PHONEで楽しむQRP通信
2023年11月15日掲載
テレビを何気なくワッチしていると日本一の秘境駅として北海道旅客鉄道(JR北海道)「小幌駅」が紹介されていました。
観光協会発行の小幌駅秘境到達証明書
2023年9月に久しぶりに北海道ハムフェアが開催されることもあり、北海道行きを計画していました。ハムフェアは2日間の開催ですが1日目のみの参加と予定を変更し、北海道での2日目は日本一の秘境駅「小幌駅」を目指し、駅前QRVをやることにしました。
2週間前からインターネットで現地情報の収集と週間天気予報の確認を開始しました。2週間前の予報では雨となっていましたが、1週間前では曇、3日前には晴れと予報が変化していきました。内地から北海道への移動手段は飛行機であったため、移動運用のための機材は事前にホテルへ送りました。
情報収集のため、インターネットを閲覧すると現地ではスズメバチやマムシへの注意喚起の看板の掲出が目を引きました。また、道内では熊の目撃情報が頻発しているようでした。幸い、実行当日の3日前ほどから朝晩の気温の低下がみられることからスズメバチは活動しない旨の情報をハムフェア会場で道内在住の知人から入手できたのでちょっと安心しましたが、虫よけスプレーくらいは所持した方がいいと考え現地調達しました(季節柄、虫よけスプレーの調達は困難を極めましたが無事GET)。
また、現地で長時間滞在となるため、トイレ対応としてトイレットペーパーを機材と一緒に持参しました。現地にはバイオトイレというものが設置されているとのことですが、維持状態がわからないので不安要素の1つでした。実際、現物を確認すると都内の公衆トイレと比較しても整備が行き届いていました。なおトイレットペーパーは予備を含めて常設していました。
日本一の秘境駅といわれる「小幌駅」へは鉄道でしかたどり着けないといわれています。1日の列車の発着本数は上下線合わせて6本程度です。今回は運用時間を確保するため、朝一番(08:35)に小幌駅へ到着する列車を選定しました。逆算すると札幌出発は06:00です。途中まで特急列車を利用して、普通列車に乗り換えます。今回は伊達紋別駅で普通列車に乗り換えましたが普通列車の乗客は10人以下でした。小幌駅に近づくにつれ、乗客はだんだんと降車していき、4駅ほど手前では筆者一人の乗車となっていました。ようやく小幌駅へ到着、降車するのはもちろん筆者1人でした。室蘭本線は無人駅が多く、普通列車はワンマンの1両または2両編成です。降車の際は一番前の扉(運転士のすぐ後ろ)となり、切符は運転士によって回収されました。
札幌駅から小幌駅へ08:35に到着する往路行程パターンは次の4つが考えられます。筆者は乗り換え時間に余裕を持ちたかったのでパターン4を実践しました。
往路行程
札幌駅出発案内
往路チケット
伊達紋別駅
伊達紋別駅ホームの三日月兜
小幌駅に到着後、最初に行ったのは周囲の撮影と小幌駅での自撮り写真撮影でした。自撮り写真は巻頭に揚げた「小幌駅到達証明書」取得のための必須アイテムとなります。小幌駅は隧道に挟まれた駅で通過する特急列車からでは一瞬のことなので確認も困難かと思われます。
次に運用場所の確保です。前書きのとおり、マムシに出くわしたら大変なことになりますので繁みには入らないよう駅施設保線区詰所前を陣取りました。
まもなく小幌駅に到着
小幌駅での筆者
下り苫小牧駅方隧道
上り長万部駅方隧道
下り時刻表(1日2本)
上り時刻表(1日4本)
今回は、運用時間を確保するために朝一番(08:35)に到着しました。次に列車が到着するのは15:05です。6時間以上の時間、何もない場所に孤立することも考えられ、事前の下見ができていないことから移動前から事故やけがを懸念しました。そのため、マムシとの遭遇やスズメバチの巣に近づく恐れを軽減するため、繁みに入りこんでアンテナ設営することを避けました。本来、7NHz帯を運用する場合、これまでの経験からワイヤーDPの使用が理想なのですが広い範囲で展開が必要になる(繁みに入り込む)ことから、1つの三脚にリグとアンテナを取り付けて運用しました。HFのアンテナは自作アンテナチューナーを介してリグに抱かせる形でホイップ系のアンテナを使用しました。
運用場所周辺(駅海側)
セッティング
まずはワッチを開始、3アマの操作範囲で7~430MHz帯で実施、聞こえるバンドは7MHz帯のみでした。午前中はコンテストに参加する声が聞こえましたが、興味をひくコンテストではなかった(JARL主催の大きなコンテストであれば弱い電波でも楽しめますが、そもそも取ってもらえないとの考えもあり)ので聞き流しました。
CQも出してみましたがQSOには至らず、昼を迎えました。午後になって、運用時間も3時間程度となり、このままでは釣果がなく、ボウズでかえることになると変な焦りが出てきました。そんな時、これまで微かに聞こえていた局の信号がだんだん強くなっていくことが感じられました。ダメもとで強く入感する局を呼びに回る戦法に変更して何とか数局とQSOすることができ、実績を残すことができました。今回活用したシステム(リグ、アンテナ)はMM運用と同じものですが、季節やコンディション、ロケーションでこうもQSO数が違うのかと思い知る移動運用となりました(QRP運用につき始めから交信数にはこだわりがありません。実績重視と負け惜しみ?)。この頃、VU帯でのお手軽移動運用が多くなったせいか、HF移動運用について見直さなければと考えてしまいました。
通過列車とIC-705
自作アンテナチューナー
以下が今回の交信実績です。CQを出した交信ではありませんでしたが、実績を残すことができました(遠方まで出かけ、ボウズにならなくてホッとしました)。
帰りの列車は小幌駅を15:50に出発する東室蘭行きの普通列車です。通常であれば、そのまま東室蘭まで行き、札幌方面への列車に乗り継ぐことになりますが、今回は小幌駅秘境到達証明書をゲットするミッションがあることから、豊浦駅で途中下車し、(一社)噴火湾とようら観光協会が無料発行している到達証明書を受け取るため「天然豊浦温泉しおさい」(駅から徒歩15分程度)に立ち寄りました。無事に証明書をゲットし、札幌への帰路につきました。札幌駅着は19:58でした。
復路行程
復路普通列車到着
小幌駅からの乗車証
途中下車した豊浦駅
特急 すずらん号車内補充券
近年、常置場所での7MHz帯はノイズレベルが高いことからQROでの運用になっていました。今回の移動運用ではOUTPUT 5Wにホイップアンテナの組合せで何とかQSOできたことから、気をよくして常置場所での7MHz帯でのQRP運用を再開しました。全市全郡コンテストではOUTPUT 3WにワイヤーDPの組み合わせでSSBを堪能できました。
★★★ウラ話★★★
1. 地元局が聞こえない
今回の運用はコンディション、ロケーションに恵まれたとは言えませんでした。しかし、QRPでもしっかりしたアンテナを使用すればQSO数が増えたのではと考えます。また、通常ですと移動地周辺からのお声がけがありますが、当日は北海道ハムフェア開催日でした。アクティブな局はQRVせず、久しぶりのハムフェアに参加していたということで地元局が聞こえませんでした。これが最大の敗因? か・・・。
2. 「日本―の秘境駅」ブランド? 危うし。
文頭で列車のみでしか到達できない秘境と記載をしましたが、近年はブームもありマイカーで訪れ、国道37号から延びる職員通路(山道)より侵入し徒歩で来る観光客が増加しています。当日も列車の到着ない時間帯に5組ほど見かけました。中には国道からサンダル履きにて30分程度で来たという方もいました。
3. 乗車人数
小幌駅の乗車人数は年間10人以下と発表されており、秘境駅感を醸し出していますが、ここへ立ち寄る人のほとんどが「青春18きっぷ」、「一日散歩きっぷ」などのフリー切符を活用しているようです。到達証明書(発行開始は2018年8月4日から)の発行番号からも相当数の観光客が立ち寄っていると考えられます。
★★★QRPプチ情報その1★★★
QRP通信を楽しむための団体「東京QRPers」を発足します。
引き続き、クラブ員(発足メンバー)を募集します。
以下を目的とするQRP通信に関わるグループ(クラブ)を立ち上げます。
「アマチュア無線QRP通信(QRV)」を楽しむ。
「アマチュア無線の運用」により,クラブ員の親睦を計る。
「ロールコール」などを実施してクラブ員同士の情報交換を行う。
都内在住で参加希望、興味のある方はJE1ECFまでご連絡ください。
Email: t.saitoje1ecf(あっと)gmail.com
※(あっと)は半角@マークに変換。
表題を【東京QRPers問合せ コールサイン】として送信してください。
★★★QRPプチ情報その2★★★
JRE山手線につづき、JRE武蔵野線の駅前QRVを2023年10月14日(鉄道の日)より開始しています。今年は武蔵野線(府中本町駅~新松戸駅間)開業50周年の節目の年です。週末の運用で2023年・年内中に旅客扱い駅26駅のコンプリートを目指します。IC-705 5WにてV・UHF帯SSB・FMを中心にQRVします。
今回はこれでおしまいです
次号をお楽しみに
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