アマチュア無線の今と昔
2023年2月1日掲載
連載第3回目になります。今回は無線機を中心としたハードウェアについて、昔と今で変わったところ、変わっていないところ、カムバックハムの目線で考察してみたいと思います。
昔、HFから430MHzまでオンエアしようとしたら、無線機はHF、50MHz、144MHz、430MHzと4台用意する必要がありました。これだけ揃えると場所も必要ですし、何よりお財布の負担が重くなってしまいます。ところが最近では、1つの筐体にHFから430MHzまで入っているトランシーバーが発売され、中にはセパレートタイプも発売されています。
これならばモービルの中からHFから430MHzまで運用することも出来てとってもFBです。HF機に目を向けると、ほぼ例外なく50MHzが付いています。自称6mマンの私としては、HF機の高機能を50MHzで全部使えるので、とても嬉しいです。
余談ですが、50MHz帯は、昔はHF機の高機能を使いたくて、HF機+トランスバーターで運用していたものですが、今ではそんなことをするまでもなく、最初から50MHzが付いてますよね。いい時代になったものです(笑)
さて、モービル機だけではなくハンディ機(ポータブル機)もオールバンド・オールモード機が発売されています。特にアイコムのIC-705を見て、カムバックを決めた人は私だけではないでしょう(苦笑)。
HFから430MHzまで楽しめるIC-705
近々発売になるIC-905とIC-705をシャックに置けば、超省スペースで1.8MHz~10GHzのオンエアが可能になりますね。
新スプリアス規制の話題が出てきてからしばらく経ちますが、私は一昨年に復活したので、古い無線機が使用出来なくなる(といわれている日の)直前でした。実際には当分の間は使えるとのことで(ただし新規に開設は不可)OM諸氏はホッとされたのではないかと思います。
仕事関係で古いETCが使えなくなる、という話題がありましたが、なぜ使えなくなるのか、詳しい説明があまりなかったように思います。アマチュア無線にカムバックして、新スプリアス規制の話題に触れていくと、ETCも同じ理由だったことがわかりました。なんたってETCも電波を送信してますから。
ETC車載器も電波を送信しているので規制対象になる
でも「当分の間」という玉虫色の解釈で、ETCも延命出来ています。アマチュア無線業界も延命できたからなのか、古い無線機でQRVされている方を見受けます。
HFの旧スプリアス規制の無線機(JARDのスプリアス確認保証の非対象機種など)は、ネット等を見る限り、アンテナチューナー(アンテナカプラー)やフィルターなどと併用し、スプリアス発射及び不要発射の測定データ等を届出することで、規制をクリア出来ることが多いそうです。
アンテナカプラーの一例
休日でもオンエアしている局が少ない1200MHzですが、現在、新品で購入出来るハンディ機がなくなってしまいました。既にモービル機もありませんので、現行機種ではIC-9700が唯一の1200MHzに出られるトランシーバーになりました。
今年のQSOパーティで、私は密かに1200MHzのCWで20局と交信しようと目論んでおりましたが、残念ながらFMで数局とQSOしただけに終わってしまいました。QSOパーティでつながった局長さんに伺いましたが、1200MHzではFMでも20局は大変だったみたいです(ちなみに私の運用場所は神奈川県相模原市です)。
私のところでは、430MHzのFMが非常に賑わっており、週末やコンテストともなると、空き周波数を探すのが大変です。このうちの半分、いや1/3でも1200MHzに移れたら、賑やかになるんじゃないかと思うのです・・・。
各メーカーさん、頑張って1200MHzもモービル機とハンディ機を作ってください。お願いします!
いまや希少な1200MHzモービル機IC-1200
今のパソコンには無線LANが当然のように組み込まれています。おかげでインターネットへの接続も容易になりました。さて、イマドキの無線機には、USB端子、LAN接続端子、そして無線LANへの対応、さらにはBluetooth内蔵のものも発売されています。こうなると無線機というよりはパソコンって思ってしまうところが、浦島太郎なんでしょうね(苦笑)。
無線LANが使えるIC-705の設定画面
私も使っているIC-705はD-STARのターミナルモードを使えば、アンテナがなくてもアマチュア無線が楽しめてしまいます。こりゃパソコンですね(笑)。
そこまで行かないまでも、パソコンとUSBケーブルで接続することで、FT8等のデジタルモードが容易にできるのは嬉しいところです。昔じゃ考えられないですよね。
さらにRTTYも外部装置を付加することなくパソコンだけで出来るようになったのも、無線機のPC化によるものだと思います。デジタルモードだけじゃなくて、無線機のコントロールも出来るなど、無線機とパソコンの垣根がどんどん低くなっていく感じがします。
デジタルモードではないですが、CWの運用もパドルや電鍵を使わずにPCだけでやれる時代です。しかもそのままログに記入出来るなんて、省力化の極みですね。
その昔、ブラウン管搭載の無線機時代にもバンドスコープはありました。当時のバンドスコープは感度も悪く、あまり実用にはならなかったように記憶しています。
私の記憶では、バンドスコープが実用的に使えるようになったのは、IC-780が最初だと思います。その後、改良が進み、今のバンドスコープは、ロングパスの弱い信号が見えるようになり、スペアナに匹敵する分解能を持つものも出てきました。
スペクトラムスコープを搭載したIC-7300の画面
バンドスコープ+デュアルワッチで、スプリット運用時の利便性が向上し、珍局とQSO出来るチャンスが広がったように思います。
現在、IFのDSP化が進んでいます。アナログの高周波信号をA/D変換でデジタル信号にし、それを処理することで、CWフィルターなど、今までオプションであったものが必要なくなってきています。それは、デジタル処理することで、フィルターの帯域を自由に設定できるようになったからです。これにより、今までは高価なクリスタルフィルターを何個も買わなければならなかったところが、標準装備されるようになりました。だからといって、値段は高くなっていないのが、庶民には有り難いですね。
古い無線機を安く買えても、フィルター類のオプションがないと、後から揃えることで、かえって高くついてしまったりもします。
昔は10Wが一番安く、100W機が一番高かったのですが、現在は、どれも同じ値段であることがほとんどです。これは、回路構成は100W機と同じにして、途中でゲインを絞るなりしてパワーを抑えているからです。ハードウェアが一緒なので原価は一緒です。そのため、価格差がなくなってしまいました。
100W機の構成で10W出力というのは、電波のクオリティ面では有利になりますが、効率面では良くないことが多く、消費電力はパワーのワリに多めです。昔に比べるとアマチュア無線人口も減っています。各メーカーもコストを考えると、これはやむを得ない面もあろうかと思います。
まあ、バッテリーを電源にして移動運用をしない限りは、あまり影響はないと思います。というか、バッテリー駆動=車での移動ではない、だと思いますので、IC-705のようなハンディタイプを選ぶほうが、重量面でもいいと思います。
これはハードウェアだけに関係したことではありませんが、HFで許可される出力が1アマは1kW、2アマ200W、3アマ50Wと大きくなりました。
200W機の例 IC-7851 憧れますね~hi アイコム株式会社 Web Siteより
さすがに4アマは10W据え置き(50MHz以上は20Wになりましたけど)ですが、4アマ(旧電話級)の出来た時の背景を考えれば、当然かも知れません(良く据え置いたな~とは思いますけど)。
移動する局の上限が50Wなので、移動運用で考えると1/2アマと3アマの差は、10/14MHzに出られるかどうかだけ、となります。2アマは養成課程(eラーニング)で取れるようになりましたし、電気通信術(電信の受信)の試験がなくなりましたので、以前に比べると身近になりました。
いっそ1/2アマの移動局は100~200Wにしてもいいんじゃないかと思います。そうすることで、上級への移行も進むんじゃないかと思います。
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