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日本全国・移動運用記

第107回 SHF帯で手軽に移動運用

JO2ASQ 清水祐樹

2024年8月1日掲載

6月1日に行われたMasacoさんのSHF帯運用で、筆者は神戸市東灘区に移動して5600MHzと10.1GHz FMでQSOしました。今回は、その設備を紹介します。

SHF帯のアンテナいろいろ

筆者はIC-905が発売される以前から5600MHz帯と10.1GHz帯を運用しており、用途に応じてアンテナを工夫していました。

遠距離との交信を狙うには、高利得のアンテナを相手局に向ける必要があり、最もよく知られているアンテナがパラボラアンテナです。2024年7月号の技術コーナー「SHFの世界/和歌山-大阪間のSHF山岳回折通信実験」の記事では、パラボラアンテナの使用事例が紹介されています。しかし、パラボラアンテナは大型で、運搬には制約があります。

パラボラアンテナの他には、多素子ループアンテナ(ループ八木アンテナ)と呼ばれるアンテナがあり、軽量でそれなりに利得があるため、2400MHz帯と5600MHz帯では、こちらを主に使用していました(写真1)。しかし、SHF帯のループアンテナの完成品は、現在では入手が難しくなっています。


写真1 SHF帯で遠距離交信を狙うために設置した多素子ループアンテナの例。左上が1200MHz帯、左下が2400MHz帯、右下が5600MHz帯。その下の10GHz帯は放射器のみをアンテナとして使用している。

2400MHz帯と5600MHz帯では、無線LAN用のアンテナを流用することもできます。しかし、無指向性のアンテナでは、FMでのQSOには力不足を感じることがありました。また、10GHz帯用アンテナの市販品は、なかなか見当たりませんでした。

SHF帯で手軽に使用できる、ログペリアンテナ(対数周期アンテナ)

6月1日の運用では、相手局が見通せる距離まで移動してQSOするため、高利得のアンテナは必要無いと考え、市販のログペリアンテナ(対数周期アンテナ)を使用してQSOしました(写真2)。指向性があるため、無指向性アンテナよりもフロント方向の利得は高いと思われます。

このアンテナは某有名通販サイトで購入したもので、商品名は超広帯域UWBアンテナとなっていました。なお、海外から発送されてくるため、注文から到着までに日数を要します。

本連載2023年11月号でも触れた通り、アンテナの仕様は1.35~9.5GHzとなっており、1200MHz帯と10.1GHz帯は帯域外です。実際に使用してみると、SWRは10.1GHz帯では十分に低く、1200MHz帯では高めで、バンドの上限(1300MHz)でSWRが下がる傾向にあったため、最も長いエレメントの両端を、アルミ粘着テープ(流し台などの隙間をふさぐもので、ホームセンター等のキッチン用品売り場で販売されている)で数mm延長することでSWRを下げることができました。


写真2 IC-905に取り付けて使用したログペリアンテナ(中:5600MHz帯、右:10GHz帯)。1200MHz帯は左の自作ヘンテナ。2400MHz帯のアンテナは運用予定が無かったため設置していない。

ログペリアンテナをIC-905に固定するため、当初はセミリジッドケーブルを使用していました。しかし、セミリジッドケーブルは折れやすく、入手が困難です。代替手法として、SMAコネクタ付きの同軸ケーブルをアクリル棒に固定する方法を採用しました(写真3)。

筆者がIC-905を通常の設置方法で使用する場合はSMAコネクタが上向き、車の屋根などに水平に置いて使用する場合はSMAコネクタが横向きになります。ログペリアンテナはSMAアンテナが横向きに付いているため、SMAコネクタ付き同軸ケーブルはL字型とS字型(Z字型)の2種類を用意して使い分けています。


写真3 IC-905にログペリアンテナを直結するための、コネクタ付き同軸ケーブル。左がS字(Z字)型、右がL字型

同軸ケーブルは3D-2Vを使用して、アクリル板(幅10mmまたは15mm、厚さ3mm)に穴を開けてインシュロックタイで固定しました。このアクリル板は、オーダーメイドの加工サービスを利用して10mmおよび15mm幅にカットされたものを使用しました。

同軸ケーブルをインシュロックタイで固定しただけではガタつきがあるため、コネクタの周囲を「エポキシパテ耐熱用(あるいは金属用)」で固めました。このパテは主剤と硬化剤が「巻き寿司」のように円柱型の2層になっていて、必要な量だけ輪切りで切り出し、手で捏ねて混ぜ合われると硬化が始まります。硬化後は金属のような硬さになります。

IC-905を車の屋根に置いて使用する場合は、IC-905にシリコンゴム足を貼り付けて車に傷が付かないようにして、IC-905を置く向きを変えてアンテナを回しました。この方法は、車の屋根の高さから相手局が見通せるロケーションでの使用に限られるものの、三脚よりも設置の手間がかからず、風の影響を受けにくい長所があります。

6月1日の運用では、5600MHz帯と10.1GHz帯でMasacoさんの運用が始まって1回目のCQで呼んでみると、いずれもパイルアップに呼び負けしました。その後、数回のリトライで、十分な信号強度でQSOできました。本格的なアンテナと比較すると利得が低いことは明らかですが、Masacoさん以外にも複数の運用局が受信できました。

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