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外誌に見る「FT8とそのデシベル表示」について

月刊FB NEWS編集部抄訳

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DX通信を楽しんでおられる各局にはサイクル25の状況が気になるところです。サンスポットは、すでにサイクル25に突入しており、その兆候は表れているといったニュースも聞きますが、今一つその状況に遭遇できていません。それでも連日連夜、FT8は活発なようで、FT8の信号の聞こえない日はないほどです。今回、スペインのアマチュア無線雑誌に「FT8とそのデシベル表示」と題する記事が掲載されていましたのでその内容をご紹介します。

FT8とそのデシベル表示について

著者 César, EA1AUI

当局がFT8をやってみようとしたとき、交信を行っている2局間、正確には「コンピューター間」と言うべきかも知れませんが、そのレポート交換は普段の交信で使用しているSメーターの読みをお互いに送信するレポート交換ではなく、デシベル表記で行われているのが印象的でした。ここでそのことを少し調べてみることにしました。

その一例を説明するのに当局のログブックから4件をピックアップしました。当局が使っている無線設備は、マルチバンド垂直アンテナと送信出力は50Wです。


表1

■HF帯でSSBまたはCWモードでQSOしている場合、同じ時間帯、同じ周波数帯、また同じ地域の局とQSOしたと仮定します。この場合、信号強度に20dB以上の差を生じるようなQSOはなかなかありません。

HF帯の1.8~30MHzでSSBまたはCWの場合、S9の信号といえば私たちは普段の運用の中でどれくらいの強さか感触で分かります。そのS9を例えば無線機のアンテナコネクタ端の入力で50.2µV(-73dBmに相当)であるといってもピンときません。一般的なマルチバンド垂直アンテナに50W出力で運用しているような場合、+12dBmもの強力な信号で相手に伝わるようなところは滅多にありません。+12dBmといえば894424µVに相当します。かなり強力な信号です。我々が普段使っているSメーター表示に言い換えれば、この+12dBmとは「85dB over 9」もの信号です。

FT8のデシベル表示がHF帯のSSBやCWと同じ基準でないと、信号の強さを理解するのは正直難いように思われます。


図1

ここで私たちが知っていることを簡単に確認してみましょう

HF機のSメーターをdBm表示することを考えてみましょう。dBmは電力の単位です。無線機のアンテナコネクタのインピーダンスが50Ωとするとそのアンテナコネクタに1mW、つまり0.223VのRF信号を生じたときを0dBmと定義しています。

この0dBmの基準電圧を超える値は、正のデシベル+dBとして扱われ、この電圧を下回る値は、負のデシベル-dBとして扱われます。この入力電圧の値が2倍になる毎にスケールは+6dBアップし、逆にその入力電圧が2分の1なる毎に-6dBダウンします。図2の表を見ると理解できると思います。

これらHF機のメータースケールは、1から9まで分割されており、それをS単位としてS1~S9として使っています。S1は、人間の耳で知覚できる最低レベルを示し、図2の表に示されているように、0.2µVつまり-121dBmを表しています。


図2

S9は、一般にたいへん良好な強い信号と見なされています。電圧レベルでは、50.2µVとなりデシベル換算では-73dBmに相当します。

つまり、HF帯のCWやSSBモードでは、Sメーターが受信信号の実際の強さを表しています。

では、FT8ではどうか?

FT8では基準となる0dBは、これまでのSメーターの考えとは全く異なる方法で決められています。例えば大気、宇宙、工業用ノイズ、または受信機内部で発生するノイズなどに基づいて決められているようです。


図3

バンドスコープのソフトウェアは、このモードで使用される2.5kHzの帯域幅が占めるスペクトル全体に存在するノイズレベルを分析および測定し、そのレベルを基準の0dBとしています。

■2局間のQSOが確立されるとプログラムは、対応する信号レベルを測定した後、それを基準となる信号と比較します。その信号が基準レベルに対してそれ以上か、それ以下かで+dBまたは-dBの値になります。

■その基準となる信号は標準化された測定値に沿って決められたものではなく、むしろ可変特性を持ち、それぞれの局はそれぞれの局の受信環境に応じて基準信号を作っています。たとえば、受信した信号強度が都市部や工業地帯にいるアマチュア無線家と農村地域にいるアマチュア無線家とが等しい入力電圧であったとしても、非常に高いレベルのノイズが発生する都市部や工業地帯から運用しているアマチュア無線家は、ノイズレベルが低い農村地域にいるアマチュア無線家よりも、はるかに低い(S/N比の)シグナルレポートを送ることになります。

■したがって、FT8のシグナルレポートが、絶対値の分からないパラメータによって制御されているのであれば、実際の信号強度を正直知ることはできません。ただし、シグナルレポートの交換はQSOの信憑性を実証するためには重要な情報であることは別として、相対的な方法ではありますが自分の無線設備のパフォーマンスを知るのに非常に役立ちます。プラスdBのシグナルレポートであれば、自分の信号はよく届いていると理解できます。反対にマイナスdBの信号、例えばそれが–20dBのたいへん弱い信号であったとしても、相手局がスペインから遠く離れた特に太平洋地域の局であるなら私たちを満足させることができます。

73, DX & Good luck

本稿はRadioaficionados誌(Spain) 2021年1月20日号に掲載の記事を抄訳したもので、著作権者から許可を得て掲載しております。

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