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2023年2月15日掲載
総務省は昨年2022年(令和4年)11月16日、アマチュア無線の体験機会と活用機会の拡大、免許手続きの迅速化、制度の簡素合理化などを骨子とする「電波法施行規則等の一部を改正する省令案等」を作成して公表、翌11月17日から12月16日までの1か月間、この改正案に対する意見募集(パブリックコメント募集)を行った。
このほど2023年(令和5年)2月8日に、その結果と電波監理審議会からの答申が公表され、アマチュア無線界の大規模な制度改革が、いよいよ今年の3月と9月の2回に分けて実現する運びとなった。
2月8日に総務省が「ワイヤレス人材育成のためのアマチュア無線の活用等に係る制度改正(案)」に関する意見募集の結果を発表した
総務省は昨年、1月から8月にかけて有識者やアマチュア無線関係者を構成員とする「ワイヤレス人材育成のためのアマチュア無線アドバイザリーボード」を開催、そこで取りまとめられた提言等をふまえ、11月に「電波法施行規則等の一部を改正する省令案等」を作成した。改正案の内容は多岐にわたるが、特に注目されるポイントを総務省作成の資料から抜粋で紹介しておく。
①アマチュア無線や電波の楽しさ等を知る、学ぶ機会や活用機会の拡大
・無資格者のアマチュア無線体験は、免許人の責任および監督下で実施できる。特別な手続きは必要なく「臨時体験局」の開設も不要、無資格者の年齢等に制限なし。
・アマチュア無線が教育・研究活動で活用できることを明確化、アマチュア業務の定義に「教育又は研究活動のために行う無線通信業務」を加える。
②アマチュア局の開設・運用までの迅速化、および免許制度の簡素合理化等
・無線従事者免許とアマチュア局免許の「同時申請手続」を導入し、国家試験合格や養成課程修了からアマチュア局の開設・運用を始めるまでに要する期間を大幅短縮する。
・アマチュア局に係る電波の型式、周波数及び空中線電力の一括表示記号の導入で無線局免許申請書の記入を大幅簡略。
・アマチュア局に係る技術基準適合証明等を受けた無線設備の取替・増設・撤去を簡素合理化し、「届出」の手続きで可能にする。
・送信機の外部入力端子に「アマチュア局特定附属装置」(PC、マイク、FAX装置、ビデオカメラ、電鍵等)を接続する手続きを簡素合理化、工事設計書の記載は不要で手続きや検査は不要にする。
・初心者やライトユーザー用に見やすく、わかりやすい無線局免許申請書等の特例様式を導入。
・養成課程におけるeラーニングの積極的活用。「eラーニング」と「対面式授業」の組み合わせた講習会も可能に。
③その他アマチュア無線に係る制度の明確化、整備および簡素合理化等
・アマチュア局の再免許の申請期間の見直し(他の無線局と同様、免許満了の6か月前から1か月前までとする)。
・アマチュア局の非常時や緊急時の通報は「他人の依頼によるもの」が行えることを明確化。
・アマチュア業務に使用する電波の型式及び周波数の使用区別(いわゆるバンドプラン)の簡素合理化。
・遠隔操作についての簡素合理化。
これらの改正により、アマチュア無線に興味を持った人は、どこでも手軽に運用体験ができるようになる。そして例えば、eラーニングの併用で受講しやすくなった養成課程講習会を受けた後は、無線従事者免許証の申請とアマチュア局の開局申請が同時に行え(開局申請書類は簡単な記載内容になる)、開局後は特別な手続きなしでデータ通信や動画交信なども楽しめるようになるほか、自宅のリビングからシャックの無線機を遠隔操作するのも自由になる。アマチュア無線の世界にこれから入門する人にとっても、今アマチュア無線を楽しんでいる人にとってもメリットの大きな制度改革と言えるだろう。
この改正案について募集期間中に意見を提出したのは、JARL(一般社団法人 日本アマチュア無線連盟)やJARD(一般財団法人 日本アマチュア無線振興協会)、公益財団法人 日本無線協会などの法人・団体が8者と、アマチュア無線家などの個人が175者の合計183者だ。総務省はその意見を整理し、同省の考え方を付記したものを2月8日にPDFで公開した。
公開資料は75ページに及ぶ膨大なもので、賛成意見や反対意見のほか、総務省の方針や見解を確認する意見など多岐にわたっている。ここでは資料冒頭の「意見募集の結果(概要)」と、続く「提出された主な御意見の要旨と総務省の考え方」の一部、さらにJARL、JARD、日本無線協会が提出した意見がわかる部分を抜粋で紹介する。全文は総務省のサイトからPDFがダウンロードできる。
資料後半では183者から提出された意見と総務省の考え方を掲載している。その中のJARL、JARD、日本無線協会が提出した意見部分は上記のとおり
総務省はこの意見募集の結果、若干の修正を行った上で今回の改正を進めることを決め、2月8日に開催された電波監理審議会へ改正案の諮問を行い、「原案を適当とする」旨の答申を受けた。
今回の改正について総務省は次のように表明している。
『本改正案により、アマチュア無線の体験機会や活用機会の拡大、デジタル化の推進、免許手続の迅速化や制度の簡素合理化による申請者の負担軽減や申請処理期間の短縮、行政の効率化等が行われ、科学技術やワイヤレス技術に対する理解と関心を深めるとともに、アマチュア無線や電波に興味・関心をもってもらうことにつながり、ワイヤレス人材育成の裾野が広がることが期待されます。総務省においても、アマチュア無線関係団体と連携させていただきながら、本改正案の周知広報に努めてまいります。
アマチュア無線を活用したワイヤレス人材育成の裾野拡大は、制度改正のみでなされるものではなく、アマチュア無線界の方々の自主的・積極的な仕組みづくりや取組、周知広報等が、これまで以上に重要なものとなってくると考えております。その活動等により、ワイヤレス人材育成の裾野拡大が図られるとともに、アマチュア無線の積極的な活用やその地位向上につながり、地域や社会全体に貢献することが期待されております。』
またJARLは、この意見募集結果の公表と今後の制度改正の施行について、「JARLとしても、本制度改正に関し広範な周知広活動を推し進めるとともに、本制度改正を生かし、アマチュア無線を楽しむ方がさらに増えるよう、そして社会においてアマチュア無線がさらに貢献できるよう、各種の事業活動に積極的に取り組んで参ります 」というステートメントを2月9日に発表している。
気になるのは改正された内容が実際に施行される時期だが、総務省は電波監理審議会からの答申を受け、「速やかに関係規定の整備を行う予定です」としている。
具体的には、今年3月に関係省令等の改正を行って官報に告示。その上で「無資格者のアマチュア無線体験制度の改正」などは3月中に施行する。さらに「無線従事者免許証と無線局免許状の同時申請」、「無線局免許状への一括表示記号の採用」、「無線局申請書の特例様式実施」、「アマチュア局特定附属装置関連」、「電波の使用区別(バンドプラン)改正」などは、官報告示からおよそ半年後の今年9月から施行とする方針を表明している。
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