特別寄稿
2023年5月15日掲載
1950(昭和25)年6月1日、アマチュア無線局が戦前・戦後を通じて法的に認められました。その日を待ちに待った日がやって来ます。1952(昭和27)年9月8日、5人が先行して開局されます。調査は先行された5人から少し遅れて開局されたOMらの無線設備はどのような設備だったのか、その前に1955(昭和30)年2月、“移動するアマチュア無線局”が免許されます。また1958(昭和33)年11月、国家試験制度改正で開局申請に何か変化はないか、も関心事でした。
資料1. 郵政省告示第三百五十一号 昭和27年9月8日 5人のハム局
一方、電波の型式に付いては現在のように多種多様な電波型式がありませんでした。また調査総数は204局になりました。調査しましたのは1952(昭和27)年9月18日から翌年3月4日の間、100局のパイオニア的な先輩局と1958(昭和33)年2月10日公開された104局を2回に分けて実態調べをしました。
資料2. アマ局の免許内容を掲載している官報の例(昭和27年9月18日 No.7711官報)
1952(昭和27)年9月18日から昭和28年3月4日までの100局中、10W以上の局は22局だった。その中に許可される最高空中線電力500W局、また1Wを割る局もありました。ほとんどのハム局は10W局又は以下の局でした。受検局の空中線電力がいろいろ有りデータから送受信機自作派が大勢を占められたと読み取れます。
資料5. 500W局の免許を受けたJA1AC局の免許内容 (官報)
資料6. 2.5W局の免許を受けたJA8AC局の免許内容 (官報)
1958(昭和33)年2月10日に掲載された免許局104局を中心に免許内容を調べます。10W以上の局数は4局で1W以下の局も見られます。1958(昭和33)年11月、「国家試験制度」改正で第2級アマチュア無線技士にCW(実技試験)が加わりました。その年の前年、1957(昭和32年)は2,633人という当時として最高の合格者を出しています。データから開局数増加と受験者増が働いていないと思われます。昭和27年当時と比較しましても5分の1ほどしか受検していません。10W以上局も4局と言う少なさです。川合(JA1FUY)OM開設のHPに古いJARL NEWSが掲載されています。ここでも調査対象としましたが傾向として変化有りませんでした。
資料7. 0.25W局の免許を受けたJA1ATE局の免許内容 (官報)
当時は第1級と第2級の2資格のみでした。旧第2級アマチュア無線技士の空中線電力は100Wでした。資格からは制限を受ける理由は見当たりません。
資料8. 無線従事者操作範囲 第2級アマチュア無線技士に注目 (官報)
当時はHF帯が主流で10W以上ですと周波数測定装置の設置義務が求められます。周波数測定装置は自作も可能になりましたが、ハム用として(株)三田無線から「ヘテロダイン型精密周波数計」のキットと完成品が販売されています。広告に寄りますとキット5,900円、完成品24,500円とあります。学生ですと高価で手出しできませんでした。また製作・維持管理に大変だったと思います。
資料9. 周波数測定装置の設置義務(施行規則抜粋) (官報)
「電波は国民のものである」と言う考え方からかハム局の免許内容が官報で公開され1958(昭和33)年に法改正され電信・電話級局が誕生します。この時アマチュア無線資格は第1級、第2級と電話級、電信級の4種類となります。電信・電話級局の空中線電力は共に出力10Wと決まります。
今回の調査で周波数測定装置の設置義務が無い10W出力と先輩局の空中線電力10W局が圧倒的に多い現実から初級局の電力指定も10W出力に決めたのではないか、と筆者は考えます。そして1959(昭和34)年4月、新制度による初の国家試験が行われました。なお現在では電話級は第4級に電信級は第3級に変更され空中線電力も25Wに増力され現在は50Wになりました。
*当時のハム局は免許内容が官報で公開され1960(昭和35)年ごろまで続きます。ハム人口の多いJA3エリア管内でも誕生間もない初級局合格者の一部が官報に掲載されています。
*調査期間中のハム局は認定制度発足前で開局するには全員予備免許(コールサインが指定) → 新設検査(落成検査とも言う)を受検し合格しなければ電波は出せませんでした。
*官報は記載事項の免許人氏名、設置場所の一部を削除しています。
*年月日は官報が発行された日付で書いています。各局の許可年月日ではありません。
参考資料・文献
無線局とは「無線設備及び無線設備の操作を行う者の総体をいう」と定義されています。
① Web: QTC-Japan 川合さん開設のHP(https://www.qtc-japan.org/)に掲載されていますJARL NEWS。
② 電波法要説 今泉 至明 著 2006(平成18)年8月10日 第5版改訂版 財団法人 電気通信振興会
③ 「電波と受験」誌 1962(昭和37)年5月号
④ CQ出版社 CQ ham radio誌 2002(平成14)年8月号
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