新・エレクトロニクス工作室
2025年3月17日掲載
週刊BEACONのNo.189で作ったGPSDOの10MHz出力は、一つだけしかなく不便でした。そこで4分配器を作ろうと考えていました。その時に思いついた事がありました。少々疑問があったため、動作の確認をしたかったのです。その確認のために作った写真1のような4分配器です。もちろんレベルが下がってしまいますが、GPSDOの10MHzの分配もできます。
写真1 自作した4分配器
2分配器は図1のように作られます。この欠点としては、右側の出力側インピーダンスを50Ωにすると、左側の入力側インピーダンスが半分の25Ωになる事です。あるいは抵抗を200Ωにすれば入力側インピーダンスは50Ωになります。ただ出力側インピーダンスは100Ωになってしまいますので、同じ事です。もちろん、簡単な用途でインピーダンスの相違を問題としなければ、図1のままでも良いのでしょう。
図1 基本的な2分配器だが入力側は25Ωになってしまう
正確に入力側を50Ωのインピーダンスとするために、1対√2つまり1対1.41の巻き数比の中途半端なコイルを作る必要があります。図2のように14回巻きの10回からタップを取り出せば50Ωの2分配となります。もちろん、7回巻きの5回タップでも同じです。この方法が正しいのは解るのですが、どう考えても今ひとつとしか思えません。多少の端数で大きく変わるとは思えませんが、あまりに巻き数比が中途半端です。また、タップの位置が正確に出せるかという問題もあります。少々気持ち悪いと思っていました。
図2 このようにタップを使ってインピーダンスを50Ωにする
そこで考えたのですが、4分配をしようとすると図3のようになります。追加した左側の分配器の抵抗は100Ωパラの50Ωとし、出力側インピーダンスを25Ωにします。この入力側インピーダンスは、50Ωの半分の半分で12.5Ωになります。
図3 4分配にすると入力側は12.5Ωになる
インピーダンスが12.5Ωであれば、同じコイルを使って1対2の巻数比で50Ωにできます。つまり全て同じバイファイラのコイルを使って、図4のような回路にする事ができます。このような作り方であれば一般的に使われるだろうと思い、探しましたが見つかりません。見つからないものは気になります。そこで、このような分配器を一度試したくなりました。
図4 12.5Ωであればバイファイラ巻きで50Ωにできる
キーとなるコイルですが、良く使われるFB801のバイファイラ巻で良いのです。しかし簡単に実験できそうな写真2のようなコイルがあるため使ってみました。このコイルは図5のような接続のノイズフィルターと思われます。コアは一見するとフェライトには見えないのですが、FT-23程度のサイズで15回程度巻いてあります。線はよじってはいませんが、きれいに平行になっていますのでバイファイラと言えそうです。これで45μHですのでFT-23#43と同等程度なのでしょう。100個入りを相当前のハムフェアで購入したもので、以前からバイファイラコイルの代用として使っていました。トランジスタを使ったNFBアンプ等のバイファイラ巻でも使っています。楽で便利なのですが、似たようなコイルが追加で入手できません。追試するのであれば、FB801の4~5回のバイファイラ巻きで良いと思います。
写真2 安易に使ったバイファイラ巻きのコイル
図5 このような接続のコイル
実装図を図6のように作製しました。使ったのは秋月電子のDサイズの基板です。部品面にシールドメッシュの付いたタイプになります。
図6 実装図を作製
ハンダ面が図7となります。これは部品面から見た透視図になります。ミラーしてハンダ面から見たのが図8になります。
図7 実装図の透視図でハンダ面を見る
図8 図7をミラーした(写真4と比較できる)
基板を作製したところが写真3になります。コネクタにはSMAの基板用エッジマウント使いました。
写真3 基板を作製した様子
基板のハンダ面が写真4になります。これは図8と比べる事ができます。
写真4 基板のハンダ面
これで思ったような特性が得られるのかを写真5のようにして測定しました。基本的に測定しない端子は、全て50Ωで終端しています。
写真5 測定しない端子は50Ωで終端して測定
電力を4等分しますので基本的に6dBのロスがあります。これに回路的なロスが加わります。測定すると図9のように10MHzで6.3dB、50MHzで6.4dBになりました。出力は4箇所ありますが、全て同じでした。まずまずの結果だと思います。
図9 10MHzで6.3dBのロスとなった
出力間のアイソレーションは、図10のように10MHzで34dBとれています。50MHzで23dB程度と悪化しますが、まずまずでしょう。
図10 出力間のアイソレーションは34dB
次にIN側に50Ωを接続し、OUT側から見たリターンロスとインピーダンスをアナライザFA-VA5を使用しソフトで表示させたものが図11です。使わないOUT側は全て50Ωで終端しています。どの出力からでもほぼ同じで、10MHzで33dB、50MHzで24dBとなりました。ほぼSWRは1に近いという事になります。
図11 OUT側から見たリターンロスとインピーダンス
試しに、この状態で入力の50Ωだけを外すと、図12のようにフラットな12dBになりました。どうして12dBになるのかは簡単に説明ができそうに思いますが、サボっています。
図12 入力の50Ωを外したリターンロスとインピーダンス
逆にOUT側を全て50Ωで終端し、IN側からのリターンロスとインピーダンスを測ったのが図13です。10MHzで22dB、50MHzで10dBとあまり良くはありません。しかしスミスチャートを見ると、基本的には50Ωになっている事が解りました。周波数特性に若干の問題があるようです。このように完璧ではありませんが、まずまずの結果と思います。
図13 IN側から見たリターンロスとインピーダンス
後から考えてみると、図4の左側のコイル2個をまとめればトータル3個で済むように思えます。このようにして実験課題が消えたのに、次が出来てしまいました。まあ、それで良いのだと思います。
分配器として作りましたので、今回は回路の左側を入力として4分配側を出力としました。もちろん、逆方向にすれば合成器としても使えます。このように分配器としては考えた通りに動く事が解りました。しかし、そのままGPSDOの分配器には使いませんでした。それは次回に・・・。
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