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2023年11月15日掲載
日本ボーイスカウトアマチュア無線クラブ
JOTA-JOTI Plaza 2023 東京杉並会場 運営担当
浪間 英一(JP1PRO)
今年度のJOTA-JOTIプラザ2023東京杉並会場は、開催場所は前年度までと同じボーイスカウト日本連盟スカウト会館(東京都杉並区下井草)でしたが、2時間枠の参加プログラムで回数と内容を変更して、今年は10月21日(土)に2回(前年は3回)、10月22日(日)に3回(前年は5回)の新プログラムを実施しました。
2日間で、東京・埼玉・茨城の各都県から総計43名の参加(うちスカウト数25名)がありました。
プログラム内容は各時間枠の回とも同じで、オリエンテーションの後に「PCを使ったCWレッスン」を約15分間行い、参加者の緊張をほぐしながら、電信のほかにも通信手段のさまざまな形式を体験してもらいました。
CWレッスンの後は「アルミ箔と厚紙でつくる地デジTV用3エレアンテナ」の工作実習をJARL東京都支部・JARL埼玉県支部の講師の皆さんの協力を得て行いました。この約30分間の時間帯は前年度までは電気通信の初歩知識を説明する講義にあてていましたが、参加する子供たちの年齢幅(小1~高3)に合わせた講義内容にするのが難しかったため、今年は思い切って、参加スカウトの中心となる年齢層(小3~中1)をターゲットとした『工作の時間』に内容を刷新しました。
この工作は事後の参加者アンケート結果によれば、年少者には少し難しさがあったようですが、全体的には5回実施したプログラムのいずれの回でもたいへん好評で、自分で作ったアンテナを使い大型モニターに地デジTVが映ると、驚きと同時に歓声を上げて喜んでもらえました。電波や通信機器の仕組みの一端を手作りのもので実感できたことは、参加者へ無線・電波を使ったコミュニケーションと技術探求の趣味への入口を提供できたと思います。
このアンテナは、アマチュア無線用の人工衛星を受信するためにJA1CPA中村さんによって開発・設計されたアンテナを地デジ用に改良したものです。小さなスカウト達へ丁寧な指導をしていただいたJARLの講師の皆さんには、企画段階から教材の準備や工作の個別指導まで大きなご尽力をいただき、深く感謝申し上げます。
工作教室の後に、JARLの講師による「電波教室」として、電波と日常生活の関わりなどの児童向け解説、通話表の説明、マイクのPTTの使い方など、無線通信の仕組みやルールを約15分間おこなっていただきました。
工作と電波教室の後は、いよいよ約45分間のアマチュア無線の体験です。前年までの特別局(8J1JOTA)ではなく、制度改正により今年は日本ボースカウトアマチュア無線クラブ東京の社団局JH1YSSを常置場所で体験局として運用しました。
初めて無線機のマイクを握るスカウト達は緊張して声も小さく、あらかじめ書いておいた通話表の自分の名前を言うのが精いっぱい。しかし、交信相手の方が聞いてくる内容がわかると、自分の言葉で一生懸命に会話を続けようとします。とくに、交信相手がボーイスカウト局のときはお互いに、キャンプやハイキングや進級章のことなど、共通の話題を少しずつ話せるようになって行きます。
言葉と言葉の間隔が数秒間空いてしまったり、送信の終わりに『~どうぞ』と言えずに無変調が少し出てしまうのは体験局であれば仕方ありません。そこは、指揮者(体験局立ち合い人)の裁量と会話技術で、相手の方にご理解いただいくとともに体験者の緊張感やストレスを軽減するように心がけました。指揮者としてのこれらの運用方法を、過去4年間の体験局運用の経験と実績により、当クラブ員の多くが体得できていたことが今年の運用にも活かされたと思います。
今年の体験局運用では、D-STARをターミナルモードで活用して全国各地の体験局やスカウト局と交信が出来ました。また、50MHz SSBや144MHz SSBと430MHz FMで一般局との交信も行えました。とくに144MHzのSSBでは従免は持っているがビギナーというスカウトが運用し、SSB特有の微調整やノイズを経験してもらえました。体験局としてのQSO相手局は、のべ12局ほどです。
体験局プログラム実施時間の合間や体験局終了後には、JOTA参加局としてもJH1YSSを運用しましたが、運用時間が短いことと運用場所がHF帯の無線局ロケーションとして過酷な条件であったなどの理由により、主に7MHz CWとSSBによるQSOでは110局ほどにとどまりました。
プログラム参加者がそれぞれ2回~3回の体験局運用を終えたのち、約10分間で、一人一人にアンケート用紙へ今回の体験局参加の感想を記述してもらいました。免許所持者には別の質問も用意しました。先に述べたように、アンテナ工作がよかった・おもしろかった、(和文通話表を使って)名前を言うのが難しかった、無線体験局をまたやってみたい、という感想が多かったように思われます。また無資格者への『無線の免許をとりたいですか?』という問いには回答者29名中22名(75.8%)が『挑戦してみたい』と答えてくれました。
今後の私たち指導者側の課題は、このような『いろいろな工作をしてみたい。無線の免許をとってみたい。』という子どもたちの探求心や要望を、どこまで叶えてやれるか、実現できるか、ということです。それは、もう何年も前から言われていることだと記憶していますが、このほどの工作教室や体験局で、より一層はっきりと見えてきた事象だと思います。
こども達に真剣に向き合ってくれたJARLの講師の皆さんや、多くの資料をご提供くださったJARDの方々、貴重な機材を用意して頂いたアイコム株式会社様、そして、およばずながら末端で同好者を集めて後輩のボーイスカウト達と活動する我々、それらすべての関係者が年々蒔いてきた種が、少しずつ芽を出して伸びつつあるのが、ようやく形となり数値として見えてきたのではないか、と期待しております。
体験プログラム参加者はアンケート用紙を受付に提出した後、人員点検を経て引率の隊指導者と共に帰路につきました。自分の3エレTVアンテナを大きめのレジ袋に入れて大切に持ちながら・・・
今後とも、ラジオ・スカウティングへの皆様のご理解とご協力をお願いいたします。
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