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大阪そぞろ歩き

大阪の廃線跡を巡る その1

JK3AZL 高岡奈瑞


水彩画:川辺晴美作 阪堺線の通称チン電(我孫子道車庫)

鉄道は乗るのも撮るのも受信するのも好きですが、廃線跡を巡ってウォーキングするのも大好きです。これらは「乗り鉄」「撮り鉄」「聞き鉄」「歩鉄」と呼ばれることもあるようです。幸い自宅周辺には数多くの廃線跡があり、カメラ持参でよく散策しています。今回はそんな大阪の廃線跡を巡る様子をご紹介いたします。初回は、近所にある南海平野線。

* * *

南海平野線は、今池(大阪市西成区)から平野(大阪市平野区)までの五・九キロを結んでいた軌道で、大正三年四月の運転開始から昭和五十五年十一月の旅客営業廃止までの六十六年間、多くの乗客を運んでいたそうです。今回は南海平野線の終着・平野停留場から始発の今池駅まで歩きます。


南海平野線のルート

平野停留場跡は「プロムナード平野」という名の遊歩道になっており、線路を模した遊歩道が楽しめます。古レールを利用して作られた藤棚の下には、実際に使われていた車止めが残されており、かつてここが終着駅であったことがわかります。


平野停留所跡


車止めと、藤棚の奥には信号も再現されている

遊歩道の途中にある広場には、当時欧風木造建築として話題になった八角形屋根の平野駅駅舎をイメージしたモニュメントと、南海平野線で活躍していたモ二○五型電車の絵があり、当時を偲ぶことができます。


遊歩道途中の広場

平野停留場跡から五〇〇メートルほど歩いて阪神高速の高架にぶつかる辺りに、西平野停留所跡があります。周辺は背戸口公園として整備されており、ここにも線路を模した遊歩道や、公園の砂場横には南海平野線の路線図を表したモニュメントがあります。


背戸口公園にも線路を模した遊歩道がある


南海平野線を紹介するモニュメント

西平野停留場跡から阿倍野までは、延々と阪神高速の高架横を歩くことになります。特に西平野停留場跡から四キロ弱の場所にある文ノ里停留所跡地までは歩道沿いにコンビニやカフェはないため、暑い日などはMYボトルも必要です。

文ノ里停留所跡は阪神高速高架下、大阪メトロ谷町線文の里駅七番出口近くにあり、南海平野線の歴史を記した記念碑が設置されていることから、ファン必見のスポットになっています。


文ノ里停留所跡地

古びた記念碑には、次の文章が記されていました。

南海平野線と文ノ里停留所

南海平野線は南海電鉄が経営する軌道線の一つとして今池から平野までの五・九キロを昭和五十五年十一月二十七日まで運転していました。

平野線は、当初阪南電気軌道が西成郡今宮村今池から東成郡平野郷町までの間に軌道敷設を計画、大正二年阪堺電軌が同社を合併し、翌年四月二十六日に今池-平野間の運転を開始しました。

その後大正四年六月二十一日南海電鉄と合併し南海平野線となり発展する遠隔利用旅客の激増に対応し、昭和四年天王寺駅-平野間直通運転を実施しました。

文ノ里駅は大正十二年に作られ、戦後の最盛時にはおよそ一万一千人の旅客が乗降し、出札駅舎も設けられていました。

戦後は大阪市バスの路線増設を初め、自動車の普及と地下鉄線の新設により利用乗客は年々減少の一途を辿りました。

昭和四十八年三月、地下鉄谷町線天王寺-八尾南間の延伸工事が開始され、約七年八ヶ月を経た昭和五十五年十一月二十七日、同線の運転開始と同時に平野線は六十六年続いた旅客営業を廃止しその歴史を閉じました。

昭和五十五年十二月 南海電気鉄道株式会社


文ノ里停留所跡地にある記念碑

文ノ里停留所跡を過ぎると緩やかな上り坂が続き、右手前方に天王寺のランドタワーである「あべのハルカス」が見えてくると、いよいよ阿倍野エリアです。この周辺はある意味、南海平野線巡りの一番面白いエリアと呼んでも間違いないでしょう。阿倍野停留所は道路の一部となっていますが、あちこちに当時の架線柱が残っているため、宝探し気分で風景を楽しむことができるのです。


あちこちに当時の架線柱が残されている

阿倍野エリアを道なりに進み、阪神高速の高架下から西に逸れた付近に、飛田(とびた)停留所跡があります。停留所跡地はフェンスで囲まれた更地になっていますが、周囲には今も当時の建物が料亭として残る飛田新地があります。なお、正午頃だったので飛田新地で写真を撮りましたが、料亭が開く時間帯は、無闇な写真撮影は避けた方がよいでしょう。


料亭が並ぶ飛田新地

飛田新地界隈を北に抜けると、南海平野線の始発駅である今池駅があります。今池駅は阪堺線との共同使用駅であったため、南海平野線の廃止後の現在も、阪堺線の駅として使われています。


阪堺線今池駅。この先の恵美須町駅で下りると、大阪日本橋の電気街がある。

今池駅からほど近い通天閣周辺は、今や雑誌やSNSで「女子ひとり旅」のお勧めスポットとして紹介されるほどキレイな街に進化していますが、今池駅周辺は昔ながらの雰囲気が残っているため、そぞろ歩くには慣れが必要かもしれません。

南海平野線跡五・九キロ、写真を撮ったり買い物したりで二時間弱。今回のそぞろ歩き最大の収穫は、平野停留場跡の近くで見つけた自家焙煎の珈琲店。今まで遠くの店で買っていた挽き立て豆が、まさか近所で買えるとは。この日は選んだ生豆を目の前で焙煎してもらい、お土産にしたのでした。

次回のそぞろ歩きも、すてきな発見がありますように。


店主が焙煎してくれる焙煎の機械

<参考>
水彩画 川辺晴美
写真  筆者撮影
地図  国土地理院地図を利用

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次号は 12月 1日(木) に公開予定

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