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アパマンハムのムセンと車

第8回 モービル&アパマン運用に役立つヒント

JF1KKT 横田勝彦

2023年5月15日掲載

連載8回目となります。今回は、先日実験したアンテナの比較テストの話から始めたいと思います。

移動用アンテナのテスト

今まで紹介してきました5mロッドアンテナ+ベースコイルのアンテナの実力を調べようと、ローカルのTさんにお手伝いいただき、合計3種類のアンテナを実験しました。


比較したアンテナ 左からフルサイズ、50%短縮、市販モービルホイップHF40CL

まずは10mのグラスファイバー製ポールを使った1/4λフルサイズ(以下フルサイズと称します)、以前にもご紹介した5mロッドアンテナを使った50%短縮のベースローディング(同ベースローディング)、そして第一電波工業(ダイヤモンド)製センターローディングモービルホイップHF40CL(同HF40CL)の3種類です。

同じ場所に設営し、3種類とも車のボディアースでテストしました。結果ですが、言うまでもなくフルサイズが一番よかったです。次によかったのがベースローディング、最後はHF40CL(全長2.2m)です。しかし、ベースローディングとHF40CLの差が思ったよりなくて、HF40CLの健闘が目立つ結果となりました。

実際に運用に使用した感じとしては、SSBでパイルを起こす側に回るには、やっぱりフルサイズが必要になるかと思います。しかし、CWで手軽にサービスするのであれば、HF40CLでも十分かと思います。実際に移動運用されているOMさんに結構使われているようです(よく話に聞きます)。

なお、電波を飛ばすにはロケーションも大事です。HF、それもローバンドでの移動であれば、標高よりも周りに障害物がないことが重要になります。障害物には立木も含まれますので、まわりに何もないような場所を選ぶのが良いと思います(経験上、木が生い茂っているところは電波が飛ばないと感じてます)。

7MHzフルサイズ 移動用釣り竿アンテナの考察

前項でも書きましたが、7MHz 1/4λフルサイズの威力を見せつけられました。手持ちに10mの釣り竿(実際は釣り竿ではなく無線用のマストのようです)が2本ありますので、そのうちの1本を使って実験しました。


使用したグラスファイバー製マスト


釣り竿より先端が太くなっている


グラウンド側は、移動運用時の設営時間短縮と占有場所を極力少なくするため、車両のボディアースを使う前提です。

マスト最下部の直径が約50mmでしたので、塩ビ管VP-50の1m物を使って補強を行いました。塩ビ管には同じ50のサイズであっても、肉厚の厚い給水用(VP)のものと、肉厚の薄い排水用(VU)のものがあります。ローディングコイルなどを作る時に使うのは、肉厚の薄い方で、我々にもなじみが深いと思いますが、今回は強度が大事なので、厚手のものを使うようにしました。もちろん値段も高いですが。


使用した塩ビ管


肉厚の厚さがわかる


塩ビ管の中にマストを入れて、塩ビ管をタイヤベース(市販品もありますが、市販品では太いパイプに対応できないため、個人の方が作って販売されている大型のものをヤフオクで入手しました)に入れて自立させます。



タイヤベースに建てたところ

この状態で、相当な強風でなければ、自立しています(自宅のベランダで、同様な条件でテストしていたので、これで問題なしと判断しました)。もちろん強風であれば安全第一ですので設営しない方針です。

エレメントはIV線の1.25SQを使います。先端に圧着端子をつけコロナ放電対策をします。給電部側はミノムシクリップを付けておきます。なお、長さは9.5mです(実際の1/4λよりも短めにしている点がミソです)。万が一、長さが足りなくなった場合に備えて、追加エレメント(両側にミノムシクリップ付)も用意します。長さは50cm~1mくらいで2本あればいいと思います。


エレメント用電線(右)と追加エレメント(左)

給電部は元々車両についていたモービル基台をそのまま使います。今回、編組線とタッピングビス(ドリルビスで下穴を開けました)でボディアースを確実に取りました。詳細は次項をご覧ください。基台のコネクター部分に、前項のベースローディングで使用しているアンテナから、コイル部分を取り除いた状態で取り付けます。


調整用に使用するロッドアンテナ(中央)

ロッドアンテナの先頭にエレメントの下側のミノムシクリップをつなぎます。


ロッドアンテナの先端にエレメントを接続

この状態で釣り竿を伸ばします。そしてロッドアンテナを1mほど伸ばします。この状態でSWRを測定し、ロッドアンテナの長さを調整してSWRを下げます。さすがフルサイズ、帯域は広いのでSSBとCWの両方を運用する場合も、そのままいけると思います。


左: 7MHzフルサイズ 移動用釣り竿アンテナの全景  右: 追加エレメントを入れるときは赤丸部に入れる

以上でアンテナは出来上がり、運用出来るようになりました。

実はまだ運用実績が少ないので、もうしばらく運用を重ねて報告したいと思います。というのは、GW中に運用しようと思ったのですが、風が強い日が多く危険は犯せないので、ほとんど運用は出来ませんでした。


このGWは、HF40CLよりももっと短いHF40FXW(写真右のアンテナ)で移動運用を楽しんできました

さて、このアンテナを実験していて発見したことがあります。

IV線を釣り竿に巻き付けるようにして立てると、同じエレメント長だと共振点が高くなります。つまりエレメントを長くしないと低い周波数には同調しなくなります。今回はロッドアンテナの長さで調整しますので、ロッドアンテナ部分が長くなります。

反対にまったく巻き付けないでいると、共振周波数は低くなります。一般的にヘリカルアンテナは、1/4λよりも長い電線を巻き付けると言われていますが、ここでもその通りになっています。

AH-730等のATUを使っていると、エレメントの長さはあまり気にすることはありませんが、それでも経験上、巻き付けたものと巻き付けてないものでは、ATUの動作が違ってると感じていましたので、今回のように、アンテナを同調させて使おうとしている場合、顕著に影響が出て来ます。

ですので、エレメントとして使用する場合は、共振点を探しながら調整すると良いと思います。この調整にはアンテナアナライザーやNanoVNAを使うと良いでしょう。中古でも安売りのものでもいいので、入手しておくことをおすすめします。


左: アンテナアナライザー 右: NanoVNA

最後になりますが、なぜフルサイズをやろうと思ったのか、それは高価なATUを買わずに、手元にある材料で電波の飛ぶアンテナを作りたかったからです。

移動運用は、みなさんにサービスするだけではありません。DXペディション局を迎え撃つことができれば、アパマンハムでもDXとQSOできるようになりますからね。そのための準備も兼ねています。

ボディアースの取り方

最近のアンテナ(特にV/UHF帯)は、ノンラジアルのものが多く、基台もアースにつながらないような構造のものが多いように感じます。とはいうものの、現在市販されているHF帯のモーボルホイップは、一部の例外を除いて必ずアースが必要です。

アースの取り方については、以前の2023年4月号の私の記事をご覧ください。

「アンテナ基台の取り付け部分のイモネジをボディに接触させれば、アースが取れるんじゃないの?」と、お考えの方もいらっしゃると思います。直流的にはアースされるのでしょうが、アースされても面積が狭いとか、接触が十分じゃないとか問題が発生することが考えられます。

そこで編組線を使って、ボディに確実にアースを取るようにします。この問題はノンラジアルでないアンテナすべてに存在します。アースが取りにくい144MHz以上のバンドなら、ラジアルを付けることも考慮する必要があろうかと思います。

さて、具体的な接続箇所は下記の写真を見て頂ければと思います。ドリルビスで穴を開け、導電グリス(アンテナの接合部分に塗るもので可)を塗って取り付けます。


ドリルビス


導電グリス


ドリルビスはそのままでは緩む可能性がありますので、通常のタッピングビスを使う方が良いと思います。


タッピングビス

また、写真では圧着端子を使っていますが、編組線に導電グリスを塗り、その上から直接ビスで締め付けても良いです。



車両に取り付けたところ

なお、可能であれば、ボディの鉄板のつなぎ目をまたぐように、複数箇所にビスで固定すると、より効果的です。その理由は、ボディは複数の鉄板で構成されており、それらの鉄板間に導通(特に高周波的な導通)がないことがあるからです。

アース線に使用する編組線は、最短距離が鉄則です。具体的には10cm以下が良いですが、長くても20cm程度に収めます。この部分のアースが長いと、たとえ7MHzのような低い周波数であっても、動作が不安定になります。

なお、ご意見、ご質問等につきましては、筆者である私宛(jf1kktアットマークgmail.com)へ直接ご連絡頂けますと幸いです。

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