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特集2

第一部 欧州編
Radioaficionados(スペイン)
サイクル25が到来

月刊FB NEWS編集部抄訳


太陽活動は今後数年間にわたり徐々に活発になり、2025年7月頃にピークに達した後、その後は徐々に減少に転じることになります。ご存じのように太陽の表面に黒点が多く現れるほど、私たちが利用しているHF帯の電波の伝わり方がよくなり、よりエキサイティングにDX QSOができるようになります。


太陽黒点とは、太陽の表面上で周囲の他の部分に比べて温度が摂氏約3600度と低く、磁気活動が活発な領域のことです。すでにアマチュア無線家にとってエキサイティングな時期が到来しつつあり、ここ数年にわたり160mから10mバンドまで、電離層反射を利用した通信がよりより簡単にできるようになるとみています。紀元前4世紀、中国の天文学者であった甘徳氏(Kan Te)は、最初の星表カタログを作成する際に、太陽の表面に周期的に暗い斑点が現れることに気付き、それを不吉な予兆、つまり不幸の兆候であると考えました。



筆者: アルトゥーロ・アンドリュー(Arturo Andreu), EA5ME
ea5me(アットマーク)ure.es

2018年、「UREフォーラムで学んだこと」というシリーズで、サイクル23の終わりとサイクル24の始まりが迫っているという記事を次のように始めました。「さて...今回の太陽活動は深刻なようです。データによると今週は、太陽は眠りから目覚めようとしています。注目してほしいのは、木曜日にサイクル24が始まるかもしれないということで、もしそうなればバンド内の電波伝搬は間違いなく注目されることになります!」。今から12年前の2009年5月、EC1AMEのフェルナンド・カサノバ氏(Fernando Casanova)が、スペインのアマチュア無線雑誌(Radioaficionados)の「Meteorology and Propagation」フォーラムに「This Thursday begins solar cycle 24」と題したスレッドを立てました。

2020年半ば以降、私たちは同じような状況に置かれていると思っています。11年周期の太陽周期(ソーラーサイクル)、サイクル25が静かに始まっていますが、サイクルの最高ピーク時に太陽表面に現れる斑点の数については、科学者の間で一致した意見はなく、サイクル22のように非常に活発なサイクルになると考える人もいれば、最近終了したサイクル24のようにそれほど強くないと考える人もいます。

確実に言えることは、太陽活動は今後数年間に徐々に強くなり、2025年7月頃にはピークを迎えるということです。アマチュア無線にとっては、非常に興味深い時期に入ります。太陽活動が活発になると今後数年にわたって、160mから10mのすべてのHFバンドで電波伝搬がよくなり、例えば送信機の電力を抑えても今よりも遠距離の通信ができるようになると思われます。5ワット以下でQRP通信を行っている人にはグッドニュースであり、アマチュア無線を愛する我々にはとっても幸せな時期になります。

11年周期という太陽周期(ソーラーサイクル)


ソーラーサイクルとは何か、黒点とは何か、そしてソーラーサイクルや黒点が我々アマチュア無線家の使う電波の伝搬とどのような関係があるのでしょうか。

このような現象の究極の原因を求めて、科学者たちは現在も研究を続けていますが、太陽の磁場は極小から極大に向かって増大し、その後弱まり、また新たな極小に達してから再び増大します。磁極が逆になっても、また新しいソーラーサイクルを生み出しています。このような現象は、平均して11年周期でやってきます。これを「ソーラーサイクル」といいます。

磁気が最大に近いとき、太陽表面の活動は非常に活発になり、多数のダークスポットが観測され、太陽フレアと呼ばれる巨大なエネルギーの爆発が起こり、太陽コロナの誘発で何百万トンもの燃える水素が巨大な速度で宇宙に放出されます。

太陽の表面に多くの斑点が現れるサイクルには、アマチュア無線家に割り当てられたHFの全バンド帯において電波の伝わり方がよくなる現象を見ることができます。一方、太陽表面に斑点がない、あるいは非常に低い太陽活動の時には、特にHFハイバンドと呼ばれる15〜30MHz、すなわち21mバンドから10mバンドにかけての伝搬が困難になり、通信も散発的、あるいはオープンになってもすぐにフェードアウトするようになります。

このソーラーサイクルの谷間では、HFローバンドと呼ばれる40、60、80、160mバンドがやや盛り上がりますが、20mバンドでもオープンする時間は短くなります。それでも太陽活動は依然として活発です。

太陽黒点

黒点についてもう少し詳しく見てみましょう。

黒点とは、太陽の中心部から放出される熱の一部が太陽表面に到達するのを妨げるような激しい磁気活動によって、太陽表面の温度が他の部分よりも低くなっている(摂氏約3600度)領域のことです。この現象を理解するために例え話を持ち出すと、水の入った鍋を火にかけると泡が立ち始めます。最初はゆっくりと、その後徐々に強くなり、次々に鍋の縁から溢れそうになるくらいに沸騰します。気をつけないと飛び出して火傷をしてしまうほどになります。火を止めると泡は消えていきます。

これと同じようなことが、11年周期の太陽の表面でも起こっています。成長した磁気エネルギーが黒点という形で噴出すると巨大な変動が起こり、破壊的なフレアが発生し、時には地球上の通信に深刻な影響をもたらす太陽嵐が発生します。また、巨大な変動はオーロラのような美しい現象も生み出します。太陽黒点は、ラテン語で「影」を意味する「アンブラ」と呼ばれる暗い中心部分と、それを取り囲む明るい「ペナンブラ」から構成されています。

紀元前4世紀、中国の天文学者である甘徳氏(Kan Te)は、最初の星カタログを作成しているときに太陽の表面に定期的に暗い斑点が現れることに気づき、それを不吉な予兆、つまり不幸の兆候であると考えました。数世紀後、ガリレオが望遠鏡で観測して以来、太陽黒点は天文学者たちの関心と研究の対象となっています。

マウンダー極小期

1645年から1715年までの70年間、まだラジオがなかった時代に当時の天文学者の観測により、太陽の表面から黒点がほとんど消えていたことがわかっています。この時期に起こったできごとの記録を丹念に調べて、この時期に黒点が少ないことを発見した科学者の名前にちなんで、「マウンダー極小期」と呼ばれるようになりました。

マウンダー極小期と呼ばれる30年間、天文学者は本来ならば4万個から5万個の黒点を観測するところを、50個程度しか観測できませんでした。その結果、1674年、1684年、1695年、1705年、そして1716年に黒点の最大値を示す11年周期のデータを得ることができました。

興味深いことに、マウンダー極小期は、15世紀から17世紀にかけての小氷期と呼ばれる最も寒い時期と重なっており、この時期には全世界で非常に厳しい冬が訪れていました。黒点が少ないことと冬の寒さや夏の涼しさには関連性があるということでしょうか。興味深いことですが、科学的にはまだ明確な答えが出てないようです。

電離層と電波の伝搬

ソーラーサイクルや黒点がHFの電波伝搬に与える影響はどのようなものでしょうか。ご存じのように地球の電離層にはF1、F2、E、Dの4つの層があります。それぞれの層についてみていきましょう。


F層:
この層は、DXや遠距離通信の愛好家にとって最も興味深い層です。この層は最も高い高度に位置しており、HF帯の周波数は、まさにその高い高度から地表に反射して戻ってくる電波を受信して通信するためより遠くまで到達することができるのです。

日中、この層は、高度140〜210kmのF1層と、210〜400kmのF2層の2つのサブレイヤーに分かれています。夜になると、この2つのレイヤー(層)は250〜300kmの間で1つの層になります。この層のおかげで、太陽活動が低いときでも夜間には40〜80mバンドで通信を確保することができるのです。

F層は、日中はもちろん、夜間、あるいはほとんどの時間帯で常に存在しています。太陽活動が活発な時期には、電離層のイオン化が進み、高度が高いため、前項で述べたように14MHz以上のHFハイバンドの電波が反射され、より遠くの地点で反射し地球に戻ってくる一方、太陽活動が低迷しているときは、これらのHFハイバンドにおける電波は、イオン化されていないF層で反射されずにむしろ通過して、地球に戻ることなく宇宙で失われてしまいます。

E層:
高度90〜140kmの範囲にあり、F層と同様に太陽活動の影響を受けます。ここでは、イオン化の密度が太陽光に大きく依存するため、夏場や太陽の南中時で最も活発になります。日中はD層ほどではないもののイオン化の密度が高く、夜になると密度が低くなり電波の透過性の高いものになります。

D層:
高度50〜90kmの範囲にあり、電離層の中で最も地表に近いところにあります。太陽活動が活発な時には、正午にイオン化が最大となり、地球から発射される1〜10MHzの電波のほとんどを吸収してしまうため、逆にF層にまで到達させて長距離の伝搬を防ぐことができます。夜になると、このD層は消滅してしまうか、イオン化が非常に低くなるため、HFローバンドの電波はこのD層を自由に通過してF層に到達し、そこで反射して長いホップで地球に戻り、大陸間の通信を達成することができます。


まとめ

太陽活動が活発な時期には、HF帯の信号はもとより、時には50MHzの信号までがD層とE層を通過し、強くイオン化したF層で反射されて最低でも4000km以上のジャンプを行い、また地球に戻ってくる状況を作ります。

これとは対照的に太陽活動が低いか、あるいは全くない時期には、F1層とF2層は地表から300〜400kmの範囲で単一の弱いイオン化したF層を形成し、電離層による電波の反射が10MHzまでの電波に限られてしまいます。この場合、存在していないか、あるいは存在していても非常にイオン化の低いD層によって電波が吸収されたり弱められたりすることはなく、特に20MHz以上のHFハイバンドの電波は宇宙空間で失われ、地表に戻ってくることはありません。つまりアマチュアバンドでいう17、15、12、10mのHFハイバンドではほとんど電離層による伝搬は期待できませんが、1~10MHzではそのチャンスはあります。


例えば、40mバンドでは、40mと80mバンド用のバズーカダイポールを使って、近年、午後遅くや夜間に、スペインから太平洋やインドの国々と簡単にQSOすることができましたが、太陽活動が活発な時期にはこのようなバンドでQSOをするのは困難です。

原則のような話ですが、白と黒の間には常にその中間のグレーゾーンがあり、電離層のイオン化も強くなったり弱くなったりします。今はまだ太陽活動が低迷している時期ですが、スペインでは数ヶ月前から特定の時間帯に10、12、15mバンドの伝搬がオープンされているのが確認されており、すでにいくつかのQSOの実績も出ています。というわけで、期待のサイクル25が始まったといえます。FBDX

<引用>
この記事は、スペインのアマチュア無線連盟URE(Unión de Radioaficionados Españoles) の機関誌Radioaficionadosの2021年7月号に掲載された記事です。本記事の翻訳と掲載はUREの許可を得て実施しています。翻訳は月刊FB NEWS編集部が抄訳したものです。この場を借りてUREに厚くお礼申し上げます。
Radioaficionados: https://www.ure.es/

This article was originally published in the July 2021 issue of Radioaficionados, the official journal of URE (Unión de Radioaficionados Españoles). The translation and publication of this article has been carried out with the permission of URE. The translation was abridged by the monthly FB NEWS editorial team. We would like to take this opportunity to express our sincere gratitude to URE.
Visit their website: https://www.ure.es/





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