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Topics from Around the World

「CQ」の由来
The Compass (September 2023/Volume 51)

著者: ジョン スメイル(John Smale, K2IZ) 抄訳: 月刊FB NEWS編集部

2024年3月15日掲載



Great South Bay Amateur Radio Club 2023年9月号のニュースレター「The Compass」

私は以前からインターネット上のさまざまなグループが発する情報に関心を持っています。そのうちの1つに、船舶の元無線通信士どうしが連絡を取り合い、興味深い話の場を提供してくれるグループがあります。

その内容を少し説明します。船舶通信でCW(電信)による通信の要件が撤廃されるまで、ほぼすべての船舶には少なくとも一人の無線通信士を乗船させる必要がありました。通信士の仕事は非常に重要であったことから、当時は稼げる仕事だったようです。通信士は船長と同じくらいの収入があり、海上で勤務する時間にも制限が設けられていたほどです。その通信士が船上でのシフトが終了し寄港した港が母港でないにしても、母港としてリストアップされている場所まで、飛行機で戻ることがしばしばあったようです。飛行機での移動は、船の所有者がその航空券の費用を負担していたほどです。

私は日本に赴任することになっている海軍の一人の男と無線技士養成学校に一緒に通っていたことがありました。軍はその者を赴任のため日本に送ったところ、彼が乗船するはずの船は配備のため洋上に出航したままで、まだ寄港していなかったそうです。そのため軍は別の船を手配し、それで乗船するはずの船に向かい、洋上でロープを使ってその船に通信士を送り込んだという話を聞いたことがあります。

別の話として、船が地中海のマルタ島に入港していたとき、除隊を迎えている人たちが何人かいました。本来ならアメリカの港に寄港してから下船することになりますが、彼らはマルタ沖で船からボートでマルタ島まで送られたあと地元の空港に移動し、その後飛行機を乗り継ぎアメリカに戻ることになったとのことです。どちらの状況も無線通信士は船舶にとって非常に重要であることを説明した出来事です。

さて、“CQ”はどこから来たのかの話に戻します。これには諸説あり、その多くは以前に何かで読んだことはありますが、明確な答えは残念ながら分かりません。昔の通信士ももうこの世にいないため、問い合わせることもできません。考えられる話はたくさんありますが、長い間に多くのことが変化したためよく分かっていません。

たとえば、タイタニック号が氷山に衝突して沈没した事故あげられます。そのタイタニック号に乗船していた無線通信士はマルコーニ社の社員だったそうです。船が氷山に衝突した後、無線通信士は遭難を意味する社内符号“CQD”を打電したとの話もありますが、これは後で追加されたものであり、打電したのはもちろん“SOS”でした。これが何を意味するかについても諸説あり、まだ憶測の余地があると思っています。しかし、無線通信で「自動アラーム」の信号が聞こえ、その後にSOSの信号音が続くと、とても注意を引くと思います。(実際、この話を聞いたことがあります。それは1967年のことでした。ドイツのタンカー、エスバーガー ケミスト号が船内で爆発を起こし、ポルトガル沖約1000kmの大西洋上にあるアゾレス諸島付近で真っ二つになったときのことです。)

下のリンクにある1895年の記事は、スイスにあるベルンの国際電信局に関するものです。この記事には、海底ケーブルの宛先コードである“CQ”の意味を「すべての局に送る」と記されています。文脈からすると、このコードは明らかに有線通信業界では、かなり以前から使われており、数年後に無線通信でも同様の意味を持つものとして採用されたとのことです。

Google Books記事へのリンク
The Colliery Engineer and Metal Miner - Google ブックス

以下はその記事の抜粋です。

『ベルンはまさに電信の中心であり、電信で使われる略語“CQ”はそれを物語っています。世界中のすべての都市にはベルンによって認識された二文字のコードが割り当てられおり、それは世界中に知られています。例えば「LN」はロンドン、「NY」はニューヨーク、「BM」はボンベイ、「SZ」はスエズ、「CT」はカルカッタ、「MV」はモンテ・ビデオといった具合です。例えばベルンから都市を表す「IQ」に宛てたメッセージは、すぐにチリの北部にあるイキケ(Iquique, Chili)に届くことになります。“CQ”とは「すべての局」を意味します。以前ジャワ島で地震が発生し、ベルンからオーストラリアとの交信が途絶えたことを伝える電報は、単に“CQ“という宛名でした。この宛名で送られた電報は、ある政府や電信会社から別の政府や電信会社に、そしてさらにセンターからセンターへと24時間以内に世界中の重要な諸官庁に届くことになりました。』

アメリカの陸上電信網では、“CQ”は、その後に続く時刻チェックの警告信号として、また“CQ”で終わるという提案を目にしたことがあります。1800年代の鉄道においても、時刻を正確に知ることは、今日におけるネットワークと時刻を同期させることと同じように重要でした。誰もが一度はWWV(米国の標準周波数局)の信号を聴いたことがあると思います。この信号の受信で正しい時刻を示すトーンがいつ送られるかを知ることができます。1800年代には、WWVやCHU(カナダの標準周波数局)は存在しなかったため、時報は電信線を介して送られていました。私が若かった頃、私たちの町にはウェスタンユニオンの事務所がありました。事務所の壁にはウェスタンユニオンの電信網に接続された大きな時計があり、それが常に正しい時刻であることは誰もが知っていました。

CWキーを初めて操作する人のために往年のJ-38型のキーを見てみましょう。キーレバーの右側にレバーがあります。それがショート・バーと呼ばれるものです。当時は、メッセージを送らないときは、ショート・バーを閉じる位置にセットしていました。昔の伝送路は発信元から受信側まで複数の受信局を経由して1本のワイヤーで繋がっていました。ショート・バーを閉じておくことで、伝送路は基本的には全長にわたって1本のワイヤーで繋がっていることになります。本局があなたの局に信号を送る場合、本局はコールレターを送ります。それを受信すると、ショート・バーを開いて返信します。信号が送信され、受信に同意するとショート・バーを接点の下に戻すと、伝送路が接続されます。ショート・バーを閉じるのを忘れると、その先の伝送路が開いた状態になり、あなたの局より先の局へ信号を送信できなくなります。

この問題を解決する方法はいくつかありましたが、たいていはワイヤー チーフ(伝送路の責任者)が直々に連絡してきて、「ショート・バーが開きっぱなしになっているぞ」と言及します。

今回は“CQ”の由来の話でしたが、読者の方々によりよく理解していただくためにそれ以外のお話も付け加えました。これは私のいつものやり方ですのでご理解ください。今のところ、私にとって“CQ”は「どなたかQSOしていただける方おられませんか」となるでしょうか。それでも別のシチュエーションでは、同じCQでもCQ FD※1とかCQ SKS※2あるいはCQ SKCC※3と打ったりすることもあります。

資料
「The Compass」とは、グレート・サウス・ベイ・アマチュア無線クラブ(GSBARC)が発行している同クラブのニュースレター。同クラブは、ニューヨーク州ロングアイランドの南岸のバビロンの町を拠点としているクラブで200人以上のメンバーがいます。多くの無線機器、技術マニュアルや60年代にさかのぼるQST誌のバックナンバーを含むライブラリも備えています。特別なイベントや自然災害時に通信を提供する公共サービスはクラブ活動の大きな部分を占めています。(GSBARCのサイトより引用)

著者: ジョン スメイル(John Smale, K2IZ)
出典: The Compass (September 2023/Volume 51)

※1 CQ FD: CQ Field Dayの略
※2 CQ SKS: CQ Straight Key Sprintの略
※3 CQ SKCC: CQ Straight Key Century Clubの略

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