新・エレクトロニクス工作室
電源の性能を確認するためには、電源用の負荷を用いて試験を行います。良く使われるのが電子負荷です。電圧と電流を読む事で、電源の特性を測る事が可能です。週刊BEACONで作ったNo.28 電源用ダミーロードとNo.135 電子負荷もそのような電子負荷でした。しかし、電子負荷は小電流や小電圧の電源には向きません。No.28では3V以下が測れませんし、No.135では200mAステップでの設定になります。従って前回のようなミニ電源のテストには、使えたとしても限定的な範囲になります。
そこで、このようなミニ電源には抵抗を並べて切り替えるのが得策ではないかと考えました。オームの法則をパソコンで行いながら、適当な抵抗値を計算して作ったのが写真1のミニ電源用ダミーです。抵抗を使っていますので、電子負荷と異なりプラスとマイナスを考える必要はありません。しかし、一応テスター用の端子と合わせるように、形式的に赤と黒の端子を使っています。もちろんデジタルテスターであれば、極性を間違えてもマイナスで表示するだけです。トラブルにはなりませんが、一応合わせるようにしました。それ以上の意味はありません。
写真1 作製したミニ電源用のダミー
抵抗と電流の計算を、エクセルでシミュレーションしてみました。この結果は、どの程度のミニ電源を対象にするかによって変わってきます。一般的な電源であれば、電子負荷にするのが良いのは間違いありません。ただ、その境界は難しそうです。
最初は写真2のようなW数の大きそうな巻線式の可変抵抗で作れないかを考えたのですが、これは最大で10Ωでした。数100Ωだと使えるのかと思いましたが、これは諦めました。可変抵抗で正確に測ろうとすると、電圧と電流を両方測らなくてはなりません。固定抵抗であれば電圧だけで全てを計算できます。このようなメリットとデメリットもあります。
写真2 巻線式の可変抵抗が簡単とも思いましたが・・・
次に抵抗を並べようとして、写真3のようなセメント抵抗をaitendoの安売りで購入しました。15Ω 5Wと2Ω 7Wだったのですが、どうしても全体的にしっくりしませんでした。エクセルを使って計算を行い、直列や並列の組み合わせを様々なパターンでシミュレーションした結果です。もちろん、直列と並列を組み合わせれば何とでも作れるのですが、操作性を考えると複雑な使い方はできません。そこで仕方なく100Ω 1Wを別に買い込む事にしました。100Ωは5Vで50mA流れますので、これを並べてONとOFFをするのが簡単で良さそうです。
写真3 セメント抵抗の安売りで入手したのですが・・・
図1の回路のように、100Ω 1Wと10Ω 5Wの抵抗をトグルスイッチで切り替えるという、極めて単純な回路になりました。トグルスイッチが多いとコスト的にもレイアウト的にも上手くありません。そこで100Ωの5個は個別にONするパターンとし、100Ωを5個パラにして1つのスイッチでONするパターンとしました。そして10個分の10Ωも2回路設けました。もちろん、トグルスイッチの数を最小限にするのであれば1,2,4,8,16・・・ とするのが良いのですが、使い勝手を考えてこのようにしています。これは好みと思います。もちろん使用するトグルスイッチの電流容量も考えなくてはなりません。小型のスライドスイッチでは無理がありそうです。
簡単な回路ですが、抵抗のW値だけは気にする必要があります。100Ωは1Wで、10Ωは5Wを使用しています。つまりこれで最大電圧が決まります。ミニ電源と言っても電圧が高くなり過ぎると使えません。V=√PRですので100Ω 1Wの場合10Vが限度となります。10Ω 5Wでは7Vが限度となります。そのあたりは数か月もすれば必ず忘れますので、作った時にしっかりと表示しておく事が必要です。これは私の事ですが、忘れると断言します。
抵抗は電流を流すと発熱し値が変化します。このような使い方ですので、多少の誤差は無視する事にしました。100Ωは100Ω、10Ωは10Ωとして計算しています。
入力端子以外に、テスター用の端子を付けました。専用端子がない場合、テスターを外付けするのは案外と面倒です。しかし、電圧計を内蔵するほどのものでもありません。そこでテスター用端子があれば、とても使いやすくなります。このように電圧が測れば電流はエクセルの表計算で算出できます。
注意すべきは、トグルスイッチにはそれなりに電流が流れます。電流容量を確認してから購入するのが良いと思います。手元にはジャンクのトグルスイッチもあったのですが、今回だけは新品で揃えました。ジャンクでは接触抵抗も気になるためです。普段はあまり使わないのですが、写真4のように基板上に固定しやすいタイプを使いました。接点の他に固定用の足が付いていますので、操作回数が多くなっても大丈夫でしょう。電流も100Ωで1Wですので1個で0.1Aが最大になります。100Ωが5個パラでも0.5Aです。10Ωは5Wを使っていますので、0.7Aが最大となります。使ったトグルスイッチは秋月電子で購入したもので、DC28Vで3Aまで流せますので充分でしょう。接触抵抗も20mΩ以下となっています。
写真4 基板上に固定しやすいタイプのトグルスイッチを使用
今回は珍しく、基板を作る前に写真5のようなアルミ板とLアングルを使って先に台を作りました。普段とは逆の順序になりますが、台のデザインを先に行ったためです。このターミナルの位置に合わせて実装図を書きました。このような冶具であれば、ケースに入れるよりもボードにするのが良いと思います。
写真5 先にアルミ板とLアングルで台を作製しました
基板は秋月電子のB基板を用いて作製しました。図2の実装図を作製しています。図3がハンダ面になります。使いやすいように配置しているつもりです。写真6のように基板を作製しました。このハンダ面が写真7になります。ターミナルへ接続するメッキ線が見えると思います。
図2 秋月電子のB基板を使用した実装図
図3 ハンダ面
写真6 このように基板を作製
写真7 ハンダ面
基板の完成後はボードに固定し、そのままメッキ線をターミナルにハンダ付けしました。テスター用の端子にも接続しました。このテスター用端子には電流は少ししか流れませんので、細いワイヤーで充分です。写真8のように組み立てが完了しました。この後でテプラで表示をしています。
写真8 配線が完了した様子
ついでですが、写真9のような専用の接続用ワイヤーも作りました。いくらミニ電源とはいえ、クリップで接続するのは問題と思ったためです。数100mA程度しか流れませんので、それ程太くしなくても充分です。しかし、目的からすると接触抵抗は避けたい部分です。
写真9 専用の接続用ワイヤーも作製しました
本機を使用し、前回のミニ電源を測定した様子が写真10です。このようにテスターの接続が簡単です。2Vの出力で測った結果が図4になります。5Vで測った結果が図5になります。抵抗の都合で電圧が低いほど細かく測定されます。これは測ってみて気が付くのですが、電圧が特に低い時には1個ずつ100Ωを入れなくても良さそうという事になります。逆に5Vではもう少し細かく測定したくなりますので、2個を直列にした200Ωがあっても良さそうです。まあ、操作が面倒になりますので難しいところです。
写真10 前回のミニ電源の測定
図4 前回のミニ電源 出力2V
図5 前回のミニ電源 出力5V
週刊BEACONのNo.116 0~8V電源も測ってみました。この記事の時には3V以下が測れませんでした。測っている様子が写真11です。この1V出力を測った結果が図6になります。このように1Vの出力でも測定可能です。もちろん、もっと低くても測定できます。細かくなり過ぎますので、初めに10Ωを入れても良いくらいです。測ってみないと気が付きません。5Vで測った結果が図7になりますが、これは週刊BEACONの記事で測った結果と相違はありません。
写真11 週刊BEACONのNo.116の測定
図6 週刊BEACONのNo.116の電源 出力1V
図7 週刊BEACONのNo.116の電源 出力5V
これで電子負荷では測れなかった範囲が測れるようになりました。電圧が高くなるとグラフが粗くなってしまいますが、何の問題も無く測定できます。電子負荷と異なり直接電流の設定ができません。抵抗の値で間接的に電流の設定をする事になりますが、エクセルに入力しながら測ってみると全く支障はありません。
測ってみて、10Ωは1個あれば十分だったかなと思いました。それよりも100Ωを2個直列にした200Ωがあっても良かったと思います。微妙なバランスですが、測る対象によっても変わりそうです。もちろん、この使用感が正解とは限りません。
前回の最後で「12Vのミニ電源も・・・」と書きましたが、すると専用の電源用ダミーが・・・ となります。際限がありませんが、それもまた楽しいのでしょう。
新・エレクトロニクス工作室 バックナンバー
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