新製品インプレッション
2023年7月3日掲載
今年4月に販売開始されたアルインコ株式会社製DJ-X100について月刊FBニュースで紹介しましたが、今回実機をお借りすることができたので、気になる使い勝手などについてお伝えいたします。
手にとって感じたのは「思っていたよりずっと軽い」でした。DJ-X100のキャッチコピーが「本格的なデジタル受信機能を、このサイズに凝縮」とあったため、勝手に重量があるイメージを抱いていましたが、実際に手にしてみるとその軽さに驚きました。カタログに「測定器を連想させるシンプルなデザイン」と書かれている筐体は、大きな表示と操作部がたいへんバランス良く、手になじむと感じました。またIP67の防水・防塵性能は、屋外での運用が多い受信ファンにとってはたいへん心強く感じます。
メンブレンタイプのキーボードは、フラットながらしっかりとした操作感があり、キーの割り当ても数字とモードやステップ切り替え等に絞られており、シンプルで使いやすい印象を受けます。
キーボードはシンプルで、文字が見やすい。
さらに特筆すべき特徴が、DJ-X100の表示部です。以前から「視認性を向上させるため敢えてモノトーンを採用」した開発陣の思い切りの良さに驚いていましたが、実機に触れてみると、さすが「航空機のグラスコックピットを参考にした」と表現するだけあって、細かな文字まで見やすいのです。単色表示ではありますが、背景色と文字色を自由に変更できるカラーTFTは、DJ-X100を「自分だけの1台に仕上げる」面白い仕様だと感じました。
ディスプレイは小さな文字も読みやすく、自分好みの色に変えられる。
充電とパソコンへの接続がType-C化されたのも、たいへん便利だと感じました。手持ちの機器類の多くがType-C形状なので、ACアダプタやケーブル類を兼用できそうです。
Type-CのUSBポートはパソコン接続だけではなく、充電も可能。
いよいよDJ-X100で受信してみます。
DJ-X100を最初に使うには、取扱説明書を見るより、Web公開されているビギナーマニュアルを参考にした方が便利でした。
https://www.alinco.co.jp/files/user/electron/dl/DJX100beginnermanual.pdf
DJ-X100のスキャンスピードは100ch/秒で、メモリもVFOも快適にスキャンができるのがうれしいです。VFOでは事前に周波数エッジを登録しておくことで、プログラムスキャンやリンクスキャンで効率良く目的の信号を探しやすくなります。
事前にプログラムした周波数エッジをスキャンしている様子。
メモリしておくと、バンクやバンクリンクの他、GPSメモリースキャンも可能。
DJ-X100を含む全てのレシーバーは、「周波数やモードの知識がなければ使いこなせない」のが正直なところです。しかしそこを解決して使いやすくするのが、「周波数情報」と「メモリ」の存在です。
周波数割り当てなどの情報は総務省のサイトなどでも公開されていますが、実際にメモリに登録するには、市販の情報誌を参考にするのが一般的です。
メモリの参考になるさまざまな情報誌。今後DJ-X100情報が充実されることに期待。
DJ-X100はメーカーサイトでメモリ編集ソフト:DJ-X100 Edit Toolが公開(無償)されており、さらに同サイトに公開されている「乗物関連データ3種」には「軍用エアバンド」「鉄道やバス/索道/軌道、船舶などの乗物」「民間エアバンド」に関するメモリチャンネルだけではなく、デジタルを含む「プログラムスキャン」用データも登録されているため、周波数やモードの知識がない状態でも、FSKタクシーデジタルや報道連絡波の受信にチャレンジできそうです。これらのデータをベースに、好みのメモリなどを追加していくことで、自分専用DJ-X100に進化させることができました。
メーカーのダウンロードサイト。編集して使うための乗物関連データも入手できる。
ただしDJ-X100 Edit Toolの「エキスポート」機能でcsvファイルにすると、バンク割り当て状況やステップ設定などが保存されませんでした。説明書に「エキスポートで作るcsvデータは全ての内容を保存するものではありません」とあるので、これも仕様と割り切るしかないのでしょう。幸いDJ-X100 Edit Toolの「新規挿入」や「貼付(挿入)」、「貼付(上書き)」を活用することで比較的簡単にメモリの追加や修正ができるので、csvデータは内容確認程度に留め、実際のメモリの追加/修正はDJ-X100 Edit Tool内で行うのがベストでしょう。
右クリックして、簡単にメモリの追加などができる。
書き込み範囲を指定してDJ-X100に書き込む。
DJ-X100はGPSレシーバーを搭載しているので、メモリに経緯度データが登録されている場合は最寄りのメモリチャンネルの検索やスキャンができる他、画面に位置情報などを表示できるのも楽しさのひとつです。
ディスプレイを「GPS表示」にした様子。
なお最寄りメモリチャンネルの検索などにはメモリに位置情報が必要なので、DJ-X100 Edit Toolの「経緯度設定」で事前に位置情報を登録しておきます。
最寄り検索やスキャン用の位置情報も、簡単に登録できる。
位置情報を含む信号を受信した場合は、DJ-X100のディスプレイで自分との位置関係を確認することも可能です。もちろんDJ-X100をパソコンに接続して位置情報表示ソフト:AlincoPositionViewerに表示させることもできますが、外出先で無線機のディスプレイで確認できるのは、結構楽しく感じました。
AIS受信データを画面に表示した様子。
なおAlincoPositionViewerはメインマップと3つのサブマップが表示できるだけではなく、8台までのDJ-X100が接続できるなど個人利用のレベルを超えているため、いつか複数のDJ-X100同時接続した時の様子を見てみたい、と興味が尽きません。
DJ-X100を色々触った感想は「楽しすぎて手放せなくなった!」です。
録再機能がない点やメモリ編集にやや手間取る点は残念ですが、デジ簡やD-STARなどの他、FSKタクシーや報道などのデジタル無線も受信できる点は、たいへん魅力的です。いつもはアナログ信号を受信している場所で、今まで聞いたことのないデジタル信号に出会える感動は、多少の不便さなど気にならないと言えるでしょう。
リンクスキャンで思わぬデジタル信号に出会えることも。
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