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第八回 CM形電力計


Dr. FB


大阪の日本橋、東京でいうなら秋葉原のような電気街。とあるアマチュア無線ショップでレトロなパワー計を見つけた。SWRも測れるようだ。メーカー名の印字は「ham」としか印字がない。「ハムセンター」のことかと思うがよくわからない。50年ぐらい前にASAHI SEIKO(旭精鋼産業)という会社があり、そこが販売していたME-IIBにたいへんよく似ている。動作するかどうかは不明だったが、購入することに。店主に「いくらか?」と尋ねるも、「古いものなので、お金は要らない」という。要は「持って行け」というのである。いくらかでも払うと押し問答をしたが取ってもらえなかった。その言葉に甘えることにした。


図1 「金は要らない、持って行け」といわれたレトロなパワー計

1. SWRを求める1アマの試験問題にチャレンジ

2007年(平成19年)12月期の1アマの試験に、CM電力計で測定した進行波電力と反射波電力の値からアンテナ系のSWRを求めよ、といった問題が出題されています。図2に示したものがその問題です。今回は、そのCM形電力計について説明します。時間があれば問題の解答にチャレンジしてみてください。解答は末尾に掲載します。


図2 2007年(平成19年)12月期の1アマの工学問題
(日本無線協会のホームページより引用)

2. 二種類のパワー計

パワー(電力)計には大きく分けて二種類あります。一つは終端型電力計、もう一つは通過型電力計です。前者の終端型は送信機やリニアアンプの正確な出力測定に、後者の通過型は送信機とアンテナの間に挿入して進行波電力と反射波電力を測定するのに使われます。さらに比較的小さい電力を高精度で測定できるセパレート型というのもありますが、主に研究開発等で使われており、我々アマチュアには縁遠いので省略します。

終端型電力計は、メーター内に周波数に対して抵抗値の変化しない無誘導抵抗が負荷として組み込まれています。その負荷抵抗で消費する電力のほんの一部を取り出し、それを検波してメーターを振らせています。抵抗の代わりに熱電対に高周波電力を消費させそのジュール熱の消費電力をメーターで振らせているものもあります。終端型電力計で電力を測定するには送信機あるはトランシーバーを直接電力計に接続しますからQSOしながら電力を測定することはできません。

一方、通過型電力計は、QSOをしながらでも送信電力を測定することができます。また、送信機とアンテナの中間に接続することで送信機からアンテナへ供給される進行波電力とアンテナから送信機へ戻る反射波電力も測定することができ、進行波と反射波の電力からSWRも分かります。このとき電力計の指示値は終端型電力計ほど正確なものではないことを理解しておく必要があります。といいますのも、負荷に相当するアンテナは必ずしも純抵抗の50Ωでないからです。通過型電力計でも冒頭に掲載した写真のように負荷にダミーロードを接続することで比較的正確な電力を計測することができます。


3. 通過型電力計の原理

日本橋のお店から持ち帰ったメーターを分解しました。図4(a)~(c)がその写真です。


図4(a) 通過形パワー計の電力が通過する部分の構造


図4(b) 上面から見た写真、図4(c) 底面から見た写真

図4(a)を見ると内部に三本の導体が取り付けられています。中心の太い導体は、無線機側(TX)とアンテナ側(ANT)に接続するコネネクターの中心に接続されています。この中心導体の両側に平行に配置された二本の導体も見ることができます。これら二本の導体は、ピックアップ線と呼ばれており、中心導体とは電気的にCM結合※を構成しています。(※後述)

中心導体に高周波電力が通過すると、CM結合にて両サイドのピックアップ線にも微小な高周波電力を生じます。これらピックアップ線(導線)で生じた進行波電力に対する電圧と反射波電力に対する電圧をそれぞれダイオードで検波し、その電圧をメーターで振らせることで送信機の電力(W)やSWRが分かる仕組みになっています。


図5 実物を見て描き起こした内部の回路図

4. CM結合について

CM結合のCは、Capacitor(容量、コンデンサ)のことです。Mは、Mutual Inductance(相互インダクタンス)のことです。この通過型電力計の中には、どれがCでどれがMといった具体的にコンデンサとコイルが見えているわけではありませんが電気的にCとMで構成されたCM結合の回路が組み込まれています。それが図4(a)の写真で示した中心導体とその両端のピックアップ線です。

この内部を回路図で示したものが図5です。ピックアップ線の片側の端を抵抗で終端することでCM結合の働きにより、ピックアップ線に流れる電力は方向性を持ちます。送信機(TX)からアンテナ(ANT)に向かって高周波電力を送り込むと、図4(a)で中心導体より上側のピックアップ線は進行波に対して電力を生じます。しかし反射波に対しては電力を生じません。一方、中心導体より下側のピックアップ線では反射波に対して電力を生じますが、進行波に対しては電力を生じません。この原理を応用したものがCM形電力計です。

最近ではSWRメーターの小型化やコストダウンもあり、中心導体と両サイドのピックアップ線の代わりにトロイダルコアにコイルを巻き、そのコイルで進行波と反射波の電力を検出ものが主流です。下の図8は、クラニシのRW-2102Lの内部写真です。点線で囲ったコイルの部分がCM結合の部分です。

5. SWRの測定

図5で示した回路図で、FWDとGND間には進行波電力に対する電圧を生じ、またREVとGND間には反射波電力に対する電圧を生じます。これら進行波電圧と反射波電圧の値が分かるとSWRを算出することができます。これが冒頭に示した1アマの試験問題です。実運用ではいちいち進行波電力と反射波電力の値からSWR値を計算しなくてもよいように、その昔は図6に示すようなチャートが付属されていました。例えば50Wの電力をアンテナに送り、そのときアンテナから2Wの反射波電力があればSWRは1.5であることがこのチャートから読み取れます。


図6 進行波電力と反射電力の値からSWRを求めるチャート
(BIRD 43型パワー計に付属されていたチャート)

6. 再び1アマの問題

CM形電力計の実物と原理を少し学んだところで再び1アマの試験問題を見てみましょう。下に示した問題がそれです。チャレンジしてみてください。解答は末尾に掲載します。


図7 2018年(平成30年)4月期 1アマ工学
(日本無線協会のホームページより引用)

7. SWRメーターの製作記事

日本橋で入手したSWR計を分解し、それから回路図を起こすと「これなら何か自作できそうだ」と思えてきます。SWR計の製作記事はいろいろな雑誌で見ることができますが、アイコムのホームページに連載されていた読み物BEACONの中にも製作記事と動作原理も掲載されていた記事を発見しましたので下にそのURLを参考に記します。
https://www.icom.co.jp/beacon/kousaku/001267.html

8. 別のメーカーのSWRメーターの内部構造

クラニシ(現在は存在しません)のSWR/WATTMETER RW-2102Lの内部を撮影したものが図8です。前述した中心導体とその両端のピックアップ線はありませんが、中心導体はPCB上にパターンで作られており、進行波と反射波の検出はトロイダルコアで巻いたコイルでまさにCM結合で検出しています。このメーターの回路図も参考で図7に掲載しておきます。


図8 クラニシ SWR/WATTMETER RW-2102Lの内部構造


図9 クラニシ SWR/WATTMETER RW-2102Lの回路図(付属の取扱説明書より抜粋)


図10 クラニシ SWR/WATTMETER RW-2102Lの取扱説明書に記載の動作原理

2007年(平成19年)12月期1アマ工学の解答
答え 3番 SWR=2.0

2018年(平成30年)4月期 1アマ工学の解答

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