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アパマンハムのムセンと車

第1回 モービル運用を考える

JF1KKT 横田勝彦

はじめまして。JF1KKT横田と申します。

今回から「車とアマチュア無線」、「アパマンとアマチュア無線」の切り口で、いろいろなお話をしていきたいと思います。その中で、ちょっとした便利な小物もご紹介できたらと思います。どうぞ宜しくお願いします。

さて、最近はモービル運用を楽しまれている方がめっきり少なくなりました。理由はいろいろあると思いますが、やはり携帯電話の普及にあるんじゃないかと思います。

携帯電話は便利ではありますが、多人数と同時に話したり出来ません(アプリで出来ますが)し、全員が通話料定額プランやパケット代定額プランに加入しているわけではないので、そうなるとアマチュア無線のほうが経済的でもあります。

これは連絡手段としてのアマチュア無線の楽しみのひとつですが、最近は単なる連絡手段としてではなく、昔ながら(?) の『知らない人と話をする』という楽しみを見出した方が多いように思います。

これは東京近郊での話ですが、430MHz帯FMが、いわゆる入門バンドになっている、ということです。週末の夜ともなりますと、多くの周波数でQSOをする姿が見受けられます。また、移動局も多く出現し、QSLカードの交換も積極的に行われています。

このような時代にモービル運用を志すとするならば、どのような車を選び、どのような無線機を選ぶのがいいのか、少し考えていきたいと思います。

無線をやるための車選び

無線をやるための車選びですが、固定局代わりに移動運用でガンガン稼ぐのであれば、キャンピングカーをベースにした無線車になると思います。

これは新車で選ぶなら、ハイエースやキャラバンをベースに考えると良いでしょう。エンジンはノイズを考えてディーゼルを、駆動は山岳移動も考えれば4輪駆動がベストです。

最近は運用にパソコンが必須となってきています。つまり、無線機はともかく、パソコンを置けるスペースがないといけなくなっています。こう考えていくと、予算もありますので、多くの方が諦めてしまうのではないかと思います。

こういった観点から、私は軽自動車をお勧めしたいと思います。軽自動車の中でも、軽貨物運送でよく使われている、エブリイバン、ハイゼットカーゴ、N-VAN等の、いわゆる軽バンが、特にお勧めになります。


軽バンの一例

その理由は、室内スペースが広い、HF帯を運用するのにボディをアース代わりにする場合は表面積が広くとれるので効率が良い、高さがあるのでモービルホイップでも飛びが期待できる、そして何より値段も維持費も安い、等です。

新車を購入する必要はありません。どうせ移動運用で使えば、キズもつきます。程度のよい中古車を購入すれば良いでしょう。できれば4WD車を選択すると良いと思います。

ただ、あまり古い車は、故障の面、ノイズの面で、あまりおすすめできません。新車から10年落ちまで、距離は10万キロまでで、メンテナンスの行き届いた車であれば、特に問題はないと思います。

車内のレイアウトは?

さて、車が手に入りましたら、どこに無線機を取り付けるか? ですが、私は後部座席の前にテーブルを置いて、後部座席に座って運用する方法をとっています。つまり、取り付けていません。取り付けないところにポイントがあります。

まず、運転席周りに取り付けたとした場合、オペレーションに困ることが多いと思います。それはパソコンを広げるスペースがないことです。

一般的には後部座席、若しくは荷室にテーブルを置いて、そこで運用する事になるかと思います。テーブルごと固定できれば、それに越したことはありませんが、固定してしまうと、車の使用目的が限られてしまいますので、もったいないことにもなります。

荷室は、普段はアンテナや電源関係の荷物を満載しています。ですので、荷室をすべて運用のためのスペースとしてしまうと、移動先での荷物の積み下ろしが多くなり面倒です。

そこで私の場合、テーブルはキャンプ用のものを流用し、後部座席に腰掛けて運用するスタイルをとっています。このテーブルは金属製なので、マウスを使う時にはマウスパッドは必要ですが、最近流行のマグネット付ミニパドルはそのまま付きます。


キャンプ用のテーブル


無線機、PC、パドルを配置


電源は?

モービル運用の電源といえば、車のバッテリーから取る、というのが定番です。しかし、最近の車は電源コードの引き回しが難しいものが多くなっています。

先ほど私がおすすめした軽バンは、比較的バッテリーから直接電源を取ることが容易なものが多いですが、私が乗っている乗用車は自分では対処できなかったため、自動車整備工場に依頼しました。

中には、ここまで配線してしまうと乗り換え時が面倒という意見もあります。しかし、現在の乗り換えサイクルは10年近くになっています。ということは、一度セットしてしまえば10年使えるわけで、決して無駄なことにはならないと思います。

私は車の本来のバッテリーと並列にサブバッテリーを積んでいます。バッテリーとサブバッテリーの間にはアイソレーターを入れて、充電制御をしています。


アイソレーター

簡単に済ませるなら、車のバッテリーからDC-ACインバーターでAC100Vを作り、そこに家庭用のバッテリー充電器をつないでサブバッテリーを充電する方法もあります。運用する時にはサブバッテリーを単独で使用すればいいのです。


DC-ACインバーター

サブバッテリーには、最近ではリン酸鉄リチウムイオンバッテリーを考えておられる方も多いでしょう。でも、取扱が難しいので、私は通常のバッテリーの複数使いをおすすめします。電圧を常に監視して、電圧が下がってきたら、新しいものに交換するのです。手間は増えますが、バッテリー自体の値段が安いので、一考の余地はあると思います。

もちろん、12Vから13.8Vに昇圧するアップバーターが用意できればベストですが、安物はノイズ発生源となりますので、信頼のあるメーカー製を使うことが大事です。メーカー製としては米国MFJのもの(MFJ-4416C)が有名で、国内でも代理店から容易に入手できます。

軽自動車用のバッテリー1個で、HFで50W出力のCW運用をして、半日近くは使えます。IC-705のような省電力な無線機なら、丸1日使えるんじゃないでしょうか。

話題のポータブル電源は、どうしてもノイズ問題が気になるので、私は使っていません。バッテリーを使い切ってしまった場合や、パソコンのバッテリーを充電する必要がある場合は、カセットコンロのガスボンベで動く発電機をサブとして使っています。これは運搬中にガソリン臭がしないうえに、ガスボンベはコンビニで簡単に手に入るので、重宝しています(ガソリンを使った凶悪犯罪が多発したため、発電機用にガソリンを買うことが難しいのです)。


ガスボンベで動く発電機

アンテナは?

今回のメインテーマといっても過言ではないアンテナについてです。

以前の本誌(2022年4月15日号)で、JR9TUG/松平さんがAH-730を使ったモービルからのHF運用を紹介されていました。もちろん予算的にもスペース的にも許されるなら、最高であることは間違いないのですが、こちらは貧乏人な上に軽自動車で、予算もスペースも限られています。

そこで、ネット通販サイトを眺めていたら、5m長のロッドアンテナと、それに直付けできる短縮コイルが目に入りました。私が見つけたのは海外の通販サイトでしたが、国内でも同じ物を販売されている業者がいらっしゃることを、後で知りました。




アンテナもコイルもM10のネジなのですが、これを、別の通販サイトで見つけたM型コネクターに変換するアダプターを改造して使うことにしました。元々この変換アダプターは、米国製のモービルアンテナをM型に変換するもので、インチねじが切ってあります。ここをM10のタップで切り直す感じです。実際にはアダプターの販売元さんで、追加費用を出せばやってくださるので、お願いしてしまいました。


このようなアンテナで、コイルを付けて7MHzに、コイルを外せば14~50MHzの1/4λフルサイズとして動作させられます。




アンテナアナライザーもしくはNano-VNAを使って、ある程度まで共振周波数を追い込めば、後は無線機内蔵のアンテナチューナー(IC-705はAH-705と組み合わせて使っています)でSWRを落とすことで、十分に実用になります。


アンテナアナライザー


Nano-VNA


アンテナ単体でSWRを落とすには7MHzあたりは給電部の芯線と網線に、アンテナと並列になるようにコンデンサーを入れてマッチングを取ればベストです。


マグネットシートを利用した例

このアンテナはアース側をボディにつないで使います。基台を設置しただけではうまくアースが取れない場合が多いので、可能であれば、車のボディに穴を開けてアースを直接取るのが良いでしょう。無理な場合は市販のマグネットシートを利用します。


車のボディに穴を開けてアースを直接取った例

最後に

以上、駆け足でモービル運用の新しい形を提案させていただきました。

次回は乗用車でHF~430MHzまで運用する場合をご紹介できたらと思います。

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次号は 12月 1日(木) に公開予定

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