新・エレクトロニクス工作室
2023年11月15日掲載
第14回と第15回でAD9959を使ったSGの紹介をしました。この内部には30dBのアッテネータを2段入れて、出力レベルを下げる方向に広くしています。このSGを作った時、アンプも入れようかと考えていました。実はそのため、制御用の回路で無駄と思える部分があるのです。しかしトータルで考えた時に、アンプは外付けの方が良いだろうと考え直し、アッテネータを2段としました。これで出力は-113~-14dBm(0~99dBμ)となり、受信機の調整には普通には使えます。しかしアンプの実験を始めると、当然もう少しレベルを上げたい時が出てきます。
このSGを作っていた時に、内蔵しようと実験をしていたアンプが何台かありました。この中で一番使いやすそうだったμPC1677C使ったアンプを、写真1のようにケースに入れて外付けのアンプとしました。
写真1 作製したSG用の20dBアンプ
普通に考えると、このようなアンプはMMICで作るのが一番簡単でしょう。SGを150MHzまでに設定しましたので、アンプも同じ程度をカバーするのが目標になります。何台か作ってみたのですが、どうしても周波数特性が今一つでした。そこで思い出したのが週刊BEACONのNo.156で作ったワイドバンドアンプです。これなら十分にカバーできそうです。このアンプはJK1XKP貝原さんのアイデアを元にして作りました。使用しているμPC1677Cは既にディスコンですが、イーエレで購入する事ができます。
このようにして、SGに内蔵するために作った基板がありました。そこで、これに少し手直しをしてケースに入れる事にしました。回路は図1のようになります。アンプの基本的な回路は週刊BEACONのNo.156と変わりはありません。周波数が1MHz以下まで下げられるように、抵抗を使って電圧を加えるのがミソです。このあたりについては、週刊BEACONのNo.156か貝原さんのHPをご覧下さい。
SGに内蔵する場合は、5Vの制御でアンプのON/OFFを切り替える必要がありました。そのため5Vのリレーも入れていましたが、不要ですので接点をショートしました。もちろん、この5VのリレーRL1は省略して下さい。
また、入出力の切り替えに高周波用のリレー オムロンG4Y-152P(12V)を使っています。これはたまたま手持ちにあったため使いました。150MHzまでですので、普通の小型のリレーであれば充分と思います。逆に大き過ぎて使い難いところがありました。但し、2回路の接点であっても1個で済まそうとせずに、入出力の両方に入れるのが無難と思います。アッテネータであれば1個でもスペース的に問題ないのですが、このようなアンプでは少々作り難いと思います。
最初はアンプのON時もOFF時もアッテネータを入れていたのですが、これはアンプON時だけに修正しました。ゲインを20dBに調整する目的があります。電源がOFFの時にはスルーとなり減衰はしません。ONにすると20dBのアンプとなります。SG用の外付けアンプにはちょうど良いでしょう。
ハンダ付けする前に図2の実装図を作製してからハンダ付けを始めました。秋月電子のシールドメッシュ付きのC基板を使っています。アースは部品面側にハンダ付けします。このレイヤーを変えてハンダ面にすると図3のようになります。このハンダ面にもチップコンデンサやチップのアッテネータ1dBを付けています。このアッテネータは最終的にゲインを測定してから値を決めた方が良いでしょう。実際に作った時の実装図とは少々違っていますが、もちろん修正済みです。チップコンデンサは100pFと0.01μFを2階建てにしてハンダ付けしています。
アッテネータは秋月電子で購入した写真2のようなチップタイプです。このアッテネータでは1dBステップでしか対応ができません。あまりに小型なので小細工は困難でしょう。使用する周波数は150MHzまでですので、普通の1/6Wの抵抗で作っても良いと思います。その方が、0.1dB単位でレベルの微調整も可能です。
写真2 使用したのは秋月電子で購入した1dBアッテネータ
このようにして作製したのが写真3の基板です。このハンダ面が写真4になります。
写真3 作製した基板
写真4 基板のハンダ面(アッテネータとコンデンサの一部を実装)
基板のコネクタにはSMAを使いましたので、ケーブル側にはL型のプラグを用いました。この方がデッドスペースが少なくなります。ジャンクで両端がL型プラグのケーブルがあったため、これを使用し写真5のように2本のケーブルにしました。ケースにはBNC-Rコネクタを使っていますので、アース側は円周状にコネクタ直付けのハンダをしました。しかし、インピーダンス的には円周の直径が大き過ぎそうです。多少のずれがありそうですが、影響は無いでしょう。
写真5 入出力のケーブルをL型のSMAを使って作製
ケースはタカチ電機工業のYM-130を用い、写真6のように穴あけを行いました。穴あけはコネクタとの兼ね合いがあります。ケーブルが固く自由度がないので、写真7のようにコネクタを接続して基板の位置を決めました。基板は貼付けボスを使って固定しています。裏面パネルがギリギリになりましたので、貼付けボスは金ノコで加工しています。この工作は、使用するコネクタによって調整する必要があります。
写真6 ケースの穴あけを行った様子
写真7 このように基板の位置決めを行った
いつもは回路図どおりにINは左側でOUTは右側に置くようにしています。しかし、SGを机上に置いている位置から考え、今回に限り右側をINにしました。これは各々の好みと周辺環境によります。私の場合、好みよりも周辺環境を優先しました。コネクタとケーブルの形状から、変更は今のところ不可です。
ケースの内部を配線し、写真8のようになりました。裏側から見ると写真9のようになります。もちろん基板での動作チェックはしていますが、この状態でも再度行いました。
写真8 内部の配線を実施
写真9 裏側から
周波数特性を測ったのが図4になります。これはトラッキングジェネレータの出力を-20dBmにして測りました。周波数によって0.5dB程度のゲイン変動がありますが、概ね20dBと言えるでしょう。これをラミネートしてケースの上に貼り付けました。
これでSGの出力に常時入れておく事ができます。POWER OFF時はスルーとなります。わざわざ持ち出して取り付ける手間は不要です。POWER ONにした時だけ20dBのゲインとなりますので、使い勝手に問題はありません。リレーを使わないアンプも悪くはないのですが、SG専用としては使い勝手が重要でしょう。
レベルを各周波数で測定して、SG側のソフトで出力レベルを調整する事も可能です。今回はこのような補正は止めて、単に20dBのアンプとしました。他のアンプが使い難くなると考えたためです。これで最大出力が99dBμだったのが119dBμまで上げられました。また-14dBmが+6dBmになりました。アンプの実験とすれば、もう10dB位レベルを高くできると更に都合が良いと思います。しかし、取り敢えずはこれで充分でしょう。
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