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特別寄稿

カンボジア・アマチュア無線便り

JA3ULS(XU7AKJ) 木村千良

2024年8月15日掲載


XU7AMO NPIC Radio Club YL Op’s

XU7AMO NPICアマチュア無線クラブ

ライセンスを取得したNPIC(National Polytechnic Institute of Cambodia)の学生を対象に、今年の6月半ばから定期的に交信の実戦練習を指導することになりました。シグナルレポートの交換から始まり、名前やQTH、リグやアンテナの紹介、そしてファイナルを送るまで、かつて何十年か前に私自身がDX局と交信するために作った“QSO虎の巻”のようなものを準備しました。

実際に交信が始まると、自分たちが覚えたものと違うさまざまなフォネティクスが使われていたり、名前やQTHがコピーできないとかでオドオドしてしまい、ついにはフリーズしてしまったりすることも度々ありました。お相手くださった方々も戸惑われたことと思います。

それぞれがカンボジアの個人コールサインでQRVできればいいのですが、免許料などの高額費用(注1参照)は学生には大変厳しく、全員がクラブのコールサインXU7AMOでのオペレートとなっています。運用は毎週火曜日の現地時間12:00(05:00UTC、14:00JST)から、今のところ21MHz帯でSSBでの運用のみとしています。そのうちバンドコンディションの把握などもできるようになると、他の周波数にもQRVすることになるのではと思っています。

ぜひとも日本の皆さんにお相手いただき、カンボジアのYL・YMのアマチュア無線家を育ててくださいますようお願いいたします。


Iyさん


Daraさん



Daさん


Prekさん



Sreynouさん


Teyさん


なお、学生たちの運用するXU7AMOのQSLカードはしばらくの間、ダイレクトにてJA3ULSまでお願いいたします(QRZ.com参照)。QSLカードは、オペレータごとに何種類かのデザインの異なるものも準備中です。

注1
アマチュア無線の試験制度がないカンボジアでの無線局免許取得の過程と費用

①ARRL Examを受験(US$15)
②合格後USA免許取得(US$35)
③XU局免許申請(US$15)
④XU局免許発給(US$25)

なお、局免許は年単位で毎年免許更新費用としてUS$25が必要です。日本の局免許があれば①、②は不要で③からの手続きとなります。
《参考》カンボジアの一般家庭の月収は、平均US$200からUS$300程度と言われています。

第5回 ARRL Exam を実施

7月15日に第5回目となるカンボジアでのARRLアマチュア無線試験を実施しました。今回のVE (VE: Volunteer Examiner、ボランティア試験員)はNPICカンボジア人教員3名とリエゾン(連絡、代表)のDavid(AH0AM)、そして私(AB3HY)の5名によるVEカンボジアチームです。


真剣に問題に取り組む受験者

試験会場はNPIC校内の電子工学科の一室で27名の受験者があり、11名がテクニシャン、6名がジェネラル、そして4名がエクストラに合格という素晴らしい結果となりました。とりわけエクストラクラスの合格者4名のうち2名はNPIC電子工学科電気通信コースで学ぶ女子学生でアクティブなオンエアーが期待されます。


採点中


エクストラクラス合格の2人



合格者とVEの記念撮影

ハムフェア自作品コンテストに応募

以前モールス信号のことを学生の皆さんに話したところ大変興味を持ったようでした。ある日学生に呼ばれてラボに行ったところ、なんとモールス練習機なるものを作っていました。カンボジアでは手に入りにくいパーツは、3Dプリンタで作ったとのことです。その3Dプリンタも学生たちの自作品でした。スタンダードな縦ぶれ電鍵(米つきバッタ)とキーパドルまでセットされ、本体にエレクトロニックキーヤーのプログラムが内蔵されていました。打鍵結果がLCDディスプレーに表示されるほか、かつて電気通信術の電信送信実技試験を受けた時のように、流れる紙テープに長点・短点が棒と点で記録されるようになっているのには驚きました。


3Dプリンタから自作して、製作したモールス練習機

ちょうどハムフェア2024の自作品コンテストのアナウンスがあったこともあり、応募してみようということになりました。私がアナログ人間であることは学生たちもよくわかっていたのか、日本へ発送するまでは特に相談に来ることもなく改良を進めていたようでした。唯一大変困った様子で彼らが相談に来たのは、日本への発送費用のことでした。最も安い業者でもUS$130余りで、収入のない学生にとってはとんでもない額です。この件に関しては電気通信コース主任のUn先生(XU7AKM)のアイデアで、学長のポケットマネーで対応してもらうことで一件落着となりました。

7月末にJARLからEメールで連絡があり、賞を頂けることになりました。当日はNPICアマチュア無線クラブXU7AMOのリーダーの学生Sreynou(スレイヌウ)が授賞式に参加します。ハムフェア会場で彼女を見かけたらぜひ声をかけてやってください。よろしくお願いします。


審査結果が発表(JARL WEBより)

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