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おきらくゴク楽自己くんれん

その32 軽トラモバイルシャックの改良
より快適な移動運用環境を目指して

JF3LCH 永井博雄

2023年12月1日掲載

皆さんこんにちは。思えば昨年秋に軽トラモバイルシャックで初の移動運用を実施して一年が経ちました。当時は一日も早く移動運用に使いたい一心で最低限必要な機能以外のあらゆる箇所を割愛して作り上げました。その後使っていて気になる箇所は地道に試行錯誤しながら改善してきました。しかし使う回数が増えてくるのにつれて基本設計に不満を感じることが多くなってきました。


はじめは我慢できていたところも回を重ねると不便を感じ段々おっくうになってきてシャックを積んで出かけようという気も失せてしまいそうなこともあったり、もっと便利に使えるように改良していかなければならないと感じてきました。

1. 同軸ケーブルの壁貫通


回を重ねるごとに配線作業が面倒に

これまで同軸ケーブルはシャック左前方に設けたエアコン配管用の直径67mmの蓋つきスリーブを使って移動運用場所に着くたびに蓋を外してケーブル類を通していたのですが、外につながる同軸ケーブル敷設しようと考えていました。しかし本体に穴をあける思い切りがつかずためらっていましたがやっと実行することができました。


壁のど真ん中に同軸ケーブルを貫通して


適当なプラケースをかぶせる

室内左側から床面を貫通して床下を右側へ這わせ、右側の床上に上げて壁の中を立ち上げています。外の中継箱の高さで壁を貫通しました。今は試しに同軸1本だけ通していますがうまくいけばもっといろんなケーブルを通したいので中継箱の中は余裕を持っています。


プラケースには簡易なロックが付いています

2. 電源エネルギー補充の考察

次は電源エネルギー問題です。無線機電源と室内照明等に必要な電源は事前に家で充電しておいたリチウムイオンバッテリー(100Ah/50Ah/30Ah)を使っています。バッテリーは十分容量があるので残量不足で困ることはありませんでした。

昨シーズンはカセットガスコンロと自作暖房用アタッチメントを使って暖をとっていました。素人作りのモバイルシャックですのであちらこちらに隙間が多く一酸化炭素中毒の心配はしていませんでしたが、OMさんから「いくら隙間が多いと言っても狭い室内で長時間燃焼器具を使うのは危ないですよ」とご指摘をいただき反省し、ガスを使う暖房に頼るのは止めることにしました。ガス以外に室内を暖房するには電気を使うのが一番適していると思います。しかし長く移動しようすると容量不足の不安が出てきます。そこで太陽電池の導入も検討しましたが、SDG's的には太陽電池がいいと思うのですが、太陽電池とソーラーチャージャーを買おうとするとお財布に優しくないのであきらめました。それとバッテリー残量がお天気次第という点も気に入らないところです。

外部からDC電源を供給できるように設けていたケーブルと手持ちの矩形波インバーター、リチウムイオン充電器を使って軽トラのバッテリーから走行中充電するのはどうかと考えました。その際懸念される点があります。

  • ①手持ちのインバーターでリチウムイオン充電器が駆動できるのか?
    リチウムイオン充電器は動作が複雑なので矩形波インバーターが使えるかの心配
  • ②走行中安定して充電を継続できるのか(エンジン回転数などで発電量が変動する)
    自動車の変動する電圧に追従できるか心配
  • ③時間当たりの充電量が実用になるほど確保できるのか?
    アイドリングで充電ができるか? リチウムイオン充電器の電流容量が10Aなので長時間走行する必要性

以上の点が気になりますがとりあえず手持ちの品物で構築できるので試してみます。


シャック前部に外部電源供給ケーブル

製作当初に無線用バッテリーが無くなっても、車から電源をもらって運用が続けられるようにシャック外部に出した電源供給ケーブルを軽トラのバッテリーに届く長さにして設定していました。これをつなぎシャック内分電盤に12-13.8Vを供給することができます。


軽トラのバッテリーに接続

シャック内分電盤は理想ダイオードを経由させ逆流を防止させています。これは室内の電池からケーブルを通って外部へ電気が流れるのを防ぐためと電圧の高いリチウムイオン電池(12.8V)と鉛蓄電池(12.0V)が並列になった場合に鉛蓄電池に逆流するのを防いでいます。


車のバッテリーからの給電を確認

テスターで軽トラバッテリーから室内への給電を確認できたところでインバーターと充電器を繋いで走行充電ができるかどうかを確認してみます。


300W矩形波インバーターと10Aリチウムイオン充電器


軽トラバッテリーからの充電用接続

繋ぎ終えたところで前出の①の課題を確認するためインバーターのスイッチを入れて実際に充電ができるかを確認します。最初充電ランプが点滅しそれに合わせて冷却ファンランプも点滅し充電が始まらないのでマズいと思ったのですが、エンジンをかけてみたところバッテリーの電圧が上がった(12.7V→13.5V)からでしょうか無事に充電を開始しました。うまく充電がスタートしないことが多くありましたが何度かON-OFFを繰り返すと充電開始してくれました。

もしかしたら矩形波インバーターの電流波形が充電器と合わないのかも知れません。充電が始まれば設定通り約10Aの定電流充電をしてくれるようです。写真のモバイルシャック内に設置している電池は、私が持っている最大容量である100Ahのリン酸鉄リチウムイオン電池で内蔵されたBluetoothを使ったバッテリーモニター機能が自慢の機種です。今回のような充電実験では大変便利な機能です。

前出の②について、通常軽トラックで夜走る時にハロゲンヘッドランプ2灯で120から140Wを消費しています。今回の充電する電力量が14.4V 10Aとして144Wですので昼間ならアイドリングでも問題になることはないのではないかと予想しています。

3. テストを兼ねてJARL滋賀県支部大会に

走行充電テストをするためにバッテリー容量を減らす目的で夜に100Ah電池で電気ヒーター暖房を行い、残量が減ったところで帰り道での走行で消耗したバッテリーに充電する考えです。


300Wセラミックファンヒーター

暖房には300Wのセラミックファンヒーターを使用しました。先月の全市全郡コンテストでも同じヒーターで暖房しましたが借りものでしたので今後も使うだろうし新しいものを購入しました。ネットで買うより近所のホームセンターの方が安い、という不思議な現象を経験しました。約2,200円で購入できました。

このヒーター使用時のバッテリーが消費する電流は約30Aで満充電であれば理論上3.3時間使用することができます。実際は連続運転では温まり過ぎるのでON-OFFすることがあるためもっと長時間使用する事ができるのではないかと予想していました。


琵琶湖 湖畔の公園駐車場での朝

前日は夜に奈良を出発し夜中に野洲市琵琶湖湖畔の公園駐車場で泊まることに。駐車場近くでは沢山の方がテントを張ってキャンプしておられました。敷設した同軸ケーブルを使っての初交信もできて楽しめました。

ファンヒーターを使った暖房が快適過ぎてうたた寝してしまい3時すぎに目が覚めて慌ててスイッチをOFF。残量を確認すると残り18.7%まで使ってしまっていました。これ以上の使用はバッテリーにダメージを与えかねないのでヒーターを止めて寝袋に毛布をかぶせて休みました。


深夜のバッテリーモニター

7時に目が覚めて写真のように大変気持ちの良い朝を迎えることができました。ファミレスで朝食をとって向かう予定でした。残容量が少ない状態で長時間置いておくのは好ましくないので朝から早速走行充電をしてみることにしました。

ファミリーレストランで充電状態を確認すると26.3%まで回復していました。25%を超えたのでバッテリー寿命を縮めそうな状態から脱却できたので、後は帰り道で充電することにしました。100Ahの電池に10A充電器を使えば1時間で10%の充電ができるのは自明の理ですが、今回は走行充電中に不測の事態が発生しないかどうかの検証が主な目的としておりました。

4. 走行充電をしながら帰路に


支部大会会場駐車場に到着

会場では目立つように(笑) 移動運用のセッティングをして電波を出せる状態にしていましたので多くの方に足を止めていただきました。中をのぞいていただいたり質問を受けたりしました。中にはビキナーの方の相談も受けたりと有意義な時間を過ごすことができました。ちょっと早かったのですが午後には会場をあとにして、出発前に運用対応接続から走行中充電接続に戻して帰路につきます。

帰る際に100Ah電池のスマホによるモニター監視が長時間連続して表示させることが可能なことに気が付きました。アプリを開いている間はスマホの画面表示が自動では消えないのです。走っているときはスマホを見ることができませんが、課題に思っていたのは停車アイドリングでの充電が安定するのかという事でしたので、停車の度に確認できるのが大変便利で安心して運転に集中できました。

それでも時々車を停めてシャックの中に入り中を確認しながら1時間30分経ったとき、分電盤がかなりの熱を持っていることに気が付きました。触ってみると危険な感じでしたのでこの時点で走行充電を終了することにしました。調べると自慢の理想ダイオードの放熱器が小さくて温度がかなり上昇してしまったみたいでした。

今後はFBな放熱の方法が見つかるまで走行充電は止めにしておきます。金属製ケースを採用するだけでも問題は解決できるよう思っています。


約40%まで回復して終了

今回の充電でも40%まで回復できれば暖房は無理にしても無線機の電源としては数時間の運用をこなせる容量まで走行するだけで回復させることができることが確認できました。

5. まとめ

同軸ケーブル引き込みに関して考えればAH-730制御ケーブルも通しておかないとあまり意味がない状態となってしまいました。純正の長いケーブルを切って加工するのはもったいないので、ケーブルを買ってきて通してから接続コネクタを取り付けて専用ケーブルとする必要があります。後日に対応したいと考えています。しかし現在の状態でも50MHz HB9CVや八木、144/430のアンテナを使う時にはこれは大変便利で通した甲斐があります。

充電については外部電源からの電流が大きく理想ダイオードの発熱が大きいため放熱の性能を上げてやる必要があることがわかりましたので、分電盤の放熱を検討して対策してみようと思います。

理論上の1時間10%の充電が可能な見込みが付いたのが何よりの成果です。今回の充電方法であれば2時間走れば20Ahとなり256Whの電力を確保でき、これだけの容量があれば50Wで2~3時間の運用ができるようになるので、遠征の時などは便利に使える機能となるでしょう。

今回壁に穴をあけるなど思い切った措置を取ることができたため、今後はもっといろいろな対策を講じることができそうですので、これからももっと移動運用が快適になるように改善していけそうな気がしています。

それではまた。

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