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ものづくりやろう!

第二十六回 「マイコン版簡易リグ制御装置」の製作にチャレンジするも“挫折”

JH3RGD 葭谷安正

2023年7月3日掲載

はじめに

第二十五回の記事では「EXCEL VBAとrigctlを使ってPCでIC-7300制御にチャレンジ!」と題してIC-7300をEXCEL VBAを使用してPCから制御することにチャレンジしました。その記事の最後に「マイコン制御のIC-7300制御器を完成させたい」と予告していました。このマイコン制御器の製作に6月初旬からチャレンジしていましたが、予定していた装置が完成出来ませんでした。ですから、電子工作や製作記事を期待してこの記事を読みに来ていただいた皆さんには

「ごめんなさい」

と言わせていただきます。

「失敗の話でも笑って聞いてやろう」という方や、「時間の無駄になるかもしれないけど、失敗も肥やしになるかもね」という寛大な方がおられましたら、この記事にお付き合いお願いします。

この記事の途中までは、「前回の要約」と「構想していた装置の構成(=マイコン版簡易リグ制御装置)」を記載していますので少しだけ参考にしていただき、残りの部分には私が製作できないことに至った情けない理由の与太話を書いておりますので、大いに笑い飛ばしてやってください。

EXCEL版簡易リグ制御ソフト

この「マイコン版簡易リグ制御装置」の製作動機はつぎのようなことからです。
・私のIC-7300のVOX/BK-INボタンが不調でスイッチが入らない事態が発生した。
・VOX/BK-INボタンを交換せず、USB経由で外部にVOX/BK-INボタンを付けたい。
・外部につけるVOX/BK-INボタンの制御は、マイコンにしたい。
・しかしどんなものができそうなのか検証のためとりあえずPCで制御したい。
・PCでつくるにしてもプロトタイプレベルなので自分の得意なEXCEL VBAで書いてみたい。
・これでうまくいったらマイコンに置き換えてマイコン版を製作したい。

そして、「とりあえずのプロトタイプ」として作ったのが、第二十五回の記事にあるソフトで、図1のEXCEL版「rigctlを使ってPCでIC-7300制御にチャレンジ」するソフトでした。

このソフトでは、EXCELから無線機を制御しているわけではありません。コンソールベースのリグ制御ソフトであるrigctlを、コンソールから各種指示コマンドを叩く代わりにEXCELのボタンを押すことで裏に隠れているrigctlが動くようにEXCELで覆い隠しているものです。EXCELの通信ソフトを使ってリグと通信をしているのではないんです。別のFREEの通信ソフトrigctlがリグと通信するときのコマンド文をEXCELが準備してrigctlに渡したり、またrigctlがリグから受け取っと情報をEXCELが受け取って画面に表示しているという処理を行っています。


図1 簡易リグ制御ソフト(制御部)

「マイコン版簡易リグ制御装置」のハードウェア構成(構想)

つぎに本記事で作ろうとしました「マイコン版簡易リグ制御装置」はどのようなインターフェースを持たせたいコントローラなのかというと、図2のような外観を考えていました。


図2 リグ制御器でIC-7300を制御

「マイコン版簡易リグ制御装置」のハードウェア構成はと言うと、図3のハードウェア構成を持ち、また図4のような外観を構想しました。


図3 マイコン版簡易リグ制御装置のハードウェア構成(構想) ※青枠がケース内


図4 マイコン版簡易リグ制御装置の外観(構想)

発注部品到着前の作業

そこで、図3の構成で、図4のような見栄えのシステムを完成させるためにこの半月ほどの間は、部品を購入し(制御用マイコンとしてRaspberry Pi Pico、USB-シリアル変換モジュール)、マイコンに使用するソフトとしてPython言語を選び、EXCELマクロをPython言語に書き直しを始める等、やる気満々な週末電子工作家状態でした。

発注部品が来るまではほとんど何もできませんでしたが、IC-7300内のUSBハブにはんだ付けした線をIC-7300外部に引き出すための加工が必要でした。

部品類が届く前にIC-7300の裏蓋を外すのは面倒と思いましたが、図3のUSB-シリアルモジュールとの4本の線をIC-7300の内部から引き出すために裏蓋に空気穴のスリットがありましたのでこれを一部切ることにしました。(部品が来てから切ればよかったのに、早めに切ってしまいました。)

部品が到着したので、「来た来た、これで組み立てれるぞ」とばかりに写真をパチリ、まだまだ元気な日々が続きます。(写真5)


(a)USBモジュール用ケーブル入線口


b)部品も並べてみた
写真5 IC-7300シャーシ加工

発注部品到着後(配線部分をみて唖然)

発注していた「USB-シリアルモジュール」、「Paspberry Pi Picoマイコン」、「シャーシ」が届いたので、「さあ、IC-7300のUSBポートにUSB-シリアル変換モジュールをはんだ付けするぞ」とIC-7300の裏蓋を開けました。

USB-シリアル変換モジュールを月刊FB Newsの記事(※月刊FB News 2019年7月号 難波正憲氏著「IC-7300でリグコントロールとCW/RTTYキーイングを両立させる」)を参考にさせていただきながら、IC-7300内部にはんだ付けすることにしました。難波氏の記事の写真からは大きさが実感できませんでした。その難波氏の記事の写真をそのまま写真6として掲載させていただきました。


写真6 USB-シリアル変換モジュールの配線位置(難波氏著 月刊FB News2019年7月号参照)

ところがです。記事の写真では大きく見えていて、さもはんだ付けがいともたやすくできそうだと私は認識、いや誤解していました。写真6を見た後でIC-7300の裏蓋を開いて実際に目で確認すべきでしたが、それを怠りました。横着したのは、「IC-7300のシャーシのねじを何本も緩めて抜くのは面倒だし、USBモジュールが到着してからIC-7300内部のはんだ付け箇所を確認すればいいや」という怠け心がつい出てしまったからです。このことが後に私を絶望のどん底に突き落としました。

IC-7300内の現物の位置を確認しようとしましたが、「あれ? USB HUB ICは一体どこにあるのかな?」と探しましたが見つからない。

やっとUSBソケット部品を見つけて、「えー、こんなに小さかったか!」と現実の部品の小さいことに「唖然」とし、恐れ慄くことになりました。以前、IC-7300の時計電池を交換したときに「部品小さいな。困ったな。」と言っている間にゴソゴソとはんだごてを基板に押し付けていたら、一瞬「するっ」とはんだごてが滑ったと思ったらパターンが剝がれてしまいました。「あ、失敗した。パターンこわしてしもうたわ」とやってしまい、この時以降“電源ON後はいつも0時”状態であることは記載しました。その時のことを忘れていたわけではないのですが、その時は老眼がそんなに進行していなかったようで、基板のパターンはしっかり見えていました。ですので、失敗の原因は「ちからを入れすぎてパターンを壊してしまったんだ」という気持ちが強くありました。失敗はしたけれども電池周辺の細かいパターンは十分に見えていて認識できていました。

ところが今回は数年前に壊してしまったパターンが見えないのです。もちろんはんだ付けしなければいけない部位はもっと小さいので全く見えなくなっていました。「うそだろ、夢だろ」という気持ちがよぎっていきました。スマホのカメラの拡大モードで見てやっとパターンが確認できる状態です。ついこの間まで小さなICのはんだ付けができたのに、少しの間に老眼がこんなに進んでいるんだと実感させられました。拡大モードで撮って写真を再度確認しながら、「こんなところできっこない!」と確信。(写真7)


(a)「はんだ付け箇所はどこ?」


(b)「ここ? 無理かも。でもやってみるか」

写真7 はんだ付け箇所(2か所のみ示しました)

しかし、これならはんだ付け出来そうだという気持ちもよぎる。はんだごてを引っ張りだして、こて先の太さとパターンの幅とを比較してみて出来そうに思えてきます(写真8)。


写真8 はんだごてと比較

そこで、はんだ付けを開始することにしました。はんだ付けが必要な4か所中4箇所とも、「小さな点が無きに等しい」状態でした。

まずは、4か所の表面のコーディングをはがす。もはや私の老眼では4か所が明確に見えておらず情けない気持ちになりますが、何も見えない状態だからこそ丁寧にはがしていきました。

はがしたコーティングの残骸をアルコールできれいに洗浄する。これもいつもよりかなり丁寧にしました。次に、はんだ付けをするためにフラックスを投下。見えないので別の部品にも投下してしまう。

次ははんだ付け。うまくはんだが付かない。そこでさらにフラックスを大量投下。またはんだ付けするが、今度は2か所が1つに結ばれてしまう。

はんだを吸い取って、アルコールできれいに洗浄する。見えないパターンを心眼で見ながら作業を続けるが、次第にパターンが壊れないか心配になってくる。

「明日晴れたら太陽光の下ではんだ付けやろう!」と問題の先延ばしすることに決定。こんなことが何日か続きました。悶々とした日々のあと、とうとう

「やっぱり無理!」

と、白旗を揚げてしまいました。

久方ぶりに、はんだ付けの技術力(技能力という方が正しいかもしれません)不足のため、思った通りに作業が進まず、更には完成に至らず、気持ちが打ちふさがれる状態になり、製作を断念しました。

おわりに

さて、この製作記事は最後までお読みいただいた皆さん、内容の薄い記事にお付き合いいただきありがとうございます。

皆さんの「製作できなかった理由ってのが、はんだ付けできなかっただけかよ」という声が聞こえてきそうな気がします。おっしゃるとおり、細かい部分のはんだ付けができなかったために製作を断念しました。自分としては非常に情けなく、またショックなことでした。つい最近までできていたこと、つい最近まで見えていたものが見えなくなって、できなくなってしまったのですから。そしてこれからもできなくなっていくのかという恐怖が残ってしまいましたので。

(私よりも)若い皆さん、体に何も憂いがないときに好きな趣味を十分に楽しみましょう! 私くらいの年齢に達したころにはできなくなっているかもしれませんから。特に目は大切に!

「USB-シリアルモジュール、スイッチ、制御用マイコンも、シャーシも購入して手元に残っているけど、これメルカリで売ろうかな?」という気持ちがふとわいてきました。気持ちが終活モードに近づいてきました。

でもよかったのかもしれません。下手に改造すると「技適番号無効」になりますから。いや待てよ。

私の愛機、購入時は50Wのマシンでしたが、その後メーカーのICOMさんに100Wに改造していただきました。その段階で、すでに私の無線機は技適番号無効になっていました!

残念でした。


写真9 技適番号無効ラベル(意味のない写真です)

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