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Short Break

ダイヤモンドアンテナ RHM12を自転車に取付けてもマッチングはとれるか


愛用の自転車に取付けたRHM12とIC-705

暦の上では立秋はとうに過ぎ、今日は二十四節気のひとつ、白露。とはいえ残暑がはまだまだ残っており油断大敵ですが、季節は確実に秋に向かっています。そうなるとさわやかなアウトドアでのオペレートを楽しむことができます。今回はIC-705にダイヤモンドアンテナ(第一電波工業株式会社)のRHM12で自転車モービルに挑戦します。

気楽なHFポータブル運用の計画

今回は、「フィールドで気楽にHFを楽しもう」をキーワードに自転車モービルを計画しました。使うリグはアイコムのIC-705、アンテナはダイヤモンドのRHM12です。両者ともコンパクトであるため、ポータブル運用には最適です。リグは付属のバッテリー運用とするため、最大パワーは5W。CQを出し、多くの局からパイルアップを受けることは全く期待していませんが、それなりに交信ができればヨシとします。アンテナの取付けから、取付け後のアンテナ特性も見ていきたいと思います。

(1) IC-705
IC-705は、アイコムから発売されてから4年ほどになるため、すでに広く知れ渡っていると思いますが、少し説明します。このリグでビックリすることは、このコンパクトな筐体で1.9MHzから430MHzバンドまでオールバンド、オールモードでオンエアできるということです。バッテリーパックでは最大5W、外部電源を使うと10Wまで出ます。これまでコンパクトボディの無線機は小型であるため、一つのボタンに多くの機能が割り当てられており、取説がなければ操作ができないといった難点がありました。このIC-705は違いました。同社の100Wの固定機IC-7300とほぼ同じように操作できますから、操作性はバツグンです。とりあえず操作が分からなければ、取説なしでもディスプレイを押しまくると操作できます。UI(User Interface)はよくできていると思います。


アイコム IC-705 (アイコムのHPより引用)

(2) RHM12
今回の自転車モービルのためのキーパーツです。IC-705がポータブル用であることから、アンテナもかさばらないポータブル用を選びました。このアンテナは同社の商品説明によると7~430MHz帯ポータブルスクリュードライバ型アンテナと記載されています。屋根の上に設置するようなHF帯のアンテナは、WARCバンドはカバーされていないものやオプションとなっているものが多い中で、このRHM12はWARCバンドを含むアマチュアの全バンドをカバーします。さらに別売のRHMC12を購入すると、なんと1.9MHz帯と3.5MHz帯もカバーします。また、非常通信周波数4630kHzにもオンエアできるようです。ポータブル用とはいえSSBでは120Wまで入力できるため、車での50W移動運用にも適しています。


第一電波工業(株)の RHM12(上)とそのオプションのRHMC12(下)

アンテナ基台の製作

愛用の自転車はクロスバイクと呼ばれるものです。すこしかっこ悪いですが、後部には通勤用のカバンを載せる金属製のかごを取付けています。このかごにRHM12を取付けます。


愛用の自転車 後部のかごにアンテナを取付ける

まずは、アンテナを取付ける基台から製作します。ホームセンターで下図①と②の金具を購入しました。材質は錆びないようにと思いステンレス製のものを購入しましたが、硬くてドリルで穴あけが大変でした。③はM-JとBNC-Jの台座付き中継コネクタです。M-J側にはRHM12を取付け、BNC-J側には無線機とアンテナを接続する同軸ケーブルを接続します。取付けに使用するネジ類もステンレス製を選びました。


アンテナ基台の製作に必要な部品(左)と完成したアンテナ基台(右)

アンテナ基台の取付け

アンテナ基台は荷台のかごに図のように内側に基台を取付け、表側から②の金具で押さえてネジ留めします。またアンテナ基台と自転車の車体とも太い同軸ケーブルに使われている編線等でしっかりアースを取ります。


かごにアンテナ基台を取付けた様子(左)    アンテナ基台と車体とをアース線で接続(右)

RHM12の取付け

RHM12とそのオプションのRHMC12の中には下の部品が入っています。今回は日中の自転車モービルということであり、運用のターゲット周波数を7~430MHz帯とします。


RHM12とRHMC12に含まれる部品

(1) 7~28MHz帯のアンテナの組み立て
RHM12の取扱説明書に沿ってエレメントを組み立てます。組み立てるといったほど複雑ではなく、ただエレメントをねじ込むだけです。①のコイル部がアンテナのベースとなる部分です。中にはコイルが入っており、外側の筒(シリンダー)が上下にスライドします。このスライド部分を伸ばすとインダクタンスは増加し、縮めるとインダクタンスは減少します。コイルのベース部にはM型オス(M-P)のコネクタが付いています。自転車のかごに取付けた基台のコネクタ(M-J)にこのコイルのベース部を、さらにこのコイルの先端にはロッドアンテナを取付けます。取付けはネジ式になっており、工具は不要です。組み立て、取付けはいたって簡単です。


(2) 50MHz帯と144MHz帯のアンテナの組み立て
組み立てそのものは前述(1)に記載した7~28MHz帯の組み立てのままで、何ら別のエレメントを取付けたり、外したりする必要はありません。ただ、周波数がHF帯に比べて高くなるため、エレメント長をコイルで調整するのではなく、ロッドアンテナの長さで調整します。

その目安となる長さにエレメントを合わせるための「調整紐(ひも)」がRHM12に同梱されています。この紐の長さは1.13mです。紐の長さに合わせてロッドアンテナの長さを調整すると、50MHz帯ではコイル部と合わせたエレメントの全長が1.46mとなり、1/4λのアンテナとして動作します。144MHz帯では、1.46mはおよそ144MHzの5/8λとなり理論的に共振することになります。

(3) 430MHz帯のアンテナの組み立て
430MHz帯アンテナの組み立ても実に簡単です。HF帯用に取付けたロッドアンテナを外し、その代わりに430MHz帯専用のエレメントを取付けるのと、コイルのベース部にラジアルを取付けるだけです。両者とも取付けはネジ式になっており工具は不要です。


430MHz帯のアンテナの取付け

ロッドアンテナと取り替えた430MHz帯のエレメント(=13cm)とコイル部(=34cm)とを合わせた放射器全体の長さは実測約47cmです。430MHz帯の波長(λ)は約70cmであることから、放射器の全長の47cmは、約5/8λとなり、理論的には共振することになります。よく考えられているアンテナです。

(4) 1.9MHz/3.5MHz帯のアンテナの組み立て
1.9MHz帯および3.5MHz帯を運用するには別売のRHMC12を準備する必要があります。RHMC12には、1.9MHz帯と3.5MHz帯用のコイルが入っています。運用したい周波数帯のコイルをスライド式のコイルとロッドアンテナの間に挿入するだけです。要はこれらの周波数の波長は長いため、ローディングコイルのインダクタンスを増加して、短縮率をアップさせるためのものです。


RHM12の調整

これまでのポータブル運用では、移動する毎にアンテナの設置条件が異なることもあり、共振点を見つけることに苦慮しました。今回もそのことが気になりNanoVNAを持参して調整に臨みました。調整は、まずは7MHz帯から順番に上の周波数にアップしていきます。

なお、今回の実験では、見た目もかっこよくポータブル運用を行うことも目的の一つとしていますので、取扱説明書にはカウンタポイズの接続も推薦されていますが、それを無視して自転車の車体のアースだけでどこまでSWRが低下するかを見ます。


アンテナ調整の準備

ロッドアンテナを最大に伸ばし、NanoVNAでその共振点を探りました。コイルのシリンダーを上下にスライドさせると共振点が変化する様子がNanoVNAの画面で確認できました。

RHM12の取扱説明書には、各バンドの共振点を見つけるコツとして無線機の受信音を聞きながら調整する方法が記載されています。


RHM12の取説に記載されている調整方法(RHM12の取扱説明書より引用)

この方法に沿って、各バンドの共振点を探るとだいたいの共振点を見つけることができます。7MHz帯の場合、受信ノイズが最大になる点でのSWRは3ぐらいありました。NanoVNAで共振点を探ると7.5MHz付近でした。共振点を下げるためにコイルのインダクタンスを少し増加させる必要があることから、シリンダーを少し上にスライドしました。再度NanoVNAで共振点を観測すると少し下がっており、これをニ、三回繰り返すとバンド内に収まり、SWRは約1.5になりました。

このようにNanoVNAと併用すると正確にSWRを低下させることができますが、たいへん面倒です。IC-705には、SWRを測定できる機能があります。これを使うことでNanoVNAは特に必要がないことも実験で確認しました。


また、IC-705を送信状態にし、パワーを出した状態でRHM12のコイル部分を手でスライドさせるとSWRが即座に確認できますが、5W程度でも送信中にコイル部に触ることで感電等の危険もあるためお勧めしません。

RHM12の調整結果

カウンタポイズを接続せず、自転車の車体だけでアースを取った場合のSWRを下に示します。調整は前述したように、まずは受信音でだいたいの共振点を見つけ、その後はIC-705のSWR測定機能で、SWRを最小に追い込む形で行いました。

下のSWR特性を見ると1.9MHz帯と3.5MHz帯は、SWRは3以上あり、これでは使えないことが分かります。自転車の車体だけではアースが十分でないと想像できます。7MHz帯もSWRは決してよくありませんが、約1.5であることからヨシとします。また、その他のバンドについては、1.5以下に収まっており期待以上の結果となりました。

430MHz帯は、調整する個所がありません。エレメントを取付けるとSWRは2近くありました。できることなら1.5以下に抑えたいところです。付属のラジアルの取付け角度を水平より30度ぐらい下に角度を持たせて取り付けるとSWRが下の画像のように1.2~1.3ぐらいとなりました。これは、取扱説明書には記載がありませんでしたが効果がありそうです。


ラジアルの取付け角度を変えるとSWRが低下した


カウンタポイズなしの各バンドのSWR特性

RHM12とIC-705による実運用

すこし小高い、オープンスペースに移動し、各バンドで実運用を行いました。アンテナはSWRが低下していれば電波は飛ぶというものではありませんが、まずは7MHz帯、CWでワッチを行い、CQを出している局を探してコールしました。相手局がスタンバイしてから少し間を空け、タイミングを推し量ったりしながらコールもしましたが残念ながら多くの強力な局のパイルアップには勝てずお手上げ状態でした。

お情けでピックアップしてもらうほかはないかと思い、コールサインの後に「/QRP」をつけて呼ぶと、6エリアの局から「/QRP?」と応答があり、何とか1局とQSOできました。運用は土曜日の午後ということもあり、7MHz帯は多くの局でごった返していました。

次に7.015MHz付近で、私がCQを出してみることにしました。数回CQを出すと呼んでいただいた局がありました。そのQSOが終わっても次から次へと続かず、単発的に応答がある程度でしたが、電波は確実に飛んでいることを確認できました。10MHz帯も同じような感じでした。自転車モービルですから、山の頂上まで上がることはできませんが、見晴らしの良いロケーションでは確実に楽しめると思います。

意外とよく飛ぶと感じたのは50MHz帯、144MHz帯と430MHz帯でした。受信信号が強かったことやパイルアップになっていなかったこともありますが、聞こえている局を呼ぶとほぼ1回で応答がありました。これらのバンドのアンテナは短縮していないため、効率がよいのだと思います。

まとめ

これまでいろいろなポータブルアンテナをトライしましたが、なかなか共振点が見つからず、ポータブル運用でありながらアンテナアナライザも持参していた苦い経験があります。このRHM12が気に入った点は、IC-705で受信音を聞きながら、RHM12のコイル部をスライドして、ノイズあるいは受信音が最大になる点にセットすると、だいたいの共振点を掴むことができる点です。だいたいの共振点が見つかれば、次はIC-705のSWR測定機能を使うと、ほぼドンピシャで共振点に合わせることができます。

今回は自転車モービルに焦点を合わせた取付け記事となりましたが、車のトランクやルーフに取付ける金具を用意するとVHFやUHFモービルアンテナのように簡単に取り付けができます。ただ、ポータブルアンテナとはいえ、伸ばすとけっこう長くなるため、走行中は落下防止のため必ず取外しが必要です。

追記

1.9MHz帯と3.5MHz帯のSWR低下に関してアイデアが浮かび、さっそく実験をしてきました。結果からいいますと、帯域は非常に狭いですがSWRは1.5以下になりました。

自転車の車体だけのアースでは、1.9MHz帯、3.5MHz帯共に前述のようにSWRは3以上となったことを説明しました。アース面が不足しているのです。アース面の不足をカウンタポイズで補うのが常とう手段ですが、下の写真のように自転車の車体と近くのガードレールとを車のバッテリー充電に使うブースターケーブルで接続したところ、バッチリSWRは低下しました。


SWRの特性は下に示したIC-705の画面キャプチャから分かるように実使用可能な帯域幅は、1.9MHz帯では20kHzくらい、3.5MHz帯では40kHzくらいでした。


もともとこれらのバンドの周波数帯域はそれほど広くないためこれで十分です。外気温33℃、日差しがきつく、時間は15時頃でしたが最後に1.9MHz帯と3.5MHz帯のCWでCQを連発しました。残念ながらどなたからも応答はありませんでした。電波は飛んでいると思いますが、これらのバンドは日が沈んでからのバンドであるため、多くの皆さんはワッチもされていなかったからだと思います。また、別の機会に運用してみます。

運用上のご注意

手軽な自転車といえども道路交通法では軽車両に位置付けられており、「車のなかま」です。道路を通行するときは、車としての交通ルールを守ることはもちろんのこと、長いアンテナを伸ばして走行したり、QSOしながらの走行は道路交通法違反となります。安全走行に心がけてください。

また、アンテナ自体の取付けもメーカーの使用上の注意を守って設置するようにお願いします。RHM12の取扱説明書に記載の「使用上の注意」を下に貼付します。


CL

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