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テクニカルコーナー

AH-730インプレッション

月刊FB NEWS編集部 JR9TUG 松平宗亮

先月アイコム株式会社より発表された、オートマチックアンテナチューナ(以下ATU)であるAH-730を試用する機会に恵まれましたので、移動運用でテストを行いました。


同社のロングワイヤー対応ATUは、前モデルのAH-4では3.5-50MHzの対応でしたが、本モデルでは1.8~50MHzに対応に拡張されました。今回のテストでは、各バンドでのチューニング状況や実際の運用時におけるリバースビーコンネットワーク(以下RBN)による各地への伝搬状況の確認までを行いました。

ではまず、定格から紹介します。

1. 定格の比較

AH-730の定格は、以下の表に前モデルであるAH-4や1.9MHz帯対応であった前々モデルAH-3と比較しつつ紹介します。


表1 ATU定格表 (各機種の取扱説明書より転載し作成)

・前モデルまでとの比較(電気的定格)
AH-730と前モデルまでの機種との大きな違いは2点。ひとつ目は対応する周波数範囲が1.8~54MHzとなり、しかもエレメント長が最低7mから対応していることから、IC-7300などの対応機種においてロングワイヤーアンテナひとつで、シンプルかつコンパクトに1.8~50MHz帯にオンエアできるようになりました。ふたつ目は最大定格入力電力が150Wとなったことです。これにより固定100W局でも余裕度が増し1.8~50MHz帯において、どのバンド、モードでも減力せずに運用が可能となりました(連続入力は100W)。

・前モデルまでとの比較(外観的定格)
外形寸法については、平置きにて前モデルのAH-4の2倍のサイズとなったものの、先に記載した周波数範囲の拡大や入力電力増加のためで、1.8MHzにも対応しているAH-3に比べ若干小さくなっているので設置や運搬に関して問題ないと考えます。また重量についても同様で、AH-4とは2倍、AH-3とは微増となっているが、外観寸法同様定格アップによる重量増となっているため、運搬には問題ないと考えます。

※注 筆者の運用スタイルは、ほぼ100%車による移動運用のため、航空機や船舶による手運びや輸送を伴う移動を行う移動運用の場合には、サイズアップや重量増は影響がないとは言い切れませんのでご容赦ください。


(左)平面、(右上)エレメント接続面、(右中)同軸、制御ケーブル接続面、(右下)側面

特筆すべきは、今まで同軸ケーブルや制御ケーブルを筐体内部に接続する必要がありましたが、AH-730では筐体外にケーブル(同軸20cm、制御10cm)が引き出され、フタを開けずに接続できるようになっています。これにより前モデルまでは接続時のフタを閉める際に発生する可能性のあった、パッキンのかみこみ不良による防水不良を防げるようになり、安心感も増し、自分でフタを開けないかぎりは、取説にある防水保護等級のIPX4は確実に守られるでしょう。


同軸ケーブルは約20cm長、制御ケーブルは約10cm長

取り付け金具は、M6ナットで固定するようになっており、Uボルト、マストクランプなどが付属しているため、余程の特別な環境でないかぎり付属品で事足りると思われます(筆者の取り付け方法でも付属Uボルトのセットで行いました)。また取り付け金具は、画像にもある通りステンレスt3.0と厚めの鋼材で作られており、海外他社製品(t1.5)のそれとは異なりナットを締めこむことによる金具が変形したり、フタが歪んで隙間が空くというような事は発生しませんでした。


金具は、t3.0と堅牢である


金具の幅は210mmでM6ボルトなどを通す丸孔や長孔があいている



金具の高さは10mm


筐体+金具の高さは90mm


他の定格については、AH-4とほぼ同様となっています。

2. エレメント長

使用前の準備として、まずはエレメントを用意する必要がありますが、筆者はグラスファイバー釣り竿を使用し垂直エレメントとして試すことにしました。そこで1/2波長、その整数倍を避けるために各バンドの上下端から計算し下記の図を作成しました。


各バンドの1/2の整数倍と使用可能なエレメント長

表示の範囲は、AH-730の定格である7mより下の6mから、実用で使うであろう21mまでとしました。実際それ以上の長さであれば、ギボシ切換えダイポールアンテナやマルチバンドEFHW(エンドフェッドハーフウェーブ)アンテナを使用したほうが良いと判断したためです。

AH-730は7mから対応しているため7m以下は、動作外と表記しました。オレンジ色で示したのは、各バンドの周波数の上下限から計算した1/2波長の整数倍を表しています。

水色で示したのは、オレンジ色にかからない部分での範囲で、この長さの範囲に入れば問題なくチューンが取れるだろうという事です。

今回は、手持ちの釣り竿で実現可能な7.14~8.26mの範囲でテストすることにしました。

3. 取り付けと動作確認

さて部材も準備できたので、早速フィールドに出て運用テストを行いました。

筆者の車では、以前からATUやモービルホイップアンテナにより1.8~50MHzの運用を行っているため、設置には困らずUボルトを用いて取り付けることができました。またアースは、22sq撚り線に大型クリップを圧着し、既設HFアース用平編み銅線(TBC 22sq)に接続することにしました。


自作竿立て台への取り付け


既設アースへの接続


肝心の釣り竿ですが、今回は、約8mのものを使用しました。まずは、もともと使用していた釣り竿LWで最低限の長さである7.14mです。


(左)釣り竿で立てたLWの接続、(右)8mの釣り竿

屋外の準備ができたので、FB NEWS 3/15号JAIAコーナーの記事にある接続例に従って、IC-7610M(以下リグ)とAH-730を接続します。なおLWの接続、接地端子のネジのサイズそれぞれM5ビスで圧着端子を圧着し接続しました。蝶ナットにより工具を使用せず取り付けられます。


接続例(IC-7300~AH-730) ※FB NEWS 3/15号JAIAコーナー記事より

リグとの接続は、AH-4と同様に、同軸ケーブル(ANT1)、制御ケーブルをATU用4極コネクタに接続するだけです。制御ケーブルのシールド線の緑電線は、リグの接地端子に接続します。接続後リグの電源を入れると自動的に認識されました。この状態で、[TUNER]ボタンを約1秒程度押すと、頭上(アンテナの真下にリグをセットしてあります)で5秒くらいカチャカチャとリレー音が聞こえ、無事チューンが取れました。動作や表示は取説にあるAH-4と同様でした。個々でチューンが取れない場合は、LWの長さやATUの接地状態の確認をしたほうが良いでしょう。


接続時表示


未接続時表示


各バンドでチューンが取れるか確認して見ました。7.14mでどこまでチューンが取れるでしょう・・・。結果は、何も問題は発生せず、各バンドの下限周波数付近~上限周波数付近において、数秒程度でチューンを取ることに成功しました。1.800MHz付近でも数秒でチューニングを完了しました。取説にある最低限の長さで1.8MHzにオンエアできそうです。

次に、この釣り竿で電線を添わせる最大限の長さで、1/2波長の整数倍とならない7.6mとしました。こちらでも問題なく各バンドでチューンが取れることが確認できました。実運用はこの組み合わせで行いました。

4. 実運用

さて気になる実運用です。50~1.8MHzと順次QSYを行いました。QSO数は下記のとおりです。15時過ぎより50MHzから開始し19時前に1.8MHzまで50Wで、CWとRTTYモードで運用しました。コンディションや運用時間帯にもよりますが、ほぼ全国的にQSOできました。聞こえ方も以前のシステムと遜色なくむしろRTTYにおいてはデコード率が良い方向となりました。おそらく以前のシステムに比べて放射パターンが変わったためなのではと想定しています。心配された波長に対してエレメント長が極端に短くなる1.8MHz、3.5MHzにおいても問題なくQSOができました。
※なお、実運用は奈良県山辺郡山添村の高台で、エレメント周辺には竿立て台以外の金属製構造物や配電線などがない場所で行いました。


(左)バンド~時間帯のQSO数、(右)バンド~モード別のQSO数


バンド~エリア別のQSO数

次にRBNのレポートを確認してみました。


RBNより取得したレポート

各RBNスポットの設備や時間帯、コンディションにもよりますが、まとめると下記の通りとなりました。
・1.8MHz 国内: 1エリア、4エリア
・3.5MHz 国内: 1エリア2か所、4エリア
・7MHz 国内: 1エリア3か所、4エリア / 海外: 中国、アメリカの西海岸2か所
・10MHz なし
・14MHz 国内: なし / 海外: 中国7か所、ロシア アジア地区、ニュージーランド2か所、西マレーシア、コスタリカ
・18MHz なし
・21MHz 海外: 中国3か所、西マレーシア、ニュージーランド、オーストラリア西部
・24MHz 海外: オーストラリア西部
・28MHz なし
・50MHz なし

今回使用したエレメントの長さ(7.6m)にしては、よく飛んでいると思いました。

5. まとめ

今回、定格(7m以上)の最短に近い7.1mや7.6mでのエレメント長で実際に使えるのかというテストを行ってみました。使用した雰囲気では、比較的使えるのではないかという結論となりましたので、特に1.8MHzにアンテナの都合で出る機会が少なかった方にも、これから気候が暖かくなってきますので手軽にマルチバンドでの運用の機会が増えるのではないかと思いました。また今回13m台の垂直エレメントを試そうとしましたが、アルミパイプエレメントの機械的強度が弱く使用することができませんでした。今後追試として、エレメント長を伸ばして逆L型で試したり、今回運用しなかった他のモードについても試していきたいと思います。

※今回、車のルーフ上で使用した竿立て台ですが、後日、本テクニカルコーナーでご紹介できればと計画しております。

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