Monthly FB NEWS 月刊FBニュース 月刊FBニュースはアマチュア無線の電子WEBマガジン。ベテランから入門まで、楽しく役立つ情報が満載です。

SHFの世界

1200MHz帯での同軸ケーブルのロス測定

JR3TUS 北川正昭

2024年7月16日掲載

アイコム株式会社のIC-905はコントローラーとRFユニットで構成されている。RFユニットをアンテナ直下に設置することにより、同軸ケーブルを使用せずにコントローラーケーブルでシャックまで引き込むことができる(下図)ため、給電線におけるRF信号のロスは最小限のものにできる。しかしIC-905以外の無線機ではアンテナからシャックの無線機まで同軸ケーブルを引き込んでRF信号を伝送するため、そのロスはIC-905を使用するときよりも当然ながら大きくなる。


IC-905の接続例 (アイコム株式会社 IC-905製品情報より引用)

同軸ケーブルの減衰量の値は、JARLのホームページやメーカー各社で公表されてはいるがdBによる相対値表記で記載されている。今回、測定器を使用できる機会があったので、まずは1200MHz帯において直感的に解りやすいように送信出力(無線機→アンテナ)の減衰量と、受信感度(アンテナ→無線機)の減衰量を、測定器を使って測定してみた。

実際には、HF帯でよく使用される5D-2VとV/UHF帯でよく使用される損失の少ない8D-SFA-LITEの2種類を測定対象とした。また同軸ケーブルの長さはタワーなどで10~15mの高さにアンテナを設置した時にシャックまで引き込むと仮定した20mとし、IC-905では共通の出力コネクタを使用している144/430MHz帯も同じ条件で参考測定した。


5D-2V


8D-SFA-LITE

評価用同軸ケーブル(どちらもフジクラ製)

測定

・送信出力測定
送信出力の減衰量の測定は、まずIC-905~測定用同軸ケーブル~終端型パワー計(以下パワー計)と接続して、送信出力を1Wに設定したのち、以下の図1の構成で行った。


図1 送信出力測定構成図


使用した測定器
終端型パワー計 HP 453B


表1 送信出力測定結果

・受信感度測定
受信感度の減衰量の測定も送信出力測定と同様に、まずSG(信号発生器)~測定用同軸ケーブル~IC-905~歪率計と接続した状態の感度を基準として測定したのち、中継コネクタを介して評価用同軸ケーブルを接続し以下の図2の構成で測定を行った。


図1 送信出力測定構成図


使用した測定器
上:歪率計 National VP-7702C 下:SG(信号発生器) HP E4432B


表2 受信感度測定結果

考察

上記の結果から、1200MHz帯では20mの8D-SFA-LITEを使用すると、IC-905から1Wで送信した場合、アンテナへ給電される電力は0.56Wと約半分となる。また受信感度は-15.5dBµVと少し低下する。一方20mの5D-2Vを使用すると1Wで送信した場合、アンテナへ給電される電力はわずか0.13Wと約1/10となり、受信感度も-9.2dBµVとかなりロスが発生することが数値で実感できた。

1200MHz帯では8D-SFA-LITEを使用しても送信電力は半減することから、IC-905を使用しRFユニットをアンテナ直下に設置することにより、送信、受信とも同軸ケーブルによるロスを最小限に抑えることができる。これにより送信電力をアンテナへ効率的に給電、受信電波をアンテナからIC-905へ効率的に伝送することができ、安定した通信や遠距離との通信に非常に有効であることが解った。

実際にシャックで使用している1200MHz帯でゲインが12.8dBiの3バンドGP(コメット GP-95)に5D-FB約20mで接続したIC-9700(図3)と、IC-905のRFユニットに直結したゲインが9.7dBiの3バンドモービルホイップ(マルドル ARM-100N) (図4)で聞き比べても遜色が無い理由が今回の測定で納得できた。


図3 シャックの構成(IC-9700)


図4 シャックの構成(IC-905)

また、1200MHz帯での測定でこの結果であったことから、さらに高い2400MHz帯、5600MHz帯、10.1/10.4GHz帯の運用において、同軸ケーブルで引き込んだ場合は上記以上のロスが発生するため、これらのバンドでのIC-905の給電方式の優位性はさらに高くなる。

また参考測定した144/430MHz帯でも少なからずロスが発生しているということが実感でき、VHF/UHF帯において長尺の5D-2Vの使用は適していないことがよく解った。

SHFの世界 バックナンバー

2024年7月号トップへ戻る

サイトのご利用について

©2024 月刊FBニュース編集部 All Rights Reserved.