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Short Break

録音再生機能付き「いつもありがとう」サウンドマシンの製作


「いつもありがとう」サウンドマシンの外観

4月も中頃になるとだいぶ夜が明けるのも早くなりました。それでも私が起きる4時半といえばまだ暗いです。でもこの時間に新聞を取りに出ると、冬の寒かった日も雨の日もすでに新聞は配達されています。配達していただく方々には、感謝しかありません。

そこでCQマシンの製作にと、とっておいた録音再生機能付きサウンドモジュールを使い、「いつもありがとう」サウンドマシンを製作しました。このサウンドマシンは、新聞がポストに投函されると、その音を検知して「いつもありがとうございます」と、予め録音しておいた声をスピーカーから自動的に発声し、新聞を配達していただく方に感謝の意を示す装置です。

この装置は、日ごろのアマチュア無線の運用に役立つものではありませんが、装置に使われている各回路は電子工作に役立つものと思います。各部の説明をしながら製作を進めます。

「いつもありがとう」サウンドマシンの仕様

基本は、夜が明ける前に新聞を配達していただく方々に予め録音した音声をスピーカーから発声する装置です。

<基本仕様>
・装置は乾電池で動作 (単4乾電池×4本: 6V)
・暗いうちは動作するが、明るくなると動作をオフにする省エネ設計
・録音する音声は自由に書き換えができる (市販のサウンドモジュールの利用)
・新聞が投函されたか否かは投函されたときの音で検知
・投函されると予め録音した音をスピーカーから発声
・また、その音で新聞受けの中をフラッシュライトで照らす

サウンドマシン全体の回路構成


図1 「いつもありがとう」サウンドマシンのブロック図


図2 各ブロックの説明

全体の回路図

サウンドマシンの全体回路図を図3に示します。


図3 「いつもありがとう」サウンドマシンの全回路

各ブロックの説明

(1) 明るさ検知回路
終日動作させるのであれば、この回路は不要です。この回路には、周囲の明るさを検知するCdS(R2)が取り付けられており、周囲が暗いときだけ電源を各回路に供給します。日中、周囲が明るくなると生活雑音も増加するため、誤動作防止のため回路の動作を止めます。

周囲の明るさを検知するCdSは、硫化カドミウムを主成分とする光導電素子の一種で、部品の表面(受光部)に当たる光の量によって抵抗値が変化する素子です。CdSを回路のQ2のベースとGND間に挿入し、R1とCdSの抵抗値R2の分圧をQ2のベースに印加しQ2をON/OFFさせます。CdSの抵抗値は周囲が暗いときは数MΩと非常に高く、周囲が明るくなると数kΩあるいはそれ以下まで低下します。このことを利用して暗い間は装置を動作させ、明るくなると動作をOFFとしています。


図4 明るさ検知回路

R1の抵抗値を求めてみます。CdSの抵抗値はあらかじめテスターで測定しておきます。ここでは、明るいときは10kΩ、暗いときは1MΩとします。R1とCdSの抵抗値R2との分圧でQ2のベースに印加される電圧を求めると下のようになります。


Q2がONするときの条件は、VBE=0.7V以上です。VBE=V2ですから上式に数値を代入してR1を求めると次のようになります。


手持ちのパーツに75kΩがなかったため、製作ではR1を68kΩとしていますが、100kΩの可変抵抗器とすると取り付ける環境によって調整できます。上記計算より、周囲が暗くなりR2の抵抗値が1MΩかあるいはそれ以上となるとR1とR2の交点の電圧(=V2)が0.7V以上となるためQ2がONします。

Q1はPチャネルのMOSFETで、ゲート電圧はQ2がONとなることでGNDレベルとなりQ1もONとなりドレインから6Vが出力されます。周囲が明るくなりCdSに十分な光が当たるとR2の抵抗値は低下するためQ2のベース電圧が0.7V以下となり、Q2がOFF、Q1もOFFとなり6Vは遮断され回路の動作はストップします。

(2) マイクアンプ
新聞受けに新聞が投函される音をコンデンサマイク(ECM)で拾い、その音を直流信号に変換して各回路を制御しています。音でなく、例えば人感センサーを用いるのも興味深いです。また別の機会にチャレンジします。

ECMの部品名は特に記載していませんが、汎用のECMであれば問題なく動作すると思います。ECMを動作させるには、電圧の印加が必要です。この回路ではR4を通して印加しています。マイクアンプは、おなじみの低電圧オーディオ・パワーアンプLM386を使います。新聞が新聞受けに投函されるときの音をECMで確実に拾い、それを十分すぎるほど増幅し、各回路を動作させるためのトリガ信号を作ります。LM386のゲインは、1番ピンと8番ピンに接続する部品で切換えることができます。この装置では図5に示したように50倍と200倍を必要に応じてスイッチで切換ができるようにしています。


図5 マイクアンプ回路と増幅度の切り替え

(3) 整流・平滑回路
ECMで拾った音をLM386で増幅し、その増幅した交流信号をD3で整流し、直流にします。できるだけ弱い信号でも整流できるようにダイオードは接合電圧の低いゲルマニウムダイオード1N60としています。通常のスイッチングに使用するシリコンダイオードでも動作しますが、感度は若干悪くなります。C7、330µFはダイオードで整流した信号をできるだけ振幅の差をなくした直流とするため平滑回路を構成しています。

(4) 回路ON/OFF制御回路
マイクアンプの出力をD3で交流から直流にしたのち、その電圧をQ3のベースに加えることでQ3をONさせます。ECMで拾った音がIC1で十分増幅されていれば、Q3はONとなります。Q3がONとなるとQ3のコレクタ電圧はGNDレベルとなります。

(5) フラッシュライトON/OFF制御回路
フラッシュライトの点灯が不要であれば、この回路は省略できます。音を検知してQ3がONになるとQ3のコレクタはGNDレベルになります。Q4はPNPトランジスタですので、D5を通してQ4のベースがGNDレベルになると同様にONします。ONになるとR11の両端に電圧を生じ、その電圧でD-S間がONとなり、フラッシュライトに6V近い電圧が印加され点灯します。


図6 フラッシュライトON/OFF制御回路

(6) サウンドモジュール発声ON/OFF回路
この発声制御回路も図6に示したフラッシュライトON/OFF制御回路と基本的には同じです。音を検知してQ3がONになるとQ5がONになり、Q5のコレクタとGND間に挿入されたR10の両端にVCC近くの電圧を生じます。この電圧をサウンドモジュールのP-E端子に加えることで、P-E端子がLからHに状態変化し、サウンドモジュールが録音した音声を一回発声します。

(7) サウンドモジュール
キーパーツはCQマシンの製作に使うつもりで購入したこのサウンドモジュール(図7)です。本体以外に8Ω/0.5Wのスピーカーとそれに使うコネクター付きのスピーカーケーブルが付属されています。


図7 録音再生機能付きサウンドモジュール

このモジュールを自作しようとすると結構コストがかかります。モジュールは大手通販サイトで1個がなんと200円前後で購入できるのには驚きです。モジュールには音声を録音する不揮発性メモリICやコンデンサマイク(ECM)が搭載されています。また、スピーカーも付属されていますので、あとは電源を接続するだけです。

参考ですが、このモジュールの動作電圧は3~5Vです。この装置に使っている電源は単4電池4本直列ですから6Vです。4.5V程度にしたいため、シリコンダイオードの接合電位差(0.7V)を利用して電圧を低下させています。本回路では、シリコンダイオードを2本直列に接続して約1.4V低下した4.6Vをこのサウンドモジュールに供給しています。

サウンドモジュールには、取扱説明書は付属されていません。モジュールの表面に印刷されているモデル名ISD1820でネット検索すると何件かヒットしますのでそれを利用します。

モジュールの大きさは38mm×42.4mmで、重さは12gです。モジュールの各ボタンスイッチの機能を下に示します。

[REC]ボタン: 押しながらECMに向かってしゃべると最大10秒間録音することができます。
[PLAYE]ボタン: 1回押すと録音した音を1回再生します。
[PLAYL]ボタン: 押している間だけ録音した内容を再生します。

このユニットにはArduino等、外部から制御できるI/O端子が装備されています。VCC-GND間には電源として3~5Vを印加します。あらかじめ録音した音声は、P-Eの端子をLからHに状態変化させることで、録音した内容を1回再生します。この状態変化はQ6のON/OFFで行います。


図8 購入した録音再生機能付きモジュール

サウンドマシンの外観

適当なケースが見つからなかったため、手元にあった100均の透明プラスチックケースに組み込みました。ケースを透明のアクリルとしたのは、PCB上に光を検知するCdSを取り付けているためです。光を通さないケースを使用するとCdSの取り付けに工夫が必要です。


図9 サウンドマシンの外観

各部の名称


図10 各部の名称

外付け部品の製作

ECMとフラッシュライトは外付けとしました。ECMは厚めの収縮チューブを被せて強度アップを図っています。フラッシュライトは、以前アマチュア無線の展示会でアイコムから販促品でもらったミニフラッシュライトを改造して製作しました。両方とも約50cmのケーブルに3.5mmのスピーカープラグを取り付けています。


図11 外付けECMとフラッシュライト

取り付け

我が家の場合は、この装置を雨のかからないポストの底面に強力な両面テープで取り付けました。ECMとフラッシュライトはポストの中にカバーの隙間からケーブルを通して取り付けています。ポストのカバーを開けるときの音を検知するようにECMはポストのカバーの振動音を拾うよう内面に両面テープで取り付けました。


図12 サウンドマシンをポストに取り付けた様子

調整

ポストのカバーを開けたときの音で確実に装置が働くようにR5を調整します。ポストのカバーを開けなくても、周りの音を拾って動作することもありますので慎重に調整してください。感度が悪いときはSW2をGAIN=200に切り替えてください。

さて、何度も試験運転を行い装置の動作は完璧です。本番で装置が動作すると新聞配達をしていただいている方々に「おはようございます。ごくろうさまです。」と録音した家内の声がスピーカーから発声します。

まだ周りが暗いとある朝、新聞配達のバイクの音が聞こえました。我が家の前で停まり、ポストに新聞を投函されるやいなや、「おはようございます。ごくろうさまです。」と発声したサウンドマシンを家の中から確認しました。さて、その発声は、新聞配達をされている方にはどのように聞こえたか、気になるところです。

CL

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