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2023年5月15日掲載
毎年、こどもの日の5月5日、南極昭和基地にあるアマチュア無線局8J1RLが小・中・高校生を優先して交信を行う、恒例の「こどもの日特別運用」の実施に合わせて、子どもたちが8J1RLとの交信にチャレンジするイベントが東京都豊島区にあるJARL本部で開催された。
8J1RLを狙うJA1RLのアンテナ群。
これは、小・中・高校生のハム達に、昭和基地との交信を通じて、無線通信の素晴らしさを体験してもらうと共に、南極の自然科学に興味を持ってもらうことを主な目的とするもので、参加を希望した小・中・高校生のハム達に、JARL中央局(JA1RL)から南極との交信にチャレンジしてもらうものだ。しかし、その日のコンディションによって、うまく交信できない年もあるなど、主催者側も気が抜けないものとなっている。
今年も、事前応募で選ばれた小学校4年生から高校1年生までの10名(2アマ1名、3アマ4名、4アマ2名、無資格者3名)とその保護者が、東京都豊島区のJARL本部に集合し、JARL中央局JA1RLから南極局8J1RLとの交信に挑んだ。
また、今回は初の試みとして、先のアマチュア無線の制度改正で「アマチュア無線の資格を持たない者の体験運用」の条件が大きく緩和されたことから、無資格者による体験運用も計画され、応募者の中から選ばれた小学生2名と高校生1名が実際の交信にチャレンジした。
交信会場となったJARL本部の会議室では、16時よりJG1KTC髙尾JARL会長(JA1RL運用委員会委員長)の挨拶、JA1RL運用委員会委員、当日集まった子どもたち、および南極OB会アマチュア無線クラブ(会長JR1FVH小林さん、第63次南極地域観測隊として運用されたJP1JRU藤本さん)の自己紹介等がおこなわれた。
事前応募で選ばれた10名の子どもたちが参加。
その後、今年3月に南極から帰国したばかりの藤本さんにより、南極昭和基地での生活やアマチュア無線運用の紹介があり、子どもたちからの質問にも的確に答えていた。続いてJA1RL運用委員の7K2GMJ新谷さんからは、JARL南極局8J1RLとの具体的な交信方法等についての説明と、説明のあとに全員で「こちらはJA1RLです、どうぞ」の発声練習をおこない、南極との交信に期待を膨らませた。
JP1JRU藤本さんによる南極や昭和基地の話。
7K2GMJ新谷さんによる8J1RLのQSLカード紹介。
交信予定時間の17時になり、まずはJA1RL運用委員が21MHz帯SSBで8J1RLの呼び出しを開始したものの、はっきりと音声が確認できなかった。そこで14MHz帯へ周波数を移動、しかしここでも信号はノイズに埋もれて交信には至らなかった。最近は黒点数の増加でハイバンドのコンディションが上昇していることから28MHz帯で最後のチャレンジを行うことになり、28MHz帯で8J1RLを呼び出した。するとフェージングの中から8J1RLの信号がはっきり聞こえて、参加者一同から拍手が沸き起った。
8J1RLとつながったことから、まずは2アマの資格を持つ小学5年生が200W機で交信をスタート。続けて3アマの4名が50W機で、4アマの2名が10W機で、最後はJA1RL運用委員のサポートを受けながら無資格者3名が200W機でそれぞれ交信(体験運用)に成功し、10名全員が無事に南極とのコンタクトを行うことができた。こどもの日の特別運用で8J1RLと28MHz帯での交信は快挙と言え、おそらく過去には例がなかったと思われる。
JA1RL運用委員(7N4SJX井岡さん)が交信をサポート。
200W機を使った無資格の子どもによる体験運用。
実際の交信では、子どもたちは和文通話表からあらかじめ書き出しておいた自分の名前を伝え、JA1RL側(子どもたち)がオペレーターを交代するごとに8J1RL側もオペレーターが交代し、8J1RLから届くオペレーターの名前を懸命に聞きとりながらの交信となった。中学校1年生3アマの女の子が50W機で8J1RLを呼び出すと、8J1RL側も女性オペレーターが応答するという粋な計らいもあった。
3アマの女の子による運用。
子どもたちは、HF帯特有のフェージングやノイズの中から8J1RLの信号を聞き取りながら、名前を書き留めていく様子は真剣そのもので、聞き取れたあとは安堵からか笑顔がこぼれていた。
交信相手の名前を懸命に書き留める。
10人の子どもたちによる交信が成功し、最後に髙尾JARL会長がマイクを握って8J1RLに対して謝意を伝えたところ、8J1RLからは「10人全員成功おめでとうございます!」と祝辞が返ってきた。
交信に成功した子どもたちには、髙尾JARL会長から「交信記念証」と記念品(JARLグッズなど)が1名ずつに手渡された。最後に「皆さん全員が交信できて嬉しく思います。10W機でも交信できて感動しています。今日の感動を忘れずにアマチュア無線を楽しんでください」と髙尾JARL会長の挨拶で締め括られ、この日の全スケジュールが終了、子どもたちは、保護者の方と共に笑顔で交信会場を後にした。
髙尾JARL会長から「交信記念証」を受け取る。
※本稿に掲載した写真はJARL提供
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