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PHONEで楽しむQRP通信

第13回 小笠原JD1父島移動運用【後編・運用報告】

JE1ECF 斎藤毅

2024年7月16日掲載

1. 待ち遠しい移動運用

渡航1ヶ月前の5月初旬から中旬は一般的なニュースとして太陽フレアによる電波伝搬への影響が取りあげられていました。実際にローバンド(特に7MHz)でのQRVは困難を極めておりました。また、Eスポの発生もほとんどなく、長期天気予報でもおがさわら丸乗船日の伊豆諸島は雨予報と幸先が不安でした。

渡航1週間前の空の状態は連日Eスポが発生したようで、夕暮れ以降も21MHzや50MHzではバンド内ではちらほら他エリアが聞こえておりIC-705の5W運用でも何局かはQSO可能な状態になっており、逆に430MHzではバンド内にて閑古鳥が鳴いていたようです。果たして、今回の移動運用はどうなりますでしょうか。

前回の掲載記事の中で渡航(移動)回数にふれましたが、2000年代一桁当時(2006~2009年)はDXペディションといった特別な感覚でいましたが、最近、筆者の中では年中行事となり生活リズムに反映され、また現地の自動車のナンバープレートも筆者の常置場所と同じ「品川」であったり、生態系の変化が感じられ(オガサワラゴキブリを頻繁に見なくなったこと)、内地と差がなくなっているように案じることから、普段の移動運用と大差がなくなっています。ただ、現地に行ってみて、レンタル原付バイクのナンバープレートをみると「小笠原村」であったり、野ヤギの鳴き声を聞いたり、夕暮れ時の白アリ(羽蟻)の大群に遭遇することやそれを捕食するために突如、姿を現す多くの数のヒキガエルを見るとやはり内地とは違います。

読者の方にとっても小笠原は特別な場所であることを思い出し、特別な移動運用であることを意識付けするために今回もあえて「JD1/JE1ECF」としてQRVすることにしました。移動運用を示す「JD1」はコールサインではありません。コールサインはあくまで「JE1ECF」のみです。日本では移動運用を示す表記に決まりはないので「JD1」をコールサインの前・後ろにつけようと個人の自由です。日本では移動をするとき、エリアナンバーのみのため移動運用を示す表記を後ろに表記する習慣があるため、「JD1/JE1ECF」を聞いた時、戸惑う方も多いでしょう。ただ「JD1」だという認識はしやすかったのではないでしょうか。実際の運用では交信相手からの返信は「JD1/JE1ECF」、「JE1ECF/JD1」、「JE1ECF/1」と様々でした。


JD1/JE1ECF


おがさわら丸



品川ナンバー


小笠原村ナンバー



航路表



2. 前回記事のお詫び

前回記事において「酔い止め薬」は船内での販売はないと記載しましたが、船内で販売されていました。船内売店と船体後方3階「ミニサロン南島」の自販機で販売を確認しました。以前は確かに販売されていませんでしたが、船酔いしない筆者は気に留めていませんでした。船内売店では目につきにくい陳列棚下段においてありました。


自販機の酔い止め薬



3. 待ちに待った移動のはずが・・・。

竹芝桟橋で乗船前に小笠原海運の職員と話をした際に父島の天候は雨との情報を得ていましたが、実際には渡航期間は乗船時間を含めて、晴れとなり天候に恵まれました。筆者が上陸する前(朝方まで)は大雨だったようで久しぶりの晴れ間であることを島民の知人から知らされました。今回もQRP運用はMM、JD1ともIC-705 5Wでした。

島での移動はもっぱら50ccのレンタルバイクですが、渡航3日前に電話をしたところ、既にいっぱいとのことでしたので(通常この時期は予約なしで済むのだが・・・。)、今回は1時間に1本の村営バスが足となりました。このことで無線運用より買い出し時のバスの時間が優先となってしまいました。加えて、例年だとこの時期の旬である母島産のパッションフルーツが今年は品薄ということで手に入ったのが父島産のものでした。これを入手するために朝と夕方にシャックと町を往復することになりました。これがバスの時間が優先の理由です。バイクだと往復30分程度ですがバスだと1回の移動で1時間強を費やしてしまいす。今回は何もかもが「おかしい」といった感じです。

(1) 6月14日(金) 第一日目
おがさわら丸は定刻の11:00に竹芝桟橋を出航しました(往路の乗船人数は515名)。目指すは24時間後、小笠原村父島二見港です。東京湾内は12ノット(22km/h)、洋上では22~25ノット(42~45km/h)で航行します。東京湾内では主に144MHz・SSBと430MHz・FMでQRVしました。途中、13:00前に横須賀沖通過中に21MHzでオケラネットにチェックインしました。キー局のJD1BBH局にはコールサインをやっと認識してもらうもレポート交換には至りませんでした。JD1BBH局は「おがさわら丸」の一言で相手が筆者であることを認識したようです。お空の状態は芳しくないようです。

東京湾を出てから洋上にて、18MHz・SSB、21MHz・SSBと50MHz・SSBで声を出すもQSOできたのは21MHzで山口県の局1局でした。結局この日の釣果? は430MHz・FMでの8局と21MHz・SSBでの1局でした。6時間ほどCQを連呼しましたがQSOできませんでした。伊豆諸島の八丈島付近で夕刻を迎えます。QSOできないことから早めに撤収し、この日無線運用はこれでおしまいです。おかげで何年かぶりに他の乗客と一緒に太平洋に沈む夕日をみました。


竹芝桟橋 出航案内


竹芝桟橋 待合所



往路搭乗券


無線運用許可



竹芝・見送り1 おがじろう


竹芝・見送り2



MM運用1


MM運用2



オケラネット周波数


船上アンテナ



夕日1


夕日2



夕日3


夕日4



夕日5


夕日6



南下するおがさわら丸



(2) 6月15日(土) 第二日目
ここ数年だとこの午前中は比較的QSOのチャンスがあるのですが、今回は父島に到着するまで交信数はゼロとなってしまいました。これまでダメダメの状態です。島ではどうなることやら・・・。

11:00におがさわら丸は父島・二見港に到着しました。到着後レンタルバイク店、JA農産物観光直売所(小笠原アイランズ農業協同組合)を訪れました。バイクはレンタルできず、JA農産物観光直売所でパッションフルーツをゲットしようとしましたがあるのは4個入りが2袋のみでしたが何とかゲットしました(今回は一人2袋までの限定販売となっていました)。


日の出は拝めず


近づく小笠原諸島



もうすぐ父島


二見港


その後、ラーメン店と寿司屋を梯子して昼食をとりました。久しぶりに島寿司を堪能しました。ラーメン店には都内? にもかかわらず、メニューにサンマー麵(横浜や川崎で目にする)があります。何でも、先代が神奈川出身だとか・・・。島には内地各地出身の方々が多く住んでいます。余談ですが島の土地を購入するには3年以上島に定住していることが条件の1つだそうです。

昼食後、飲料水(アルコールを含め)購入し、まずは徒歩でJD1BBH宅(KAIZIN店舗)を訪問し、お約束のオリジナルTシャツを購入しました。定宿(シャック)の前を往来する村営バスの時間が数分後になることから、急いで、最寄りバス停に向かいました。なお、購入したTシャツは今後の東京QRPersのイベントの景品? になります。


昼食1


昼食2



大村海岸1


大村海岸2



大村海岸3


大村海岸4



KAIZINショップ 21MHz 5エレ


KAIZIN所有のアイランドクイーン


宿に到着後、先に送っていた機材をもって300mほど離れた高台のシャックへ向かいます。現在、このシャックにはHFハイバンドと50MHzのHEXビームアンテナ(同軸は8D-2V 50m程度)が常設されています。有志の方が整備をされており、感謝に堪えません。なお、HFローバンドのアンテナは、運用者が用意することになります。今回はワイヤーバーチカルアンテナと、7MHz 1/2λワイヤーアンテナを持参しましたが初の使用となる7MHz 1/2λワイヤーアンテナを使ってみました。坂道を上がりシャックに到着です。早速、HFローバンドアンテナの設営です。地上に置いてあるルーフタワーに移動用アルミポールを差し込み、先端にアンテナバランを取り付けました。途中、ワイヤーエレメントが木々や単管パイプに接する場所があったので別途用意したグラスファイバーマストを活用し離隔を取りました。

今回の予定は6/17は国際QRPデーによりQRP運用、その他の日はQRO運用を予定しました。アンテナ設営後、16:00頃より18MHz帯でQRO運用を開始、最初の局は2エリアの局でした。この日は7,18,21MHz SSBのQROにて34局、睡魔に負けて19:00にQRTしました。翌日は01:30に運用再開しました。


境浦ファミリー全景


境浦ファミリー看板



使用したアンテナ


設営したワイヤーアンテナ



予備のワイヤーバーチカル


常設のHEXビームアンテナ



島1日目の夕食



(3) 6月16日(日) 第三日目
DXを期待して、01:30に運用再開するも、DXとはQSOできず、早朝はJA数局のみでした。この日は日曜日なのでQSO数が期待できるかと考えていましたが21:00頃までの7,18,21MHz SSBの運用で162局でした。途中、小笠原名物? シロアリ(羽蟻)の襲来にあい、30分ほど中断もありました。この日の気づきは7MHzでのJA局の運用時間でした。例年ですと5時過ぎからでしたが日曜日だからか04:00前頃からバンド内が賑やかでした。最近、日中の国内コンディションが悪いせいか、お年を召した方が多いせいかは読者のご想像にお任せしますが、例年とはバンド内の状況が変わっていました。

無線運用以外ではこの日は「ははじま丸」が父島に戻ってくる日だったので、もしや母島産のパッションフルーツがあるのではと期待し、夕方にJA農産物観光直売所を訪れ、母島産をみつけましたが1人2袋までの限定は変わらず、3個入りであったため、購入はとりやめました。その後、レンタルバイク店を訪れたましが、明日の夕方に早めの返却があるかもしれないとの情報を聞き、明日へ期待することとしました。


島2日目の朝食


島2日目の夕食


(4) 6月17日(月) 第四日目
この日は待ちに待った国際QRPデーです。05:00前に起床し、出力5WのIC-705にて7MHz・SSBにQRVしました。CQを出して5分後位に2エリアからコールバックがありました。7MHz 5W運用は朝食前(07:00)まで行いましたが、結局、QSOできたのはCQを出し始めてから30分位で3局のみとなりました。

朝食後、運用を再開するも7MHzはノイズレベル高くなり、その他のバンドは何も聞こえませんでした。ということで09:00開店のJA農産物観光直売所にいきました。父島産のパッションフルーツの大袋が店頭に並んだので限定2袋を購入し、内地の2か所に郵送しました。

シャックへ戻り、無線運用を再開するも18・21MHz帯はノイズレベルが高く、加えてレーダー波? のパタパタがあったため、50MHz帯にQSYしました。今回の移動運用では50MHzでのQSOはできていませんでしたが、立て続けに2局からコールバックがありました。QRO運用でのQSOでしたがこの時はこの2局のみで後が続きませんでした。気を取り直して21MHzに出るも1局のみ。その後、ノイズレベルの高い18MHzを運用したところ、国内が開き、交信局数を増やすことができました。運用途中、ノイズレベルが低くなったように感じたので5W運用に切り替えましたがパッタリとコールバックがなくなりました。このことから、メインイベントのQRP運用を断念し、QRO運用を継続することになりました。

夕方になりレンタルバイク店に向かい、無事レンタルバイクをレンタルして飲料水を買い、シャックに戻りました。夕食後に運用を再開するも局数が伸びず、20:00過ぎに運用を終了し、紙ログからHAMLOGに転記を行い就寝しました。この日は7MHz 5W運用で3局、QRO運用で49局うち2局が50MHzでした。今回投入したワイヤーアンテナを使用し7MHz 5WでQSO実績ができたことでヨシとしました。


島3日目の朝食


国際QRPデー



境浦海岸の濱江丸


境浦の濱江橋



島3日目の夕食



(5) 6月18日(火) 第五日目
この日は午後の「おがさわら丸」で内地に戻る日です。04:00から7MHzで運用を行い、06:00に終了してアンテナの撤収作業を終えました。その後、機材はQRO 50W無線機を除き船便のための荷造りを済ませ、朝食を取りました。

船便の受付は二見港にて10:00から開始です。朝食後は08:25頃まで島での最後のQRO運用を行い(この日は島での最終運用日で島内でのQSO局数は58局、最後のQSOは50MHzでした。)のちにQRO 50W用無線機も梱包し、再度、09:00の開店に合わせJA農産物観光直売所に出向き、父島産パッションフルーツの小袋2つを入手しました。機材出しをするために再度宿に戻り、荷預けをするために09:45に宿を出発し港に向かいました。やはり、レンタルバイクの機動力は最高でした。荷預け後にJA農産物観光直売所に立ち寄り、今度は父島産パッションフルーツ大袋が店頭に並んでいたので2つを入手し自宅へ郵送しました。

その後シャックに戻り、IC-705 5Wでの運用を開始しましたが1時間以上CQを連呼しましたがQSOには至りませんでした。仕方なく出船までの時間はレンタルバイクで島内を廻り、観光? となりました。空は快晴であったためきれいな海の写真が取れました。今回の渡航では天候だけが見方をしてくれました。

出船45分ほど前にレンタルバイクの燃料を満タンにして返却し、おがさわら丸の待つ二見港に向かいました。港ではJD1BBH局が見送りに来ており、BBH局宅でとれたパッションフルーツとお弁当を頂き、乗船となりました。

おがさわら丸は父島・二見港を定刻の15:00に出港。(復路の乗船人数は504名)。おがさわら丸船上ではQRP運用を開始するも3時間強、CQを連呼してもQSOには至りませんでした。歳をとるにつれ過去の運用のように魂が入った運用ができなくなっているのか、それともただコンディションが悪いだけなのか残念な結果になりました。島での最後の運用の紙ログをHAMLOGに転記して1日を終えました。


島4日目の朝食


二見港を望む



小港海岸1


小港海岸2



宮之浜海岸1


宮之浜海岸2



ウェザーステーション


ウェザーステーションからの見晴らし



二見港 窓口横の模型


復路搭乗券



父島の見送り


名物? 見送り船



小笠原諸島の夕日1


小笠原諸島の夕日2



小笠原諸島の夕日3



(6) 6月19日(水) 第六日目
早朝、日の出を見るため甲板に上がりましたが見ることはできませんでした。06:30頃でしょうか、八丈島に近づくころ、八丈島の局とのQSOを目的として430MHz FMでCQを出すも空振りとなりました。その後18MHzにQSYすると待望のおがさわら丸復路最初の局とやっとQSOができました。大島沖に近づくまで1時間に2局程度のペースでQSOができました。東京湾に差し掛かったところでオケラネットをワッチしましたが、JD1BBH局が聞こえず、今回は島でのお礼をすることができませんでした。東京湾に入ってからは430MHz FMと50MHz SSBでQSOができました。


朝日が出るぞ


あれ? 見えない


4. 今回の振り返り

22回目の小笠原移動運用は、6/17の国際QRPデーにおけるQRP運用を目的としていましたが残念ながら不調に終わりました。全体でのQRP運用は6/17の3局、MM【往復】運用での27局、合計で30局(全体QSOでの約1/10)でした。またシーズンにもかかわらず、50MHzでのQSO数がQROを含め10局にも届きませんでした。50MHzでQSOできた方はラッキー。できなかった方ごめんなさい。

振り返ると無線運用よりパッションフルーツ購入ツアー? になった感があります。今年のパッションフルーツは見てくれはよくなかったが、実のつまりがよく、甘さが強かった。う~ん、うまい!


パッションフルーツ


おいしかった


今回バイクが渡航期間全日程でレンタルできなかったのは痛手でした。次回から、宿、船、バイクの3拍子で予約をしたいと思います。今回のQSLカードは6/30にマルツパーツ秋葉原本店のQSLカード転送BOXに投函? 済みです。


JD1 QRP運用QSLカード


MM QRP運用QSLカード 今年、小笠原海運は開業55周年でした。


JD1 QRO用QSLカード


マルツ秋葉原本店


QSL転送BOX


5. QRP運用実績

(1)JD1父島


(2)おがさわら丸MM往路


(3)おがさわら丸MM復路


今回は、これでおしまいです。

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