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Masacoの「むせんのせかい」 ~アイボールの旅~

第69回 山形大学無線研究会(JA7YAB)の皆さん

2024年2月15日掲載

Masacoの「むせんのせかい」 ~アイボールの旅~

皆さんこんにちは、Masacoです。今年はお正月早々、北陸地方で大きな地震がありました。被災された皆様に心よりお見舞い申し上げます。

阪神淡路大震災も東日本大震災も経験した私にとって、とても他人事とは思えなくて・・・。命は儚くも逞しくて、あの時も、「一人じゃないよ」と、知らない人たちが家族のように支えあい、時間はかかっても確かに歩き続けました。色が消え白黒になってしまった街並みが少しずつ少しずつ、光を求めて明るく復興していく光景が今も目に焼き付いています。

互いに思いやり、声をかけあい、明日へ向かう力をもらいながら精一杯だった日々が今を作っているなぁと感じています。当時は「アマチュア無線」のことは全く知りませんでしたが、全ての通信網がダメになった兵庫県で、アマチュア無線がどれほど命綱になったか・・・ アマチュア無線家の底力が復興に大きな役割を果たしたことを後になってから知り、人のお役に立てる免許は素晴らしい! と、無線に興味を持ったのがきっかけです。

そして先月、「HAMtte交信パーティー」に参加し、石川県の局と繋がることができました。被災地からの電波が届き、人間のパワーを感じ、とても嬉しい交信でした。また、「関西ハムシンポジウム」では、今年一番に無線家さんとアイボールができました。会場でお会いした皆さんと29年前のあの日を重ねて、私なりに今できることは何か? を考える時間でもありました。知恵を持ち寄り、心を寄せて、一日も早く平穏ないつも通りの生活に戻れますように・・・ お祈りしています。

さて、久しぶりの「むせんのせかい」です! 今年はできるだけ定期的に(2か月に1度ぐらいのペースで)全国のいろいろな無線クラブや企業を訪問し、ご紹介していきたいと思います。引き続きご愛読と応援をお願いします♪

今回は、山形県米沢市の国立大学法人山形大学の無線研究会にお邪魔しました。コールサインはJA7YAB。東北地方で2番目に古いクラブ局ですが、途中で活動が中断していた時期があり、最近復活を果たしたそうですよ!

第69回 山形大学無線研究会(JA7YAB)の皆さん


山形大学は東日本でも有数の規模を誇る総合国立大学です。そのルーツをたどると、明治11(1878)年の山形県師範学校の開校に始まり、昭和24(1949)年に県内5つの教育機関(米沢工業専門学校、山形師範学校、山形青年師範学校、山形高等学校、山形県立農林専門学校)を母体に新制国立大学として設置されました。現在は山形市と米沢市、鶴岡市に合計4つのキャンパスがあり、約9,000名が学んでいます。

今回お邪魔したのは工学部がある米沢キャンパスで、無線研究会の活動拠点もここにあります。米沢は雪の多い地域として知られているので、訪問日(2023年12月中旬)のお天気が心配で(雪が大の苦手・・・)、滑り止めのアイススパイクもバッチリ持参で向かいましたが、幸いにも雪は降らずホッとしました(でも、取材の5日後から本格的な降雪が始まり、あっという間に40cmも積もってしまったそうです!)。この時期、市内や大学のあちこちに「雪囲い」が設けられているのが印象的でした。


工学部のある、山形大学米沢キャンパスに到着! 写真の右奥が旧米沢高等工業学校本館です♪

「Masacoさん、お待ちしていました!」

米沢キャンパスの入口を入ったところで、部長の小松さん(大学院理工学研究科 修士2年)をはじめ、部員やOBの皆さんが待っていてくださいました♪

--Masacoです、今日はよろしくお願いします!

「さっそくですが、今日は“旧米沢高等工業学校本館”が見学できますので、一緒に行きましょう」

--あ、あの建物ですね! ありがとうございます。

旧米沢高等工業学校本館を見学

OBの方に伺ったところ、この米沢キャンパスは元々、全国7番目の官立高等工業学校として明治43(1910)年に開校した「米沢高等工業学校」があった場所で、開校当時の校舎が保存されていて(国の重要文化財に指定!)、高等工業学校や山形大学の貴重な資料がたくさん保存・展示されているそうです。


国の重要文化財にも指定されている旧米沢高等工業学校本館をこれから見学! 本格的な雪のシーズンを前に、植栽に「雪囲い」が施されています

建物は木造2階建てで全長94メートル、建築面積1,305平方メートルとかなり大きくて立派です。長い廊下に接した教室がたくさんあって、部屋ごとにテーマを設けた展示が行われていました。


電話機や無線機といった「通信機器」の展示室。コレクターの方が寄贈したものだそうです。アイコムのアマチュア無線機もありましたよ!

日本で初めて人造絹糸(人絹、レーヨン)の製造に成功した秦 逸三教授の研究資料と機材をはじめ、無線機や電話機、録音機やカメラの展示、アナログ時代の計算機や懐かしいパーソナルコンピュータなど、どの部屋も見どころ満載で全然飽きません! とうとう「Masacoさん、そろそろ先へ進みましょう」と促されてしまったほどです(汗)。


録音機器の展示コーナーには懐かしいオープンリール式の卓上テープレコーダーがズラリ!


映画撮影などに使われたムービーカメラ類もたくさん。映画監督になった気分が味わえます♪

この旧米沢高等工業学校本館は、事前申し込みすれば一般の方も見学可能ですよ。オススメです!
https://www.yz.yamagata-u.ac.jp/school/old-yonezawa/guide/


昔の教室もそのまま残されていました。ここで多くの学生さんが勉強し、巣立っていったのでしょうね

無線研究会(JA7YAB)の歴史と復活のあゆみ

旧米沢高等工業学校本館の見学を終えて、活動拠点があるサークル棟に移動する間、部長の小松さんと顧問の小坂先生(JH7CUO)から、無線研究会のこれまでの歩みを教えていただきました!

無線研究会は1960(昭和35)年の発足(それ以前の1954年からは「無線研究班」として活動)。この年、日本のアマチュア無線家に「クラブ局(社団局)」の開設が認められ、無線研究会には東北地方で2番目のクラブ局として「JA7YAB」のコールサインが割り当てられました。


1960年、無線研究会発足当時の集合写真です


1960年、無線研究会発足当時の部室。無線機もすべて手作りでした!

その後は順調に部員が増え、コンテストや移動運用、文化祭への参加などアクティブに活動を続け、特にコンテストでは輝かしい成績を収めたそうです。また山形大学の学長が部の顧問を務めてくださったこともあるそうですよ!!


1990年頃の部室風景。ファクシミリやRTTYなど、さまざまなモードにチャレンジしていました


現在の部室にも、過去のコンテストで入賞したときの賞状がたくさんありました

特徴はOBの結束力が高いこと!「後輩が頑張っていたり、困っているようなら“ちょっと助けてやるか”っていう雰囲気があります。だいぶ昔に卒業したOBが部室に突然やってきて、ローテーターを置いていってくれた・・・ といったこともありました。そんな学校クラブは、なかなかないと思います」(小坂先生)

さらに、コンテスト時の移動運用にサポート要員として参加したり、上京した後輩に食事や宿泊場所を提供してくれるOBもいらっしゃるそうです。また「十数年前に、創部50周年祝賀会をホテルで開催したところ、200人近くも出席して、大宴会場が満杯になりました」というエピソードも! なんでも多くのOBが、Facebookのグループページで繋がっていて、常に情報交換を行っているそうです。


JA7YABの開局50周年を記念して2010年に運用した「8N7YAB」のQSLカードです

そんな無線研究会ですが、実は2000年代になると部員が減り、2014年から数年間は活動休止に近い状態になり、JA7YABの局免許も一時失効。部室もLinux・PC研究会のメンバーが使うようになっていたそうです。

そんなとき、Linux・PC研究会の部長だった小松さんが、小坂先生から「JA7YABの無線局免許が失効寸前」と聞き、“歴史のある無線局を自分の代で終わらせるのはもったいない、せっかくなら無線のことを少し学んでみよう”と思って、無線研究会の復活に乗り出したのが、再始動のきっかけだったそうです! 小松さんは「右も左も何も知らない状態から、無線局の免許更新・設備修復の作業を始めたので、時間がかかって苦労しました。部員もあまりおらず、後輩の小林君が現れるまで、ほとんどの作業を自分でしなければいけなかったのが大変でした」と振り返っていました。

--JA7YABの運用再開はいつ頃だったのですか?

「2020年11月です。米沢市の御成山展望台から、部員の萩野さん(JP7VAI)が行いました」


2020年11月、JA7YABから再開後初めての運用をする萩野さん。このときに無線研究会の設立時メンバーのお一人、JA7CL設楽さんともつながったそうです(JA7YABのXアカウントより)

--たくさん交信できました?

「144/430MHz帯のハンディ機だったので2局だけだったのですが、最初に呼んできてくださったのが、なんと無線研究会の設立時初代メンバーのお一人、JA7CL設楽さんだったのです」

--きっとJA7YABのコールサインを聞いて、懐かしさで呼んでくださったのですね。なんだかご縁を感じます!

「設楽さんはその後サイレントキーになられたので、この交信は本当に貴重で思い出深いものになりました」

--本当に貴重な交信でしたね。

「実はJA7YABのコールサインで運用を再開してから、多くの局から“久しぶりにYABのコールサインを聞きました!”、“お久しぶりです”、“古豪復活!”、“40年ぶりの交信です”といった感想をいただきいています。知名度は想像以上でした」

--現役部員と、OBの皆さんとの交流はありますか?

「無線研究会のX(旧Twitter)を使ってJA7YABの復活を告知したら、OBの飯干さんからご連絡をいただき、私をFacebookのグループページのメンバーに加えてくださいました。それだけではなくて、飯干さんはクラブにポータブル機のIC-705を寄贈してくださったんです」

--すごい! 嬉しいですね~。


山形大学無線研究会のXアカウント(@JA7YAB)。活動状況はここで逐一報告されています

「ほかにも、OBの伊藤さんが毎年移動運用で参加している6m AND DOWNコンテストに、現役部員が無線機を持ってお邪魔して、コンテストの参加も実現しました。これもありがたかったです。現役部員はみんな未熟ですが、これからもOBの皆さんにご指導いただいて、ステップアップしていきたいと思っています」

アンテナと部室を見学!

サークル棟に着きました! 鉄筋2階建ての建物の左右に、1本ずつ自立タワーが立っています。


米沢キャンパスのサークル棟は2階建て。向かって左手前が「西タワー」、右奥が「東タワー」と命名されています

向かって右側を「東タワー」、左側を「西タワー」と呼んでいるそうで、東タワーには7/14/21MHz帯(714TW)、10/18/24MHz帯(NB32X)、28MHz帯(CL10)という3本のビームアンテナがエレベーター式で取り付けられています。


東タワーのアンテナを見学中! 全部で3基のHF帯ビームアンテナが取り付けられています


「最近取り付けました」というエレベーターは手動式。大型アンテナのアップダウンは結構大変そう・・・

また西タワーは低い位置に144/430MHz帯のGPアンテナが取り付けてありますが、こちらは古くて故障中ということでした。ほかにサークル棟の屋上に小坂先生が寄付された3.5/7/14/21/28/50MHz帯のGPアンテナ(CP-6)が上がっています。


サークル棟の屋上には、小坂先生が寄付された3.5/7/14/21/28/50MHz帯のGPアンテナ(CP-6)も取り付けられています


1986(昭和61)年、「西タワー」へのアンテナ取り付け風景です

そしてサークル棟の中へ! 無線研究会の部室は2階にあります!


サークル棟2階の無線研究会部室に到着しました!

部室の広さは15畳ぐらい? 机やラックがたくさんあって、無線機やアンテナ、移動運用のための機材、パソコン、QSLカードや賞状、雑誌や参考書などがたくさん置かれています。


部室には現役部員の皆さんだけでなく、OBの方々も集まってくださいました♪


現在も発行しているJA7YABのQSLカードです

中には歴史を感じさせる物もあって、歴代の部長さんのコールサインなのか「JA7YAB 第一代JA7HF、第二代JA7LL、第三代JA7ZV、第四代JA7TB・・・」と書かれた板や、開局50周年記念の特別局「8N7YAB」のボード、昭和15年製の縦ぶれ電鍵も見つけましたよ♪


歴代の部長さんのコールサイン(?)が書かれた板を発見! 第四代の方まで、サフィックスが「2文字コール」です!!


「昭和15年7月 神奈川電氣株式會社」というプレートがついた、貴重な縦ぶれ電鍵を見せていただきました。

窓側の机には、今メインとして使っている無線機が並んでいます。中でも人気なのは、最近OBの飯干さんが贈呈したIC-705! タワーに取り付けたアンテナを使えば10W出力でも十分な交信が楽しめ、コンパクトでHFから430MHz帯まで出られるので移動運用にも便利! ということで、ヘビロテで活用しているそうです。


部室のシャック。TS-2000V、IC-705、IC-9100などが配置されていました


一番人気のIC-705を使って7MHz帯で交信中♪

部員の皆さんにミニインタビュー

ここで部員の皆さんにミニインタビューです! 訪問したのが平日の午後で、授業の合間の短い休み時間に部室へ来て、その後すぐ次の授業へ向かうという皆さんもいらっしゃったので、お話は4名の方と顧問の小坂先生に伺いました。

★部長 大学院理工学研究科 修士2年 小松さん(第3級アマチュア無線技士)
10月20日付けでJQ7DSIというコールサインがおりました。これからどんどん交信していこうと思っています。3アマ以外では第一種運転免許は牽引以外全部持っていて、大型自動車も運転できます。今は丹内君と一緒に第二種電気工事士の勉強をしていて、もうすぐ実技試験を受けるところです。
【Masacoより:2人とも無事に合格されたそうです。おめでとうございます♪】

無線研究会では、144/430MHz帯のハンディ機でアルバイト先に近い南陽市の山から運用したり、小坂先生にご協力いただいてタワーの管理などもやっています。そのほかでは自動車部に所属して耐久レースを楽しんでいます。

小坂先生や無線設備を管理していただいた中島先生とお会いしなければ、無線研究会の復活は考えなかったし、アマチュア無線を始めることもなかったと思います。本当に縁とタイミングが大切だなと思いました。


自己紹介をする小松さん。皆さん、この日のために作ったパワーポイントのファイルで自己紹介をしてくださいました。感激!

★大学院理工学研究科 修士2年 萩野さん(第3級アマチュア無線技士)
千葉県野田市の出身です。地球科学が専門で化石の研究をしています。春からは博士後期課程に進学するので、あと3年は山形大学にいる予定です。ふだんは山形市の小白川キャンパスにいて、米沢キャンパスには無線がやりたいときや用事があるときに来る程度です。

来年のALL JAコンテストには14MHz帯で参加したくて、12月期の2アマ国家試験を受け、現在は結果待ちです。その他では2海特、学芸員、乙種の危険物を1から6まで全部持っています。
【Masacoより:無事に2アマに合格されたそうです。おめでとうございます!!】

中学2年のときに父親の短波ラジオでBCLとSWLにはまりました。それでアマチュア無線の免許取得を志したんですけれども、受験勉強そっちのけでラジオを聞いていたら親にめちゃめちゃ怒られ、さらに高校受験では無線部のある高校に入れなかったので持ち越しになり、大学1年の秋にようやく3アマの試験を受け、平成31年4月にJP7VAIで開局しました。

高校生の頃から「無線部」に憧れていて、ちょうど小松さんが無線研究会を立て直しているときに入部して、JA7YABの再開第一声を出させてもらいました。今は個人局でもハンディ機で移動運用を楽しんでいます。JARL山形県支部主催のコンテストでは、V/UHFマルチバンド部門で2022年が1位、2023年は2位でした。

無線は「目に見えない電波を肌で感じられる」ところが好きです。部活動ではいろいろなOBの方々に支えていただいて、コンテストなどの活動ができるところに魅力を感じます。2023年の夏には中島先生のお誘いで小松さんと一緒に「IARU HF World Championship」のHQ局(8N7HQ)のオペレートに参加させていただき、3.5MHz帯をリモートで運用しました。初めての国際コンテストで楽しかったです。

今後の目標はモールスの使いこなしとDX QSOのチャレンジです。先日の全市全郡コンテストのときに、なぜか7MHz帯のSSB 10Wでロシアの局と繋がりました。これでフォーンのDXデビューが果たせたので、今度はCWでもやってみたいなと思っているところです。


2023年のALL JAコンテストでオペレートする萩野さん(JA7YABのXアカウントより)

★工学部 高分子有機材料工学科 2年 中本さん(第3級アマチュア無線技士)
大阪府茨木市の出身です。「ハムフェア2023」の直後に3アマの試験を受けて、9月の終わりに免許証が届きました。すぐ全市全郡コンテストに参加して、まだ3局と交信しただけです。

入部のきっかけは、好きなYouTuber(ゆっくりでぃすこ)が無線を始めたためです(笑)。パソコン関連を取り上げる方なのですが、その人が「なんか気が向いた」とアマチュア無線を始めて、それが面白そうだなと思っていたときに、無線部の存在を知りました。

アマチュア無線の楽しいところは、電話と違って、相手と直接繋がれるところです。相手局から応答があったときは“やった、取れたー”って喜んでしまいます。今後ですがYouTuberの方もモールス交信を始めたので、僕もモールスをやってみたいと思っています。「無線」って言ったら電話じゃなくて電信という気持ちがすごく強くて、実は無線電話という通信方式があるのを知ったのは無線研究会に入ってからなんですよ。

★工学部 情報エレクトロニクス学科 電気電子通信コース 2年 丹内さん(第3級アマチュア無線技士)
宮城県石巻市の出身です。中本さんと同じく、8月のハムフェア直後に受験しました。無線機と電源は合格を信じてハムフェア会場で買いました(笑)。昔から電子工作が趣味でしたが、よく作っていたのはオーディオの回路で、自分で聞いて「やっぱこの回路はいいな」とか、そういうことをしていました。でも考えたら、音も電波も同じ“波”じゃないですか。そこで“周波数上げてみようか?”っていう気持ちになって、無線の世界に足を踏み入れました。

アマチュア無線は、機械を操作するのが一番楽しいです。オーディオは自分で聞くだけですが、無線は相手からいろいろな話が聞けて、出会いがあるのがいいですね。無線で「こんなアンテナを使っています」「無線機はこれです」というのが聞こえてくるのを聞いているだけでも楽しくなります。なによりも部の雰囲気が好きです!

夏の「6m AND DOWNコンテスト」の移動運用とか“もう永遠に続いてしまえばいいのに”と思いました(笑)。今後は2アマや3総通が取りたいと考えています。


左から丹内さん、中本さん、萩野さん

★顧問 小坂先生(1アマ、1陸技)
情報・エレクトロニクス学科の教授で、2001年頃に山形大学へ赴任しました。その頃は小野先生という方が顧問をしばらくしていて定年退職されたんですね。そのときに私がアマチュア無線をやっているのをご存じで、ぜひ顧問をやってくれないか? と言われてお引き受けしました。引き継いだ頃は無線の人気が低迷中で、部員がいつ途切れるかな? という状態で、毎年ギリギリ1人ぐらい入ってきたといった、首の皮1枚でなんとか続いている感じでした。

それが、小松君が来てから「どうやって集めたんだろう?」っていうぐらい、急に部員が増えてこれだけ揃いました。本当によくやってくれたと思います。私もあと2年ちょっとで定年退職ですが、それまで部は少なくとも存続するし、その後もやっていくんじゃないかな? という、それがとても嬉しいです。

個人のことですが、私はJH7CUOというコールサインで。今もほぼ毎日運用しています。初めてアマチュア無線を聞いたのは小学生のときで、友達が山の上で、井上電機製作所のAM-3Dというポータブル機で50MHz帯を聞かせてくれたのですが、コンディションが良かったのか、オーストラリアの局が聞こえてきました。こんな高い周波数で海外と交信できるのは凄いと感じ、それで中学生のときに免許を取って無線を始めました。


顧問の小坂先生(JH7CUO)

山形大学の無線研究会は昔からよく知っていました。私が大学の頃はアマチュア無線が流行していて、東北地方のほとんどの大学に無線部がありました。私自身はJA7YAA(東北大学)にいましたが、山形大学とも交流があって、米沢キャンパスの部室へ遊びに来たことがあります。最初に来たのは3月で、雪が人の丈よりも高く積もっていてビックリしました。部室に行くには雪の階段があり、その階段で下がっていくと入口があったのを覚えています。

当時のJA7YABは移動運用がすごく強くて、フィールドデーコンテストでは常勝でした。あるとき私たちJA7YAAのメンバーで、JA7YABが移動運用している福島県の山中に“敵情視察”を兼ねて遊びに行ったんですよ。それで驚いたのは、YABは食事が凄いんです! ちゃんと厨房があって、炊事班という専門部隊が一生懸命料理していて、みんな朝から立派な料理を食べているんです。これは負けたな・・・ と思いました。でもまさか、自分がそこの顧問になるとは思ってもいませんでした(笑)。


1982年のコンテスト移動風景


仙台平に移動した1984年のフィールドデーコンテストのスナップ。皆さん食事をしっかり食べています(笑)

現在の部活動と移動運用

部長の小松さんと部員の皆さん、顧問の小坂先生に、無線研究会の現在の活動をもう少し伺いました。

訪問日現在で、無線研究会には19名の部員(うち女子2名)がいるそうです。資格別では1アマが1名、3アマが7名で、活動は毎週火曜日か木曜日に行うのが基本。通常は10名程度が参加しているそうです。おもな活動は「資格取得」「コンテスト」「定期運用」の3つ。まだアマチュア無線技士の資格を持っていない部員には3アマの取得を勧めて、部費で買ったテキストで勉強してもらっているんですって。

コンテストは“見知らぬ人とおしゃべりするのは勇気がいるけれど、コンテストだったら話す内容が決まっているので、初心者でも楽しめる”という考えで、メインの活動にしています。2023年は「オール東北コンテスト」、「ALL JAコンテスト」、「6m AND DOWN コンテスト」、「2023 IARU HF World Championship Contest」、「全市全郡コンテスト」に参加して、オール東北コンテストでは東北管内局マルチオペオールバンド部門で2位、6m AND DOWNコンテストでは電信電話部門マルチオペオールバンドで東北地方の3位になるなど、着実に力を付けてきたそうです。


2023年の6m AND DOWNコンテストは、使用許可を取って蔵王刈田駐車場の旧レストハウスから部員6名、OB4名、顧問1名で参加! なんと50MHzのアンテナは異なるビーム方向の2基を位相合成で使えるようにしたそうです

「6m AND DOWNコンテストでは、蔵王の山小屋で米沢のソウルフード“義経焼”を食べて交代で朝まで運用を行いました。全市全郡コンテストでは、山形の“芋煮”を食べながら運用できました」(小松さん)ということで、立派な料理を食べながらのコンテスト参加という伝統は、しっかり受け継がれているようですよ!?


2023年の6m AND DOWNコンテストの食事は米沢のソウルフード「義経焼」(味噌味の羊焼肉)でした。美味しそう~!!

定期運用は部活動のある日に、部室からHF帯のSSBなどで交信を行う活動で「コンテスト運用はできても、ふだんの運用が不慣れという部員が多いので、話し方や専門用語に慣れる目的もあって、これからも力を入れていきます」というお話でした。

クラブの今後は?と尋ねたら「無線資格の勉強会を開催したいです!」という目標が!

「資格取得の支援として3アマの参考書は配布できましたが、研究などで割ける時間が限られていたので、後輩たちに教える機会を設けることができませんでした。こちらも一度資料を作って、次世代に残していきたいと考えています」と話してくださいました。

Masacoの体験コーナーは「PCに放熱グリスを塗布」

最後に、連載恒例(?)の「Masacoの体験コーナー」です♪ 小松さんから「僕はパソコンも好きなので、部室にあるパソコンに関連した作業をお願いしようと思います」というお話があり、“Excelで表計算とか、手書きログの打ち込みかな?”と思っていたら、大きめのデスクトップパソコンが、蓋が開いて中が丸見えの状態で登場!!


大きなデスクトップパソコンの内部に興味津々(笑)

「Masacoさん、これがパソコンの内部です。ご覧になったことはありますか?」

--こんなに大きいのは初めてです! 基板や配線がギッシリですね~

「この大きな基板がマザーボードで、ここに心臓部のCPUがついています」

--CPU、聞いたことがあります!

「CPUは発熱がすごいので、上に大きなヒートシンクを載せて空冷しているのですが、その密着度を高めて冷却効率を上げるために、接触面に熱伝導グリスを塗るようにしています」

--グリスは注射器みたいな入れ物に入っているんですね。!

「ではMasacoさん、このグリスをCPUの上に塗ってください。うまく塗って密着させれば5年ぐらいは持つはずです」

--わあ、責任重大~!!


CPUの上に少しずつグリスを出していきます。ピストンを押す力加減が難しい~

--これぐらいで大丈夫ですか?

「はいOKです!」

--出したグリスを平らに伸ばしましょうか?

「実は塗り方はいろいろあって、全体に薄く伸ばす人もいるんですけど、私はグリスを載せたまま、上からヒートシンクで押さえてしまう派なんです。そのほうが空気が入らずに密着するような気がするし、手間がかからないので・・・」

ということで、私がグリスを載せたCPUの上から、そっとヒートシンクを固定して終了です! 5年ぐらい有効ということなので、またグリスを追加するときは部室に呼んでくださいね!?


グリスを載せたCPUの上からヒートシンクを固定して完成! 5年経ったらまた呼んでくださいね!?

受け継がれていく伝統と皆さんの元気さを感じる訪問でした!

山形大学無線研究会の皆さん、顧問の小坂先生、駆けつけてくださったOBの皆さん、ありがとうございました。


忙しい合間に顔を出してくださった部員の飯島さんと、ボードを持って新入部員を大募集!

一度は消えそうになったクラブの灯を守り、再び明るく輝かせた小松さんと現役部員の皆さん、それを鉄壁の結束力でサポートしたOBの皆さん、本当に素晴らしいと思います。東北地方で2番目に古いクラブ局の良き伝統(DNAのようなもの?)が、しっかり受け継がれているのを感じる訪問でした!

アマチュア無線への情熱や夢を引き寄せるエネルギーがあふれている皆さんとお会いでき、まだまだ「むせんのせかい」の未来を感じ、頼もしくまっすぐな眼差しに私自身、前へ進むパワーをいただきました! そして、部員が集まってくる雰囲気作りがまた素晴らしくて。とにかく取材を忘れてしまうほど、あの場に一緒にいることが楽しくて楽しくて、学び多い時間でした。私も近くだったらOGのような顔をして、ひょっこり遊びに行ってしまうなぁ~と(笑)。


山形大学無線研究会の皆さん、ありがとうございました!!

寒くて雪も多い時期ですが、JA7YABのSNSを見ていたら、元気でアクティブに活動している(ときには雪降る中で移動運用も!)のがわかって、皆さん本当に無線が好きなんだなあ~と、ほっこりしました。これからも皆さんで頑張ってくださいね♪ そして今度は私も芋煮会の団欒に(笑)参加させてくださいね♪ そのときは一緒に歌いましょう~♪ あ!無線も一緒に~♪ 再会を楽しみにしています!

(JH1CBX Masaco)

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