新・エレクトロニクス工作室
秋月電子のホームページを見ていたところ、写真1のようなニッケル・水素電池の格安品がありました。単4タイプが3本パックになっていて100円です。パナソニック製で3.6V 830mAhという容量ですので、2個使えば小型のトランシーバに十分使えそうです。これを利用しようと考え、まず写真2のような充電器を作る事にしました。新品未使用品という事ですので、数回の充放電を行って活性化させる必要がありそうです。
写真1 単4タイプが3本パックのニッケル・水素電池の格安品
写真2 作製した充電器
近頃ではリチウムイオン電池が主流のようですが、まだまだ私には怖くて使用できません。自作に使うのはニッケル水素電池で十分、と今のところは考えています。もちろん、トランシーバにしてもQRPだからなのですけど・・・。もう少し様子を見たいと思います。
最初に考えるのが、「如何に安全に充電するか」になります。私の場合、自分の作ったものが一番心配で危ないものだと思っています。ですから長時間使用する場合の電源には、必ず市販のACアダプタを使っています。今回も9Vで1.3AのACアダプタを使いました。充電電圧によりますが、省エネを考えると7V程度がベストなのでしょう。入手できませんので9Vにしています。
そのような事がありますので、効率よく急速充電をしたいなどとは「全く」考えていません。端子電圧を監視しながら標準の充電電流で充電し、温度によって変化する終了電圧を計算するようにしました。更に15時間経過すると終了するようにしました。これなら安全でしょう。
普通の充電器は、充電して知らないうちに終わるものでした。これでは「充電が終わった」だけしか解りません。内部ではいろいろと制御しているとしても、面白くありません。そこで、電池の電圧と経過時間を表示するようにしました。充電が終わるとタイマーの表示も止まって表示したままとなりますので、充電に要した時間が解ります。古くなって短時間で終了したのであれば、容量が減って××mAh程度しか充電できていない・・・ などと電池の状態が判ります。15時間かかって終了したのであれば、何かの原因があって規定電圧まで上がらずタイマーで停止した事になります。もちろん、電池が元気で充電が足りないのであれば全く問題ありません。何かの原因があるのであれば、使用を控えた方が良いのかもしれません。
このような実験を写真3のように行い、回路とソフトを考えました。実験中は間違っても電池の端子間がショートする事がないように注意して行いました。使用した電池パックには保護素子としてポリスイッチが入っているようですが、注意するに越したことはありません。
写真3 このように実験を行った
図1のような回路で、定電流の75mAで充電するようにしました。830mAhという容量のため、10分の1の0.1Cで充電するとすれば83mAとなります。安全側=少なめという事にしていますが、このエミッタに入る150Ωを小さくすれば83mAに調整できます。この回路は、秋月電子の「単3 Ni-Cd電池8本充電チャージャーキット」を参考にしました。
使用した2SB1085は、手持ちにあったPNPの適当なトランジスタを使っただけです。ACアダプタの電圧にもよりますが、PCが20Wありますので十分でしょう。放熱はしていませんが、充電してもほんのり暖まる程度です。
ニッケル水素電池の満充電時の端子電圧は、温度によって変化します。そこでLM35DZで温度を測り、終了電圧を計算しています。もう少し新しいセンサーでも良いのですが、手持ちに残っているために使っています。
電池の電圧を充電しながら測るために、220kΩと100kΩで分圧してCPUのA/D変換に入れています。従って電池を入れたままにしますと、この抵抗で放電してしまいます。4Vとして13.5μAですが、長時間放置すると必ず放電します。まあ、600mAh入っているとして、全放電に5年かかる計算になります。自己放電の方が大きいのかもしれません。抵抗はなるべく大きな値にしました。もちろん充電が終了した場合、電池は外しておくべきでしょう。
電圧等の表示には小型のLCDを使っています。I2Cで制御するAQM0802です。秋月電子の変換用ピッチ変換用モジュールを合わせて使いました。第6回の「Si5351を使ったVFO実験ボード」では制御線の多いLCDを使いました。しかし、その次への布石を考えI2CのLCDを使用しました。別に今回I2Cを使う必要な無かったのですが・・・。ところが、ソフトを作っていてLCDの表示が足りなくなってしまいました。可能であれば温度の他に、その温度における充電終了の電圧も表示したかったと思います。完全に本末転倒です。
使用した電池パックには、写真4のような専用の電池ボックスがあります。これを用い、着脱が簡単なように作りました。実装図を作製したのが図2になります。ハンダ面が図3になります。少々不便な使い方ですが、充電したいニッケル水素を外して持ってきて充電するという事になります。電池ボックスを基板に載せていますので、ある程度の大きさが必要になります。秋月電子のユニバーサル基板のBタイプを使用しています。なお、他の装置にもコネクタで接続できるようにしています。もちろん電池をパラにしての充電はできません。
写真4 専用の電池ボックス
このような充電器では、基板の裏面が電線くず等の金属に接触すると危険です。仕上げとして写真5のように、Bタイプ用のアクリル板に樹脂のカラーで固定しました。これで接触するような事はないでしょう。テプラを使った表示もしています。
写真5 アクリル板の上に固定
このようなソフトを作ってみると、結構ややこしい部分があります。端子電圧が低い場合には充電をするのですが、多少下がった程度で再充電を始めると充電時間の管理ができなくなります。そのため自動的な再充電は行わずに、手動でSTARTを押下するようにしました。また、電池を入れない状態では0Vですので、これで充電が始まってはうまくありません。
ソフトを作るためには充電する電池のデータシートがあると良いのですが、これが見つかりませんでした。相当前のものですが、秋月電子の充電器キットの付属資料にニッケル水素電池の資料がありました。ここに図4のような、0.1C充電時の温度による充電終了電圧の変化がありました。これはユアサの資料のようですが、原本をネット探しても見つかりません。この読み方が難しいのですが、10時間で読んだのが表1になります。3倍したのが3本の電圧になります。充電する電池のデータシートであれば15時間で読んでも良いかと思いましたが、取りあえず70%程度で充分と考えました。
図4 参考にしたユアサの資料
表1 10時間の電圧を読んだ
次に表1の3本の電圧をグラフにしたのがグラフ1です。エクセルの機能を使って近似式を表示しています。近似式を作るのが目的ですので、あまりグラフ自体には意味はありません。測った温度をグラフ1にある近似式で計算を行い、充電の終了電圧を決めています。更に、電圧が計算電圧まで上昇しない場合でも、15時間で強制的に終了させています。
LCDには充電状態を写真6のように表示しています。上段の4.130Vは、リアルタイムで測っている電池の電圧です。下段の14.2Cは温度です。℃の表示が使えなかったための苦肉の策で、Cになってしまいました。本来は使えるはずですが、私にできなかっただけです。上段の右端の2は充電時間で、下段の右端の31は分です。つまり充電開始から2時間31分経過した状態になります。しかし、後でmAhに変換する事を考えると2.52のように小数点で表示するか、最初からmAhで表示するのが良かったのかもしれません。こんな事を考えると、明らかにLCDの表示文字数が少な過ぎたようです。
写真6 充電状態の表示
作り慣れない充電器のソフトで、決して上手ではありません(下手なのはソフトに限りませんけど)。参考までに一揃いを置いておきますので参考にして下さい。
充電器ソフトのダウンロード
電池としては新しくはない電池です。この電池にA~Dのシールを貼って数回の充電と放電を行いました。最初はあまり充電ができませんでしたが、簡単に復活したようです。最初から計画していれば、復活の様子を測定しながら示せたと思います。試しながらでしたので無理でした。
表2のように8時間程度で充電が停止して600mAh以上の充電ができました。少なめの電流で充電していますが、早めに電圧が上がってしまった事になります。新品未使用品ですが、多少の劣化があるのかもしれません。充電の後は放電をしないと試験になりません。そこで、放電には週刊BEACONのNo.135「電子負荷」を利用しています。自動的に充電容量を計算する機能がありますので、それを利用しています。比較すると同じような結果で、充放電の帳尻が概ね合いました。
このようにLCDで充電時間が判るととても便利です。電池の電圧もリアルタイムで判ります。ただ充電して終わりでは面白くありません。この充電器が良いというのではありませんが、趣味で作るのですから電池の状態が見られる方が面白いと思います。
当然の結果ですが、規格の830mAhまでは行きませんでした。830mAhの75%前後となっていますが、終了電圧の微調整を行えばもう少し充電できると思います。資料の10時間のところで電圧を読んでいますので、次に13時間付近の値で試すのも良いかもしれません。充電電流を83mAに調整するのも良いでしょう。しかし私としては、とりあえず充分と思っています。今まで何回も試しましたが、15時間のタイマーでのストップまでは動いた事はありません。安全側に資料を読んだ結果なのでしょう。
本来は各温度で充電状態のテストをすべきなのでしょうけど、これは個人の環境では無理です。冬季のテストは行いましたが、夏季は試していません。このあたりは何年も何回も使っていないとクセが見えてこない部分と思います。しかも一回の充電に長時間かかりますので、簡単にはできません。このように、まだまだ開発途中とも言えるのですが、安全に充電できる事を第一に考えた充電器です。
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