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日本全国・移動運用記

第96回 北海道 網走・釧路方面移動

JO2ASQ 清水祐樹

2023年9月1日掲載

2023年の夏は、全国的に猛暑が話題になっており、移動運用でも例年以上の暑さを感じることがあります。そこで、涼しい北海道での移動運用を狙って、飛行機とレンタカーを利用して女満別空港を拠点に網走・釧路方面に移動する計画を立てました。

運用計画

この連載で毎年紹介している通り、北海道に自分の車で行く場合、苫小牧または小樽発着のフェリーを利用しています。そうすると、道東や道北方面には走行距離が長くなり移動に時間がかかります。そこで、夏季限定で運行される名古屋(中部)-女満別の航空便を使って行く機会が少ない地域に行ってみようと考えました。

移動ルートは、網走郡大空町にある女満別空港から出発し、釧路市方面に向かうルートとして、土曜日と日曜日は1日4か所の運用としました(図1)。


図1 今回の移動ルート

使用した設備

北海道で、国内向けにHF帯で運用する場合、伝搬は電離層の状態によって大きく影響されます。伝搬状態が良ければ、短いアンテナやQRPでも多くの局と交信できますし、伝搬状態が悪ければ、どんなに良いアンテナを使っても交信が難しいことがあります。今回の移動運用で使用したアンテでは、設置の手間を省くため、本連載でたびたび紹介しているビニル線付き釣竿と、オートアンテナチューナーのセットを使用しました(例: 2021年4月号)。

余談ですが、自分の車・レンタカーともに、50W出力で送信しても回り込みは全く発生しません。回り込みを防ぐため、無線機または障害を受ける機器の直近に「コモンモードフィルター」を挿入しています(図2)。コモンモードフィルターは、フェライトコアにケーブルを複数回巻いたものです。同軸ケーブル、電源ケーブル、アース線、PCのUSBケーブルにコモンモードフィルターを挿入して、無線機のアース端子を車のシャーシ(バッテリーのマイナス端子付近、またはシガーソケットのマイナス端子)の1点で接続しています。

フェライトコアの大きさは、用途によって使い分けています。太い電源ケーブルや同軸ケーブル(3D-2V)を巻くには、13mmケーブル対応のコア、またはタカチ電機工業のTFT-274015Sを使用します。巻き方は、同軸ケーブルの場合は巻数を大きく取った方が良いと考えられるので、W1JR巻きと呼ばれる方法にしています。



図2 回り込み防止の処置。写真は筆者の車に設置したIC-7300に装着しているコモンモードフィルターで、同軸ケーブルとアンテナチューナーのコントロールケーブル、電源ケーブル、アース線をフェライトコアに巻いてある。上図のバッテリーは、無線機の電源用として搭載したもの。

7月21日(1日目) 網走市の市街地で運用

網走市の市街地に近い公園でレンタカーに機材を設置しました。網走市の郊外で、運用に適していそうな場所に移動するには、数10分かかってしまいます。移動時間を節約するため、市街地で運用することにしました(写真1)。ノイズは特に無く、伝搬のコンディションもまずまずで、初日の夕方に1.9~50MHz帯の各バンドと、サテライトで交信記録が残りました。


写真1 網走市での運用の様子

7月22日(2日目) 網走郡の3町と、弟子屈町で運用

大空町は高台にある、展望台がある公園で運用しました(写真2)。天気は快晴で、朝から強い日差しが照りつけていました。伝搬のコンディションも良好で、7MHz帯、10MHz帯、14MHz帯ともに広い範囲が入感していました。衛星の時間の都合で、14MHz帯までで打ち切りました。

美幌町も高台にある公園で運用しました。この時期は、午前8時を過ぎたあたりから、7MHz帯の国内QSOは伝搬が厳しくなります。18MHz帯が良くなったため、10MHz帯、14MHz帯、18MHz帯の各周波数帯でパイルアップになったところで時間切れになりました。

津別町は、川の堤防上の空きスペースで運用しました(写真3)。北海道と言っても、真夏の強烈な日差しが照り付けて気温は30℃を超え、カーエアコンで涼みながらの運用でした。ここでも伝搬のコンディションは美幌町と同じような感じでした。


写真2 網走郡大空町での運用の様子


写真3 網走郡津別町での運用の様子

津別町から弟子屈(てしかが)町へは長距離移動になり、運用場所間の走行距離は67.9kmと出ました。実際には途中で運用場所を探すために寄り道をしており、隣接した町に行くだけでこれ以上の距離を走行しています。午後からは伝搬のコンディションが上がって各バンドでパイルアップになり、28MHz帯は27QSOできたものの、50MHz帯が釣竿アンテナで聞こえるほどの強力なEスポではなく、50MHz帯は1QSOに終わりました。それでも、午後の時間を目一杯使ってQSOを楽しめました。

7月23日(3日目) 釧路市とその周辺で、グリッドロケータQN22に対応

朝は標茶(しべちゃ)町の河川敷で運用しました(写真4)。ここでも前日と同様に14MHz帯が好調で、時間があったので18MHz帯にも期待したところ、14MHz帯と18MHz帯の差は予想よりも大きく、18MHz帯では近距離が聞こえませんでした。


写真4 川上郡標茶町の運用場所の様子

標茶町と釧路町は隣接しているので、単に移動するだけであれば、必ずしも長距離移動の必要はありません。しかし、釧路町と釧路市の一部には、陸地がわずかしか無いグリッドロケータ QN22があるため、釧路町のQN22の高台にある空き地を目指して移動しました(写真5)。

標茶町から釧路町への移動距離は地図上の最短で51.4kmでした。目的地付近の道路が舗装されていなかったため、目的地をすぐに見つけられず遠回りしてしまい、実際の走行距離はこれ以上になりました。

通常、昼間の運用では7MHz帯から順番に高い周波数に上がっています。ところが、7MHz帯とサテライトを運用したところで、稚内の上空に強力なEスポが出ていることに気づきました。試しに50MHz帯を聞いてみると、SSBで西日本からの信号が何局も確認できました。そこで、50MHz CWでCQを出すと、短時間で26QSOできました。その後、伝搬のコンディションは急激に落ちてしまい、10MHz帯から上がって18MHz帯までは行けたものの、信号が弱くなって21MHz帯は厳しそうな感じになったところで時間切れになりました。


写真5 釧路郡釧路町の運用場所の様子

釧路市は、釧路町の運用場所から3.9km離れた駐車場で、ここもQN22でした。衛星の時間の都合で短時間運用になりました。

阿寒郡鶴居村は、幹線道路に面した駐車場で運用しました。途中、休憩で立ち寄った場所での掲示を見ると、クマが出没したとの情報があったので、安全確保のため人通りが多い場所で運用することにしました。ハイバンドは大オープンではなく、とりあえず50MHz帯で2QSOできました。日没後も伝搬は比較的好調で、一般的に夏期のローバンドは国内遠距離との交信が難しいにもかかわらず、3.5MHz帯で28QSOを記録しました。

結果

運用地点別のQSO数を表1に示します。衛星の時間の都合で午前は1か所あたりの運用時間が短く、午後は長くなったので一概に比較はできませんが、午後に伝搬のコンディションが良かった傾向が見えます。


表1 QSO数の集計。1.9~50MHzはCW、サテライトはCW/SSB。

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