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ジャンク堂

第14回 差動アンプ 他
オペアンプ入門(14)

JH3NRV 松尾信一


さて、オペアンプ入門は今回で区切りとなります。そこで、今まで説明が出来ていなかった所を少しフォローしたいと思います。なお、今回の参考回路ではオペアンプの電源を省略しています。オペアンプなので、基本的に±両電源という前提でお読み下さい。

差動アンプ

この連載の初回で差動アンプを“機会があれば紹介します”といったまま、今まで放置してしまいました。オペアンプはプラス入力端子とマイナス入力端子の電位差を増幅するものなので、本質的に差動アンプとなっています。ただ、多くの場合は片方の入力端子をグランドに接続して使用するために差動アンプとなっていないだけです。

まず、差動アンプの回路です。信号はプラス/マイナス入力端子間に入力します。


抵抗はRa=Rc、Rb=Rdの関係に設定します。その場合のゲインは反転増幅回路と同じになります。


差動アンプは下の図の赤線のようにプラスとマイナスの入力信号の差を増幅しますが、青線のように同相で同一電圧の場合は出力に信号が現れません。


この動作によってコモンモードノイズを排除することができます。

コモンモードノイズは通常、プラス/マイナス両入力端子に同相で入り込みます。従って、下の図のように赤色の目的信号は出力されますが青色のコモンモードのノイズは出力されません。


コモンモードノイズはACラインからの誘導など日常的に信号ラインに入り込み易く、センサーの出力などの微弱な信号を増幅する場合には差動アンプが有用です。

この様子をシミュレーションしてみました。


ゲインが約2.1倍の差動アンプに、±500mVp(1Vp-p)の信号(赤線 差動入力)と±100mVp(200mVp-p)のコモンモードノイズ(緑線)を入力した場合です。赤線の信号にはコモンモードノイズが混入していることが分かりますが、出力(青線)にはノイズの影響がほとんど見えません。

差動アンプのコモンモードノイズの排除能力はオペアンプの性能以上に、RaとRcおよびRbとRdの値が等しいことが重要です。

また、プラス、マイナスの両入力端子間に電位差がなければ出力が出てこないので、電流検出回路などにも良く使われます。


電流検出回路は図のように、電流検出用の抵抗を電源ラインに入れ、電流が流れることで生じる抵抗の両端の電位差を差動アンプで増幅します。この場合、電源電圧が変動しても出力にはその変動が現れません。この回路では電流が流れることで生じる電流検出抵抗の両端の電位差が差動アンプの入力電圧になります。通常、電流検出用の抵抗はRa~Rdの抵抗値に比べて十分に小さいので、差動アンプの入力電圧は先に示したようにRb/Ra倍されてOut端子から出力されます。

例えば電流検出抵抗を0.1Ωとすると、1Aの電流が流れると0.1Vの電位差が抵抗の両端に生じます。これを差動アンプで10倍にする場合、一例としてRa=Rc=4.7kΩ、Rb=Rd=47kΩとします。そうすると、電流検出抵抗の両端の電位差が0.1Vのときに、差動アンプの出力には1Vの電圧が出ます。

なお、電流検出ラインの電圧がオペアンプの入力電圧範囲を超える場合は下の図のようにRe1とRe2を追加します。


Re1とRe2を追加することでオペアンプの入力電圧を下げます。Re1とRe2は同じ抵抗値にします。勿論、Re2とRdを一つの抵抗に纏めても良いのですが、そうすると大抵はE系列の抵抗値から外れるので、シンプルに2本の抵抗に分けておいた方が無難です。

この場合、検出電圧はRe1/(Ra+Re1)となり減少しますが、差動アンプとしてのゲインはRb/(Ra//Re1)になり増加します。したがって、トータルではRe1がないときと同じ出力が得られます。

なお、オフセット電圧を調整する場合はRe1あるいはRe2と直列に半固定抵抗を入れます。

注) Ra//Re1はRaとRe1の並列接続を表します。

同相入力範囲

差動アンプはプラス/マイナス両入力端子の電位差が同じであれば出力が出ないと言いましたが、現実は入力できる電圧には範囲があります。LM358のスペックシートには以下のような項目があります。


INPUT VOLTAGE RANGE(入力電圧範囲)の項目にCommon-mode-voltage range(同相入力電圧範囲)とあり、(V-)、(V+)-1.5と書かれています。マイナス入力電圧はマイナス電源の電圧(V-)まで、プラス入力電圧はプラス電源電圧から-1.5V低い電圧までとなっています。(-40℃や85℃などの低温/高温では-2Vまで)

仮にLM358を5V単電源で使用する場合、入力電圧は0V~3.5V以下の範囲に収まるようにする必要があります。

この後で述べますがオペアンプの入力端子はスペックシートで規定されている入力電圧範囲を超えないよう、十分な注意が必要です。先ほどの差動アンプにコモンモードノイズを入力したシミュレーションではコモンモードノイズは0Vに対して±100mVの振幅であることから、オペアンプも±両電源で動作させる必要があります。

過入力(電圧入力範囲)に注意

先に同相入力信号範囲の話しをしましたが、同相でなくてもオペアンプの入力電圧範囲は電源電圧によって制限されます。この連載の1回目で両電源タイプと単電源タイプのオペアンプの説明で、入力電圧範囲が単電源タイプと両電源タイプで異なると説明しましたが、その入力電圧範囲のことです。

では、オペアンプの入力電圧範囲を超えるとどうなるでしょうか?

NJM4565でシミュレーションしてみました。電源電圧が±5Vの状態で、12Vp-pの入力を加えました。オペアンプは非反転増幅で2倍(6dB)です。


入力信号のプラス側は電源電圧より約1V低い電圧でサチュレートしていますが、マイナス側は入力信号がマイナス電源電圧を超えたあたりで、出力が突然プラス電圧に反転しています。

次にLM358でもシミュレーションしてみました。オペアンプ以外の条件は同じです。同様の現象が見られます。


なお、オペアンプにはこのような出力反転が生じないものも存在します。

しかし反転しなくとも電源電圧(プラス/マイナスともに)を超えた電圧が入力されると破損する恐れがありますので、オペアンプには電源電圧を超える入力信号が入らないように十分な配慮が必要です。

インストゥルメンテーションアンプ(計装増幅器)

差動アンプの動作を説明しましたが、オペアンプを1個使用した差動アンプには少々、欠点があります。それは、入力インピーダンスがあまり高く出来ないことと、ゲインの変更をおこなう場合に2つの抵抗を変える必要があることです。

そこで、差動アンプのプラスとマイナスの入力にそれぞれ非反転増幅を入れます。(下の回路)


入力側のRgの部分が通常の非反転増幅と異なりますが、基本的な動作は2個の非反転増幅回路の動作と同じです。この段のゲインは1+R1/(0.5×Rg)となります。つまり、上側の非反転増幅回路の抵抗と下側の非反転増幅回路の抵抗を直列に接続して1個の抵抗(Rg)に置き換えたと考えられます。そのため、非反転増幅回路としての各々のゲイン設定の抵抗としてはRgの1/2とR1との関係になります。

この回路の全体のゲインは、非反転増幅回路のゲインと差動アンプのゲインを掛け合わせた値となります。通常は、後段の差動アンプのゲインを抑えて前段の非反転増幅側でゲインを設定/変更するようにします。

この回路ではRgの値を変えると上側の非反転増幅回路と下側の非反転増幅回路のゲインが同時に変化するので、抵抗を1本変えるだけでゲイン変更ができます。また、IN-もIN+も入力が非反転増幅回路のために入力インピーダンスを高くできます。

実際は、この回路を一つのICにしたものがあり、Rg以外の抵抗はICの中に組み込まれて各抵抗のバランスの問題を解消しています。コストの問題はありますが、通常はオペアンプ3個を使ってこの回路を組むよりは高性能な回路が得られます。

加算アンプ(サミングアンプ)

この回路もオペアンプの特徴を活かした回路といえます。基本は反転増幅回路ですが、入力を複数設けて各々の入力信号を加算(ミキシング)します。下図は3信号の加算アンプの例です。


特徴は、各々の入力(IN1~IN3)がお互いに干渉しないことと、各々のゲインを独立して設定できることです。基本的に反転増幅回路ですから、IN1のゲインはRb/Ra1、IN2のゲインはRb/Ra2と各々独立しています。OUTには各入力からの信号が加算(ミキシング)されて出力されます。例えば、2本のマイクからの信号を一つのラインに出力するような目的に使います。

注意すべきは各端子の入力インピーダンスはRa1、2、3の各抵抗値になるのでゲインと入力インピーダンスが連動することになります。

また、ノイズのところで説明したように入力抵抗はノイズの発生源でもあります。入力に複数の抵抗を用いる加算アンプはノイズの面では不利です。前段で十分なS/N比を確保した上で、各信号を加算するように回路を考える必要があります。

コンパレータ

オペアンプをコンパレータとして使用されることも多いと思います。


上記回路では入力信号を基準電圧(Vref)と比較して、H/Lを出力する回路です。勿論、プラス、マイナスの両入力端子に信号を入力して、両方の入力信号の大小(高低)を比較しても良いです。

なお、同じ回路記号でありながらオペアンプではなく、コンパレータ(IC)というものもあります。コンパレータとオペアンプは何が違うのか疑問に思われるかも知れません。

結論から言うと、オペアンプは低速コンパレータとして使用可能ですが、コンパレータと呼ばれるICはオペアンプとしては使えません。

両者の違いはNFB(負帰還)を掛けるか掛けないかで、オペアンプはNFBを掛けて使うことを前提にしているため、NFBを掛けても発振しないように位相補償が組み込まれています。しかし、コンパレータはNFBを掛けないで使用することが前提のためにNFBを掛けると発振します。

また、出力も電圧を出力するのではなく、下図のようにトランジスタのコレクタやFETのドレインが直接出ているものが一般的で、必要に応じてプルアップ抵抗を入れて使う必要があります。


コンパレータはオペアンプのように発振を回避するための位相補償をおこなう必要がないために高速応答が可能になります。高速の比較出力が必要な場合はオペアンプではなくコンパレータを使用する必要があります。

マイナスゲイン回路/ノイズゲイン

オペアンプは出力インピーダンスが低いためにバッファー回路としてもよく使用されます。そのような場合、増幅ではなくマイナスゲインで使いたいときもあります。例えば、下のような定数に設定した回路です。


この場合、ゲインG=10k/22k=0.45倍の反転増幅器(減衰器)として動作します。

ただし、ノイズレベルやオフセット電圧はG=1.45倍の場合と同じになります。入力信号に対してはマイナスゲインですが、オペアンプから出るノイズやオフセット電圧に関してはマイナスゲインとならず、非反転増幅回路として使用した場合のノイズやオフセット電圧が出力に現れます。

この連載の6回目の発振に関する所で少しだけノイズゲインという言葉を出しました。オペアンプにはシグナルゲインとノイズゲインの2種類のゲインがあります。シグナルゲインは文字通り、入力信号に対する増幅度です。ノイズゲインはオペアンプの内部ノイズやオフセット電圧などに対するゲインを意味します。

ノイズゲインは簡単にいうと、回路を非反転増幅回路としてみた場合のゲインです。上記の回路もプラス入力端子から信号を入れる非反転増幅回路としてみるとゲインはG=1+10k/22k=1.45倍です。

オペアンプの反転増幅回路と非反転増幅回路を同じ定数にした場合、ゲインが非反転増幅回路の方が1だけ大きいのですが、回路としては全く同一のためにNFBの量は同一です。このため、オペアンプの持つノイズやオフセット電圧、ゲイン帯域幅積(GB)などは非反転増幅回路のときの特性となります。

結局オペアンプとは

一般的に、ディスクリート増幅素子としてはトランジスタとFETの2種類があります。(IGBTなど、トランジスタとFETのあいだに位置する素子もありますが、、)

通常、あまり意識されないと思いますがトランジスタはベースに電流が流れると、それに応じてコレクタに電流が流れます。入出力ともに電圧ではなく電流で動作します。そのため、トランジスタは電流動作素子と言えます。FETはゲート電圧の変化でドレイン電流が変化します。トランジスタとFETの大きな違いは、電流に反応するか電圧に反応するかの違いです。共通することは、いずれも出力はコレクタあるいはドレインの電流変化です。従って、出力となる電流の変化を電圧の変化に変換するために負荷インピーダンス(抵抗)が必要です。

対して、オペアンプは電圧の変化に対応した電圧が出力されます。入出力が電圧であるために動作が分かりやすいという利点があります。

オペアンプはICですが、汎用性や価格面からみてもトランジスタやFETと同列の増幅素子と扱っても良いと私は思っています。

もう一つ、オペアンプの動作の中核にNFBがあります。NFBの理屈は若い電子回路技術者にとって一つのハードルではないかと思います。オペアンプの入門解説ではNFB技術に触れずに、抵抗の比だけで済ませることが多く、この連載でもNFBについては正面切って説明をしていません。しかし、NFBは電子回路技術においては避けて通れないものでもあります。

無線機に限りませんがPLLという言葉は良く耳にされると思います。無線屋でPLLというとシンセサイザー発振器と同義語になりますが、基本となる理屈はオペアンプのNFBの理屈と変わりません。PLLをきちんと理解したいと思う若いエンジニアの方は、先ずはオペアンプのNFBをきちんと理解されることが早道と思います。この連載でオペアンプの発振の所で説明した位相に関する内容はそのままPLLにも当てはまります。

ということで、オペアンプについて迷走しながらも半年あまり書いてきました。オペアンプについては、これで一旦区切りとさせて頂きます。次回からは私が日常的に思いついた無線や電子回路に関連する話しを気ままに書きたいと思います。

それではBest 73 & 88

参考文献/資料
・LM358データシート

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