Monthly FB NEWS 月刊FBニュース 月刊FBニュースはアマチュア無線の電子WEBマガジン。ベテランから入門まで、楽しく役立つ情報が満載です。

PHONEで楽しむQRP通信

第1回 QRPでのいたずら? いや、実験です

JE1ECF 斎藤毅

2023年7月18日掲載


ご挨拶

ご縁がありまして、QRP関連について、連載記事を投稿することになりました、JE1ECF斎藤と申します。JE1のコールサインではありますが、1985年発給の再割り当て組になります。QRP通信(PHONE)の運用面でのレポートを主体に掲載したいと考えております。よろしくお願いします。

筆者のQRP運用との出会いはミズホ通信のピコトランシーバーMX-21S出力2W機(ピコ21)でした。アマチュア無線をはじめるきっかけは多くの皆様のようにラジオ少年からというものではありませんでしたので、開局1年後には、箱(無線機)についたスイッチ類をいじるだけのQSOに飽きていました。そんな中CQ誌の広告で目に留まったがピコ21でした。完成品とキット(調整済み基板にスイッチ類を自身ではんだ付けするもの)とが販売されており、後者を購入しました。知識が乏しかったものの自身で手掛けたリグを使用してのQSOは格別でした。

ある日のこと、21MHz SSBにて南鳥島のJD1YAAがQRVしており、10W機にマルチバンドバーチカルアンテナを使用してパイルアップに参加していました。当然のことながら、呼べど、叫べどコールサインをピックアップしてもらえません。

相手の信号が強くなってきたことに気づき、ピコ21に切り替えてダメもとでコールすると一発でコールバックがありました。以来、QRP通信にのめりこむことになりました。ここで余談になりますが2023年6月1日、JARDのスプリアス保証可能機器リストにミズホ通信のFX-7、MX-18S、QX-21が追加されました。MX-18Sを活用する筆者にとって朗報でした。どなたかがMX-18Sに対して「JARDの無線機器の電波測定サービス」を行って頂いたためだと思います。ありがとうございます。


所有するピコトラの一部

日本(JA)はQRP天国

QRP通信というと日本を含め、大概の国々では出力5W以下での通信を指します。しかし、国によっては出力10Wあるいは20WでもQRPという国も存在します。

そのような世界規模で見た場合、第4級アマチュア無線技士が操作できる出力10Wのメーカー製HFトランシーバーが数多く販売されている日本(JA)はまさにQRP天国といえるでしょう。1970年代、80年代のポータブル機というジャンルでは出力が1W、2Wのトランシーバーが当たり前でしたが、今は昔の話となってしまいました。

2000年代になり、ミズホ通信株式会社(QRPトランシーバーの代名詞と言われたピコトランシーバーを製造販売)の廃業後、アマチュア無線機を取り扱う3大メーカーのち2社がQRP通信を意識した製品を製造販売してくれたことはQRP愛好家(QRPerという)にとって非常に喜ばしいことです。

そんな恵まれた環境の中でハムライフを過ごしていますが6月17日は何の日でしょうか。そう、「QRPデー」です。例年この6月17日を挟む1~2カ月の期間、QRPデー特別記念局が1エリアを除く各エリアで運用されています。皆さんはQSOできましたでしょうか。

この特別記念局は6月17日のQRPデーとQRP通信の有効性をPRする目的で運用されていますが、QRPerの皆さんは日々QRPにてQRVすることでQRP通信の有効性をPRしており素晴らしいことだと思います。それと同時に交信相手がいてこそのアマチュア無線です、QRPの微弱な電波にお付き合いいただいている各局には感謝いたします。

以下は過去に筆者がオペレートをした1エリアで開局したQRP特別記念局のQSLカードになります。現在、1エリアでの開局はしておりません。


8J1P/JD1 オモテ・ウラ


8J1VLP/JD1 その1


8J1VLP/JD1 その2

QRPデーを意識した実験運用

今年はQRPデーにちなみ、ATT(アッテネータ)を使ったQRPp運用を十数年ぶりに行ってみました。IC-705を出力0.5Wに設定しATT 10dBを取り付けての出力50mWで。21MHz SSB、50MHz SSB、144MHz SSBでの運用です。使用したATTはクラニシのステップアッテネータ AT-563です。

昔と違って筆者の使用するアンテナもスケールダウンしていることもあり、交信局数は数局程度に終わってしました(21MHzは0局でした)。余談になりますがその昔、21MHz SSBにて出力30mW(ミズホMX-15+ATT 10dB)で運用していました。

相手局はベトナムで4エレ八木ではQSOにいたりませんでしたが、5エレに変更すると簡単にQSOできるようになりました。


※AT-563は現在、販売されていません。
現在、株式会社NATECからアッテネータは販売されていますが、
通過電力が250mWと小さくなっています。


21MHz帯での出力


50MHz帯での出力


144MHz帯での出力

アッテネータを使用した単純な運用では、リニアアンプのように送受信切換回路を介していませんので送信時、受信時共に信号が減衰されるため、受信が困難になることがあります。今回使用したアッテネータはスイッチでON/OFFができますが、送受信のタイミングで操作するのは面倒です。しかし、IC-705ではプリアンプ機能があるので、これを活用することで過去の運用と比較してストレスのない受信ができました。

この実験が終わった後は430MHz FMで0.5Wで運用しましたが、6月17日がQRPデーあることを知らない人が多いことに気づかされました(ちょっと残念)。


6月17日運用のQSLカード

QRP通信はアンテナが命

先に述べたようにアマチュア無線は交信相手があっての趣味です。QRP通信ではコンディションやロケーションのほか、第一に考えなければならないのはアンテナだと筆者は考えます。

相手局の受信能力と自局が効率のよいアンテナを使用することでQSOが成り立つものと考えます。このことから、実はQRPで遊ぶということは広い土地を持ち、アンテナにお金を掛けられる財力のある方の究極の無線の楽しみ方かもしれません。

しかし、楽しみ方は千差万別です。財力ない筆者は財力のかわりに工夫することでQRPハムライフを満喫したいと考えています。例えば、HF帯や50MHz帯では水平偏波、144MHz帯や430MHz帯は垂直編波という概念がありますが、お手軽にホイップアンテナで運用する場合、あえて斜めに突き出して使用(設置)することで、受け飛び共に向上することがありますので、皆さんもお試しください。

また、この頃144MHz帯や430MHz帯の運用で感じることですが、常置場所では15mほどの同軸ケーブル介してGP(コメットGP-15)を使用し、移動運用では同軸ケーブル0.3mにホイップアンテナ(ダイヤモンドRH-770)を使用していますが、移動運用の方がQSOできる数が多いように感じます(極端な話、リグを地べたに転がした状態でもQSOが可能です)。

これを考えると同軸ケーブルのロスが関係しているのでは? 電力を効率よくアンテナに給電することが大事なんだなあと感じます。

今回は、これでおしまいです。
次回は、マリタイムモービルのお話を予定しています。
今後は、都電を貸し切ってのQRPミーティングを企画したいと考えています。

PHONEで楽しむQRP通信 バックナンバー

2023年7月号トップへ戻る

サイトのご利用について

©2024 月刊FBニュース編集部 All Rights Reserved.