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続アマチュア無線のデジタル化

無線通信のデジタル化とは (下)

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前号では、「通信のデジタル化が電波の有効利用をもたらすのではなく、使用する電波の占有周波数帯幅を狭帯域にすることが電波の有効利用となる」と述べた。アマチュア無線の占有周波数帯幅16kHzのアナログFMから、一例ではあるがJARLが開発した占有周波数帯幅6kHzのデジタルモードD-STARに移行することが正に世界の潮流といえる電波の有効利用であり、これが今後も通信のデジタル化の根本となる考えだ。

GMSK(Gaussian filtered MSK)方式とD-STAR

GMSKというデジタル変調方式をご存じでしょうか。身近なところではD-STAR機の復変調に使われています。

話はそれますが、直近4月のアマチュア局数は、総務省の統計によりますと40万局を割り、38万局余りとなりました。かつてアマチュア局は、1995年3月末には136万4,316局のピークを記録しました。144MHz帯や430MHz帯では、いわゆる空チャンはどこを探しても見当たらないほど連日連夜バンドが混みあっていたアナログ時代でした。

このアナログと相まって、これよりずっと以前からPacket(パケット)通信と呼ばれるデジタル通信が一部のグループの中で研究されていました。日本では1985年頃からはこのパケット通信が普及し出しました。VHF/UHF、FMトランシーバーのマイクコネクタや変調入力端子に音声帯域のデータを入力し1200bpsでAFSK通信を行っていました。その後、イギリスのアマチュア無線家G3RUHが9600bpsのFSKモデムを開発し、さらには信号処理にGMSK(Gaussian filtered Minimum Shift Keying)という変調方式も研究され、音声によるデジタル通信の走りとなりました。

このGMSK方式は、もちろん業務で使う移動体通信の限られた周波数帯の有効利用のための研究だったのですが、1998年から始まった「アマチュア無線へのデジタル技術導入に関する調査検討」プロジェクトでも検討されることとなり、回路構成が比較的シンプルで自作も可能ということも考慮してJARLは最終的にはGMSK方式をD-STARに採用しました。


GMSK方式のデジタル復変調が採用されたD-STAR機(アイコムID-1 2004年発売)

デジタル変調方式あるいはD-STARで採用されているGMSK方式の詳しい説明は、アイコムホームページ「週刊BEACON」で紹介されています。
https://www.icom.co.jp/personal/beacon/d-star/5567/

別のデジタル方式4値FSKについて

D-STAR以外に国内のアマチュアが使っているデジタル方式に4値FSK方式があります。4値FSKは、元々は海外のデジタル移動通信システムで実用化されている方式です。北米では、Telecommunications Industry Association(TIA)が標準規格化しており、チャネルステップは12.5kHzです。この方式は主にパブリックセイフティ(APCO Project 25)と呼ばれ、警察、消防等の公共安全業務に用いられています。限られたバンドプランの中には、限られた運用チャンネルが存在しますが、そのチャンネル数以上に利用者はいます。効率よくチャンネルを使用するには、限りなく占有周波数帯幅を狭くし、使用できるチャンネル数を増やすことが求められますが、そこは狭帯域と音質や技術とのトレードオフとなります。

郵政省(現総務省)からアマチュアのデジタル化の委託を受けてJARLが開発したD-STARの占有周波数帯域幅は、世界のナロー化の潮流にも沿った6kHz以下で、これは6.25kHzのチャンネルステップに対応できるようにしたものです。アマチュア無線のFMモードは20kHzステップで運用されていますが、このD-STARの6.25kHzとは我々アマチュアからすれば半端なチャンネルステップと思われがちですが、もともとは米国の業務無線機のチャンネルステップが由来です。

その昔、北米のチャンネルステップはVHFが30kHz、UHFは25kHzでした。電波の有効利用の観点からそれらをそれぞれ半分のチャンネルステップに移行しようとしていたところに、デジタル化の波が押し寄せ、25kHzチャンネルステップで伝送できる通信データ量を半分の12.5kHzチャンネルステップでもできるようにすることが求められ、この12.5kHzとなりました。しかし、その時すでに欧州ではさらに12.5kHz半分の6.25kHzという狭帯域の考えがあり、そのようなバックグランドからアマチュア無線のデジタル標準化にあたり、6.25kHzを視野に入れたチャンネルステップのデジタル方式を求められ今日に至っています。

今後のアマチュアのデジタル化

海外をみてもアマチュア無線は技術的向上を目的としたものですから、商業ベースでは考えられないような実に面白いことが研究されています。我々が普段使っている電波型式もしかりで、バンドプランは存在しますが自由に実験できる環境にあります。その中にはデジタルだけで区別すれば前述したJARL開発のD-STARと4値FSKが存在します。どのような形であれそれぞれ実験や運用は自由闊達に行うことがアマチュア精神であると思います。しかし後者4値FSKの占有帯域幅が16kHzであるのは、政府主導の電波の有効利用の観点からすれば少し離れているように感じます。最近は、アマチュア人口も減少し、チャンネルの奪い合いということもなくなりましたが、本質的な電波資源の有効利用は、これまで通り進めていく必要はあると思います。この先、6.25kHzのさらに半分の3.125kHzもアマチュアの研究としては面白かもしれません。

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次号は 12月 1日(木) に公開予定

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