume 89 No.2に掲載された記事です。本記事の翻訳と掲載は筆者(Jim Tregellas/VK5JST)とWIAの許可を得ています。翻訳は月刊FB NEWS編集部が抄訳したものです。この場を借りて筆者とWIAに厚くお礼申し上げます。
Amateur Radio: https://www.wia.org.au/members/armag/about/

<Quote>
This article was originally published in the No. 2, Volume 89, 2021 issue of Amateur Radio magazine, the official journal of the Wireless Institute of Australia (WIA). The translation and publication of this article has been carried out with the permission of the writer and the WIA. The translation was abridged by the monthly FB NEWS editorial team. We would like to express our sincere gratitude Jim Tregellas and the WIA.
Amateur Radio: https://www.wia.org.au/members/armag/about/

Jim Tregellas VK5JST Copyright July 2019

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