アマチュア無線の今と昔
2023年5月1日掲載
連載第6回目になります。今回は浦島太郎だからこそ感じる、運用テクニックのあれこれについて、少し述べたいと思います。
DXペディション等ではすでにおなじみになっているスプリット運用ですが、30年前と比較して、使用頻度が多くなったように思います。それはスプリット運用に対応出来るトランシーバーが多く市販されており、現在では、ほとんどの方がスプリット運用に対応できるようになったからだと思います。
スプリット運用中のディスプレイ
スプリット運用とは、送信と受信を、それぞれ別の周波数で行うことをいいます。430MHzや1200MHzのレピーターの運用も、一種のスプリット運用になりますね。
レピーターにアクセス中のディスプレイ
このスプリット運用ですが、先日、思うところがありました。スプリット運用では、一般的に、呼ばれる側(ここではA局とします)が呼んでほしい周波数を指定します。CWですと「UP 2」とかです。A局からUP 2と指定された時は、A局の送信している周波数プラス2kHzで呼ぶことになります。具体的には、A局が7010kHzに出ていたら、プラス2kHzの7012kHzで呼びます。
私が聞いたのは、国内同士のQSOでした。A局がパイルアップを浴び、「UP 2」と指定してきたのです。この場合、A局の出ている周波数でコールするのは、マナー違反、相手局の指定を無視する行為になります。
私が感じたのは、A局と同じ周波数で呼ぶ局が見受けられた点です。スプリット運用のメリットは、A局の信号を、A局を呼ぶ局の信号でつぶしてしまうことを避けられる点です。一般的に呼ぶ局の電波の方が強いことが多いので、A局が何か言っても聞こえないことになります。このような状態が続くと、効率の悪いQSOになってしまいます。今回、問題と思った点は、「UP 2」の指定があるにも関わらず、A局の送信周波数で呼んでいた局がいたことです。
近所のOMさんは「電気通信術がなくなったせい」とおっしゃってましたが、私はもちろんそれも影響はしていると思いますが、根本はA局の指定の意味がわからなかったのでは? と思っています。実際に、運用について書かれている本はなかなか見当たりません。以前はあったと思うのですが、現在は出版不況なのか、見当たらないです。
私は、本で勉強するよりも、近所のOMさんが優しく教えてあげるのが一番だと思います。間違っても、説教したり、怒ったりしてはいけません。若いビギナーの方は、大事にしないといけません。次世代を背負っていってもらうためにも(相手がベテランであっても、優しく指導はしてもらいたいですけど(苦笑))。
若手の方も、先輩のアドバイスに耳を傾けてもらいたいと思います。その先輩だって、若手の頃に、同じようなミスをきっとやらかしてます。そう考えれば、アドバイスする方もされる方も、お互い納得できるんじゃないでしょうか?
蛇足ですが、A局が単に「UP」という指定をした場合、一般的にはA局の送信周波数プラス1kHz~10kHzくらいの周波数に広がってコールします。実際にA局が受信している周波数を見つけ出し、ダイヤルの回し方のクセ等を見つけることにより、弱小設備でも拾ってもらえる可能性は高まります。この辺は経験と勘がモノを言うんじゃないでしょうか。こんな時は、2波同時受信の出来る無線機がいいですね。
デュアルワッチ機能付のIC-7610 (アイコム(株)Webサイトより)
デュアルワッチ機能があれば、相手局と呼んでいる局の両方を受信できるので、いま、どの周波数で、誰がピックアップしてもらっているか、すぐにわかります。デュアルワッチがなければ、VFOのA/B切り替えボタン、若しくはXFCボタンを操作して探るようにしましょう。
VFO A/BとXFC
昔、最高の組み合わせはトランシーバー+トランシーブできる受信機と聞いていましたが、これは同時2波受信を指していたんだなと、今になって思いました。
私が開局したのが昭和48年、電信級アマチュア無線技士(現在の3アマ)を取得してCWを始めたのが昭和52年です。この頃、知り合いからエレキーを譲ってもらい、運用に使い始めました。実は、この時に購入したエレキーは現在でも所有しており、自分で買った物で現在手元にある中ではいちばん古い物になりました。もちろん現役で使用中です。
このエレキーとの思い出は、T30(キリバス)やC21(ナウル)、XX9(マカオ)へのDXペディション。また国内での移動運用やフィールドデーコンテストでの全国優勝等、たくさんありすぎて手放せないです(苦笑)
40年選手のエレキー。国内移動、コンテストからDXペディションまで付き合ってくれました
当時から、エレキーは利き手で打つか、そうでない手で打つか、いつも議論されていましたね。皆さんはどうでしょうか?
私は右利きです。エレキーのパドルは左手で操作します。短点は左手人差し指、長点は左手親指で打ちます。つまり、右利き用のエレキーを左手で、しかも短点、長点をそのまま打っている感じになります。残念ながら左手でパドルを操作しながら、右手で文字を書くことはできません。これでは左手で打つメリットがないですね(苦笑)
さて、アマチュア無線を再開してCWのQSOをワッチしていますと、QSOしているお互いのスピードが、ずいぶんと異なることに気が付きました。相手局が比較的QRSであっても、思いっきりハイスピードで応答している方が多いのです。もしかしたら、これはトランシーバーにエレキーが内蔵されているのが原因? なんて思ったりしてますが、スピードに関する考え方は、原則は相手に合わせる、と思っています。
トランシーバーによってはスピード調整が簡単にできない物もありますので、それが原因かも? それにしてもメッセージキーヤーまで入っていて、現代のトランシーバーの多機能ぶりには驚かされます。しかも比較的安価なので、これまたビックリします(笑)
あと、やたらハイスピードなのに間違いだらけ、というのもカッコ悪いですよね。私もヘタクソなので、訂正ばかりなのですが、注意していかなければならないと思ってます。
OM諸氏にお願いです。ゆっくりとしたスピードのCQを見つけたら、それはCWビギナーさんかも知れません。ぜひQRSで応答してあげて、CWの素晴らしさを伝えていただければと思います。そして、ビギナー諸氏には、どんどんCQを出してほしいと思います。もちろん自分の取れるスピードで。私も喜んでお相手させていただきます。
パイルアップの中で、呼ばれている局から「JA1の方どうぞ」と指定されているにもかかわらず、JH2の方が呼ぶ・・・ これを指定無視といいます。このような行為は今に始まったわけではなく、昔からありましたが、同じ指定無視でも、昔と今ではちょっと違うように思います。
相手局が呼ぶ側の信号でつぶされてしまえば、指定していることがわからなくなり、必然的に指定無視になることは、今も昔もありました。こういった事態を避けるために、本記事の最初にもあります通り、スプリット運用が普及してきたのです。
ところが、CWだけかも知れませんが、パイルアップを受けている局が「JA1 ?」と指定したにもかかわらず、「JH2」プリフィックスの方が呼んだり、「KK ?」と指定しても、コールサインのどこにもKの文字がない局が呼んでいたりと、「聞いてないんじゃ?」と思うことが多々あります。
さらに困ったことに、呼ばれている方も自分の指定を無視して呼んでいた局をピックアップしてしまう傾向があります(取りやすいからでしょう)。こうなると整然と並んでいる列に割り込むようなもので、みんなが「真面目に並んでてバカらしくなった」となってしまい、「んじゃ俺も割り込もう」なんて思ってしまいます。
行列を乱す行為はマナー違反
昔はここまでひどい無視は少なかったように思いますし、呼ばれる側も毅然とした態度でおられる方が多かったように思います。なにより、「あいつ、指定無視してやがった。かっこわり~」って話にもなり、肩身が狭くなったものです。これも先輩、後輩のつながりだけじゃなく、橫のつながりといった仲間意識が少なくなったことが原因なのかも知れませんね。
もちろん、今でもパイルアップを毅然とした態度で、しかもハイスピードでさばいている方を見かけると、かっこいいなって思ってしまいます。私もそう思われるようにならないといけませんね(笑)
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