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新・エレクトロニクス工作室

第27回 10dBアンプの実験

JE1UCI 冨川寿夫

2024年7月16日掲載

トランジスタを使った広帯域のNFBアンプは、ある程度の出力レベルが得られると便利です。それは測定器関係で使いたい事もありますし、送信機関係の場合もあります。周波数が100MHz以上になればMMICが便利なのですが、HF~50MHzであればトランジスタで自在に作りたくなります。そこで最初の実験として、2SC1426を使った10dBのNFBアンプを写真1のように実験してみました。


写真1 ゲイン10dBのNFBアンプを実験

きっかけとしては、2SC1426が多量に入手できたためです。出力+20dBm程度が出せるNFBアンプの実験がしたかったのです。これには理由があり、第19回でSG用の20dBアンプを作っていますが、その次段に使いたいのです。SG出力が最大で-12dBmですので、20dBのアンプ後は+8dBmになります。ここに10dBのアンプを入れると、出力は+18dBmになります。従って、理想的には+20dBm以上、最低でも+18dBmまで出力できる必要があります。

2SC1426等

2SC1426は、かなり古いCATV用のトランジスタです。CQ誌1981年1~3月号の連載で、JE1HYR井端氏のSSBトランシーバに使われていました。この頃、秋葉原の亜土電子で1個1500円でした。大切に使った記憶があります。ところが数年前のハムフェアで、このトランジスタを山ほど使ったジャンクの基板を見つけました。これを分解したところ、写真2のようにジャラジャラと入手する事ができました。但し、本来はシールドの付いた4本足なのですが、このシールドは写真でも解るように全て切られていたのが難点です。しかし、これが1個1500円と思うだけでウハウハする貧乏人の筆者です。


写真2 2SC1426をジャンクで多量に入手

同じCATV用ですが、やや小型の2SC1747はCQ誌1981年1月号に記事があります。写真3のトランジスタです。同じ入力レベルで試してはいませんが、良好に動作しました。どちらのトランジスタも、若松通商で入手が可能です。しかも2SC1426は、私が40年前に入手した1500円より格安のようです。


写真3 2SC1747でもレベルの問題はあるが10dBアンプは可能

2SC1426は現在ではレアなトランジスタでしょう。このようなトランジスタでなくても、高周波用のややパワー系であれば同様に使えるだろうと試してみました。秋月電子の2SC4703(4個100円 写真4)や2SC3355L(1個20円 写真5)で実験したところ、詳細は詰めていませんが何とか使えそうです。もちろんアイドリング電流の調整は必要です。


写真4 2SC4703でも使えそう(4個入り100円)


写真5 2SC3355Lは余裕がない(1個20円)

2SC3355Lは許容損失が600mWですので、あまり余裕はありません。ヒートシンクを付ければ、もう少しシツコク実験できたと思います。2SC4703はフランジがコレクタですので、基板に直接アースができません。実装に工夫をすれば充分に使えそうです。また、どちらのトランジスタも2SC1426よりもゲインが少し下がるようですので、もう少しゲインを高めに計算しアッテネータで調整した方が良さそうです。まだまだ実験が足りませんが、他にも使えそうなトランジスタは有りそうです。

回路

図1のような回路としました。アイドリング電流は実験によって35mAとしました。多く流す方が高いレベルに対応する事ができます。もちろん限度はありますので、無理はできません。


図1 回路図 2SC1426を用いてICが35mAになるように調整した回路

入力に1.5dBのアッテネータを入れています。これはアンプのゲインを多少高めに設定し、実際に測定してからトータルのゲインが10dBになるように調整して決めたものです。

トランジスタを変える時には、エミッタに入る20Ωでアイドリングを調整します。35mA流すためには2SC3355Lでは82Ω、2SC4703では77Ωでした。系列だと、82Ωになりそうですが、75Ωが入手しやすいかもしれません。2SC1426とは、かなり抵抗値が異なるようです。

作製

どのように作製するかですが、2SC1426には放熱をしたかったのです。そこで生基板上に直接ハンダ付けする構造にしました。前述のようにジャンクで、シールドの足が切られてありません。そのような事情もあり、足を継ぎ足すよりも直接CANにハンダ付けしてアースとし、ついでに基板に放熱をしようという考えです。シールドメッシュの付いたユニバーサル基板でも作れない事はないと思います。

なお使った基板は、ジャンクの生基板ではありません。一応放熱に気を使い、パナソニックの高熱伝導性基板エクールを使いました。まあ、35mAですので、それ程の熱は出ません。気休めですので、一般的なジャンクの基板で充分と思います。

なお、バイファイラ巻きのトランスは写真6のようなノイズフィルタで代用しています。これはインダクタンスを測るとFT23#43に近いように思えます。一般的にはFT23#43あるいはFB801に4回のバイファイラ巻きで充分でしょう。


写真6 バイファイラ巻きを代用するノイズフィルタ]

写真7のようにエクールの基板上に作りました。入出力にはSMAコネクタを用いて、直接フランジを基板にハンダ付けして固定しました。このような空中配線です。これはアッテネータをハンダ付けした後で、測定しているところです。最初アッテネータを除いて作製し、入出力特性を測定します。もちろんスペースは確保しておきます。測定した結果でアッテネータの値を1.5dBと決め、ハンダ付けして完成としました。


写真7 生基板を使用

動作を確認後にアルミ板にネジ止めしました。扱いやすさと放熱のためです。入力付近は写真8になります。出力付近は写真9になります。


写真8 入力付近の様子


写真9 出力付近の様子

測定

入力にアッテネータを取り付け後、改めて入出力特性を測ったのが表1図2です。これは50MHzで測りました。レベル測定には週刊BEACONのNo.196で作った「マイクロワットメータ3」を用いました。周波数はどこでも良いのですが、一番使いそうな50MHzを選んだだけです。このように、入力が+10dBmでもゲインの低下はありません。+20dBmの出力ができる事になります。+15dBm程度になるとゲインが下がってしまいます。これ以上のレベルを測る環境は今のところありませんので、これで限界になります。


表1 入出力特性を測定(50MHz)


図2 入出力特性をグラフ化(50MHz)

周波数特性は図3のようになりました。入力レベルは、10dBm以上で設定すると飽和レベルに近くなってしまいます。飽和レベルからは相当に低いレベルで測定するのが一般的ですが、この測定レベルのメモが見つかりません。不覚ですが、恐らく-20dBm程度で測っている・・・ はずです。5MHz以下と70MHz以上はゲインが下がりますが、概ね使いたい帯域は10dBとなりました。


図3 アンプの周波数特性

使用感

このように、+10dBmを入力し+20dBmを出力できる広帯域のアンプとなりました。このようなアンプの応用範囲は広いと思います。ただ、キャリアだけで測っていますので、リニアアンプに使う場合はもう少し検討が必要なのでしょう。今回の目的はSGの出力アンプですので、入力するのはサイン波だけを想定しています。

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