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第二十三回 MLAの性能をチェック

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Dr. FB

マグネチックループアンテナについて

本号、月刊FB NEWSのShort Breakに50MHzシングルバンドのマグネチックループアンテナ(以下MLA)の製作記事が紹介されています。アンテナを製作すると「飛ぶのか、飛ばないのか」たいへん気になります。そこで今月初旬、製作した50MHzシングルバンドのMLAの性能を確かめようとローカル局とスケジュールを組み、アンテナの性能テストを行いました。今回はその結果を簡単にご紹介します。

ところで日常生活で知られる光や電波は電磁波の一つであると私たちは学びました。その電磁波はウィキペディアには、電場と磁場の変化を伝搬する波(波動)との説明がなされています。もう少し電波に近い言葉では「電界波」と「磁界波」が交互に生じて伝搬するものと置き換えることができます。電界と磁界の組み合わせの波から「電磁波」ということばが生まれたようです。

MLAの元の意味はMagnetic Loop Antennaで、このMagneticが日本語では「磁界」を意味しており、その磁界がMLAを通して高周波電流を誘起していると理解できます。これがダイポールアンテナなどとは異なる点との説明を何かの書物で読んだことがあるのですが、正直なところ筆者には難解でした。

マグネチックループアンテナの性能試験

実験は、図1に示す奈良県で、2局間が見通しのロケーションで行いました。実験を行った2局の無線環境を下に記します。
・A局: MLAで送受を行う移動局(無線機: IC-705、アンテナ: MLAとダイポール)
・B局: 固定局(無線機: IC-7610、アンテナ: 2エレHB9CV)
・A-B間の距離: 13.4km(ほぼ見通し)
・実験周波数: 50.250MHz(レポート交換はSSB、単信号の送信はRTTY)


図1 実験を行った2局間の位置関係


図2 A局が実験に使った2種類のアンテナ(奥: Buddipole®、手前: 自作のMLA)

(1) 受信アンテナとしての比較
B局から変調の掛かっていない単信号(キャリア)を送信してもらい、その電波をA局のMLAとダイポールで受信し、それぞれのアンテナで受信した信号強度をIC-705のSメータで観測します。MLAは、冒頭でも記述しました通り、Short Breakのコラムで紹介されているアンテナです。ダイポールは、米国のBuddipole®です。A局のアンテナの設置状況を図2に示しました。


図3 A局がMLAとダイポールでそれぞれ受信した信号のSメータ表示

MLAで受信したときのSメータ表示はS8。MLAの代わりにダイポールで受信したときのSメータ表示はS9+1目盛りとなり、もちろん差はありますが思うほどの差は出ませんでした。

(2) 送信アンテナとしての比較


図4 A局がMLAとダイポールでそれぞれ送信したときのB局でのSメータ表示

A局のIC-705にMLAとダイポールをそれぞれ接続し、A局からそれぞれのアンテナで送信したとき、B局での信号強度をIC-7610のSメータで確認しました。その結果、図4に示したようにMLAで送信したときはS3+1目盛り、ダイポールで送信したときはS7+1目盛りとなり、Sメータ目盛りとしてS4の差がでました。

(3) 実験中に気付いたこと
上記(1)、(2)の実験の前にMLAをA局のIC-705に接続しました。図5(a)、図5(b)は、それぞれのアンテナを接続したときのウォーターフォールとSメータの表示をスクリーンキャプチャしたものです。これはどこかの局の信号を受信しているものではなく、単にアンテナを接続したときの状態です。。

ダイポールを接続すると図5(a)のようにSメータは、1.5~2ぐらいの振れています。一方、MLAを接続すると図5(b)のようにS3+1目盛りまで振っています。かつウォーターフォールには約50kHzごとに何かの信号が受かっているのが見えます。


図5 ダイポールとMLAを接続したときの無信号時のSメータの振れ

実験結果のまとめ

実験結果を見るまでもなく、実験を始めてすぐにMLAとダイポールとの違いを感じました。一言でいうとMLAは受信はそれなりに満足する性能ですが、送信は思うほど飛ばないということでした。受信がよいのなら、送信もそれなりの性能を発揮すると思っていましたが、「逆もまた真なり」ではなかったということです。

1波長が6mであるものを1m強のループ長に収めていますので、一定の減衰は否めません。それでも受信は想像以上でした。先に述べました磁界波が何らかの要因となっている可能性もありますが、この理論はよく分からず推測の域から脱しません。

その結果を裏付けるものとして、図3に示した写真には、MLAではS8、ダイポールではS9強となっていることが分かります。その差はSにして約1です。一方、A局から送信したときのB局のSメータの振れを図4に示しました。MLAで送信すると相手局にはS3強で届いていたのに対し、ダイポールではS7強で届きました。単純な計算ですが、その差はSメータで4もあります。

MLAのよいところ悪いところ

MLAのよいところは、次のような項目があげられます。
・軽量
・コンパクト
・構造がシンプル
・受信アンテナとしてはそこそこよい

反対に今一つ気に入らないところは、次のような項目があげられます。
・効率が悪いため、電波の飛びがよくない
・通過帯域が非常に狭い(高いQ)
・高いQであるためチューニングが取りにくい
・人体がアンテナに近づくと調整がずれる

MLAを使ってみた感想

本号、Short Breakで紹介されたMLAは、当初の目的は無線半分、山歩き半分を意図されたものであり、それを元に評価すると及第点は上げられるのではないかと思います。屋外に無線をバリバリにしに行くのであれば、ビームアンテナが必要になります。車で山頂まで行けるところはよいですが、健康志向で歩きで山に登る人にはビームアンテナの持参はちょっと大変です。山歩きで眺めのよい場所で一息つくときにこのMLAなら組み立ては簡単だし、調整はちょっとクリチカルですがこれも簡単です。


図6コンパクトに収まるMLA

それを考えると今回の実験ではMLAは、送信は効率が低下してそれほど飛びはよくありませんでしたが、山に行くとそこは「山頂パワー」とでもいうのでしょうか、地上高で稼いだ強力な電波が出るずです。

製作もそれほど難しいものではありません。無線半分、山歩き半分といった健康志向のハムには是非勧めたいアンテナと思いました。

FBDX

参考文献、資料
国土地理院地図(電子国土Web)
電波社 HAMworld 2019年11月号、2020年1月号、2020年3月号、2020年5月号 「電磁界アンテナとの出会いから今日まで」
CQ出版社 CQ ham radio別冊 QEX No.25 入門作って学ぶMLA
ウィキペディア 「電磁波」

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