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ジャンク堂

第19回 電波防護指針に基づく電界強度を計算してみる

JH3NRV 松尾信一


新しいRig(IC-7610)を購入しようとしたところ、タイミング的に50Wタイプは納期が掛かるとの販売店様の説明でした。 私は永年、移動局の局免許だけで運用してきましたが、それなら100W機を購入して固定局も開設するか、と思い固定局の免許申請を行いました。その時に電波防護指針のことを思い出したので、今回は電波防護指針について書いてみたいと思います。

なお、私の固定局開設は落成検査を受けるようなハイパワーではありませんので、実際に電波防護指針への対応の確認書類を提出したわけではありません。既に電波防護指針への対応を行われたOM諸氏からみると当たり前の内容かと思いますが、今まで電波防護とは縁が無かった人に向けての内容になります。

法律の解釈などで、私自身もいまひとつ良く分からないことがあり、内容について多少不正確な部分があるかも知れませんがご容赦願います。

さて、この電波防護指針への対応は1999年10月から施行されているので、もうずいぶんと経ちます。アマチュア局の場合、200Wを超える局を開設する場合に落成検査などの一環として電波防護指針に対応している旨を確認するための書類を提出するようですが、200W以下の場合は特にそのような書類などの提出は求められていないので、意識されている局は少ないかも知れません。また、移動局は電波防護指針適用の対象外となるためにアマチュア局の多くは対象外になると思います。

電波防護指針とは

電波が人体に影響を及ぼすかどうかについては現状でも明確になっていないようです。そのため“念のため”的と思われますが、人体が強い電波(強電界)にさらされないように、無線局の安全施策の一部として法律が定められました。

その内容は、「無線局から発射される電波の強度が、一般の人が容易に立ち入ることができる場所において基準値を超えるかどうかを確認し、基準値を超えている場合は、一般の人が立ち入ることができないように施設をする」ということです。これは移動する局とパワーが20mW以下の局を除いて対象となっています。

電波防護指針には人体に影響を及ぼさないとされる電波の強さをはじめ、色々な指針が示されています。

この防護指針はアマチュア局(固定局)の場合、通常であれば自宅にアンテナを建てているので近隣の家屋などにおける電波の強さ(電界強度)を、定められた基準以下にせよと法律は言っているのだと思います。

そのために、バンド毎に送信パワーとアンテナのゲインや高さ、近隣家屋までの距離をもとに電界強度を算出し、指針で示された基準値以下であることを確認する必要があります。

電波防護指針への対応については総務省やJARLから資料が出ており、それらを参考にすると電界強度の算出と基準値との対比ができるようになっています。アマチュア局の場合、書類上で電界強度が十分に基準以下であれば落成検査や変更検査の際、専用の測定機器を持たない登録点検事業者による点検の場合は実際に電界強度を測定されることはなさそうです。

参考となる資料には以下のようなものがあります。
[総務省の資料]
・「電波防護のための基準への適合確認の手引き」
https://www.tele.soumu.go.jp/j/sys/ele/medical/system/
・「電界強度計算表」
https://www.soumu.go.jp/soutsu/kanto/ru/ama/faq/ama_11.html

[JARLの資料]
・「自局の電波環境の確認手順」
・「点検表」(共通ページ/半波長ダイポールアンテナ/短縮型垂直アンテナ/八木アンテナの4種類のpdfファイル)
https://www.jarl.org/Japanese/2_Joho/2-2_Regulation/kankyo/ur001b.htm

他にもkWの免許申請を行われたOM諸氏の情報などもWEBサイトで散見されるので参考になると思います。

電界強度

電波防護指針への適合を確認するには電界強度を算出する必要があります。電界強度を箇条書きにすると以下の通りです。
・電界強度はある地点における電波の強さを表す。
・電界強度の単位は“V/m”で表される。
・電界強度は輻射地点からの距離に反比例する。(距離が倍になると電界強度は半分になる)
・電界強度は空中線電力の平方根(√)に比例する。(パワーが倍になると電界強度は1.4倍になる)
・電界強度はアンテナのゲインの平方根(√)に比例する。(アンテナゲインが3dB UPすると電界強度は1.4倍になる)

以上から、電界強度は空中線電力、アンテナのゲインとアンテナからの距離が分かれば算出できます。

なお、空間における電波の強さを表す指針として、電界強度以外に磁界強度(単位: A/m)と電力束密度(単位: W/m2)もあります。電波防護指針においても周波数帯によっては電界強度以外にそれら2つでも規定されています。これらは相互に関係していますが、それについては本稿の最後に簡単に記載しました。

注) 電波防護指針で使われる電力束密度の単位はW/m2ではなく、mW/cm2となっています。両者は単位面積で10,000倍(m2とcm2)、電力は1,000倍(WとmW)の違いになります。つまり、数値上は1W/m2は0.1mW/cm2になります。

電波防護指針に適合しているか確認する手順

JARLの資料に電波環境(電波防護指針)の確認手順を書いたフローチャートがあります。
https://www.jarl.org/Japanese/2_Joho/2-2_Regulation/kankyo/nagare.pdf
これをみると、以下の流れになっています。

1. 固定局か移動局か? (移動局であれば電波防護指針への対応は不要となる)
2. 運用周波数帯の確認 (周波数によって基準値が変化する)
3. 無線局の電力とアンテナ/ケーブルロスを確認 (送信パワーとアンテナゲインや同軸ケーブルロスは電界強度を左右する)
4. 周辺住民までの距離から電界強度を算出 (電界強度は距離によって変化)
5. 算出した電界強度を基準値と比較 (基準値以下であればOK)
6. 基準値を超えていたらアンテナの移設を検討
7. あるいは電力を低減することを検討

早い話、電界強度が基準値を超えていた場合はアンテナを動かす(距離を取る)か、パワーを下げるようにしなさいとなっています。

また、JARLの資料にはアンテナの型式がダイポール/垂直アンテナ(GPを想定)/八木アンテナの3種類のアンテナの「点検表」があり、計算式を簡素化しているようですが、基本的にはどのようなアンテナでも同じ流れです。

総務省の電界強度計算表

JARLの「点検表」は関数電卓で計算するようになっていますが、総務省のWEBページに「電界強度計算表」というアマチュアに向けたエクセルシートがあり、それを使うとほぼ自動的に計算してくれます。JARLの資料に一通り目を通しておいて、実際の計算はこのエクセルシートを使う方が楽だと思います。

なお、「電界強度計算表」ではアンテナのゲインにはdBiを使うことになっていますが、JARLの点検表での計算では等方アンテナのゲインを“1”とした比で計算します。例えば、ダイポールアンテナのゲインは2.15dBiですが、比に換算すると1.64(倍)となります。JARLの「点検表」のなかの“beam.pdf”などにdBiと比(倍率)の換算表がありますが以下の計算式で求まります。

Gは比(倍率)で表されるアンテナのゲインです。2つの資料をもとに検討する場合には混乱しないように注意が必要です。

電界強度に関して要求されている内容が良く分からない人は電卓などでの計算が少々面倒ですがJARLの「点検表」をもとに進めた方がステップを踏んで良いかも知れません。

電波防護指針のガイダンスを確認する。

総務省のWEBサイトにある「電波防護のための基準への適合確認の手引き」(以下、手引き書)という資料はアマチュア局以外も対象にした内容ですが電波防護の基準への対応について、もっとも基本的なことが網羅されているので目を通しておく必要があります。

まず、電界強度の基準値を確認します。(手引き書から引用)


この表をみると、周波数によって基準値が変化することがわかります。この表では電磁界強度となっており、電界強度のほかに磁界強度と電力束密度の基準もあります。なお、総務省の「電界強度計算表」では電界強度で計算/判定していますので、ここでは電界強度に着目します。

「電界強度計算表」には予め1.8MHz~145MHzまでの欄があり、各々の周波数における基準値も最初から入力されています。この表にない周波数(435MHzなど)は上の表にしたがって基準値を計算する必要があります。アマチュア無線の場合、周波数に幅(バンド)があるので、もっとも厳しい値(各バンドの上端周波数)で計算した値が適用されます。

なお、注釈に6分間の平均値となっていますが、「電界強度計算表」では使われていないようです。代わりにエクセルシートには平均電力率という項目があり、SSBは0.16、CWは0.5、それ以外(FMやAM,FT8など)は1を入れることになっています。

また、一度に複数の電波を出す場合や、複数の無線局が近接して同時に電波を出す場合の注釈も書かれており、クラブ局などで一つの局が同時に複数の電波を出す場合は注意が必要です。個人局の場合は、通常同時に複数の電波を出すことはないので、あまり気にする必要はないと思います。

総務省の電界強度計算表に入力してみる

下の図は「電界強度計算表」の左端の1.8MHzと3.5MHzの部分をコピーしたものです。表の緑色のセルを埋めていきます。白色のセルとオレンジのセルはエクセルが自動計算します。このエクセルシートは大地反射率などの周波数によっては異なるパラメータも埋め込まれているようなので、上端の周波数帯は変更しない方が良いでしょう。


それでは、各項目についてみていきます。
・周波数帯: 電界強度を算出したい周波数帯のセルの下を埋めていきます。

・定格電力: これは送信機(リニアアンプ)の定格出力を入れます。

・給電線損失: 同軸ケーブルの損失です。使用している同軸ケーブルの定格を調べて、周波数と長さを加味して算出します。先の定格電力からこの給電線損失を差し引いた電力が空中線電力になります。例えば5D-2Vの場合、フジクラのカタログでは10MHzで26dB/km、30MHzで45dB/kmとなっており、同軸長が20mでは、10MHzで0.52dB、30MHzで0.9dBになります。ただ、あまり細かく算出する必要はないと思います。0dBと記載しても文句は言われないと思います。

・空中線利得: アンテナのゲインのことですが、メーカー製のアンテナの場合はアンテナメーカーのカタログなどを参考に入力します。なお、空中線利得はdBi表記の値を入力します。自作のアンテナの場合はダイポールであれば2.15dBiなど、アンテナ型式による一般値を入れます。あるいは、アンテナシミュレーターなどで算出した値を入れても良いと思います。

・平均電力: SSBは0.16、CWは0.5、それ以外は1を入力します。FT8で運用する場合は1を入れる必要があります。最近はSSBやCWのみで免許申請する方はまれだと思うので普通は1を入れます。

・俯角減衰量: ビームアンテナや垂直ダイポールなど、垂直面の指向性を持つアンテナの場合、下方向の電界強度が下がるのでそれを加味して計算することができます。ただ、この数値を得るのは難しいかも知れません。これについてはのちほど触れます。

・空中線高: アンテナ高はアンテナエレメントのもっとも低い部分の高さから、更に2m引いた値を入れます。

・空中線地上距離: これは電界強度を確認する場所(隣接家屋など)から、もっとも近いアンテナエレメントまでの水平距離を入れます。

・空中線距離: これは空中線高と空中線地上距離からエクセルが自動計算してくれます。

・空中線の型式: 免許申請時に記載するアンテナ型式を書きます。この欄は計算に直接影響を与えませんが、適切な数値が入力されているかを判断するための項目と思います。

・俯角: アンテナから電界強度を確認する場所を見下ろした角度をいいます。空中線高と空中線地上距離から自動で計算されます。なお、俯角減衰量を記載するときはこの角度の減衰量を記載します。

・最小安全距離: 今まで入力した数値から、最低何m離れていないと電界強度が基準値以下にならないか、自動で計算されます。

・強い反射物の有無: 手引き書では算出地点付近にビル、鉄塔、金属物体などの建造物が存在し強い反射を生じさせるおそれがある場合に電界強度の値を倍(デシベルの場合6dB)にせよとなっています。この表では強い反射物がある場合は1を、そうでなければ0を入れるようになっています。1を入れると電界強度の値が倍になります。

・算出電界強度: 今まで入力した値からエクセルが電界強度を自動計算します。

・基準値: 一番上の周波数帯に応じた基準値が予め記載されています。

・判定: 〇か✕が自動的に現れます。〇であれば適合しており、✕であれば不適合の意味です。

表の下に注が書かれていますので、それも目を通して入力します。

免許を申請する周波数全てにおいて表を埋めて、判定が〇であれば良いのですが✕の周波数帯があれば、アンテナの設置場所や型式(ゲイン)、あるいはパワーの低減を考えましょう、ということになります。

アンテナからの距離の定義

電界強度計算表では、空中線高と空中線地上距離を入力すると、空中線直線距離が計算されます。これを図で表すと下のようになります。図の空中線直線距離が電界強度を計算するときに用いる距離になります。なお、アンテナがローテーターで回転する場合は、もっとも条件が悪い(大抵はビームが最大)方向で計算します。


ここでの境界線は以下のように“人が通常出入りする場所”との境目を意味します。

手引き書では“人が通常出入りする場所で無線局から発射される電波の強度が基準値を超える場所がある場合には、柵などを施設し、一般の人々が容易に出入りできないようにすることを無線局の開設者に義務づける”となっています。

上図では柵で区切られた境界上2mの高さでの電界強度を計算するように描いています。本来は地面から2mの高さまで20cm(300MHz以上は10cm)間隔の電界強度を求め、最大値を用いることになっています。しかし、空中線高が2m以上であれば、理屈では高さ2mの位置がもっとも空中線に近いために、2mの高さの電界強度で計算します。このことからアンテナ高は地面からの高さから2m引いた値を用います。

また、距離を計算するアンテナの位置は給電点ではなく、もっとも測定(計算)する所に近いエレメントからの距離になります。(大抵はアンテナエレメントの一番外側)

〇ちょっとした注意点
JARLの資料では“周辺住民までの距離”と書かれており、公道などは含まなくても良いとも受け取れる表現になっています。しかし手引き書では”一般の人々が容易に出入りできる場所”となっていますので公道は含まれることになります。山間部などは別にして、住宅街などでは自宅敷地から一歩出た所は全て電界強度確認の対象になると考えた方が良さそうです。

実際のところ、どれくらいアンテナ距離があれば良いか

「電界強度計算表」には“最小安全距離[m]”という項目があり、エクセルシートが自動的に計算してくれます。これは空中線電力などを入力すると、最低何m以上の距離が必要かを表しています。

また、JARLのダイポールアンテナの「点検表」(dp.pdf)にはダイポールアンテナの場合の最小安全距離が記載されています。下の表はそれを引用したものですが、おおむね周波数とパワー、距離のイメージがつかめると思います。


基本的に周波数が高くなるにつれて最低距離が長く(厳しく)なります。

ちなみに、表にはありませんが145MHzは50MHzよりも最小安全距離が短くなります。それは次に述べる反射係数によるものです。

反射係数について

じつは、「電界強度計算表」で算出された電界強度は、普通に電界強度を計算した場合と違いがあります。「電界強度計算表」で計算すると電界強度の値は通常の電界強度の計算値に対して、76MHz未満で2倍、76MHz以上では1.6倍大きい値になります。

注) 通常の電界強度の計算とは、自由空間上の反射の影響がない状況で計算する電界強度のことです。

これは大地の反射係数を加味しているためです。反射係数を76MHz未満では“4”、76MHz以上では“2.56”として計算することになっています。多くの場合、電界強度を算出する必要がある場所は大地に近いためで、直接波と大地の反射波とが干渉して増強された場合が想定されています。計算では反射係数の√倍、電界強度が大きくなります。

最小安全距離を計算すると50MHzの方が145MHzよりも厳しいのはこの反射係数が異なるためです。

また、「電界強度計算表」には“強い反射物の有無”という項目があります。大地以外にビルなどの強く電波を反射するものが近傍にある場合、更に電界強度が倍になると見込むようになっています。「電界強度計算表」では強い反射物の有無のセルに、反射物がある場合には“1”を、ない場合は“0”を入力するようになっていますが、“1”を入力した場合の電界強度は“0”を入力した場合の倍の値になります。

つまり、電波防護指針における電界強度の計算では周囲に反射物が全くない自由空間中での電界強度よりも条件によって2(1.6)倍から4(3.2)倍もの値になります。(カッコ内は76MHz以上の場合)

この強い反射物の有無の判断も分かり難いところです。

俯角減衰量

これは、場合によっては電界強度の値を小さくしてくれます。JARLの資料では下の図のように描かれています。


つまり、アンテナの垂直面の指向性(垂直偏波の意味ではない)によってはアンテナよりも低い場所では電界強度が低下することを加味して計算できるということです。

このような垂直面の指向性情報は特にHF帯などではアンテナメーカーでも測定が困難なためにカタログなどにも記載されていないようです。そのような場合は俯角減衰量がない(0dB)として計算せざるをえません。

なお、「電界強度計算表」での電界強度の計算では大地の反射係数が計算に組み込まれています。そのためアンテナの特性は実際に設置した状態のアンテナの値ではなく、理論値で良いことになります。したがって、メーカーによっては問い合わせるとシミュレーション値(理論値)を出してもらえる可能性があります。

また、ダイポールアンテナなどは理論上の特性が広く知られています。水平ダイポールの場合、垂直面のパターンは無指向性になり俯角減衰量は0dBですが、垂直ダイポールの場合の垂直面の指向性は8の字特性となり理論上の俯角減衰量が算出できます。

自分でアンテナシミュレーターなどを使って自由空間上の特性を描かせて俯角減衰量を求めても認めてもらえるかも知れません。

周波数が高くなるにつれて電界強度の基準値が下がり、ゲインのあるアンテナを使用する傾向にあるので電波防護指針の面では加速的に厳しくなります。しかし、俯角減衰量を計算に組み入れられれば適合しやすくなります。

V/U帯のビームアンテナの場合、垂直面の指向性も得やすいことから一部のアンテナではカタログに垂直面の指向性を記載されている場合もあるようです。

メーカーのカタログでは、特にHF帯のGPなどはゲインも記載されていなことも多いようです。ゲインや垂直面の指向性をシミュレーションの値でも良いので積極的に公開してくれると助かりますね。

さて、以上で一通り「電界強度計算表」の入力ができました。入力のさいにもっとも悩ましいのはアンテナの特性値ではないでしょうか。

電界強度と磁界強度、電力束密度の関係(空間のオームの法則)

電界強度はある地点の電波の強さを表すもので、アマチュア無線の試験にも出てくる言葉なので、ご存じかと思います。単位から分かるように、電界強度は空間の電圧を表しています。

電圧があるので電流もあります。これは磁界強度になります。また、電力もあり、これを電力束密度といいます。

この電圧/電流/電力を繋ぐのが空間のインピーダンス(特性インピーダンス)です。空間の特性インピーダンスは波動インピーダンスとも呼ばれ、具体的な値は120π(≑377)Ωになります。

電界強度(E) 単位 V/m
磁界強度(H) 単位 A/m
電力束密度(S) 単位 W/m2 (あるいはmW/cm2)

とすると、オームの法則と同じ式ができ上がります。なお、空間とは真空中のことですが、大気中もほぼ同じです。

通常のオームの法則と対比すると

V: 電圧(V)、I: 電流(A)、R: 抵抗(Ω)、E: 電界強度(V/m)、H: 磁界強度(A/m)
なお、377は空間の特性インピーダンス(120π)Ω

電力の計算と対比すると


P: 電力(W)、S: 電力束密度(W/m2)

一番下の式は電界強度と電力束密度の関係を表しています。

一般的に電力束密度の計算ではW/m2の単位が使われますが、電波防護指針ではmW/cm2が使われています。電力束密度Sの単位にmW/cm2を用いる場合、上記式の空間インピーダンス377Ωを10倍の3770Ωとして計算します。

また、電力束密度はアンテナのゲインと空中線電力、距離からも求められます。

S: 電力束密度(W/m2)、P: 空中線電力(W)、G: アンテナゲイン(比率)、D: 距離(m)

この式でも、SをmW/cm2の単位とする場合は分母にある“4”を“40”として計算します。

電波防護指針で用いられる反射係数は、電力束密度Sに掛けられます。したがって、反射係数を組み入れた電力束密度(S’)は反射係数をKとすると
S’=K・S となります。

以上の式から電力束密度が求まると、電界強度と磁界強度が空間の特性インピーダンスを介して求まります。

ただし、空間の特性インピーダンスが120πとなるのは波長(λ)がλ/(2π)より離れている必要があります。この距離より遠いと遠方界と呼び、電界と磁界が一体になって電波として存在します。したがって、上記の電力束密度と電界強度の式はλ/(2π)より遠いところの関係式になります。

距離がλ/(2π)より近い所を近傍界といい、近傍界では輻射源がダイポール系かループアンテナ系かで大きく異なるために、計算はややこしくなります。

最後に

私は回路屋なので電界とかアンテナ系、電波伝搬などは苦手なのですが、無線局を開設している者として電波防護指針への対応とはどのようなものかを再確認する意味で今回の記事を書きました。

また、これを機会に自局の状況を確認してみましたが、やはりアンテナの諸元については悩みました。10MHz以下の周波数はオートマチックアンテナチューナのAH-4を使ったワイヤーアンテナですが、アンテナゲインなどは当然不明なのでMMANAを使ってシミュレーションした値を使いました。AH-4のロスは無視して、単純なワイヤー部分のみをMMANAに入力して各周波数のゲインを求めました。幸いAH-4のグランド端子も1本のワイヤーを接続しているだけなのでワイヤー部分をMMANAに入力するのは簡単でした。

結果は、送信機の出力が100Wであれば現アンテナでOKでしたが、やはり24MHz以上のハイバンドで余裕がありません。200W機の導入は資金調達面以外にアンテナも工夫が必要なようです。なのでkWは更に夢のお話です(苦笑)。同時にアンテナは高ければ高いほど良いというのは飛びの面だけでなく、電波防護指針の面でも有利であることを実感しました。

それでは、暑い日々がまだ続きますので熱中症には気をつけてお過ごしください。

Best 73 & 88

参考資料
[総務省の資料]
・「電波防護のための基準への適合確認の手引き」
https://www.tele.soumu.go.jp/j/sys/ele/medical/system/
・「電界強度計算表」
https://www.soumu.go.jp/soutsu/kanto/ru/ama/faq/ama_11.html

[JARLの資料]
・フローチャート「電波環境の確認方法」
https://www.jarl.org/Japanese/2_Joho/2-2_Regulation/kankyo/nagare.pdf
・「点検表」(共通ページ/半波長ダイポールアンテナ/短縮型垂直アンテナ/八木アンテナの4種類のpdfファイル)
https://www.jarl.org/Japanese/2_Joho/2-2_Regulation/kankyo/ur001b.htm

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