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日本全国・移動運用記

第98回 北海道ハムフェアで講演と実演

JO2ASQ 清水祐樹

2023年11月1日掲載

月刊FB NEWS 10月15日号のニュース記事で紹介されている通り、9月23日から24日にかけて北海道ハムフェアが開催され、筆者はブースでの展示と講演・実演の一人二役で参加しました。

ブースの出展

筆者は2015年の北海道ハムフェアに初めてブースを出展し、その後、2017年、2019年、そして2023年と連続して出展しています。会場への移動には公共交通機関を使用したため、移動運用設備の詳細を紹介することはできませんでしたが、移動運用だけでなく、無線機やアンテナの設計・製作にも取り組んでいる姿勢を分かりやすく伝えるように工夫しました。


写真1 筆者のブース

展示品としては、サテライト通信用のアンテナのほか、月刊FB NEWS創刊号に掲載された 7~50MHzホイップアンテナのロッドアンテナ版、5mの釣竿を使用してコイルのタップを切り替え1.8/1.9~14MHz帯の全バンドでアンテナチューナーが不要なホイップアンテナ(製作が非常に困難であるため、製作記事は未公開)、そして、IC-905に対応した1.2~10GHz帯の対数周期アンテナ(写真2)を用意しました。これは、市販品の対数周期アンテナ(1.35~9.5GHzと記載)を改造して、1.2GHz帯でもSWRが下がるように、最も長いエレメントの両端をアルミ粘着テープで延長して調整しました。北海道ハムフェアの開催時点ではIC-905をまだ入手していませんでしたが、その後、IC-905を入手して、2.4~10GHz帯でも送受信できることを確認しました。

会場内から10局と交信すると記念品がもらえるとのことで、持参したIC-705を、室内に設置したサテライト用アンテナに接続して430MHz帯 FMを運用したところ、会場外の固定局から呼ばれるという、予想外の出来事もありました。


写真2 展示品として用意した、1.2~10GHz帯に対応した対数周期アンテナ(市販品を改造)

講演「移動運用でサテライト通信」と、JARLのアマチュア衛星 FO-29による運用実演

2021年9月に開催された北海道アマチュア無線オンラインミーティング2021で、筆者はサテライト通信の実演を行いました。短時間に多くの局との交信を成立させる様子の紹介が大変好評で、今回の北海道ハムフェアでも早くから実演の依頼をいただいていました。

講演の時間は衛星の時間に合わせて、講演の後に運用の実演をすることになりました。衛星の時間には絶対に遅刻できないため、プレゼンテーションのトラブルなどで遅れが生じないように、細心の注意を払って臨みました。

講演では、使用しているアンテナの特徴について、展示では分かりにくい部分についても説明しました。特に、アンテナが倒れたり物にぶつかったりした場合にエレメントが外れて衝撃を吸収することで、アンテナの破損を防ぐ仕組みについて紹介しました。

筆者はこれまで、アマチュア無線関係の他のイベントでもサテライト通信の実演は何度か実施しています。今回の実演は、これまでで最も厳しい条件下で行われました。

まず、最近1年ほどで利用可能な衛星が激減しました。全盛期には、SSB/CWに対応した衛星が12種類ほど存在したのに対して、北海道ハムフェアの開催時点ではわずか4種類しかありませんでした(2023年11月にFO-99 NEXUSの大気圏突入が予想されており、3種類になる見通し)。北海道ハムフェアの開催時間内に安定して使用できそうな衛星は、JARLが管理しているFO-29しかありませんでした。この衛星は1996年に打ち上げられ、年月が経過したためバッテリーの機能が低下して動作が不安定で、使用できるかはその時の状況に依存します。

また、会場の様子が分からないことも不安がありました。今回の会場であるデ・アウネ さっぽろは新しく建てられた建物で、周囲は高い建物に囲まれています。そのような環境で、周囲に障害物が無く、衛星と長時間通信出来る場所を見つけるのは、現地で確認するまで分からない不確実な状況でした。


写真3 サテライト通信運用実演の様子

講演の後、IC-9700とアンテナを持って建物の外の空きスペースに移動し、衛星が来るのを待ちました。衛星が見え始める南東方向に建物があるため、こちらで衛星からの信号が聞こえる頃には、東日本の多くの局には衛星からの信号が既に聞こえており、CQを出すと途端に多くの局から呼ばれる状況を予想していました。

ところが、予定時刻から3分ほど経っても衛星からの信号が聞こえず、ここまで時間が経ってからオンになることは少ないため、衛星の調子が悪くこのままオフで終わるかと思い、一旦はあきらめを宣言しました。

ここで、見学されていた方から、インターネット上の移動運用情報掲示板で、予想より遅れて途中からオンになったと書き込まれているとの情報を得ました。運用を再開すると、衛星からの信号は弱かったものの、一度交信に成功すると次々と呼ばれて、最終的には18局とQSOできました。通常の移動運用では、最初にCWで運用した後、その後SSBにもチャレンジすることが一般的ですが、信号が非常に弱く、また時間切れでSSBは運用できませんでした。サテライト通信のSSBは、弱い信号や周波数の変化に対応する必要があるため、CWよりも難易度がはるかに高いです。課題もありましたが、皆様のご協力のおかげで、無事に実演を終えることができました。

実演の様子は、北海道ハムフェアのサイトで紹介されています。

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