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新・エレクトロニクス工作室

第23回 テレビ用ブースターアンプ

JE1UCI 冨川寿夫

2024年3月15日掲載

アナログテレビの時代には秋月電子のテレビキットを作り、テレビを見ながら作業をしていました。これは同時にビデオ出力を使って、秋月電子の「10MHz標準周波数発生キット」を動かすという目的もありました。地デジになってからは、作業用のパソコンを使ってソフトや図面を作りながら、画面の端でワンセグのテレビを見ていました。もちろんハンダ付けをしながら見る事もありました。それほど真面目に作業している訳ではありません。これで良かったのですが、ソフトの一行が長くなるとワンセグの画面が邪魔になるのです。もちろん、回路図が大きくなっても邪魔になります。

そこで最近ではタブレットを使って、別画面でテレビを見るようになりました。これで作業の支障になる事はありません。しかもフルセグで見る事ができますので、ワンセグよりも画質の良いフルセグで見たくなります。しかし、ここで問題なのが、隣の部屋のテレビアンテナ端子から細い同軸を引き回しているためか減衰が大きいのです。しかも不要になった50Ωや正体不明の同軸を、空中ハンダで継ぎ足しています。もちろんテレビ系では、本来75Ωを使わなければなりません。およそ無線が趣味とは思えないような状態なのです。そのためフルセグにするとチャンネルによっては「放送中ではない」となってしまうのです。そのたびにワンセグに切り替えないと見る事ができません。これでは面白くありません。そこで安定してフルセグが見られるように、写真1のようなテレビ用のブースターを作りました。


写真1 フルセグが見られるように作ったテレビ用ブースター

アンプのキット

使用したのはADL5535を使ったもので、写真2のような秋月電子のキットになります。今までこのようなアンプは何台か作りました。その中で地デジに対応できそうな秋月電子のキットを使用しました。このアンプはADL5535を使っており、20MHz~1GHzでゲインが14~16dBというものです。地デジは470MHz~710MHzですので、周波数的には問題はありません。しかし、どの程度のゲインが必要なのか実際には良く解りません。まあロスの補償程度ですから14~16dBもあれば何とかなるでしょう。もちろん入出力は50Ωですので、本来はテレビ用ではないと思われます。


写真2 ADL5535を使った秋月電子のキットを使用

作製の経緯

キットの部品は写真3のようになっています。まずこのキットの作製ですが、これはハンダ付けをするところがSMAコネクタ程度しかありません。従って、キットとしてはすぐに作り終わってしまいます。使い道からすると、FコネクタかBNCコネクタの方が良いのだが・・・ と思いながら作りました。しかし、後からジッと基板を見ると、BNCコネクタでもFコネクタでもハンダ付けできない事はなさそうです。コネクタのアース部分には、ハンダ付けできる程度のスペースがあります。もちろん、キットに付属している基板エッジ用のSMAコネクタのように挟み込む事はできません。また、さすがにNコネクタでは心線が太すぎて無理そうです。


写真3 キットの部品

キットとしては簡単に作製が完了し、動作確認ができました。しかし、その後は失敗の連続になります。テレビ用のブースターだし、と簡単に済ませようとしたのが間違いの始まりでしょう。最初は写真4のようにタカチ電機工業のプラスチックケースSW-40に糸鋸を使って切れ込みを入れ、SMAコネクタをケースの外に出すように作りました。写真5のようにケース完成と思っていました。


写真4 最初はプラスチックケースに入れようと・・・


写真5 このように、一応は穴あけが完成した

基板に入出力のSMAコネクタがハンダ付けされていますので、写真6のようにケースに置くだけにするのが一番です。下手に基板やコネクタをケースに固定するような工作をすると大変なだけであまりメリットはありません。恐らくケースの誤差修正に追われる事でしょう。


写真6 このようにして完成・・・ だったのですが

ICの電源電圧が5Vという事で、私が工作室で標準として使っている12Vを使うにはレギュレータが必要です。写真7のように78L05を基板の電源端子に直接ハンダ付けしました。もちろんコンデンサも含めてです。これで動作的には問題ない、はずでした。


写真7 78L05を基板の電源端子にハンダ付け
(もちろん電源の入力側は浮かせている)

これで基板もケースも完成かと思いました。そのまま使って問題なくテレビが見られるようになりました。しかしケース全体が少々熱くなり過ぎなのです。ここでようやくデータシートを確認しました。ADL5535の消費電流はTYPで97mAもありますので、78L05では全く余裕がありません。MAXでは115mAとなっているではありませんか。余裕がないというより、無理という事でしょう。12Vを5Vに7Vも下げるとすると、97mAとして679mWも消費する事になります。電流的にも問題ですが、電力的にも問題になります。78L05内で消費できるのは700mWですので、これもギリギリなのです。瞬間的に使うようなものならまだ良いとしてもテレビは長い時間見ます。しかも暑い夏も使います。小さいICだからと軽く考え、確認を怠ったのが失敗の原因です。

そこで写真8のように33Ω5Wを通して、ここで電圧を下げて78L05の負担を減らそうとしました。100mA流れるとして、これで33×0.1=3.3V下げる事ができます。33Ωの抵抗で330mW消費しますので、もう少しW数の小さい抵抗でも大丈夫です。これで78L05の入力電圧は8.7Vになりますので、電力的な負担は減らせる事となります。しかし、プラスチックケース内の温度が上がるのは同じです。これでも問題は出なかったのですが、真夏を考えると少々不安です。電流的には限界の負担でしょう。


写真8 33Ωを電源入力に入れて78L05の負担を減らした

そこで放熱のしやすい7805に変更しようと考えました。78M05でも良かったのですが、1Aの7805しか手持ちにありませんでした。放熱しますので、アルミケースを使う事になります。タカチ電機工業のYM-40です。写真9のように穴をあけ、SMAコネクタが両サイドに出るようにしました。


写真9 ケースをアルミ製のYM-40に変えて穴あけを実施

7805はケースにネジ止めして放熱できるようにしました。33Ωを使っても良かったのですが、7805であればケースに放熱ができるので止めました。内部での熱にするよりも、ケース外に向けて放熱する事にしました。まあ、それ程の変化があるとは思えません。ケースの内部にねじ止めしている様子が写真10になります。もちろん、この後で結束バンドを使って、必要以上に電源コードが引かれないように処理しています。


写真10 7805はケースにねじ止めして放熱

電源の入力にコネクタは使用せず、写真11のように直接ワイヤーを接続しました。そのままバナナジャックで12Vに接続します。使用目的がテレビのブースターですので電源スイッチはありませんが特に問題はないでしょう。このように簡単に考えたため紆余曲折が多くなり、思った以上に時間がかかってしまいました。


写真11 電源には直接ワイヤーで接続

使用感

熱対策では思わぬ回り道をしてしまいましたが、もともと5VのACアダプタでも使えば問題にはなりませんでした。12Vでは無駄に電力を熱に変える事になってしまいます。少々後悔していますが、今度は100Vの引き回しに問題があるという私の作業室の事情があります。

写真12のように壁に吊るして使用しています。入出力にはSMAとBNCの変換コネクタを用いています。こうなるとBNCコネクタの方が良かった・・・ となってしまいます。


写真12 壁に吊るして使用

真夏も2シーズンほど使いましたが、特に熱が原因のトラブルはありません。この間に起きたトラブルは別の場所でした。継ぎ足していた同軸の接続が、イモハンダで外れた事に気が付きませんでした。天井に近いところで同軸を空中ハンダで継ぎ足していますので、どうしても作業的に無理があります。しかも同軸ですので双方のケーブル間にテンションがあり、心線と網線間のテンションもあります。これを椅子の上に立って、右手でハンダごてを持って、左手で全てを抑え込むのは無理です。こんな作業はダメです。机上であれば冶具を総動員して何とかなるのですが、この場合はどうしようもありません。よってイモハンダになりやすいのです。やはりハンダ付けは安定した机上で行いたいものです。しかし、これで全チャンネルがフルセグで見られるようになりました。ただ、イモハンダですので安心する事はできません。この場合、イモなのかテンプラなのか・・・ 実は良く知りません。

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