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今月のハム

JO2MLC 村井千鶴さん

愛知県名古屋市にお住まいのJO2MLC村井千鶴さんがアマチュア無線を知るきっかけとなったのは、ボーイスカウト活動だった。村井さんは、アマチュア無線家になる前から、日本ボーイスカウト愛知連盟にて「リーダー」を務めている。ボーイスカウト団員たちは、キャンプやハイキング、登山の途中に他のグループと連絡を取る手段としてアマチュア無線を利用しており、その活動の中で養成課程講習会を受講して、1990年に旦那さん、お子さんたちと共に4アマを取得した。当時、旦那さんは村井さんのボーイスカウト活動をサポートされていて、お子様たちはスカウトとして活動中だった。以来、村井さんと旦那さんは局免許を切らさずにずっとアマチュア無線を楽しんでいる。村井さんは、現在JARL愛知県支部の役員を務めているが、ボーイスカウトの他のリーダーからJARLを手伝ってほしい、という依頼を受けたことがきっかけだったという。村井さんの人生にとって、ボーイスカウトは切っても切り離せない存在だそうだ。

現在アマチュア無線のオペレーションそのものは活発にしていない、と話す村井さんがかつて熱中していたのは、レピーターを使った交信だ。レピーター交信の魅力は、大げさな設備がなくても、インターネットを介して世界中の無線局と繋がれることだという。シンプレックス通信とは異なり、多くの人がワッチしていることから他者からの監視の目が厳しいと知らされていた村井さんは、自分から声を発する前に、自宅からアクセスできるJR2VKレピーターをよくよくワッチしていた。それでもやはり最初の交信はとても緊張したそうで、慌てて自分のコールサインを言い忘れてしまった。そのときは、すぐにお叱りを受けたと話す。しかし、失敗は成功のもと。この経験をしたことで逆に迷いが吹っ切れてしまい、レピーター交信を楽しめるようになったそうだ。また、初めは多くの人がワッチしているという状況に困惑していたが、その状況が逆に功を奏し、村井さんの声を聞いたたくさんの人にコールしてもらえるようになった。アクティブに運用するようになると“D-STARクイーン”というニックネームで皆が村井さんを歓迎してくれた。かつてはJR2VKレピーター繋がりでできたハム仲間を自宅に招き、コーヒーを飲んだり、タコ焼きパーティーをしたりと楽しんだそうだ。


現在の村井さんのシャック。IC-U1、ID-91、IC-7100が並んでいる。


かつては高台のロケーションの良いところで2F建ての一戸建てに住んでいたそうだが、その家は長男に譲った。
現在は旦那さんとふたりで、のんびりと平屋(写真)で暮らしている。

そんな村井さんだが、上級ハムの資格取得には大変苦労をされたそうだ。ある時、レピーターを通じて知り合った1アマのYL局から、「村井さんも、上級ハムになってみませんか?」というお誘いを受け、モールス信号のテープをもらった。村井さんは、せっかくいただいたのだから、と家事の合間を縫ってテープを何度も聞き、ついにはモールス信号を解読できるようになったという。特に周りに相談することもなく、難しい無線工学も自分なりに勉強して2アマ受験にチャレンジ。しかし、当日のモールス信号受信の実技で想定外のことが起こってしまった。極度の緊張のため、1文字取り逃してしまい、焦りから次の文字も、その次の文字も聞き逃してしまった。「受信する文字列が文章になっているということを知っていれば、1文字を取り逃してもリカバリーできたのに…悔しい思いをしました。」と村井さんは話す。2アマチャレンジの結果は不合格。4アマ取得から3~4年後の出来事だった。

それ以降、長い間再チャレンジの意欲は湧いてこなかったそうだが、数年前から、周りのJARLスタッフがみな上級ハムであることが気になってきた。昔と異なり、2アマ養成課程講習会があることを知った村井さんは、3年前に再チャレンジを決意。10日間、必死で講習会に通い続けた。養成課程の半分が過ぎたころ、先生がホワイトボードに書き連ねる公式のあまりの難しさに途中で逃げ出したくなってしまったそうだ。しかし、主婦である村井さんには、家計を削って大金をはたいた講習会を諦めるという選択肢はなかった。幸いにも娘さんの旦那さんが理系だっただめ、平方根や対数の計算を教えてもらいながらなんとか最終日まで通うことができた。結果は見事合格。村井さんは晴れて、第2級アマチュア無線技士となったのだった。自宅の無線設備をパワーアップしたい、という思いではなく、ただひたすら昔に経験した悔しい思いを晴らすために頑張ったそうだ。合格後はJARLの集まりがある度にたくさんの人から祝福の言葉をもらったという。

村井さんにとってのアマチュア無線の醍醐味は、“人とのつながり”に尽きる、と話す。携帯電話の普及とともに周りでアマチュア無線をする人はすっかり少なくなってしまったが、今でもお花見や忘年会でレピーター仲間との交流は続いている。また、JARLの活動に積極的に参加するようになり、さらに人脈が広がった。「もちろん、全ての人とうまくいくわけではないんです」と話す村井さん。2005年に開催された愛知万博では、JARLが開設した特別記念局8J2AIのブースでボランティア活動を行った際、正義感からルールを守らない他のメンバーと言い争いになったこともあった。しかし、そんな経験も彼女にとっては良き人生経験の一部となった。「多種多様な人がいますから。喧嘩を通じて人との接し方の勉強をしたんです。アマチュア無線を通じて、良い経験をしましたよ。」とにこやかに話してくれた。この特別記念局の開設にあたっては、JARLとして博覧会協会や無線機メーカーとの交渉などを1年以上も前から続け、結果的には特別記念局を会場内に、無償で開設することができた。また、無線局の運営管理責任者となった村井さんは、3月25日の8J2AI開局から9月25日の閉局式までの185日間一日も休まず、来訪者の応対、博覧会協会との連携や調整、ボランティアスタッフの募集と日程調整や会場入場証の手配と配布、外国人運用者の対応、工作教室の参加者募集や調整など、様々な場面において全てボランティアで活動された。

愛知万博以外で、アマチュア無線に関連する忘れられない思い出として挙げてくれたのは、2015年、山口県のきらら浜で開催された「第23回世界スカウトジャンボリー」だ。世界スカウトジャンボリーとは、世界スカウト機構が主催する全世界のボーイスカウトの最大行事であり、もちろん村井さんもボランティアとして参加した。8N23WSJの特別記念局の運用を通じて、世界中のハムと友達になれたそうだ。村井さんは英語が話せないそうだが、アマチュア無線を通じて培った持ち前のコミュニケーション力を活用し、世界中のハムと簡単に打ち解けることができ、分かち合えたという。


第23回世界スカウトジャンボリーでのアマチュア無線スタッフの記念写真


第23回世界スカウトジャンボリー特別記念局のQSLカード

村井さんの今後の目標は、「幼い子どもたちや若者にアマチュア無線の楽しさを知ってもらうことです」と話す。愛知万博開催時から続く“おもしろ科学教室”や、フリップフロップ回路を利用したピカっと光る“モリゾー&キッコロ・ウィンカー”を製作する“モリゾー&キッコロ親子電子工作とサイエンス実験”は、万博のボランティアスタッフがメインとなって、電子工作の楽しさを東海地方の子どもたちに広めるためのイベントである。村井さんは、電子工作を通じてアマチュア無線に関心を持ってくれる子どもたちが増えるよう、これらのイベントのサポートをしている。ボーイスカウト活動でも、引き続き子どもたちにアマチュア無線の指導をしているそうだ。無線技術取得研究会では、4アマを取得した子どもたちがアマチュア無線の交信体験をすることにより、その楽しさや面白さを学んでいるそうだ。他のスカウト友達と一緒にアマチュア無線に触れ、楽しんでいる子どもたちの笑顔を見ることが何よりも嬉しい、と村井さんは話す。

また、もう一つの今後の目標は、第1級アマチュア無線技士になることだそうだ。「こうやってみんなが見えるところで宣言して自分を奮い立たせるのがいいんですよね、きっと。」と話す村井さん。問題集は購入したきり1度も開いたことがないそうだが、1アマのJO2MLC局と交信できる日が来るのは、きっとそう遠くはないだろう。

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次号は 12月1日(火) に公開予定

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