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ものづくりやろう!

第十六回 1石レフレックスラジオの製作

JH3RGD 葭谷安正

1. はじめに

今年に入って友人から知り合いの小学4年生にJavaScriptを教えてほしいと依頼をうけました。7月の夏休みに入りこの小学生に「夏休みの図工の宿題はなにかつくるの?」と聞いたところ「なにも」との返答。ならば、ラジオに興味を持ってもらい、将来のアマチュア無線家を増やすべく、「簡単なラジオを作るのを手伝ってあげようか」と言うと、「ラジオ? なにそれ。面白くない」。はっきり言うなあと思いながら、「そんなことないよ、楽しいよ」とすすめてみましたが、最後まで「そんなのいらない。ゲームがいい」とものわかれになりました。ラジオなど今の小学生にとっては魅力がないのかもしれませんが、「こんど持ってきてあげる」と宣言すると、「いーらない」。がっかりしましたが自分の趣味の一環として、昔を思い出して作ることにしました。

2. レフレックスラジオ

ラジオに興味を持ったのは学研(学習研究社)の「〇年の科学」という学習雑誌でした。中学になると技術部に入り、自分でラジオを作りたくなりました。工具などなにもありませんでしたので(今もそれに近いですが)、シャーシ加工用のリーマやドリル、ラジオペンチといった工具まで買い集めだしたので、いつも金欠でピーピーいっていました。中学生までに作ったラジオの台数は多くありませんが、思い出深いラジオが下のようなものです。
・小学生のときの「○年の科学」付録のゲルマニウムラジオ。
 (その派生として、倍電圧のゲルマニウムラジオ)
・先輩から回路図をもらって、かまぼこ板の上に回路を作った、ダイオード検波1石ラジオ
・何を参考にしたのか覚えていない1石レフレックスラジオ
・「ラジオの製作」に実体配線図がついていた真空管式の並四ラジオ
・中学校の技術部の時、学校でつくった5球スーパーラジオ

さて、この中で唯一鳴らなかったラジオがレフレックスラジオです。

レフレックスラジオは原理も分からず日本橋で部品を集めてつくりました。はんだ付けが終わり、クリスタルイヤホンを耳に入れ、電源スイッチを「それッ」と入れた瞬間、耳をつんざくボコボコという発振音らしき音が鳴り、修理の方法も分からず「だめだこれ」と思って廃棄し、既に部品集めを開始していた並四ラジオにすぐに興味が移ってしまいました。今思えばもう少し故障箇所を調べて発見すればすぐに直せたかもしれません。そのリベンジというわけではありませんが、レフレックスラジオにチャレンジしました。

3. 原理

レフレックスラジオの原理は、当時理解できませんでした(なんせ、オームの法則はかろうじて解っていてもトランジスタの原理やバイアスがなんだということさえさっぱりという状態でしたから)。

原理を図1に書いてみました。言葉で説明すると、
①同調回路で選択した信号をトランジスタ1石で高周波増幅
②その出力をダイオードで検波
③検波された低周波信号をもう一度①で使用したトランジスタで低周波増幅
④増幅した低周波信号をイヤホンで音声化

だれが考えたのか、まさに「一石二鳥」、いや「一石二増幅」です。

同じトランジスタで高周波増幅と低周波増幅するというマジックのようなことをうまくやっているのですが、よく考えたものですね。


図1 レフレックスラジオの原理図

4. 回路図

図2が今回作成したラジオの回路図です。

ネット上に掲載されている回路とは回路定数は少しずつ異なりますが同じような回路です。部品の数が少ないのでほぼ同じ回路になるのでしょう。ネットに沢山関連記事がありましたので、複数の回路を参考にしつつ、コンデンサやコイルは近い値の手持ち部品を使いました。


図2 1石レフレックスラジオの回路図

2SC1815が高周波増幅と低周波増幅として動作します。

原理図1と対比させて回路を追っていきます。
①高周波増幅
アンテナからの高周波信号は2SC1815で増幅されます。

②検波
2SC1815で増幅された高周波信号は100pF側にながれていきます。2SC1815のコレクタにはコンデンサとコイルが並列に接続されています。コンデンサは高周波的にはインピーダンスが低いため高周波信号を通しやすいですが、低周波に対してはインピーダンスが高いため音声信号を通しにくいです。

一方、コイルは高周波的にはインピーダンスが高く高周波信号を通しにくいですが、低周波に対してはインピーダンスが低いため音声信号を通しやすいです。このため、コンデンサ側に流れやすいというイメージです。そして、ダイオード1N60で検波されます。回路は倍電圧検波回路です。これで音声信号成分が取り出されます。

③低周波増幅
低周波信号成分は再度2SC1815に戻され低周波信号として増幅されます。

④音声出力
2SC1815で増幅された低周波信号はコイル側に流れていきます。
上の②に記載されていることと逆で、低周波信号の場合、2SC1815の出力側のコンデンサとコイルについては、コイルが低周波に対してはインピーダンスが低いため信号はコイル側に流れやすいというイメージです。低域フィルタと言い換えてもいいのでしょうか。

そしてクリスタルイヤホンで音声化されます。

動作原理からみられるように、フィードバックがかかった状態ですから発振する可能性があります。現に今回作成したラジオでも長い導線をアンテナとして接続したときに発振状態になりました。

5. 部品表

使用した部品は次のようなものです。


表1 部品表

6. 組み立て

回路図をもとにブレッドボード上に組み立てました。部品数も少ないため、小さなブレッドボード上におさまりました。ポリバリコンとバーアンテナの接続、その他少々ハンダを使用しましたが、ブレッドボード用の配線を使用してテレビを見ながら2時間足らずで結線ができました。


(a)全体図


(b)側面図

図3 1石レフレックスラジオ
(音量調整するため、表1-5番の抵抗を可変抵抗に変更したもの)

7. スイッチオン

配線に間違いがないか、回路図をチェック。慎重に回路図上にチェックした部分を色塗りして配線間違いを確認しました。これもそれほど時間はかかりませんでした。いよいよ、緊張のひと時、無線用のHF帯のアンテナをつないでみて、スイッチオン!

「あれー?」どう言葉にすればいいのか解らないのですが、イヤホンから「ビュルビュル」とでも言えばいいのか間欠発振しているのか、信号が強すぎて歪んでいるのかわからない音、いやこれは発振だ、とか思いながらいったん電源をオフにしました。

信号強度の強いところでは、短いアンテナにするようにとの文言をどこかのHP上で見た覚えがありましたので、アンテナを1mほどの導線にしてスイッチを入れなおしました。

すると、聞こえてきました。ちょうどNHK第2放送の英語放送の時間でしたので英会話が入ってきました。ダイヤルを回してみましたがNHK第2以外入りませんでした。私の居住する大阪府にはNHKの放送局はNHK第1放送(666kHz 100kW 堺市)とNHK第2放送(828kHz 300kW 羽曳野市)があります。堺市のほうが自宅からは近いですが、さすが300kWのNHK第2放送が強力でした。なお、アンテナの長さを変えたり、夜間になるとNHK第1放送も受信できました。他の民放局(ABC放送 1008kHz 50kW, MBSラジオ 1179kHz 50kW, ラジオ大阪 1314kHz 50kW)も、夜間ならばかろうじて聞こえてきました。

8. 部品定数を変えてみた

音は鳴るのですが、NHK第2放送が全域占拠してします。バリコンを回してもNHK第2放送の音量や音質が変わるのみといった状態です。アンテナを短くしてNHK第2放送の独占状態を緩和してみましたが、根本的な解決にはなりません。そこで部品をいろいろ触ることにしました。

・同調回路の素材を変える(トロイダルコアで回路作成)
手持ちの部品箱にあったバーアンテナで回路をつくったのですが、このアンテナはあまりよくないとの記載がありました。ほかのアンテナに比べてQ値が低いとかなのでしょうか、これ以外を使ったことがないので何とも言えない状況です。

ネットで情報を収集してみるとバーアンテナの同調回路ではなく、リードコイルを2個(330µHと15µHくらい)準備し、そのコイルを接近させて密結合にすることでトランスとして使用している例も見受けられました。また空の小型ボビンに自分でコイルを巻いている人の記事もありました。

またさらにトロイダルコアにコイルを巻いているものもみかけました。トロイダルコアがいくつかあったので自分でも巻いて、一度試してみることにしました。部品箱からトロイダルコアを探しましたがAL値の低いものしか手持ちにありません。ジャンク箱の中に30回巻の正体不明のトロイダルコアに巻いたコイルをみつけました。このインダクタンス値を測り、これからAL値を計算したところ3000[nH/N2]程度になりました。

このトロイダルコアが同調回路として適するのか否かは不明でしたが1次側330[µH]、2次側15µHのインダクタンスを持つコイル(トランス)は計算上10回程度巻けばできるようです。実際巻いてみると全巻数10回で約330µHになりました。GNDから2回巻いた位置に中間端子を出す形にしました。中間端子とGND間で約15µHになりました。これにバリコンをつないで受信してみたところ、多少音量は小さくなりますが同調回路として働いていました(あたりまえか)。

しかし、NHK第2放送しか受信できませんでしたので、元のバーアンテナに戻しました。


図4 トロイダルコアとバリコンによる同調回路

・音量調整
アンテナ端子に導線を5mも伸ばせば耳が痛くなるほどの音量になりました。残念ながらこの回路には音量調整回路がありません。回路を見ると検波した信号の出力を抑えれば音量が減るようですので、検波ダイオードの隣にある10kΩの抵抗を5kΩにしてみましたら音量が下がりました。そこでこの10kΩの抵抗を可変抵抗に変更しました。この可変抵抗で音量を下げると、片隅にNHK第1放送と思しき信号が入ってきました。

・バイアス抵抗の変化
ネットで見かけた回路では470kΩのベースバイアス抵抗の値が1MΩというものもありました。可変してどのように変化するのか確認してみました。

(a) 抵抗値増加
470kΩを1MΩにしたところ、音が少し歪みました。さらに2.2MΩに入れ替えると少し歪は減りましたが、470kΩの時よりも音量が低下してきました。

(b) 抵抗値減少
470kΩから330kΩ、100kΩ、90kΩと下げてみましたが、あまり変化ありませんでした。

ネット上に公開されている回路を見る限り、トランジスタは2SC1815を使っていてほぼ同じ回路であるにも関わらずバイアス抵抗値や他の抵抗値の値は倍以上も異なっているものがあります。こんなに値に幅があって大丈夫なのかと多くの方も思われているようで、抵抗値やコンデンサの値を変化させたときの結果を報告されておられる方が多く見受けられます。私もそれらを参考にさせていただき、同じように追実験を行い、楽しく試しながら勉強させていただきました。

・チョークコイルの値
チョークコイルを4mHのものから1mHに変えてみましたが、発振状態のようにボコボコ言い始めました。インダクタンスの値を4mHよりも大きな値で試したかったのですが、手持ちに4mH以上のものがありませんでしたので確認できませんでした。

9. ケース

ブレッドボードに回路を組み込み、バリコンやアンテナをケースに入れることにしました。いつもならプラスチックケースやアルミケースを加工してつくりますが、3Dプリンタを買ったのですからこれで印刷しました。自分で設計といってもアイデアが出てきません。そこでネットをぐるぐるして公開情報をさがしました。ブレッドボードを入れるケースを検索すると山ほどでてきますので、その中でこれは使えそうだというものを印刷しました。図5がそれです。

ブレッドボードを入れるボード部分とバリコンやボリューム、スイッチなどを取り付ける壁面部分を別個に印刷して、ボード部分にカチッと固定するまで差し込んで組み立てるものです。


図5 レフレックスラジオケースのパーツ


図6 ケースパーツを組み立てたもの

また、バリコンのチューナーノブもなかったので公開されているものをさがしましたら何点か出てきました。そのうちの一つを印刷し(図7)、組み立てたラジオのバリコンに実装してみました。


(a)裏面


(b)表面

図7 チューナーノブ(3Dプリンタで印刷したもの)

10. 最後に

昔、組み立てながら音が鳴らなかったレフレックスラジオを今回鳴らすことができました。しかし、大阪のAM局を昼間にすべて鳴らすことはできませんでした。やっぱりスーパーヘテロダインだなとちらりと思いましたが、「いやいや、古きを訪ねて新しきを知るために、また別のラジオを作ろう!」という気持ちにもなりました。

いやいや、古いラジオから離れて新しい技術の追求に走るべきかもしれませんが、それは頭の柔らかい若い方々にお任せして、私は性能が劣っても回路が簡単なラジオをもっと作りたいと思います。

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