Monthly FB NEWS 月刊FBニュース 月刊FBニュースはアマチュア無線の電子WEBマガジン。ベテランから入門まで、楽しく役立つ情報が満載です。

ものづくりやろう!

第二十八回 レストアのような事に挑戦(1)

JH3RGD 葭谷安正

2023年9月1日掲載

はじめに

古いIC-730をヤフオクで落札してからもう3年ほど経ちました。入手時は受信も送信もOKでしたので1年ほど前まで受信専用で使っていました。1年ほど前から「PREAMP」スイッチを押してもPREAMPが動作しなくなり受信に支障が出てきました。さらに、半年ほど前からは受信性能が落ちたように感じはじめました。

そこで「PREAMP」スイッチに接点復活剤を投入しましたが状況変わらず、コイルなどの調整に必要性を感じました。IC-730を調整し、分解・修理の必要性を感じています。レストアが得意な方は通信機を完全に分解して組み立てておられるようですが、私にはそこまで技術や知識が無いので、完全分解習得のためレストア方法をYouTubeで探してみました。

IC-730の情報収集のつもりが9R-59Dのレストアの情報に目をひかれてしまいました。ミイラ取りがミイラになりました。「目を引かれた」 ⇒ 「興味がわいた」 ⇒ 「情報がほしくなった」という過程を経て、必然的にヤフオクに情報を求めるようになり、すなわち「だんだんと9R-59Dが欲しくなってきた」ということです。

それ以来、ヤフオクで9R-59Dを見かけるとポチりを繰り返しておりました。ただ、自分を律する意味で限度額をきちっと決めて、それ以上になったら決してポチらないようにしていましたので落札まで至りませんでした。ところが1月ほど前に、懲りもせずポチりましたところ、ほかにどなたもその商品をポチる人が現れなかったようで、私もポチった事を忘れていたころに「おめでとうございます! 商品を落札しました」のメールが届きました。「やった」と思うと同時に、「またやっちまったよ」とニンマリしながら反省しました。


写真1 入手した9R-59D

ちなみにIC-730はどうなったのかというと、ほぼ死んだままの状態で今も私の机の片隅で鎮座しています。

9R-59Dの思い出は、今から50年以上前の学生時代の思い出だけしかありません。無線の免許を取得された先輩が自分で9R-59DとTX-88Dのキットを組み立てておられるのを間近で、それも「指をくわえながら」見ていました。9R-59Dをレストアしたいなと思ったわけは、50年前の指舐め記憶から分解組み立ての現物を見たという思い出と、組み立ての要領をわずかですがわかっていることに尽きます。「IC-730は無理でも9R-59Dは出来るかもしれない、またネット上にはたくさんの資料が揃っているので、これだったら自力で何とかなるのでは」という甘い期待もあります(IC-730で挫折したから9R-59Dでもきっと挫折するという厳しい見通しも成立しそうですが)。

9R-59Dに入札する際、9R-59Dの商品説明には次のように書かれていました。



TRIOの真空管式通信型受信機、9R-59Dです。受信範囲は中波から30MHzまでですが、現状で受信できるのは中波の放送波程度です。実用化するにはしっかりとした調整が必要です。いくつかのコンデンサは交換されています。また、真空管のシールドケースが有りません。

(途中省略)

古い機械ですので、傷、汚れ、錆が有ります。ノークレーム、ノーリターン、ノーサポートでお願いいたします。商品説明の通り、一応受信動作はしますが、不完全なため、ジャンク品として出品します。



私は、オークションで出品される9R-59Dをやみくもにポチっているわけではありません。この受信機をポチった最大の理由は、ジャンク品とはいっても中波帯の受信が出来ると記載があったからです。「たとえ性能は悪くても中波帯の受信ができる、という事はほとんどの機能ブロックがゲイン等の性能は多少落ちているかもしれないが、受信機としての機能を維持している」と言う事ですよね。ですから、場合によっては調整だけで動くかもしれないと思いました(調整だけで動くという、これも甘い思い込みですが)。

ちなみにどうでもいい情報かもしれませんが9R-59Dは「1966年発売、当時の価格19,900円」でした。また、私が先輩の組み立ての過程を見たのが1971年頃でした。

電源を入れてみる

落札して、待つこと2日、待望の9R-59Dが送られてきました。私より少し若い50年歳位(?)の機械なんだろうけれども、思いのほかきれいでした。ケースやつまみを外して少し掃除して、ちょっと観察。しかし、居ても立ってもいられなくなって7MHz帯のアンテナをつなぎ、「電源投入」することにしました(冷静沈着なアマチュア無線家は、このような危ない行動には出ないでしょう)。

電源投入前に一呼吸して、落ち着いて全体のブロック図を確認することにしました。ネットを徘徊して、「TRIO 通信型受信機9R-59D キット取扱説明書」を見つけてきました。この中のブロックダイヤグラムを参考にして構成を理解しておきました。

ブロック図では真空管が8個しか確認できませんが、かつては真空管が9個載っていたから、9R-59Dの9は真空管の数のことだとか。構成は図2のようです。


図2 9R-59Dブロックダイヤグラム(「TRIO 通信型受信機9R-59D キット取扱説明書」より)

受信を開始するのはAバンド、540kHzから1605kHz、いわゆる中波帯が受信できます。

電源投入後、真空管受信機の沈黙時間がやってきました。電波法で言う沈黙時間ではなく、私にとっての沈黙時間、「真空管が温まって、送受信機が機能はじめるまでのドキドキ時間」が過ぎていきます(沈黙時間の定義、どこかにそんな定義があったかな?)。

待つ事10秒ほどでしょうがもっと長く感じました。スピーカから「ブーン」というハム音が聞こえてきました。まだ安心するのは早いですが、これが聞こえただけで「よかった」と思いました。単純な私です。

その後、「あれー雑音多いかな」と思いましたが、調整で何とかなるのではという期待がありましたので今は雑音の事を気にしない事にしました。「RF GAIN(高周波増幅ゲイン調整)」、「AF GAIN(音量調整)」を回してみました。少しガリがあります。後で接点復活剤を注入しなければいけません。

次に「MAIN TUNING」ダイヤルを回してみました。バンドの端からたどっていくというお楽しみのために、音量を下げて、「MAIN TUNING」ダイヤルをバンドの最低周波数540kHzに合わせ、またボリュームを上げて、「MAIN TUNING」ダイヤルをゆっくりと回して受信周波数をあげていきます。

音が聞こえてきました。ついでにスイッチを「AM」から「AM-ANL」に切り換えました。「AM-ANL」はAMのノイズ・リミッタです。雑音がひどいときにONにすると、あるレベルより高いノイズを制限して低周波出力に現れないようにする回路です。音量も下がりノイズが少し下がったように思えました。ノイズ・リミッタ回路は動作しているようです。

また、「BAND SPREAD」ダイヤルも回してみました。本来はアマチュア無線帯に使用しますが、動作確認の意味で回してみました。大きく回しても大きく周波数が変化することはありませんが確実に変化しています。回路はOKのようです。

「FUNCTION」スイッチを「SEND」位置にします。TX-88とトランシーバ操作するときに使うのでしょうから受信信号が消えます。回路はOKでしょう。さらに「FUNCTION」スイッチを「SSB-CW」の位置にしました。残念ながら、悲しいほど何も聞こえてきません。

「FUNCTION」スイッチを「AM」の位置に戻し、「ANT TRIM(アンテナ・トリマ)」を回して信号を最大にします。「オー、Sメータが振れてる(Sメータが生きてることに感激)」。

「MAIN TUNING」ダイヤルをもう少し回して見ます。内容は判別できませんが、また聞こえてきました。もう少し回してみましたが、何も聞えずにバンドの上限に至りました。


写真3 選局操作

合計2局聞こえました。
 ① NHK大阪第一放送666kHz
 ② NHK大阪第二放送828kHz

以前紹介しましたレフレックスラジオと同じ状況です。もう少し受信できないかなと思いましたが、音が鳴ればあとは調整で何とかなるだろうとまた甘い期待を抱くことにしました。放送局が受信できたのでAMに係わる回路が動作していることも確認できました。

そこで回路図を見ることにしました。


図4 9R-59D回路図(「TRIO 通信型受信機9R-59D キット取扱説明書」より)

これだけでは信号の流れがわかりませんので、信号の流れを回路図上で追ってみました(私の解釈で線をひきましたので間違っていたらごめんなさい)。

「AM」信号復調時の信号の流れは図5のようになります(部品の上をちゃんとなぞれませんでしたのでご容赦を)。
① 高周波増幅: アンテナ側(左端)から6BA6に入ってきた信号(黄緑色)を6BA6で増幅します。
② 局部発振回路で受信周波数より455kHz高い周波数の信号を発振し、混合器に送られます(黄色)。
③ 6BE6で高周波増幅回路の信号(深緑)と局発信号(黄色)を混合して、455kHzの中間周波数に変換します(青色が出力)。
④ IF1,IF2の中間増幅器で増幅(青色出力)します。
⑤ IN60(D4,D5)で検波します。
⑥ 6AQ8で音声増幅、6AQ5で電力増幅されて、出力トランスを経てスピーカを鳴らします。


図5 AM復調時の信号の流れ(「TRIO 通信型受信機9R-59D キット取扱説明書」より)

一方「SSB-CW」位置での信号復調時の信号の流れは図6のようになります。

「AM」と「SSB-CW」との違いは、「AMではIN60で検波している」のに対して、「SSB-CWでは、6AQ8がBFOとして働き、6BE6でプロダクト検波している」という違いです。


図6 SSB-CW復調時の信号の流れ(「TRIO 通信型受信機9R-59D キット取扱説明書」より)

ここまでの動作概要で判明したことは、「SSB-CW」スイッチで操作しなかった部分を除いて動いているということですから、「図2の構成図で、プロダクト検波とBFO以外は一応動作している」と思われます(図7)。


図7 故障個所は赤枠のあたりかも

「AM」はAバンドの動作確認から「一応」動作していることがわかりましたので、他のバンドのAM放送をチェックすることにしました。9R-59Dには、上に示したAバンドを含め、合計4バンドあります。順番にチェックしました。

・Bバンド: 1.6MHzから4.8MHzの範囲が受信できます。詳細は省略しますが、ヤフオクの商品説明に書いてあった通り何も聞こえてきませんでした。

・Cバンド: 4.8MHzから14.5MHzの範囲が受信できます。7MHz用のアンテナをつなぎましたが無理だろうとは思いながら期待はいっぱい。7MHzと思しきあたりをダイヤル回して徘徊してみましたがなにも聞こえません。Nothingでした。少々がっかり。

・Dバンド: 同じく何も聞こえてきません。

B,C,Dバンドが聞こえませんでしたが、繋いでいたアンテナが7MHz用アンテナでしたので、その影響もあると思います。バンド周波数に合致したアンテナを接続しないと即断はできませんがあくまでの事前調査の結果です。まだまだ不良個所がぞろぞろ出てくるかもしれません。

調整(AM)

「AM」で受信できたことから、甘い期待に胸躍ることにしました。コイル、トリマをちょっと調整することにしました。

調整方法については、落札した日に図書館からJA1AMH高田OM著の「9R-59とTX-88A物語」と「アマチュア無線機 メインテナンス・ブック TRIO/DRAKE編」いう本を借りてきました。高田OM著の「9R-59とTX-88A物語 」は9R-59Dの古いVersionの受信機9R-59の説明が掲載されています。9R-59から9R-59Dにいたるまでの製品があったのか私はわからないのですが、この本の回路を見ると9R-59の回路は9R-59Dとほぼ同じような回路のようです。設計ポリシーや各部の動作原理なども記載されており、まだ全部は読んでいませんが参考になります。


左: 「9R-59とTX-88A物語」、右: 「アマチュア無線機 メインテナンス・ブック TRIO/DRAKE編」
写真8 参考文献

「アマチュア無線機 メインテナンス・ブック TRIO/DRAKE編」には調整の方法が記載されていましたのでこれを参考にして調整を試みることにしました。回路図やブロック図はすでに紹介しました「TRIO 通信型受信機9R-59D キット取扱説明書」を参考にしました。この取扱説明書は、昔に紙のマニュアルを見た事があるので、懐かしいなと思い出に浸ること20分あまり(当時は買いたくても買えない機械でしたので先輩のマニュアルを覗かしてもらっただけの記憶ではありましたが)、紙面をずっと見ていました。その後、我にかえり調整にかかりました。

最初に9R-59Dのケースや裏蓋を外しました。結構ホコリを被っていたので簡単に拭き取りました。本格的なお掃除は後日に行うことにしました(そう言ってお掃除をしなかったことが何回あったことやら)。我が家に来た時よりは少しきれいになったところが写真9です。


左: 上からの様子、右: 下から
写真9 9R-59D内部写真

上からの様子で真空管が並んでいるのが見えます。シールドが必要なのにかぶっていないのがあります。シールドを入手するためにまたヤフオクのお世話にならなければいけません。下から(裏面)も見てみます。コイルパックが鎮座していますね。

調整に必要な工具・計測器類は、
・高周波ドライバ(コイルやトリマを回すのにつかいます)
・周波数カウンタ(局発の周波数やBFOの周波数を確認)
・信号発生器(標準信号用)
・オシロスコープ(信号の状況確認、バイアス電圧の確認)
・マルチメータ(電圧、抵抗などの計測用)
などでしょうか。

私は信号発生器を持っていませんので、簡易スペアナ「tinySA」の「ZERO SPAN」モードを使って固定周波数信号を出しました。変調がかかっていませんのでAM信号の受信では搬送波を見つけて聞くことで調整をしました。また、安価なアンテナアナライザの「NanoVNA」の「CW FREQ」モードを使ってもOKです。

周波数カウンタは以前紹介しました簡易周波数カウンタを使ってみましたが、受信機の信号レベルが低かったのか周波数が表示したりしなかったりと調整に苦労しましたので、代わりにtinySAのスペアナモードで周波数の概数を知ることで調整しました。このため、「NanoVNA」を信号発生器の代わりに、「tinySA」を周波数カウンタの代わりにと、両方とも使って調整しました。

調整箇所は、コイルパックです。本体裏側に写真10の右のようにバンド毎の調整箇所が指示されています。


写真10 調整箇所(本体裏板)

この裏蓋を外すと写真9(右)のコイルパックが見えます。コイルパックを拡大して、調整箇所を確認してみます(写真11)。黄色で囲まれた枠内のコイルやトリマをバンド毎に調整します。黄枠の上から順番にA,B,C,Dバンドになります。


写真11 コイルパック部分

調整方法は「TRIO 通信型受信機9R-59D キット取扱説明書」につぎのように丁寧な記載がありました。キットで販売していたので、オシレータ(信号発生器)を持っている場合と持っていない場合に分けて記載があります。オシレータなしの場合はNHKや日本短波放送などの局の信号を受信して調整するようです。わたしはNanoVNAをオシレータの代わりに使用して調整してみました。オシレータありの調整法はつぎのように記載がありました。


表12 テストオシレターによる調整法
(「TRIO 通信型受信機9R-59D キット取扱説明書」より)

IFTの調整から入らなければいけないとは思いましたが、Aバンドから作業を始めてみました。

・Aバンドの調整
すでにAバンドは2局だけとはいえ受信に成功しているので問題なく調整できました。表12のAバンドの調整要領に従って、600kHzと1400kHzを行ったり来たり数回往復することで調整が出来ました。600kHzの信号を入力し、トリマを調整しても660kHzあたりを指すのでこれは周波数表示盤の位置がずれていると思いましたので、表示盤の固定ネジを緩めて少し回転させ、600kHzに目で見て一致させました。この調整だけで中波帯は下に記載したラジオ局が聞こえるようになりました。
 ・△ 558kHz ラジオ関西(20kW 淡路市)
 ・〇 666kHz NHK第一放送(100kW 堺市)
 ・◎ 828kHz NHK第二放送(300kW 羽曳野市)
 ・△1008kHz 朝日放送(50kW 高石市)
 ・〇1179kHz 毎日放送(50kW 高石市)
 ・▽1314kHz 大阪放送(50kW 堺市)

「◎」、「〇」、「△」、「▽」は、私のフィーリングでつけました。Sメータが振れますが調整がとれていませんのでまだシグナルレポートに使える状態ではありませんでした。

「◎」は強力、「〇」はまあまあ、「△」はちょっと弱い。「▽」は、聞えるけれども内容判別難しい、といったところでしょうか。6局も聞こえれば「良し」と判定しましょう。「アマチュア無線機 メインテナンス・ブック TRIO/DRAKE編」の9R-59Dの著者JR1TRX加藤OMは「ここは割り切って国内向けの音質の良いラジオとして使用します。といっても最新のラジオと音の比較をしてはいけません。あくまでも50年前の受信音です」と記載されています。私も同感です(でも7MHzのCWが受信できるようになってほしい!)。

・Cバンドの調整
またまたBバンドを飛ばしてCバンドの調整に行ってしまいました。Cバンドの7MHz帯を何とか受信できるようにしたいという願望があるからです。

いきなりですがアンテナにNanoVNAをつなぎました。6.5MHzから7.5MHzをスイープするように設定し、受信機のメインダイアルを7.0MHzにセットしました。その後、表11のCバンド調整要領に沿うような振りをして6.5MHzから7.5MHzのスイープ音を掴むべくコイルやトリマを回しました。調整することしばらくして、「ピュツ、ピュツ、・・・」というスイープ音を掴めました。

そこで単信号の7.275MHz(IC-7300で受信した韓国語で強力に鳴っている信号でしたので採用しました。KBSワールドラジオのようです)を入力し、Cバンドの調整をしました。広帯域での調整ではなく単信号限定で調整してみたということです。信号を投入してヘッドフォンで無変調信号が最大音になるようにコイル・トリマを調整しました。ついでにミキサー部の信号(V2 6BE6の第1グリッドにスペアナ(tinySA)をつなぎ、局部発振器の周波数を確認してみました。結果、写真13のような7.730MHz近辺の周波数信号が観測されました。


写真13 局発信号の周波数

9R-59Dの中間周波数は455kHzですから、受信周波数7.275MHzに対して局発の周波数は、
 7.275+0.455 (MHz) = 7.730 (MHz)

写真13のピークポイント周波数は観測ポイント周波数7.723MHzより少し低い位置にありますから、中間周波数もずれている可能性があります。あとで調整することにします。

他に最適な同調点はないかとコイル・トリマを調整しますと、いきなりスピーカの音質が変化して耳をつんざくような音になり、スペクトルも写真14のように変わってしまいました。高調波がいっぱい出ている波形になっています。6MHzの少し上に7.723MHzよりも少し強い信号が発生しています。写真13の状態に戻すため、トリマを回して、調整し直しました。


写真14 局発信号の周波数(発振状態)

信号発生器による調整後は実際の電波を受信してみることにしました。7MHz用のアンテナを受信機に接続し、AMモードにしてこの周波数近辺をサーチしました。すぐに7.275MHzでKBS国際放送と思しき韓国語が流れてきました。また、7.210MHzあたりで中国語が聞こえてきました。この2局をターゲットにして、発振しない範囲でSメータが一番振れる最良点を求めてコイル・トリマを調整しました。「MAIN TUNING」ダイヤルを回していくと微かにですがこの近辺で別のAM放送の音が聞こえました。ゲインが足らないようです。

AMの調整が終わったので「SSB-CW」に切り替えてみました。CWで使用する周波数帯近辺に「MAIN TUNING」ダイヤルを移動させ、「BAND SPREAD」ダイヤルを回して、行ったり来たりしましたが、残念ながら何も信号音が聞こえてきません。

IC-7300のスコープ上には数局CWで交信している局がいるのがわかりましたが、この9R-59Dではまったく入りません。IC-7300のアンテナ端子にダミーをつないで送信状態にすると、9R-59Dは受信しますがビート音として聞こえてきません。まだまだ故障個所の特定が必要なようです。

バイアス電圧の測定

コイルパックの調整も2つのバンドで確認しましたので、真空管回路の各部バイアス電圧を調べることにしました。図4を見ると、回路図上にプレート電圧やグリッド電圧等バイアス電圧が記載されています。やはりキットを組み立てる上で必要な情報ですのでちゃんと回路図上に記載されています。これはありがたいですね。マルチメータやオシロスコープを使って電圧を測ることにしました。そのために、バイアスにかかわる回路を色分けしてみました。図15がバイアス関係の回路をおよそ図示してみたものです。高圧の電源経路は赤色の系列とピンク色の系列で元の供給源が異なっています。


図15 9R-59Dのバイアス関係部分

図15の上に実際に計測した電圧値を何件か載せてみました。


図16 バイアス電圧計測値

比較してみると回路図に記載されている電圧値よりもかなり低い電圧値が多くみられます。

部品のチェック

バイアス値が低いため抵抗やコンデンサの劣化が疑われます。真空管が劣化している可能性も否定できませんが、経年変化により抵抗値やコンデンサの静電容量も変化しているようです。そこで各部の抵抗値を測定してみることにしました。バラバラにばらして一つずつ計測すれば一番確実ですが、レストア素人の私はそんな恐ろしいことはできません(やったら100%組み立てられなくなりますので)。幸い真空管の場合、真空管を抜くことで回路を断ち切ることができますので何カ所かの回路定数をテスターで計ることができます。

何点か測ってみた結果、つぎのようになりました。


表17 抵抗計測値

ほとんどの抵抗が表示規格の3割以上高い値になっており、B電源の供給経路上にあるR41などは倍以上の値になっていますので、局発に供給されるB電圧は30V以上低下している理由もうなずけます。

コンデンサも同じような状況にあるのでしょう。商品説明につぎのように書かれていました。



いくつかのコンデンサは交換されています。



まだまだ修理のし甲斐がありそうです。でも今回はここまでで息が切れてしまいました。

レストアへの道は厳しい

ひと月ほどかけてのんびりとレストアの真似事をしてきました。故障探求・劣化箇所調査と言った方が良いかもしれません。調査の結果9R-59Dの部品をかなり交換しなければいけないというあたりまえの事が判明しました(お粗末です)。まだまだ不良個所が残っているようですが次までに少しは状態を突き詰め、目標の7MHzのSSB-CWが受信できる状態にしたいと思います。

劣化している抵抗器については、残念なことに手持ちの抵抗器はトランジスタ回路用の低電力タイプばかりですので、真空管で使用する1/2ワット以上の抵抗は持ち合わせていません。もう少し回路を調べて部品交換しなければいけない箇所を特定する必要があります。完全分解するのが早道かもしれませんが、「怖いし、自信ないし」の状態ですので、少しずつばらして不良部品を見つけ、レストアしていきたいとおもいます。

「レストアする人はすごいな」というのが私の感想でして、そんな方々を尊敬の目で見ています。9R-59Dでさえ分解することに怖気づいている私ですから、レストアする方々がそのほかの複雑な無線機をよくもまあ分解・組み立てできるなと不思議で仕方ありません。私は「レストアできます。レストアしました。」とは口が裂けても言えませんし、言いません。

今月はこのような記事を書きましたが、もし「レストアしたことありますか」と聞かれれば、とてもハイとは答えられませんので「アマチュア無線で遊んでます」と質問からそれた回答をすることと思います。

ものづくりやろう! バックナンバー

2023年9月号トップへ戻る

サイトのご利用について

©2024 月刊FBニュース編集部 All Rights Reserved.