Monthly FB NEWS 月刊FBニュース 月刊FBニュースはアマチュア無線の電子WEBマガジン。ベテランから入門まで、楽しく役立つ情報が満載です。

ラジオ少年

第7回 簡易インダクタンスメータの製作(Part 2)

2023年9月1日掲載



完成した簡易インダクタンスメータ

前号Part 1では、インダクタンスを求める方法について考えました。Part 2では、前回の説明に沿ってLC並列共振回路を用いた方法で製作を進めます。

製作するインダクタンスメータの回路図

図1は、前号でも示したLC並列共振回路を用いた簡易インダクタンスメータのブロック図です。このブロック図に沿って考えた回路図が図2です。製作はできるだけ特殊部品を使わず、比較的市場に出回っている入手しやすい部品を使うことを心がけます。


図1 簡易インダクタンスメータのブロック図


図2 簡易インダクタンスメータの全回路図

回路の説明

(1) 発振回路
X1(10MHz)の水晶発振子(図3)をIC2(74HC04)のインバータで発振させています。この10MHzの水晶は、特殊部品ではありませんので部品屋さんでもネット通販でも入手できると思います。その10MHzの信号をIC3A(74HC74)で1/2分周、IC3Bで1/2分周、さらにIC4Aで1/2分周を行い、それぞれ5MHz、2.5MHz、そして最終的に1.25MHzの信号を取り出しています。分周した信号をロータリースイッチで切換えLxとC3で構成される同調回路に供給しています。


図3 10MHzの水晶発振子

発振回路で注意しなければならないのが発振に使っている74HC04のロジックICです。74HCU04はもちろんOKですが、インバータでもその昔よく使ったTTLの7404では発振しませんでした。

(2) 同調回路
回路図(図2)で示したLxは被測定インダクタンスです。このLxと並列にC3を接続してLC並列共振回路を構成しています。C3は可変容量コンデンサです。通称バリコン(Variable capacitor)と呼ばれているものです。このバリコン、最近は市場でも入手困難となっていることからゲルマニウムラジオでおなじみの単連ポリバリコンを使います。


図4 ゲルマニウムラジオでおなじみのポリバリコン

この単連ポリバリコンの容量可変範囲はおよそ10pFから250pFとみており、今回の製作でもこの値を使って計算しています。このLxとC3で構成される共振回路に高周波信号が供給され、回路がその周波数に共振すると共振回路の両端の電圧が大きくなります。この信号を利用して後段のメータを振らしています。信号はC4を通してメータドライブ回路に導かれます。

(3) メータドライブ回路
C4を通して入力された高周波信号は、D2、D3、C5の整流回路で直流にした後、IC1(LM386)でメータを振らせる信号まで増幅します。IC1の3番ピン(+)に信号が印加されていない状態では、5番ピンには電源電圧の約半分の2.6Vが出力されます。このときその出力電圧でメータが右側に振り切れないようにR7を調整してバランスを取ります。LxとC3が共振すると3番ピンに印加された信号はIC1で増幅され、5番ピンから出力されます。この電圧でメータ回路のバランスが崩れ、それに比例してメータが振れます。


図5 増幅器に使ったLM386

(4) 表示回路
メータには本格的な計測用の電流計を使用することは何ら問題ありませんが、特にこの部分はメータで電流や電圧の絶対値を正確に読むものではありませんので、フルスケールが1mAあるいはそれ以下のものであればどのようなものでもOKです。今回の製作ではプラスチックケースに入ったインジケータ程度のメータを使っています。メータの感度によって振れ具合は異なりますが、R5とR7で調整できます。メータの文字盤には、パソコンで作った図6のような目盛を貼り付け、それらしくしています。


図6 メータの文字盤に貼り付ける目盛

内部基板

図7は、回路図に示した部品を7cm×9cmのユニバーサル基板に組み込んだものです。メータやスイッチ類の外付け部品はケースのパネル面に取付けますので、ケースは比較的大きな22cm×11cm×4.5cmの縦長の樹脂ケースを使用しています。


図7 回路図の部品を7cm×9cmの基板に組み込んだ様子

組み立て

外付け部品と基板との接続は後々のメンテのことも考え、図8に示したようなコネクタコネクタを通して行います。C3(バリコン)とJ1(Lxを接続する端子)とは特にリード線は伸ばさずに最短距離で結線することが望ましいです。特性に影響します。


図8 外付け部品の接続や基板間の接続に使うコネクタ

パネル面には下記の部品を取付けます。
(1) 電源スイッチ
(2) 同調回路のバリコン
(3) インダクタンスのレンジを切り替えるロータリースイッチ
(4) メータの感度を調整するボリューム
(5) 回路の共振を表示するメータ


図9 部品を取付けたパネル面の内部(左:上面 右:底面)

バリコンと直結した目盛板には図10(右)で示したような円形の分度器を使っています。ケースが黒色であるため、そのまま取付けると文字盤の目盛が見難いため、裏側には白い厚紙を貼っています。


図10 円形分度器を利用した目盛板

動作確認

動作確認には計算で求めた図11の表を使い下記の順序で行います。
(1) できるだけ多くの既知のインダクタを準備します。(図12参考)
(2) 図11に沿って各周波数レンジで測定できるインダクタを1個準備します。
(3) 例えばf0が2.5MHzのレンジであれば16µHから400µHの間のインダクタです。
(4) 準備ができたインダクタを被測定インダクタンス接続端子に接続します。
(5) 電源をONにします。赤色のLEDが点灯します。
(6) メータの指針がフルスケールの約50%となるようにSENSITIVITYを調整します。
(7) 同調ツマミ(バリコン)をゆっくり回します。
(8) なだらかですがメータの振れが徐々に増加し、ピークになるポイントがあります。
(9) さらに同調ツマミを回していくと、メータの指針はまた低下していきます。
(10) このピークとなるポイントがその周波数における共振点です。
(11) 同様にその他の周波数レンジでも行い、共振点の発生を確認します。
(12) 各周波数レンジで、共振点を見出すことができれば動作は問題ありません。


図11 各周波数レンジにおけるインダクタンスの測定可能範囲の目安


図12 パーツショップで購入したいろいろなインダクタ

調整

Part 1の記事でも説明しましたがバリコンのロータとステータの重なりが一番抜けた状態を10pFとしました。図11の表でf0を1.25MHzとしたときの最大測定インダクタンスは1.6mHです。従って図12に示した左端3つのインダクタは1.6mHより大きいため測定不可です。

同調ツマミの目盛板の校正は、各周波数レンジで上限と下限近くのインダクタを端子に接続し、各々のピーク点を探すことから始めます。図11に記したように2.5MHzの周波数レンジではバリコンの容量が10pFのときは400µH、250pFのときは16µHが測定レンジであると計算で求めました。400µHと16µHのぴったりのインダクタは準備できていないため、130µHと33µHのインダクタをそれぞれ接続し、同調ツマミを回してピーク点を探します。ピーク点の位置をそれぞれ分度器の目盛を記録しておきます。130µHと33µHの差は(130-33≒100)約100µHであることから、その間の目盛を10等分すると2.5MHzレンジにおけるインダクタンスの値の目盛を求めることができます。

図13の表で茶色の文字は実測値です。表中の黒色で記した数字は計算値です。空欄は、適当なインダクタがなかったために測定できていません。分度器の目盛とバリコンの容量(キャパシタンス)は、リニアであるのかどうか分かりませんが、この表からだいたいのインダクタンスを推測することができます。


図13 簡易インダクタンスメータの実測値

考察

Qの高いインダクタであればメータを見ながら同調ツマミを回すと比較的簡単にピークを見つけることができますが、1/4Wの抵抗のような形をしたQの低いインダクタでは、富士山のような形でピークは現れませんでした。それでも慎重に同調回路を回すと微かなピークを見出すことができ、大まかですが大体のインダクタンスを知ることができます。

10MHzの水晶で10MHzを発振させ、ロジックICで分周を繰り返して5MHz、2.5MHz、1.25MHzを作りました。これらの信号の伝達には同軸ケーブルが必須です。最初は、通常のワイヤーで線を引きまわしていましたが、これら4種類の高周波がロータリースイッチで切換えているものの、高周波信号の回り込みで全部の周波数が同調回路に引き込まれて、ロータリースイッチで信号が切り替わっていませんでした。そのため、同調が取れず対策に時間がかかりました。図2の回路図中にも記載していますが高周波信号の伝達には同軸ケーブルを使用することをお勧めします。

まだまだ改良の余地のある製作となってしまいました。市販の測定器のようにばっちりインダクタンスを測定できるものではありませんが、なんとか簡易インダクタンスメータと呼ぶものができました。機会があれば改良してまたこのコーナに投稿したいと思います。

CU

ラジオ少年 バックナンバー

2023年9月号トップへ戻る

サイトのご利用について

©2024 月刊FBニュース編集部 All Rights Reserved.