ラジオ少年
2024年2月1日掲載
八木アンテナ等の指向性アンテナを製作した後、アンテナの最大の特性を引き出すために各エレメントの間隔等の調整を行うことがあります。調整はアンテナの指向性側(フロント側)にアンテナから数波長離れたところに電界強度計を置き、そのメーターの振れを見ながら調整します。このとき、アンテナ側に一人、電界強度計側に一人を配置します。つまり少なくとも二人が必要となります。昨今、私の周りのローカル局も減少し、アンテナの調整にヘルプをお願いする人がいなくなり、一人で調整をしなければならないケースが増えました。
そんな不便を解消できたらと思い一人でアンテナの調整ができるLED表示の簡易電界強度計を製作します。アンテナから離れた地点の電界強度を絶対値で測定できるような高尚な測定器ではなく、電界強度の相対的な強さを針のメーターの代わりにLEDバーメータ―で表示し、遠くからでもLEDの点灯で電界強度の強さが分かるようにするものです。
製作は三回に分けて紹介します。その1では、入力電圧に応じてLEDが点灯する動作を18ピンのIC、LM3914レベルメーターを使い実験を行います。その2では、電界強度計となる高周波増幅部、検波、表示部を作ります。その3では、その1、その2で製作した基板をケースに組み込み完成させます。
図1に今回製作するLED表示の簡易電界強度計の構成図を示します。本体は大きくは四つのブロックから構成されています。一つ目は、アンテナから輻射された電波を受信して、後段のメーターやLEDを点灯させるまでのレベルに増幅するRF Amp部。二つ目は、増幅されたRF信号を倍電圧整流して直流信号に変換するDetector部。三つ目は、その直流信号をさらに増幅してメーターやLEDを点灯させるまで増幅するDC Amp部です。そして四つ目が受信した信号のレベルを視覚的にメーターやLEDで表示するDisplay部です。
図1 LED表示RFレベルメーターのブロック図
LEDの点灯にはLM3914というICを使います。マニアの間ではLEDレベルメーターあるいはLEDレベルドライバーと呼ばれていますがテキサス・インスツルメンツ(TI)のデーターシートにはDot/Bar Display Driverと記されています。このICは、アナログの電圧レベルを検出し、10個のLEDを、リニア特性を持たせて点灯させます。つまり入力電圧に比例してそのレベルに対応した数だけLEDを点灯させます。LEDの明るさを決める抵抗は、一括して外付け抵抗で調整できるため、LEDそれぞれに対する抵抗の計算は不要です。
図2 LM3914N-1の外観(18ピンIC)
TIのデーターシートには、TYPICAL APPLICATIONSとしてLED 10個を点灯させる参考回路が掲載されています。その中の一つの回路を参考に回路を組み立てます。(図3)
図3 TIのデーターシートに掲載の参考回路図(TIのデーターシートより引用)
TIのデーターシートにはLEDに流す電流(ILED)の計算方法が記されています。下記の式より図3のR1、R2の値を求めてみます。
1. R1の計算
LEDの明るさは、使用するLEDに左右します。今回はいわゆる図4に示すような普通のLEDを使います。
図4 10~20mAの電流で点灯する普通のLED
LEDの点灯には10~20mA程度の電流を流します。10mA以下でも点灯しますが少し暗いように思いますので、ここでは10mAとします。上式(1)にILED=10mAを代入するとR1=1.25kΩと算出できます。
2. R2の計算
入力電圧の変化量とLEDの点灯個数を関係付ける抵抗R2を求めます。ここでいう入力電圧とは本来送信機側からアンテナを通して電界強度計で信号を受け、その信号を直流電圧に変換したときの電圧です。これから電界強度計を製作するため、今の段階でその電圧はどれくらいになるか分かりません。
このICに入力する電圧ですが、ICを動作させる電源電圧(V+)とは大いに関係があります。V+は、入力電圧の最大値より1.8V高いことが求められます。入力電圧の最大値が5VであるとするとICに印加するV+は、5+1.8=6.8V以上の電圧でなければなりません。この電界強度計は屋外での使用を考慮し、電池での駆動を考えています。従って1.5Vの乾電池4個直列の6Vの電源電圧であれば好都合です。
電源電圧を6VとするとICに入力する最大電圧は、TIのデーターシートに記載されていますが、それより1.8V低い4.2Vあるいはそれ以下でなければなりません。これから製作する電界強度を測定する回路では、最大電圧を4.2Vとして製作を進めます。
その1ではLM3914の点灯テストを行う意味で、0~4Vの変化で4VのときにLEDが最大の10個が点灯するようにR2を計算で求めます。そのR2を求める式が前述の(2)式です。この式からR2を求める式に変形したものが下に示す(3)式です。この式に分かっている情報を代入して得た答えがR2=2.2kΩです。
つまりLM3914の電圧入力端子SIG(pin 5)とGND間に0~4Vの電圧を入力すると、入力電圧が0Vのときは、LEDは何も点灯せず、4VとなったときにはLEDは全点灯します。
図6に点灯実験を行う回路を示します。それほど複雑な回路でもありませんのでいきなりユニバーサル基板に組み込んでも問題はないと思いますが、まずはブレッドボードにパーツを組み込み、回路の動作を学びます。
ブレッドボードに組み込んだ後は配線をよく確かめてから電源の6Vを加えます。ICの入力端子に0~4Vの可変できる電源を接続します。その電圧を可変して、LEDの点灯個数が電圧に応じて変化すれば問題なしです。
TIのデーターシート中の回路図(図3)にはC1についての注意事項が記載されています。「接続するLEDのリード線が6インチ以上となる場合には2.2µFのタンタルコンデンサーあるいは10µFの電解コンデンサーを取付けてください」との内容です。
図5 TIのデーターシートに記載された注意事項(TIのデーターシートより引用)
図6 LM3914を使ったLED点灯実験
図7 図6の回路をブレッドボードに組み込んでLM3194の動作を学ぶ
ブレッドボードに組み込んでテストをした動画はここをクリックして見ることができます。
次回その2では、電界強度計で電波を受信してその信号の強さに応じたDC信号を取り出す回路を製作します。
CU
<備考>
本文中に掲載の図3は、テキサス・インスツルメンツLM3914のデーターシートに掲載されている回路図から引用しています。また掲載は同社の許可を得ています。
LM3914のデーターシート: http://www.ti.com/product/lm3914
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